血糖値に与える桃の影響は生と缶詰で炭水化物量が2倍以上変わる

血糖値に与える桃の影響。生と缶詰で炭水化物量が2倍以上変わる

健康診断で血糖値を指摘されたあと、甘い果物の扱いも見直しの対象に入ります。

桃は夏の果物のなかでも甘みが強く、炭水化物の量が要注意項目です。

ここでは公的機関の成分値と日本糖尿病学会誌の資料をもとに、桃の炭水化物量とGI値を整理します。

この記事でわかること
  • 桃100gは38kcal!利用可能炭水化物8.4gは果物のなかで少なめ
  • 黄肉種は上昇を抑える側の成分を多く摂れる計算
  • 缶詰は可食部93gで利用可能炭水化物が約18g!生の桃は約8g
  • 桃の缶詰のGI値は43±5で低GIに分類
  • 缶詰はGI値43±5でも利用可能炭水化物は2.3倍!GI値だけでは足りない
  • 可食部93gは丸ごとでおよそ110gの桃にあたる
  • 控える前に外来で量の目安を相談
目次

白肉種と黄肉種で変わる桃の食物繊維とカリウム

白肉種と黄肉種、食物繊維とカリウムが変わる

日本食品標準成分表によると、桃の白肉種可食部100gあたり38kcalです。

炭水化物は10.2gで、そのうち1.3gを食物繊維が占めます。

成分表には利用可能炭水化物という別の欄もあり、白肉種では8.4gにあたります。

一方の黄肉種は48kcalで、利用可能炭水化物8.6gに食物繊維1.9gとカリウム210mgが続く内容です。

利用可能炭水化物の量はほとんど変わらないものの、食物繊維は1.3gから1.9gへ約1.5倍に増えます。

参照元:日本食品標準成分表 | 文部科学省 食品成分データベース

この差が持つ意味は、血糖値の観点から見えてきます。

厚生労働省e-ヘルスネットは、果物の食物繊維について、整腸作用による便秘予防と血糖値の急激な上昇を抑える働きを挙げています。

成分表のうえで白肉種より食物繊維を多く含むのは、黄肉種です。

ただし品種の違いだけで、食後の血糖値の動きまでは判断できません。

厚生労働省の資料は果物について、ビタミンとミネラル、食物繊維を豊富に含むと説明しています。

果物と野菜の食物繊維は、ヒトの代謝応答へ影響すると挙げられています。

食物繊維の摂取量は、インスリン抵抗性と2型糖尿病の予防にも関わる要素です。

これらは果物全体についての説明であり、桃を単独で調べた結果ではありません。

桃100gから摂れる食物繊維は、白肉種で1.3gと黄肉種で1.9gという水準です。

参照元:果物 | 厚生労働省e-ヘルスネット

生の2倍以上になる缶詰の桃の利用可能炭水化物

利用可能炭水化物。缶詰の桃は生の2倍以上

加工の方法が変わると、成分の構成も大きく変わります。

種類エネルギー利用可能炭水化物食物繊維カリウム
もも 白肉種 生38kcal8.4g1.3g180mg
もも 黄肉種 生48kcal8.6g1.9g210mg
もも 缶詰 白肉種 果肉82kcal19.4g1.4g80mg
もも ネクター 30%果汁入り飲料46kcal11.3g0.4g35mg

缶詰の利用可能炭水化物19.4gは、生の白肉種8.4gの2.3倍にあたります。

この利用可能炭水化物は、100gから水分やたんぱく質と脂質、灰分や食物繊維などを差し引いて求めます。

炭水化物10.2gから食物繊維1.3gを引くと8.9gになる一方、利用可能炭水化物はこの引き算で出す値ではありません。

でん粉やぶどう糖を含む一方で糖類だけを表す数値ではなく、血糖値の変化をこの数値だけで予測はできません。

シロップに漬けるため、果肉そのものへ糖が加わります。

一方でカリウムは、180mgから80mgへ半分以下に減っています。

ネクターは果汁の割合だけで、糖の量を判断できません。

30%果汁入りの区分でも利用可能炭水化物は11.3gで、生の桃を上回ります。

砂糖のほかに果糖ぶどう糖液糖を含む製品もあるため、容量と炭水化物の表示をご確認ください。

食物繊維は0.4gまで落ち、生の白肉種1.3gの3分の1以下です。

果物として桃を摂る目的では、生のまま食べる方法が基本となります。

厚生労働省はカリウムについて、体内の余分なナトリウムを排出して高血圧の予防へつながると説明しています。

生の桃100gのカリウムは、白肉種で180mgと黄肉種で210mgです。

缶詰では80mgまで落ちるため、桃から摂れるカリウムは半分以下になります。

ただし糖尿病性腎症などで腎機能の低下を指摘されている場合、カリウムの扱いは変わります。

摂ってよい量について、主治医へご確認ください。

糖質の量とあわせて見たい桃のGI値の読み方

食後の血糖値の上がり方を示す指標として、GI値が知られています。

日本糖尿病学会誌の解説は、GI値55以下を低GI、70以上を高GIの食品と分類しています。

代表的な食品のGI値の一覧で、桃の缶詰は43±5と低GIの側です。

参考として、すいかは76±4でバナナ51±3、りんご36±2と並びます。

ただしGI値だけを見て食品を選ぶと、判断を誤りかねません。

学会誌の解説は、食品中の糖質の含有量とGI値の積をグリセミックロードと呼び、糖質量とGI値を合わせて用いると血糖応答の約90%を説明できると述べています。

桃の缶詰はGI値こそ43と低いものの、利用可能炭水化物は生の2.3倍です。

GI値が低いという理由だけで缶詰を選ぶと、実際に入る糖の量は増えてしまいます。

一覧に示されたGI値には幅があり、桃の缶詰は43±5と並びます。

この幅は測定した集団のばらつきを表す値であり、一人ひとりの上がり方を示す数値ではありません。

なお同じ食品でも、品種や加工方法の違いでGI値は変わると説明されています。

参照元:GIとカーボカウント | 日本糖尿病学会誌

主食と比べて見えてくる桃のGI値の位置づけ

主食と比べて見えてくる桃のGI値の位置づけ

GI値の一覧には、果物だけでなく主食も並んでいます。

食品GI値
米飯 精白米73±4
米飯 玄米68±4
すいか 生76±4
バナナ 生51±3
桃 缶詰43±5
りんご 生36±2

米飯の精白米は73で高GIに分類され、玄米は68まで下がります。

果物のなかでは、すいかの76が主食の米飯を上回る高い位置です。

一方で桃の缶詰43やりんごの36は、主食よりはっきり低い側に並びます。

食後の血糖値を左右するのは、GI値と吸収される糖の量の両方です。

一度に食べる量が多い主食と、少量ずつ食べる果物では、同じGI値でも影響の大きさが変わります。

桃の缶詰の43という値は、この一覧で最も低いりんごの36に次ぐ位置にあります。

ただし桃の缶詰の利用可能炭水化物19.4gは、生の桃8.4gを上回る量です。

GI値の低さと糖の量の多さは、同じ食品のなかで同時に起こります。

一人ひとり違う血糖値の目標と確認の必要性

血糖コントロールの目標は、全員に同じ数値が当てはまるものではありません。

国立長寿医療研究センターは、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が高齢者糖尿病の血糖コントロール目標を作成したと伝えています。

目標の設定では年齢や認知機能、身体機能や重症低血糖のリスクを考慮し、個別に決めるとされています。

果物をどこまで気にするかも、この個別の目標しだいです。

同じ検査値であっても、年齢や併存症の有無で判断は分かれます。

自己判断で果物を断つ前に、自分の目標がどこにあるかをご確認ください。

参照元:高齢者糖尿病の血糖コントロール目標 | 国立長寿医療研究センター

判定に使う数値の意味も、あわせて押さえると役に立ちます。

厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルは、空腹時血糖値126mg/dLと随時血糖値160mg/dL、HbA1c6.5%を超える状態を高血糖に準じた状態と示しています。

これは高血糖を見分けるための目安であり、診断基準そのものではありません。

国立がん研究センターは、空腹時血糖値が126mg/dL以上で糖尿病型と判定されると記しています。

国立がん研究センターが2,207名を5年間追跡した調査では、期間中に125名が糖尿病を発症しました。

発症のリスクは空腹時血糖値が100mg/dLあたりから上がり始め、110mg/dLに達する前から高まっていました。

これは集団を追跡して得られた関連であり、果物の摂り方だけで決まるものではありません。

参照元:空腹時血糖値と糖尿病発症リスク | 国立がん研究センター 多目的コホート研究

参照元:重篤副作用疾患別対応マニュアル 高血糖 | 厚生労働省

桃を含む果物の食べる量が体重に及ぼす影響

果物の食べる量。体重に及ぼす影響

果物は健康に良いという印象が先に立つ一方、量が増えると摂取エネルギーも増加します。

国立がん研究センターの多目的コホート研究では、果物摂取量が1日あたり100g増えるごとに体重が70g増加したと報告されています。

これは集団を追跡して得られた関連であり、桃を100g増やした人の体重が必ず70g増えるという意味ではありません。

体重の増加は血糖コントロールにも影響するため、果物であっても量の管理は必要です。

厚生労働省e-ヘルスネットは、日本人の20歳以上の1日あたりの果物摂取量が平均約93gと紹介しています。

生の桃を93g食べた場合の利用可能炭水化物は約8gで、缶詰では約18gになる計算です。

この93gは皮と種を除いた可食部の重さで、成分表の廃棄率15%から戻すと、丸ごとでおよそ110gの桃にあたります。

同じ平均的な量を食べても、加工が変わるだけで倍以上の差です。

厚生労働省の資料は、果物と野菜の摂取量が多いほど死因を問わない死亡率が低いという逆の相関を挙げています。

果物を一律に断つ判断は、この面から見ても得策ではありません。

桃をどの加工でどれだけ食べるかは、量の調整で決まります。

生の桃であれば、平均的な93gで利用可能炭水化物は約8gに収まります。

缶詰であれば、同じ93gで利用可能炭水化物は約18gまで増える計算です。

食べる時間帯についても、朝は上がるのかという疑問が残ります。

ただし今回参照した公的機関の資料には、桃を食べる時間帯で血糖値の上がり方が変わると示したものがありませんでした。

根拠を確かめられたのは、生か缶詰かという加工と、食べる量の2つに絞られます。

時間帯を気にするより、この2つを押さえるほうが根拠の明確な方法です。

参照元:果物摂取と体重変化との関連 | 国立がん研究センター 多目的コホート研究

血糖値の段階と量から決める桃の食べ方の目安

生の桃の利用可能炭水化物8.4gは、果物のなかで少ない部類にあたる量です。

缶詰やネクターへ加工が変わると、糖の量が増えて食物繊維は減ります。

適した量は、血糖値の段階や服用中の薬、体重の経過によって決まるものです。

黄肉種を選ぶか、缶詰を控えるかという判断も、検査値と食事内容を並べて決めます。

果物を一律に控えると、ビタミンやミネラル、食物繊維まで不足させる結果を招きかねません。

生の桃は炭水化物が少なく、黄肉種では食物繊維も多く摂れます。

避けるより、加工と量を選ぶほうが現実的な取り組みです。

控える前に、検査結果をお持ちのうえ医師や管理栄養士へご相談ください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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