肥満とは、医学的には身長と体重から算出されるBMI(Body Mass Index)の数値が25以上(欧米などでは30以上)の状態を指します。肥満はインスリンの効きを悪くし、その結果血糖値は上昇しやすくなり、糖尿病発症のリスクを高めます。肥満を伴った糖尿病の治療では、食事療法や運動療法、薬物療法などによって体重コントロールを行うことが非常に大事です。さらに、糖尿病治療薬においては体重増加を起こしにくいものをできるだけ選択することも大切です。その中でも特に体重減少効果が期待できる糖尿病治療薬について、以下でご紹介いたします。
GLP-1はインクレチンと呼ばれるホルモンの一つですが、摂った食事が胃から小腸に到達した時に分泌され、すい臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促します。主に食後など、血糖値が上昇した時だけに効果を発揮します。
GLP-1受容体作動薬はこのGLP-1とよく似た構造をしている薬剤で、体内で簡単に分解されないよう設計されています。そのため長時間血糖値を下げる作用がありますが、血糖依存的に効果を発揮することから、空腹時など血糖値が低い時には作用が減弱します。それゆえ低血糖を起こしにくいという特徴も持ち合わせた安全性の高い薬剤です。
GLP-1は胃の動きを抑制する効果もあり、胃から食物が出る時間が遅くなり、満腹感が持続して食欲が低下します。この効果によってストレスを強く感じることなく食事摂取量を減らすことができるので、その結果体重減少効果が期待できます。一方で、この効果が強く作用してしまうことにより、吐き気や嘔吐、便秘などの症状として現れてしまうこともあります。特に使い始めの時にこのような症状が出やすいので注意が必要です。
もともとGLP-1受容体作動薬は注射薬のみでしたが、現在は飲み薬も登場しており、より使いやすくなっています。
2023年になり、GLP-1受容体作動薬に加え、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬が登場しました。GIPもインクレチンの一つであり、GLP-1とGIPが一緒に働くことで、GLP-1作用のみの薬剤と比べより強い血糖改善効果および体重減少効果が得られると報告されています。
通常、血液中のブドウ糖は腎臓の糸球体という場所を通過すると原尿(尿のもととなるもの)の中へ出ていきますが、その他に尿道管という場所で再吸収され再び血糖として血液中に戻ります。
本薬はこの再吸収に関わっている尿道間のみに存在しているSGLT2というタンパク質の働きを抑えることによってブドウ糖が血液中に戻れないようにします。するとブドウ糖が多量に尿中へ排泄させることになり、その結果血糖値が下がります。
余分な糖を尿中へ排泄するので(余分なエネルギーを尿とともに体外で排出するので)、体重減少効果が期待できる薬です。
ただし腎臓を通して効果を発揮する薬ですので、腎臓の機能が低下した方に対してはあまり効果が期待できません。
また、ブドウ糖の多い尿が出ますので尿道や陰部の感染症、膀胱炎をはじめとした尿路感染症に注意が必要です。
本ページでご紹介した薬剤は血糖改善作用という糖尿病治療薬としての主要な作用に加え、体重減少効果も期待できることから、肥満を伴う糖尿病の方に非常に有用です。しかしどの薬にも共通していることではありますが、副作用やデメリットも存在しますので、糖尿病専門医とよく相談のうえ開始し、用量調整を行うことが重要です。
当院でこれらの薬を使用する場合には患者さんの状況を十分に把握したうえで、十分な考慮のもと医師の判断に基づいて処方を行います。
2024年7月現在、GLP-1受容体作動薬がダイエットなどを目的とした適用外使用による需要が急増しており、一時出荷規制が起こったり、不適切使用による重大な健康被害の報告もあります。2型糖尿病治療という本来の使用目的で本剤が必要な患者さんへの適切な使用が強く勧められていることに留意が必要です。
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