糖尿病の水分補給について脱水が高血糖を助長する仕組みから考える

糖尿病の水分補給。脱水が高血糖を助長する仕組み

暑い時期や体調を崩した日は、いつもより体から水分が失われます。

何をどれくらい飲むかという判断は、糖尿病の管理と直接つながる部分です。

ここでは公的機関の資料をもとに、脱水と高血糖の関係と、飲み物の選び方を整理します。

この記事でわかること
  • 脱水はケトアシドーシスと血管障害のリスクを上げる
  • 水分補給の土台は水と甘くないお茶
  • のどの渇きだけを合図にすると補給が遅れる
  • 甘い清涼飲料水は急性合併症のきっかけに挙がる
  • 体調を崩した日はスープで水分!お粥で炭水化物
  • 血糖値350mg/dL以上が続く場合は医療機関へ
  • 1日の量は腎機能と心機能で変わる!外来で相談を
目次

糖尿病の高血糖を助長する脱水と合併症の関係

水分が足りない状態は、血糖値の管理に直接影響を及ぼします。

国立長寿医療研究センターは、脱水が高血糖を助長して次のリスクを高めるとしています。

  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 脳や心臓の血管障害
  • 末梢の血管障害

血液中の水分が減ると、同じ糖の量でも濃度は高い側へ動く仕組みです。

高血糖が続くと尿の量が増え、そこからさらに水分が失われる流れが生まれます。

国立国際医療研究センターは糖尿病の急性合併症の治療について、入院して点滴とインスリン注射が必要になる場合があると記しています。

糖尿病患者の脱水と感染症は腎臓や肝臓へ負担をかけ、血栓症を招く可能性もある状態です。

糖尿病の管理のなかで、水分の不足は軽く扱える問題ではありません。

参照元:糖尿病の日常管理 | 国立長寿医療研究センター

感染症や脱水から起こる糖尿病の急性合併症

感染症や脱水から起こる糖尿病の急性合併症

糖尿病の合併症は、時間をかけて進むもの急に起こるものの2つに分かれる構造です。

国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは急性合併症について、感染症と脱水、治療の中断や甘いジュースの飲みすぎがきっかけで異常な高血糖をきたすと説明しています。

異常な高血糖をきたす急性合併症は、糖尿病ケトアシドーシス高浸透圧高血糖症候群の2つです。

糖尿病ケトアシドーシスは、血糖値を下げるインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらない状態で起こります。

脱水と甘い飲み物が同じ並びに挙げられている点に、目を向けてください。

参照元:糖尿病の合併症 | 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター

糖尿病の発症リスクと関連する甘い清涼飲料水

水分を摂る目的であっても、選ぶ飲み物によって結果は変わります。

国立がん研究センターの多目的コホート研究は清涼飲料水を3種類に分け、飲用頻度と糖尿病の発症を調べました。

分類はコーラや果汁100%未満の果汁飲料と、100%果汁ジュース、野菜ジュースです。

その結果、女性ではコーラや果汁100%未満の飲料の飲用量が多いほど、糖尿病の発症リスクが高いという関連がみられました。

清涼飲料水の甘味に使われるフルクトースの摂取は、インスリン抵抗性と関連の強い内臓脂肪量の増加と結びつくと報告されています。

清涼飲料水の過剰な摂取が、肥満につながる可能性も挙げられています。

関連がみられたのは女性の一部の集団で、男性では明らかな関連が出ていません。

これは集団を追跡して得られた関連であり、甘い清涼飲料水を飲む人が必ず糖尿病になるという意味ではありません。

すでに糖尿病がある場合は、この発症の数値より普段の飲み物に含まれる糖の量を見るほうが実践へつながります。

水分補給として甘い清涼飲料水を減らす取り組みは、どの集団でも意味のある一歩です。

同じ甘い飲み物でも、3種類に分けて調べている点が参考となります。

水分補給の目的で選ぶ場面では、甘さの有無が結果を分ける要素です。

参照元:清涼飲料水と糖尿病発症との関連 | 国立がん研究センター 多目的コホート研究

水分補給に選ぶ茶飲料と加えられた食物繊維

茶系の飲料。加えられた食物繊維

食後の血糖値が気になる人へ向けた茶系の飲料が、市販の棚に並びます。

国立健康栄養研究所の資料によると、その一つは難消化性デキストリンを食物繊維として配合した清涼飲料水です。

健常成人男女40名を対象とした試験では、試験飲料の摂取により血糖値の上昇が抑制されました。

対照飲料と比べた血糖の頂値は、40例中33例で低下が観察されています。

同じ試験では、食後の血清トリグリセリド値も対照飲料より低い値でした。

水分として摂ってから2時間、3時間と4時間後の値が、いずれも対照飲料を下回っています。

働いているのは茶の成分ではなく、加えられた難消化性デキストリンです。

お茶なので血糖値に良い、という理解は成り立たない点にご注意ください。

参照元:難消化性デキストリンを含む茶系飲料 | 国立健康栄養研究所 健康食品の安全性有効性情報

尿の量の増加でさらに失われる体内の水分の量

高血糖と脱水は、互いを悪化させる関係です。

血液中の糖が増えると、体は尿から糖を出そうとして尿の量を増やします。

尿が増えると体内の水分は減り、血液中の糖の濃度はさらに上がります。

その先で待っているのは、糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群です。

国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは、高浸透圧高血糖症候群を、糖尿病ケトアシドーシスと並ぶ異常な高血糖の急性合併症として挙げています。

糖尿病ケトアシドーシスの症状は、急にのどが渇いてたくさん水を飲み、尿がたくさん出て全身がだるくなる状態です。

お腹が痛くなり吐き気を伴う場合もあり、こうした症状が出たときは注意が必要とされています。

高浸透圧高血糖症候群で意識障害をしばしば引き起こすのは、著しい高血糖と極度の脱水です。

のどの渇きだけを合図にすると、補給が遅れる場合があります。

渇きを待たず、時間を決めて摂る方法が現実的です。

甘くない飲み物を土台に置く水分補給の基本

水分補給の基本。甘くない飲み物を土台に置く

水分を摂る手段の土台は、水やお茶です。

糖尿病情報センターが急性合併症のきっかけに挙げた甘いジュースは、水分補給の手段として選ぶものではありません。

国立循環器病研究センターも、菓子やジュース、アルコール飲料を減らす取り組みを肥満解消のポイントに挙げています。

暑い時期にスポーツドリンクを選ぶ場合の確認先は、栄養成分表示の糖の量とナトリウムの量です。

同じ500mLでも、製品によって含まれる糖の量は大きく変わります。

汗を多くかいた日や下痢のある日にどれを選ぶかは、脱水の程度と腎機能や心機能で変わります。

判断に迷う場合は、主治医へご確認ください。

参照元:食事療法のポイント | 国立循環器病研究センター

体調を崩した日に変わる水分の補い方の考え方

発熱や下痢のある日は、普段と同じ考え方で足りません。

国立長寿医療研究センターは糖尿病患者について、感染症にかかる頻度が高く重篤になる場合も多いと述べています。

感染症は急性合併症のきっかけにも挙げられており、脱水と重なると高血糖が進む流れです。

糖尿病情報センターはシックデイの過ごし方として、スープなどで十分に水分を摂り、お粥やうどんなどで炭水化物を摂る方法を示しています。

ただし水分制限を指示されている場合は、自己判断で増やさず主治医の指示を優先してください。

体調を崩した日は、薬を続けるか止めるかの判断も要ります。

糖尿病情報センターはインスリン製剤を使っている場合について、決して自己判断で中断しないようにと記しています。

飲み薬も同じで、量を変えるか止めるかの判断は主治医の領分です。

低血糖への備えも、あわせて欠かせません。

先の資料は低血糖時の対処として、ブドウ糖を10g服用し、15分経っても回復しない場合はさらに同量を追加する方法を示しています。

使う量は薬によって変わるため、自分の対処法は体調の良いうちにご確認ください。

意識がはっきりしない場合は口から飲ませず、救急要請が必要です。

参照元:シックデイ | 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター

糖尿病で体調を崩した日に連絡する症状の目安

糖尿病で体調を崩した日、連絡する症状の目安

脱水と高血糖のなかには、水分補給だけで様子を見てはいけない状態があります。

糖尿病情報センターは、次の状態で医療機関へ相談するよう挙げています。

  • 嘔吐や下痢、腹痛が続く
  • 38度以上の高熱が続く
  • 食事が24時間にわたってまったく摂れない、または極端に少ない
  • 低血糖を繰り返す
  • 血糖値が350mg/dL以上で続く
  • 意識の状態に変化がある

このうち意識の状態の変化は、高浸透圧高血糖症候群でも起こる症状です。

先の糖尿病情報センターの資料は、具合が悪くなったらこまめに血糖値を測り、早めに医療機関へかかるよう記しています。

何をどの値で相談するかは、体調の良いうちに主治医と決めて文章に残すと確実です。

あわせて、具体的な血糖値や薬の使い方と相談のタイミングを、あらかじめ文章に残す方法を勧めています。

一人ひとり違う1日に必要な水分の量の目安

水分の適量は、全員に同じ数値が当てはまるものではありません。

腎臓は体内の水分量を調節し、老廃物の排泄と電解質のバランスを保っています。

糖尿病腎症などで腎機能が低下している場合、この調節の力は落ちた状態です。

心臓の働きに問題がある場合も、水分の量は個別に決める必要があります。

一律に増やす取り組みが、すべての人へ当てはまるとは限りません。

服用中の薬によっても、必要な水分の量は変わります。

厚生労働省はイプラグリフロジンやエンパグリフロジンなどの糖尿病用剤について、使用上の注意の改訂を指示しました。

慎重投与の項へ、血糖コントロールが極めて不良の患者と高齢者、利尿剤を併用している患者が追記されました。

重大な副作用の項には脱水が加わり、適度な水分補給を行うよう指導する旨が記されています。

口渇(こうかつ)や多尿、頻尿や血圧低下があらわれて脱水が疑われた場合は、休薬や補液といった処置を医師が判断します。

服用を続けるか休むかを、ご自身で決めないでください。

水分が失われた状態から脳梗塞を含む血栓や塞栓症(そくせんしょう)が起こる可能性も、あわせて挙げられています。

ご自身の薬がこれに当たるかと、必要な水分の量は外来でご確認ください。

なお糖尿病腎症などで腎機能が低下すると薬の成分やインスリンが体内に残り、低血糖や副作用のリスクが高まります。

参照元:使用上の注意の改訂指示 | 厚生労働省

参照元:糖尿病腎症 | 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター

検査値と体調をあわせて決める水分の摂り方

脱水は高血糖を助長し、合併症のリスクを高めます。

一方で必要な量は、腎機能や心機能、服用中の薬によって変わります。

水分を控えるべきか、増やすべきかという判断は、検査値を見ないと決められません。

自己判断で大きく増減させると、別の問題を招く場合があります。

飲み物の選び方も、甘い清涼飲料水と水やお茶では意味がまったく違います。

体調を崩した日の過ごし方まで含めて、事前に決めると安全です。

飲む量と飲むものを決める材料は、検査値と生活の状況の両方にあります。

水分の摂り方に迷う場合は、検査結果をお持ちのうえ医師や管理栄養士へご相談ください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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