シックデイ(sick day)とは、「体調が悪い日」という意味で、下痢や吐き気・嘔吐などの症状があったり、食欲が落ちて食事がいつも通りに摂れない時のことをいいます。シックデイの時は血糖値が乱れやすく、対処方法を間違えてしまうと、最悪の場合、意識障害や昏睡といった危険な状態になる可能性もあります。危険な状態になってしまうことを避けるため、シックデイの際の適切な対応:シックデイルールを知っておきましょう。
人間の体はストレスや運動といった外的刺激を受けると、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、ストレスに対抗するための非常に重要なホルモンですが、同時に血糖値を上げる作用も持っています。シックデイの時には体調が悪いことによる大きなストレスがかかっているため、コルチゾールの分泌量が増えます。そのため通常通りの糖尿病治療を続けているにも関わらず血糖値上昇の程度がいつもより大きかったり、また食事が摂れていないにも関わらず血糖値は逆に上がってしまうこともあり、血糖値が乱れやすい状態になります。
シックデイの際にはいつも行っている糖尿病治療を継続すべきか、もしくは変更すべきなのか、適切な対処方法を知っておくことが大切です。それができないと、最悪の場合昏睡状態に陥る場合もあり、非常に危険です。
シックデイの時は、特に以下のような症状が出現した場合には十分に注意しましょう。
私たちの体に流れる血液はほぼ一定のpH(酸性かアルカリ性かを示す数値)で保たれるようコントロールされています。
もしシックデイの時、食事がまともに摂れないからといってインスリン治療などを中断してしまうと、ただでさえ上昇しやすい状況をさらに悪化させてしまいます。その結果インスリン不足状態となり、血液中の糖を全身の臓器へ送ってエネルギーとして利用することができなくなります。このような環境下に置かれると、代わりに脂肪がエネルギー源として利用されますが、その時に分解産物としてケトン体という酸性の物質が残ります。ケトン体が増加すると血液は酸性に傾き、ケトアシドーシスと呼ばれる状態になります。
ケトアシドーシスにより血液が酸性に傾き通常のpHを維持できなくなると、それに伴い他の調節機構も崩れてしまいます。すぐに発見することができず状況が悪化してしまうと、意識障害や昏睡をきたし、生命の危険に関わる状態となる可能性もあります。
ケトアシドーシスは早いタイミングで発見しすぐに治療が行えることが重要です。そのためには、まずシックデイの際、糖尿病治療をどのように継続すればいいのか(インスリンや内服薬は継続すべきか否か)を知っておくこと、そしてケトアシドーシスの時に出現する危険なサインを覚えておき、疑わしい時にはすぐにかかりつけの医療機関・主治医に連絡できることが大切です。
ケトアシドーシスはもともとインスリン分泌が低下あるいは枯渇状態となっている1型糖尿病で主にみられますが、2型糖尿病の方でも起こりうるものです。また、まれではありますがSGLT2阻害薬というタイプの内服薬治療を行っている方においても起こる場合があるので注意が必要です(通常、典型的なケトアシドーシスでは著明な高血糖状態である一方、SGLT2阻害薬によるケトアシドーシスでは血糖値はさほど高くないことが多いです)。
のどが渇く多飲、多尿、全身倦怠感、体重減少、吐き気や嘔吐、腹痛 など
著明な高血糖と飲水量不足などによる高度の脱水によって血液が濃縮することによって高浸透圧高血糖状態という状況に陥ります。主な原因(誘因)として感染症、脳卒中、ステロイド薬や利尿剤の使用、高カロリー輸液などが挙げられます。
脱水状態になると、体液中のナトリウムやカリウムなどの電解質(ミネラル)が不足します。電解質は神経や筋肉などの働きに大きく関わっているため、昏睡を引き起こす可能性があります。
ケトアシドーシスとの違いは、高浸透圧高血糖状態の場合には最低限のインスリンは分泌されており、血液中のpHが酸性に傾くことはほとんどないか、あっても軽い場合が多いです。
またケトアシドーシスはもともとインスリン分泌が低下あるいは枯渇状態となっている1型糖尿病で主にみられるのに対し、高浸透圧高血糖状態は2型糖尿病の方、その中でも特に高齢の方に多くみられます。高齢の方の場合、なかなか高血糖に気づくことができないうちに脱水状態が悪化し、昏睡状態になってようやく医療機関を受診するというケースが多いです。普段からこまめな水分摂取を心がけること、また普段血糖自己測定を行っている方の場合には血糖値がいつもより高めに推移している時は早めにかかりつけ医に相談するように心がけることが大切です。
肺炎などの感染症にかかっている
シックデイルールとは、シックデイの際の基本的な対応方法のことです。重要なポイントとして以下の5つが挙げられます。
水分だけでは脱水症状を十分に予防できないこともあり、可能であれば消化吸収の良い食べ物を摂りましょう(おかゆやうどんなど、炭水化物が摂れるとより良いです)。
症状のチェックをこまめに行い、血糖自己測定を行っている場合は通常より測定回数を増やす
シックデイの時は通常の場合よりも血糖値が高くなりやすいということを覚えておきましょう。絶対に自己判断でインスリン治療を中断することのないようにしてください。
糖尿病治療薬については種類により継続すべきかどうか対処方法が異なる場合がありますのであらかじめ主治医に確認しておきましょう。
シックデイの時で、どのように対応したらよいか悩む場合は、お電話などで構いませんのでお気軽にご相談ください。相談の時は、「いつからどんな症状があるか」「食事はどのくらいとれているか」「血糖値はどのくらいか」など現時点での症状について教えていただけますと非常に参考になります。
当院では糖尿病専門医として、あらゆるタイプ・重症度に応じた糖尿病診療を行っております。少しでも気になった方はお気軽にご相談ください。またWEBでの診察予約は24時間受け付けておりますので是非ご利用ください。
※もし糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態が疑われた場合は、治療として点滴による補液・薬剤投与が必須となるため、大学病院や総合病院での治療を大至急依頼させていただくことになりますので予めご承知おきください。
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