内臓脂肪の蓄積が女性の糖尿病発症を招く原因と食事や運動による対策を解説

内臓脂肪の蓄積。女性の糖尿病発症を招く原因。食事や運動による対策

年齢が上がるにつれ、体重は大きく変わらないにもかかわらず、お腹まわりの脂肪が気になってきた女性も多いでしょう。

脂肪にはいくつか種類があり、胃や腸などの内臓まわりにつく脂肪を内臓脂肪といいます。

本記事では、メタボリックシンドロームと診断される腹囲の目安や、内臓脂肪が血糖値に与える影響をまとめました。

この記事でわかること
  • メタボリックシンドロームの診断基準となる女性の腹囲は90cm以上
  • 内臓脂肪の蓄積で糖尿病の発症リスクが高まる
  • BMIが25未満でもインスリン抵抗性が生じる
  • 糖尿病予防には内臓脂肪への早期対策が必要
  • ガイドラインが示す減量の目安と糖尿病と診断されるHbA1cの数値を知る

内臓脂肪や高血糖の対策に有効な食事療法と運動療法の基本についても解説しているため、生活習慣病を予防したいと考えている人はぜひ参考にしてください。

目次

メタボリックシンドロームの診断基準となる女性の腹囲は90cm以上

メタボの診断基準。女性の腹囲は90cm以上

メタボリックシンドロームの診断基準の1つに腹囲があり、厚生労働省が示す基準の腹囲は女性で90cm以上、男性で85cm以上です。

これらの数値を内臓脂肪面積に換算すると、100㎠以上に相当します。

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満の他に高血圧や高血糖、脂質代謝異常のうち2つ以上が積み重なった状態のことです。

そのため、腹囲の基準に加えて、以下の3つのうち2つ以上があてはまる場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

項目基準
血圧収縮期血圧130mmHg以上または拡張期85mmHg以上
脂質中性脂肪150mg/dL以上または善玉コレステロール40mg/dL未満
血糖値空腹時血糖値110mg/dL以上

参照元:メタボリックシンドロームの診断基準 – 厚生労働省

メタボリックシンドロームの診断において腹囲は必須項目であり、おへその高さでウエスト周囲径を測定します。

メタボリックシンドロームは生活習慣病の前段階である

メタボリックシンドロームには特有の自覚症状はありませんが、生活習慣病の前段階にあたります。

糖尿病情報センターによると、メタボリックシンドロームがある人はない人に比べて糖尿病を発症するリスクが約3倍心血管疾患のリスクも約3倍といわれています。

心血管疾患の具体例は、以下のとおりです。

  • 狭心症
  • 心不全
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞など

これらの病気には命に関わる重篤な症状もあり、発症すると重度の後遺症が残る場合があります。

他にもメタボリックシンドロームが引き起こす病気には、以下が挙げられます。

  • 非アルコール性脂肪肝
  • 高尿酸血症
  • 腎臓病
  • 睡眠時無呼吸症候群

参照元:メタボってなに? – 糖尿病情報センター

程度が軽くても高血糖や高血圧、肥満などが重なるとメタボリックシンドロームを発症する確率が高まるため、早期の発見と対策が必要です。

メタボリックシンドロームを放置すると動脈硬化が進行する

メタボリックシンドロームを放置すると脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインのバランスが崩れ、動脈硬化が進行します。

アディポサイトカインは脂肪細胞から分泌される物質で、善玉と悪玉の2種類があります。

善玉アディポサイトカインはインスリンの感受性を高め、血糖値を下げたり動脈硬化を予防したりする効果が期待できます。

それに対して悪玉アディポサイトカインは肥大化した脂肪細胞から分泌され、血管を収縮させたり、インスリンの働きを妨げる作用が特徴です。

内臓脂肪の蓄積は悪玉アディポサイトカインの過剰分泌を招くため、生活習慣病を発症するリスクが高まります。

動脈硬化とは全身に血液を運ぶ動脈が硬くなり弾力を失った状態のことで、血管が狭くなって血流が悪化します。

糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は血管に負担がかかり、動脈硬化を進行させる主な要因です。

健康を維持するにはメタボリックシンドロームを放置せず、内臓脂肪の蓄積や高血糖を改善する必要があります。

内臓脂肪の蓄積によって糖尿病を発症するリスクが高まる

内臓脂肪の蓄積。糖尿病発症リスクが高まる

内臓脂肪の蓄積によってインスリン抵抗性が悪化し、糖尿病を発症するリスクが高まります。

インスリン抵抗性とはインスリンが十分に分泌されているにもかかわらず、効きが悪くなった状態のことです。

糖尿病はインスリンの分泌または効きが十分でないために慢性的に高血糖が続く病気であり、インスリン抵抗性が発症の要因となります。

インスリン抵抗性があると血糖値を下げようとして過剰なインスリンが分泌され、すい臓が疲弊して糖代謝に悪影響を及ぼします。

そのため、糖尿病を予防するには内臓脂肪を減少させ、インスリンの働きを回復させる取り組みが重要です。

更年期以降は女性ホルモンが減少して基礎代謝が低下する

更年期以降は女性ホルモンが減少して基礎代謝が低下し、体重増加や内臓脂肪の蓄積を引き起こします。

基礎代謝は1日に消費するエネルギーのうち約60%を占めており、基礎代謝の低下がダイエットや体重管理の妨げとなります。

女性ホルモンのエストロゲンは主に卵巣から分泌され、健康維持や動脈硬化の予防に重要な役割を果たすホルモンです。

エストロゲンには内臓脂肪の蓄積を抑える働きがありますが、40代から徐々に分泌量が減少します。

更年期以降の女性は加齢による筋肉量の減少に基礎代謝の低下が重なり、以前と同じ食生活を送っていても内臓脂肪の蓄積を招きます。

体重があまり変化していなくても腹囲のみが増える場合もある

体重があまり変化していなくても内臓脂肪が蓄積し、腹囲のみが増える場合もあります。

腹囲が増える原因には内臓脂肪の蓄積や筋肉量の低下が考えられますが、筋肉が減って内臓脂肪が増えている場合は体重がほとんど変わりません。

筋肉は密度が高く、同じ体積で比較すると脂肪よりも筋肉のほうが重いという特徴があるためです。

健康診断以外に腹囲を測定する機会がない人や、サイズにゆとりのある服を好んで着ている人は、体型の変化になかなか気付かない恐れがあります。

自分でも気付かないうちに内臓脂肪の蓄積が進んでいる可能性があるため、定期的な腹囲の測定が大切です。

体重測定に加えてこまめな腹囲の測定は、体型の把握やメタボリックシンドロームの予防につながります。

BMI25未満の普通体重でもインスリン抵抗性が生じる場合がある

BMI25未満の普通体重でも内臓脂肪はたまる

見た目が太っていなくても内臓脂肪はたまるため、BMIが25未満の普通体重でもインスリン抵抗性が生じる場合があります。

BMIは肥満度を表す世界共通の指標であり、日本肥満学会が肥満と判定する基準はBMI25以上です。

参照元:肥満の定義 – 日本肥満学会

BMI18.5以上25未満は普通体重に分類されますが、日本糖尿病学会はBMIが25未満でも内臓脂肪の蓄積でインスリン抵抗性が生じると指摘しています。

BMIが25未満で内臓脂肪が蓄積した状態を隠れ肥満と呼び、健常者よりも生活習慣病の発症リスクが高まります。

太っていないから大丈夫という油断が変化の見逃しにつながるため、日頃から体重と共に腹囲を測る習慣が大切です。

日常生活ではメジャーや体組成計を使って腹囲を定期的に測定する

日常生活ではメジャーや体組成計を使って腹囲を定期的に測定し、記録する習慣が体型の把握に役立ちます。

メジャーを使った測り方はおへその高さでメジャーを床と水平にあて、軽く息を吐いた状態で数値を読み取ります。

腹囲は時間帯によっても変化するため、なるべく同じ時間帯に同じ条件で測るとよいでしょう。

体組成計は事前に身長や年齢など必要な情報を登録すると、体重と内臓脂肪レベルを同時に測定できて便利です。

内臓脂肪レベルは一般的に1〜30程度の数字で表示され、10以上でやや高い状態を示しています。

体組成計の中には、スマートフォンのアプリと連動して自動で測定値を記録できる商品もあるため、簡単に推移を記録できます。

病院ではCTや体成分分析装置を用いて内臓脂肪を正確に測定できる

病院はCTや体成分分析装置を用いて内臓脂肪を正確に測定できるため、隠れ肥満も見逃さずに発見できます。

自己測定は食事や体内の水分量などに影響を受け、食事後や運動後、入浴後は正確な数値が測定できません。

定期的なチェックや経過観察に有効ですが、一定の誤差が生じて実際の内臓脂肪の量と異なる可能性があります。

一方、病院の検査は内臓脂肪と皮下脂肪を区別して測定し、詳細な数値や画像で結果を確認できます。

同時に血液検査も行う場合が多く、血糖値や血圧、コレステロール値などの数値を見て総合的な診断が可能です。

糖尿病の発症を予防するには内臓脂肪に対する早期の対策が重要

糖尿病の発症を予防。早期の対策が重要

糖尿病の発症を予防するには、インスリン抵抗性を引き起こす内臓脂肪に対して早期の対策が重要です。

糖尿病は発症するまでに10年以上の初期段階の期間があるといわれており、予備軍の段階における生活習慣の改善が発症予防につながります。

内臓脂肪を減らすには、食生活の改善と継続した運動が効果的です。

糖尿病においても食事療法と運動療法は治療の中心的な役割を果たしており、血糖管理に役立ちます。

ここでは、内臓脂肪の減少と血糖管理のための食事療法と運動療法の基本について解説します。

食事療法はエネルギー管理と食事全体の栄養バランスが大切

食事療法は、エネルギー管理と食事全体の栄養バランスを整える取り組みが大切です。

消費するエネルギー量よりも食事から摂取するエネルギー量のほうが多いと、体内の余分なエネルギーが脂肪として蓄えられます。

そのため、自分にとって最適な摂取エネルギーの目標値を把握し、それを上回らない食事量や食事内容を心がけます。

糖尿病情報センターが公表している1日の適切なエネルギー量を求める数式は、以下のとおりです。

1日の適切なエネルギー量(kcal)=目標体重(kg)※1×エネルギー係数※2

※1 目標体重の目安

年齢目標体重の算定式
65歳以上身長(m)×身長(m)×22〜25
65歳未満身長(m)×身長(m)×22

※2 エネルギー係数

活動量具体例エネルギー係数
軽い労作デスクワークなど大部分が座位の静的活動25〜30
普通の労作通勤や家事、軽い運動を行う30〜35
重い労作力仕事や活発な運動を行う35〜

参照元:糖尿病の食事のはなし(基本編) – 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター

適切なエネルギー量は肥満や血糖管理の状況によっても異なりますが、食事を多く食べ過ぎないように意識しましょう。

毎日の食事は栄養バランスも重視され、厚生労働省は健康維持のために主食と主菜、副菜を組み合わせた食事を推奨しています。

参照元:日本人の長寿を支える「健康な食事」 – 厚生労働省

食事療法はエネルギー管理にあわせて、食事全体のバランスを整える取り組みが土台となります。

継続した運動で日中の活動量を増やして脂肪を燃焼させる

内臓脂肪の減少や血糖管理には継続した運動で日中の活動量を増やし、脂肪を燃焼させると効果的です。

運動によって消費カロリーが増えて内臓脂肪が減少し、間接的にインスリン抵抗性の改善に役立ちます。

運動療法は食事療法と並ぶ糖尿病の中心的な治療法であり、運動習慣の定着が生活習慣病の予防や健康維持に役立ちます。

糖尿病診療ガイドライン2024によると、血糖管理には有酸素運動筋力トレーニングが有効です。

有酸素運動とは比較的軽い負荷で長時間行える運動のことで、具体的にはウォーキングやジョギングなどが挙げられます。

血液中のブドウ糖がエネルギーとして利用されるため、有酸素運動には血糖値を下げる効果が期待できます。

筋力トレーニングは筋肉に負荷をかけて行う運動を指し、具体例はスクワットやダンベル運動、腕立て伏せなどです。

筋肉には血液中のブドウ糖を取り込んで消費したり貯蔵したりする働きがあり、筋肉量の増加はインスリン抵抗性の改善や基礎代謝の向上に貢献します。

普段座っている時間が長い人や運動不足の人は無理のない程度のウォーキングから始め、日中の活動量を増やすように心がけましょう。

ガイドラインに示されている減量と糖尿病診断の目安を把握する

ガイドラインに示されている減量と糖尿病診断の目安を把握

内臓脂肪の減少や血糖値の低下を目指している女性は、ガイドラインに示されている減量と糖尿病診断の目安の把握が重要です。

専門医が用いる指標を知ろうとする姿勢が治療の精度を上げ、体重や血糖値の安全な管理につながります。

客観的な数値は治療を進める上で指標となり、目標値の達成が生活習慣の改善を続けるモチベーションにもなるでしょう。

治療方針は患者によって異なり、年齢や体の状態などさまざまな要素によって目標値が決定されます。

そのため目標値は一律ではありませんが、今回は公的なガイドラインに基づく一般的な目安について解説します。

肥満症診療ガイドラインでは現体重の3%の減量が目安

日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2022によると、肥満症治療は3〜6ヶ月で現体重の3%の減量が目安です。

肥満症はBMIが25以上で糖尿病や高血圧などの健康障害がある状態、または内臓脂肪型肥満で治療が必要な状態を指します。

内臓脂肪は皮下脂肪よりも減量による効果が大きく、3%の減量は内臓脂肪の減少に効果的です。

参照元:肥満症診療ガイドライン2022 第5章肥満症の治療と管理 – 日本肥満学会

内臓脂肪の量に限らず、減量によって空腹時血糖値や血圧、尿酸値などさまざまな数値の改善が見込めます。

ただし、急激な減量は体にとって負担となるばかりでなく、筋肉量の減少やリバウンドにもつながります。

減量を目指す場合は食生活の改善や運動の習慣化などを心がけ、3〜6ヶ月間かけて徐々に体重を減らすように心がけましょう。

BMIが35以上で健康障害がある場合は高度肥満症と診断され、現体重の5〜10%の減量が目安となる場合もあります。

糖尿病型と診断される目安はHbA1c6.5%以上である

糖尿病の診断で用いられる指標の1つにHbA1cがあり、糖尿病型と診断される目安はHbA1c6.5%以上です。

HbA1cとは過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均的な状態を示す血液検査の項目であり、数値が高いほど高血糖が続いている様子を表します。

糖尿病型と診断される目安の数値には、以下が挙げられます。

  • HbA1c6.5%以上
  • 空腹時血糖値126mg/dL以上
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験200mg/dL以上
  • 随時血糖値200mg/dL以上

別の日の検査で2回以上糖尿病型と判定された場合や、明らかな高血糖症状、合併症が確認された場合に糖尿病と診断されます。

HbA1c5.7〜6.4%以上は境界型と呼ばれ、放置すると将来糖尿病を発症するリスクが高い状態を示しています。

そのため、血糖値が高めと指摘された人や境界型と判定された人は、糖尿病を予防するために早期からの対策が必要です。

糖尿病診療ガイドライン2024によると、適切な食事療法や運動療法のみで血糖管理が可能であり、血糖の正常化を目指す場合はHbA1c6.0%未満が目標とされています。

目標値は段階的に設定されており、患者の病態や血糖管理の状況によっても異なるため、医療機関を受診した際に医師に確認しましょう。

内臓脂肪が気になる女性は生活習慣の改善で糖尿病を予防しよう

内臓脂肪やお腹まわりの体型変化が気になる女性は、生活習慣の改善が糖尿病の予防に効果的です。

メタボリックシンドロームの診断基準は女性が腹囲90cm以上であり、発症すると糖尿病をはじめとする生活習慣病を引き起こすきっかけとなります。

更年期以降の女性は基礎代謝の低下や筋肉量の減少によって内臓脂肪の蓄積を引き起こし、インスリン抵抗性が悪化して糖尿病の発症リスクが高まります。

BMI25未満の普通体重でもインスリン抵抗性を起こす場合があるため、定期的な腹囲の測定が大切です。

糖尿病の発症を予防するには内臓脂肪に対する早期の対策が必要であり、食事療法と運動療法の実践が血糖管理に役立ちます。

公的なガイドラインには減量と血糖管理の目標が示されており、肥満症治療には現体重の3%の減量血糖の正常化を目指す場合はHbA1c6.0%未満が目安です。

健康診断で内臓脂肪や血糖値の高さを指摘された人は生活習慣の改善に取り組み、糖尿病をはじめとする生活習慣病を予防して健康な体を守りましょう。

参照元:糖尿病診療ガイドライン2024 – 日本糖尿病学会

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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