糖尿病で手が震える原因を解説!低血糖の症状とすぐに知りたい応急処置

糖尿病で手が震える原因を解説!低血糖の症状と応急処置

糖尿病の人で、手が震えるため症状の悪化を懸念し、不安に感じる人は多くいます。

血糖値管理を行っている場合、手の震えは珍しい症状ではありませんが、適切な処置をしないと命に危険が及ぶ可能性があります。

この記事では、糖尿病における手の震えの原因や対処法について、詳しく解説しています。

この記事でわかること
  • 糖尿病における手の震えは低血糖である可能性が高い
  • 低血糖による手の震えは身体の防御反応によるもの
  • 低血糖は糖分の不足や薬物療法で起こる
  • 低血糖以外でも糖尿病において手の震えは起こる
  • 低血糖時にはブドウ糖の補給が重要である
  • 低血糖は専門医との面談と血糖値の測定で予防できる
  • ブドウ糖と緊急時IDカードで低血糖の重症化は回避できる

糖尿病や高血糖などで血糖値を意識している人は、是非参考にしてみてください。

目次

糖尿病の人の手が震える場合は低血糖である可能性が高い

糖尿病の人の手が震える、低血糖である可能性が高い

糖尿病の人で手が震える場合は、血液中のブドウ糖が少ない低血糖である可能性が高いです。

糖尿病とは血液中のブドウ糖が慢性的に多い状態のことであるため、血糖値の上昇を抑える目的で食事療法や薬物療法、運動療法が行われます。

その治療の過程で、血糖値が想定以上に低下してしまった場合、低血糖となります。

手の震えのみで低血糖と決めつける判断はできませんが、冷や汗動悸が重なるときは、低血糖の可能性を考えた早めの対応が必要です。

これらの症状が出たら、ただちに血糖値の確認をしましょう。

さらに受け答えがはっきりしないときや意識が薄れる場合は、重度の低血糖である可能性が高いため、すぐに119番へ連絡します。

低血糖は血糖値が70mg/dl程度から症状が現れ始める

低血糖の基準は、一般的に血糖値が70mg/dl以下の状態とされていますが、症状の有無も診断に考慮されます。

血糖値ごとに現れる代表的な症状は、以下のとおりです。

血糖値代表的な症状
70mg/dl以下・汗をかく
・不安な気持ち
・脈が速くなる
・手や足が震える
・顔色が青白くなる
50mg/dl程度・頭痛
・目のかすみ
・集中力の低下
・生あくび
50mg/dl以下・異常な行動
・けいれん
・昏睡

参照:低血糖 | 糖尿病情報センター

上記のとおり70mg/dl以下では交感神経に、50mg/dl程度になると中枢神経に症状が現れます。

さらに50mg/dl以下になると、昏睡など意識のない危険な状態である重症低血糖に陥る場合があり、命に危険が及ぶ可能性が高くなります。

したがって、低血糖の症状が見られる場合は、速やかな対処が必要です。

なお、血糖値が下がっていても症状が出ない無自覚性低血糖になる人もいます。

  • 自覚症状がないまま、血糖値を測定すると60mg/dl程度まで低下している
  • 自覚症状がないまま、血糖値を測定すると50mg/dlを下回っており、突然重症低血糖の症状が現れる

上記のとおり、糖尿病の人は突如低血糖になる場合もあるため、こまめに血糖値を測定しましょう。

日本糖尿病学会によると、高齢者ほど無自覚性低血糖のリスクが高くなるため、一層細かな血糖値の把握が必要です。

低血糖における手の震えは血糖値を上昇させるために起こる

低血糖における手の震え。血糖値を上昇させるために起こる

血糖値が70mg/dl以下となった場合に見られる手の震えは、身体が血糖値を上げるために起こる防御反応です。

血糖値が低下すると、身体は危険な状態と認識し、副腎から以下の働きがあるアドレナリンが分泌されます。

  • 肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解して血糖値を上げる
  • 心拍数を増やす
  • 血圧を上げる

このアドレナリンの作用によって、以下の症状が現れます。

  • 手の震え
  • 動悸
  • 発汗
  • 不安感
  • 空腹感

つまり糖尿病の人における手の震えは、低血糖が引き起こす症状ではなく、低血糖において血糖値を上昇させるための身体の防御反応ということです。

低血糖の要因は糖分の摂取不足や薬物療法などが挙げられる

低血糖に陥る原因は、以下のとおりです。

  • 糖分の摂取不足
  • 食事時間の遅れ
  • 薬物の影響
  • 運動
  • 入浴
  • 飲酒

糖尿病では食事療法を中心として、薬物療法や運動療法が行われますが、そのいずれでも低血糖が引き起こされる可能性があります。

糖尿病の治療を行う場合は、低血糖のリスクを最小限に抑える必要があるため、専門医との綿密な面談が必要です。

糖尿病の治療では、食事療法が中心となります。

糖分の摂取不足や食事時間の遅れなどによる低血糖が生じないよう専門医や栄養士へ、食生活の実態を報告するとともに、適切な食事の献立や摂取のタイミングなどのアドバイスを受けましょう。

糖尿病の食事療法と並行して行われる薬物療法で使用される薬剤は、以下のとおりさまざまな働きの薬があり、副作用として低血糖が起こりうるものもあります。

薬剤名効果効能、特徴副作用
速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)・食前に服用し、速やかに効果がある
・短時間のすい臓のインスリン分泌を促進
低血糖
スルホニル尿素(SU)薬・すい臓でのインスリン分泌を促す低血糖、体重増加
グリミン薬・血糖値に応じてインスリンを分泌させる
・肝臓で糖の生成を抑制
・筋肉での糖の吸収を改善
吐き気、下痢、便秘、低血糖(特にインスリンやSU薬と併用時)
DPP-4阻害薬・すい臓に働くインクレチンというホルモンの働きを強める便秘、低血糖(特にインスリンやSU薬と併用時)
GLP-1受容体作動薬・GLP-1というホルモンに似た作用をもち、すい臓からインスリンを分泌させる胃の不快感、便秘、下痢、低血糖(特にインスリンやSU薬と併用時)

参照:血糖値を下げる飲み薬 | 糖尿病情報センター

上記のとおり、低血糖のリスクがある薬剤は少なくないため、専門医の指導に従って適切に服用しましょう。

糖尿病における手の震えの要因は低血糖以外にも考えられる

手の震えの要因。低血糖以外にも考えられる

糖尿病の治療中における手の震えは、低血糖以外にも以下の要因が考えられます。

  • 糖尿病性神経障害
  • 糖尿病性腎症

上記の2つは低血糖と同じく糖尿病に関連していますが、原因や対処法が異なるため、症状のみで自己判断するのは禁物です。

違和感を感じた時点で血糖値の測定が有効ですが、測定ができない場合は、他の症状や直前の食事からの経過時間などを冷静に把握する必要があります。

一方で、糖尿病の治療中であっても他の病気や薬剤によって手が震える場合があります。

糖尿病以外で、手の震えが主な症状として挙げられる代表的な病気は、以下のとおりです。

  • パーキンソン病
  • 本態性振戦
  • 脳卒中
  • 甲状腺機能亢進症
  • 不安障害
  • パニック障害
  • アルコール依存症

糖尿病のほかに上記の病気も治療中であり、手の震えが出た時に血糖値が測定できない場合は、他の症状などで総合的に判断します。

糖尿病性神経障害の手足のしびれとは原因やその他の症状が全く異なる

高血糖が長期間継続したために起こる慢性的な糖尿病性神経障害の1つとして、手のしびれが挙げられます。

原因や症状は異なりますが、筋肉や神経の機能低下によって手の細かな動きが不安定になり、震えているように見える場合があります。

低血糖における手の震えと、糖尿病性神経障害による手のしびれの原因や主な症状は、以下のとおりです。

項目低血糖における手の震え糖尿病性神経障害による手のしびれ
原因血糖値の低下によるアドレナリン分泌高血糖の長期間継続による末梢神経の損傷
主な症状手の震え、冷や汗、動悸しびれ、痛み、感覚低下
発症の仕方突然発症徐々に進行
症状の期間血糖値の回復によって改善するため短期間徐々に進行するため数ヶ月~数年
具体的な感じガタガタ、ブルブルジンジン、ぴりぴり

手の震えがあっても血糖値が測定できない状況にある場合は、その他の症状や発症の仕方など総合的に判断する必要があります。

糖尿病性腎症でも手の震えが起こる場合がある

糖尿病性腎症とは、高血糖の長期間継続によって腎臓の細かい血管が傷み、腎機能が低下していく病気のことです。

腎臓では、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出しますが、高血糖によって腎臓のろ過装置である糸球体という細い血管が損傷します。

そのため、ろ過機能が低下し、老廃物を十分に排泄できなくなっていきます。

糖尿病性腎症では初期症状はありませんが、重症化すると手足のけいれんや震えが現れます。

糖尿病性腎症と低血糖における手の震えの違いは、以下のとおりです。

項目低血糖糖尿病性腎症
原因血糖値の低下によるアドレナリン分泌腎機能低下による尿毒症や電解質異常
震えの部位手や手指足や全身にまで及ぶ
発症の仕方突然発症糖尿病性腎症がかなり進行
その他の症状冷や汗、動悸むくみ、倦怠感、食欲低下、吐き気

上記のとおり低血糖と糖尿病性腎症では、手の震えが出て血糖値が測定できない場合でもその他の症状で判断できる可能性が高いです。

低血糖と判断できる場合は速やかにブドウ糖の補給を行う

低血糖と判断できる場合速やかにブドウ糖の補給を行う

手の震えなどによって低血糖が疑われる場合は、速やかにブドウ糖10gを150〜200mlの飲料水と共に摂取します。

ブドウ糖が手元にない場合は、砂糖を20g摂取しましょう。

特にα-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合、消化酵素のα-グルコシダーゼが炭水化物からブドウ糖へ分解する働きを抑えてブドウ糖の吸収を遅くするため、低血糖のリスクが高くなります。

服用中に低血糖となった場合、砂糖を摂取してもブドウ糖への分解に時間がかかるため、速やかに吸収できるブドウ糖の摂取が必須です。

一般的には、ブドウ糖を摂取してから10~15分経過すると手の震えは改善してきます。

万が一改善が見られない場合は、再度ブドウ糖10gと150〜200mlの飲料水を摂取します。

手の震えが改善した場合は食事を取りますが、血糖値の再低下を防止するためにおにぎりやパンなど炭水化物の摂取が重要です。

なお、重症低血糖まで進行している場合など直接ブドウ糖を補給できない場合は、周りの人にできるだけ早く救急車を手配してもらいます。

救急車が到着するまでの間に、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして口唇と歯肉の間に塗りつけ、少しでも血糖値を上昇させます。

本人によるブドウ糖摂取が難しい場合は、血糖値の上昇にグルカゴン製剤が有効です。

グルカゴン製剤とは、肝臓に蓄えられた糖を血液中に放出させる薬剤のことで、注射薬と点鼻薬があります。

参考:低血糖 | 糖尿病情報センター 

低血糖の予防は専門医との面談と血糖値の測定が必要不可欠である

低血糖の予防、面談と血糖値測定が必要不可欠

手の震えが起きた場合に想定される低血糖は、専門医との面談と血糖値の測定によって予防や適切な対処ができます。

糖尿病の治療において、安定した血糖値管理ができるまでは、低血糖が起きるリスクは高いです。

そのため、治療開始から血糖値管理が安定化するまでは、頻繁な専門医との面談と1日複数回の血糖値の測定によって、低血糖のリスクは下げられます。 

専門医との面談によって食事の量や献立、摂取のタイミングなど食事療法に関する内容のほかに、薬物療法で使用する薬剤について適切なアドバイスが受けられます。

特に過去に低血糖となった経験がある場合は、予防策や迅速な対処のためにも、その時の状況を踏まえて低血糖になる可能性が高いシチュエーションを把握しておきましょう。

さらに、1日複数回の血糖値測定によって低血糖になるパターンに早く気づけるうえ、万が一手の震えが起きた場合でも、速やかに低血糖の判別を行った後に適切な対処ができます。

自己血糖測定(SMBG)は、手の震えを感じたら速やかに血糖値が測定できるため、低血糖の判別に有効です。

自己血糖測定とは、指先から採取した少量の血液で血糖値を測定する方法のことで、測定キットはドラッグストアや家電量販店でも販売されています。

一方で、その他の血糖値の測定方法として、皮下に装着したセンサーで血糖値の変動を測定する持続血糖測定(CGM)があります。

持続血糖測定では24時間の血糖値の変動が把握できるため、低血糖になる可能性が高い状況の把握に適していますが、基本的に専門医の処方が必要です。

ブドウ糖と糖尿病患者用IDカードは万が一の備えになる

専門医との細かな面談を実施しても、低血糖になる可能性はあります。

万が一低血糖になった場合でも、以下の2つを持ち歩いておくと重症化は回避できます。

  • ブドウ糖
  • 緊急時IDカード

ブドウ糖は、服用後10~15分で血糖値の上昇が期待できるため、低血糖が疑われる場合に効果を発揮します。

ブドウ糖はドラッグストアや薬局、スーパーなどで販売されています。

緊急時IDカードとは、周囲の人や医療関係者に糖尿病患者である旨を伝えるとともに、適切な処置を促すカードのことです。

このカードは、日本糖尿病協会が取り扱っており、以下の内容が記入できるようになっています。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 電話番号
  • 受診医療機関とその電話番号
  • 服用中の治療薬
  • 虚血性心疾患、脳血管障害、神経障害、網膜症、腎症の有無や程度

カードは折り畳み式となっており、財布などに入れて携行できます。

参考:JADECグッズ一覧|公益社団法人日本糖尿病協会

手の震えが起きた場合は冷静な判断のうえ適切な処置が必要である

糖尿病の人が手の震えを感じた場合は、血糖値が70mg/dl以下である低血糖の可能性が高いです。

一方で、糖尿病における手の震えは糖尿病性神経障害や糖尿病性腎症、その他の病気などの可能性もあります。

手の震え以外の症状や原因を冷静に判断のうえ、適切な処置が必要です。

低血糖において手の震えは初期症状であるため、放置しておくと重症化し、命に関わる可能性があります。

そのため、手の震えを感じて低血糖が疑われる場合は、早急にブドウ糖の補給などで血糖値上昇の処置が必要です。

糖尿病の治療には、低血糖のリスクが常に存在します。

万が一、低血糖が起きても重症化しないよう、ブドウ糖と緊急時IDカードは常に携行しておきましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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