検診で血糖値とLDL(悪玉)コレステロールの両方に異常が見つかった場合、どのように対処すればよいのか途方に暮れた人もいるでしょう。
高血糖と高コレステロールが重なると、心臓や脳の血管への負担が増す可能性があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増加するためです。
本記事では、糖尿病になった場合にコレステロールの管理も重要になる仕組みについて解説します。
- 重篤化リスク回避のため糖尿病においてコレステロール管理が重要
- LDLなどの適切な目標値を設定する
- 糖質と脂質を同時に整える食事や運動を取り入れる
- 同時に血糖値と脂質の管理を行う包括的な治療が大切
- 定期検査の重要性と治療の進め方を理解する
今回の記事を参考にして、糖尿病の治療を行う際は、コレステロール管理がいかに重要であるか理解を深めてください。
糖尿病患者においてはコレステロール管理が重要
糖尿病に罹患した場合、血糖値管理はもちろんコレステロール管理も重要です。
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024は、糖尿病に合併した脂質異常症を独立した章として設けています。
参照元:糖尿病診療ガイドライン2024 15章 糖尿病に合併した脂質異常症 – 日本糖尿病学会
高血糖と脂質の異常が重なると、血管の壁へのダメージが積み重なり、動脈硬化が進む速度が上がる可能性があります。
糖尿病治療とコレステロール管理の重要性について、以下の2点を通して解説します。
- 高血糖と脂質異常症の併発が冠動脈疾患のリスクを高める
- LDLコレステロールのみでなく脂質全体のバランスの確認が重要
高血糖と診断された場合は、コレステロールなど脂質管理にも気を配りましょう。
高血糖と脂質異常症の併発が冠動脈疾患のリスクを高める
血糖と脂質の異常が同時にある場合、冠動脈疾患の発症リスクが高まります。
冠動脈疾患の代表例としては、心筋梗塞や狭心症が挙げられます。
動脈硬化の要因には、糖尿病と脂質異常症の両方が該当するため、高血糖と脂質異常は共に重篤な冠動脈疾患のリスクを高めます。
糖尿病患者においては、冠動脈疾患のリスクに備えてコレステロールの管理も重要です。
LDLコレステロールのみでなく脂質全体のバランスの確認が重要
糖尿病患者がコレステロールの管理をする際は、LDLコレステロールのみでなく、脂質全体のバランスを確認する必要があります。
血液中の脂質には、LDLコレステロール以外に、HDL(善玉)コレステロールと中性脂肪があります。
LDLコレステロールが適正値になったとしても、中性脂肪の高値やHDLコレステロールの低値が継続すると血管内の脂質が蓄積するリスクが残ります。
糖尿病になってコレステロール管理に臨む際は、LDLコレステロールのみでなく他の脂質にも気を配って、全体のバランスを確認するようにしましょう。
公的資料で定められている脂質管理目標値を把握しよう

糖尿病におけるコレステロール管理を検討する際は、公的資料で定められている脂質管理目標値を参考にするのが有効です。
日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版は、糖尿病患者の脂質管理目標を整理しています。
参考元:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 – 日本動脈硬化学会
LDLコレステロールの目安は、基本的な生活習慣の見直しを行う初動の段階では120mg/dL未満とされています。
糖尿病治療中など高リスクの状態にある場合は100mg/dL未満、さらに冠動脈疾患等の既往歴がある人は70mg/dL未満が目安です。
HDLコレステロールは40mg/dL以上、中性脂肪は150mg/dL未満が目安とされます。
自分がどの目標グループに当たるかは、現状の病状や既往歴を踏まえて主治医と相談するとよいでしょう。
脂質管理の数値目標に関して、以下の2点を通して解説します。
- 危険因子の有無や既往歴で脂質の管理目標値は変わる
- 非HDLコレステロールと総コレステロールの指標を活用する
脂質管理を数値によって明確化して、健康管理における目標としてください。
危険因子の有無や既往歴で脂質の管理目標値は変わる
脂質の管理目標値は、危険因子の有無や既往歴によって変化します。
他の危険因子があるかや冠動脈疾患の既往があるかによって、120mg/dL未満から70mg/dL未満まで段階的に設定されている点は前述の通りです。
他の危険因子としては、以下のような項目が該当します。
- 加齢
- 高血圧
- 糖尿病
- 喫煙習慣
- 冠動脈疾患の家族歴
以上のように、自分に当てはまる目標値を把握するにはさまざまな要因を複合的に考慮する必要があります。
判断が難しい面も多いため、主治医と相談のうえ自分に合った目標値を設定するほうがよいでしょう。
非HDLコレステロールと総コレステロールの指標を活用する
LDLコレステロールに加えて、非HDLコレステロールや総コレステロールといった指標も血管リスクの評価に役立ちます。
コレステロールの中には、LDLコレステロール以外にも動脈硬化の要因となる悪玉脂質があります。
LDLコレステロールに、レムナントやVLDLといった悪玉脂質を加えたものが、非HDLコレステロールです。
非コレステロールは、LDLコレステロールのみの管理では見落すケースがある残余リスクを確認する手がかりとして、補完的に活用されます。
脂質管理を行う際は、LDLコレステロールに加えて非コレステロールを活用しましょう。
糖質と脂質を同時に抑えるために毎日の食事を改善しよう

糖尿病患者のコレステロール管理においては、血糖と脂質の両方の管理に効果のある食事を目指しましょう。
具体的な食事内容については、主治医や管理栄養士に相談しながら自分に合った個別の献立を考える必要があります。
食事の改善は、厳格に制限するよりも無理なく続けられる内容で徐々に見直すと効率がよいです。
糖質と脂質を同時に抑えるための食事上の注意点について、以下の2点を通して解説します。
- 飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を抑えられる食品を選択する
- 血糖値上昇とコレステロール蓄積を防ぐために運動習慣を作る
糖質および脂質の適切な管理には、食事の改善が欠かせません。
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を抑えられる食品を選択する
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取を抑えられる食品や食材を選択すると、脂質の適切な管理が可能です。
飽和脂肪酸は、肉の脂身やバター、ラードおよびココナッツ油などに多く含まれます。
トランス脂肪酸は、一部のマーガリンや加工食品に含まれるものです。
飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸を過剰に摂取すると、血液中のLDLコレステロールが増加して、動脈硬化につながる恐れがあります。
過剰な摂取を控え、代わりに魚の油や植物油を活用すると、LDLコレステロールを下げる効果が期待できます。
食事全体のバランスを整えながら、取り替えられる食材を少しずつ変えていくとよいでしょう。
血糖値上昇とコレステロール蓄積を防ぐために運動習慣を作る
身体を動かす習慣は、血糖の管理とコレステロール管理の両方に良い影響をもたらします。
有酸素運動は、内臓脂肪の燃焼を促し血糖値の上昇を抑制すると共に、脂質代謝にも好影響を与えます。
運動習慣は、代謝を促進して高血糖を抑制するとともに、中性脂肪やLDLコレステロールの分解を促進するために効果的です。
食後に軽い運動を取り入れるなど、日常に無理なく組み込める内容を目指しましょう。
激しい運動を短期間行うよりも、ウォーキングなど手軽に日常生活で行える運動を定期的に行ってください。
生活習慣病の悪化を防ぐために総合的な視点での治療を行う

血糖や血圧、コレステロールを同時に整えるような総合的な視点での治療により、心筋梗塞や脳卒中の予防を行いましょう。
生活習慣の改善を目指す際も、食事のみでなく運動や体重管理を組み合わせた取り組みにより、血糖と脂質の両方の管理が行えます。
薬物療法を開始する場合も、生活習慣の改善と組み合わせて治療を進めるほうが効率がよいです。
総合的な視点での治療を実施する際のポイントとして、以下の2点を中心にして解説します。
- 血糖に加えて脂質や血圧を同時に管理する包括的なケアを目指す
- 食事のみでなく運動や睡眠など生活習慣を総合的に改善する
糖尿病とコレステロールを同時に管理するために、総合的な視点で対処を行ってください。
血糖に加えて脂質や血圧を同時に管理する包括的なケアを目指す
高血糖と診断された場合、血糖値に加えて脂質や血圧も含めた、包括的なケアにより管理を目指します。
生活習慣病の悪化を阻止するには、血糖のみでなく脂質や血圧といった関連する要因を同時に管理するのが重要です。
血糖値や脂質および血圧の異常は、重複すると動脈硬化の発症や進行速度が劇的に加速します。
たとえば、血糖値のみを正常化させても、脂質異常や高血圧を放置していると心筋梗塞や脳卒中のリスクは回避できません。
医療機関での薬物療法に加え、自身の数値をトータルで把握して、多角的にアプローチする包括的な治療計画を進めて身体の健康維持を目指しましょう。
食事のみでなく運動や睡眠など生活習慣を総合的に改善する
生活習慣の改善を行う際は、食事のみでなく運動や睡眠を含めた総合的な視点で取り組む必要があります。
血糖値や脂質など数値のコントロールには薬物治療も有効ですが、基礎となるのは日々の生活習慣そのものの改善です。
特に、食事制限と運動療法を組み合わせるとインスリン抵抗性が改善されて、血糖と脂質の両方に好影響をもたらす相乗効果が期待できます。
一朝一夕の対策ではなく、持続可能な習慣を1つずつ定着させて、将来の重症化を予防しましょう。
家庭での自己管理と医療機関の定期検査を継続して実施

糖尿病やコレステロールの管理には、家庭での自己管理と医療機関での定期検査を共に継続して実施するとよいでしょう。
体重や血圧を家庭で記録して医療機関と共有する取り組み方法は、自分の状態の変化を把握するうえで有効です。
LDLコレステロールや中性脂肪、HDLコレステロールや血糖値などは、定期的な血液検査で確認する必要があります。
血液検査の結果は、一度の測定内容のみで判断するよりも、時系列で見たうえで変化を把握する視点が大切です。
以前の結果と比べてどう変わったかを意識すると、今後の生活習慣改善や治療方針を決定する際の判断材料にできます。
主治医との相談を通じて自分に合う治療目標を決定する
治療目標を決める際は、自己判断をせず主治医との相談を通じて行うのが原則です。
一般的な目標値を参考にしながら、自分に当てはまる数値を主治医と確認する方法が最も確実です。
検診の結果や自宅で測定した内容を次の受診時に持参して、現在の目標値を明確にするとよいでしょう。
適切な薬の種類や量は身体の状態によって異なるため、自己判断での変更は避けたほうがよいです。
主治医と十分に話し合って、治療方針についてお互いに納得したうえで生活習慣の改善や薬物療法に取り組んでください。
適切な数値目標と生活改善で糖尿病とコレステロール管理をケアしよう
糖尿病患者において、コレステロールをはじめとする脂質管理は、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な動脈硬化性疾患を防ぐために重要です。
高血糖と脂質異常が重なると、血管へのダメージが加速する恐れがあります。
そのため、LDLコレステロールだけでなく、中性脂肪やHDLおよび非HDLコレステロールを含めた脂質全体のバランスを総合的に整える必要があります。
管理目標値は年齢や既往歴、危険因子の有無によって異なるため、主治医と相談のうえ自分に適した目標の設定が大切です。
予防および改善には、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控える食事の工夫と有酸素運動の組み合わせが効果を発揮します。


