健康診断で内臓脂肪と血糖値の高さを同時に指摘され、体の異変に戸惑いを覚えている人もいるでしょう。
内臓脂肪と血糖値は一見無関係に思えますが、互いに影響を及ぼし合っており、内臓脂肪の蓄積が高血糖につながります。
本記事では、内臓脂肪の蓄積が血糖値の上昇を招くしくみと、内臓脂肪と血糖値の両方を改善するための対策について解説します。
- 内臓脂肪がインスリンの効きを悪くして血糖値を上昇させる
- 内臓脂肪の蓄積はメタボリックシンドロームの根本原因である
- 食事療法が適正な体重の維持を支える
- 日々の運動量の増加で内臓脂肪の減少や血糖値の改善を目指す
- 医療機関を受診する際のポイントを整理して適切な診療を受ける
内臓脂肪と血糖値の因果関係を知りたい人、両方の数値を改善したい人はぜひ参考にしてください。
内臓脂肪の蓄積が血糖値を押し上げる原因としくみを詳しく解説

最初に、内臓脂肪の蓄積が糖質の代謝システムに悪影響を与えて、血糖値を押し上げる原因としくみを詳しく解説します。
肥満と高血糖は密接に関係しており、肥満による内臓脂肪の蓄積がインスリンの効きを悪くして血糖値を上昇させます。
インスリンとは膵臓から分泌され、血糖値を一定に保つ働きがあるホルモンのことです。
食事を取ると血液中のブドウ糖の割合が増えて血糖値が上昇しますが、インスリンの血糖値を下げる働きによって正常値に戻ります。
血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用し、血糖値を下げるためにはインスリンが必要不可欠です。
内臓脂肪はインスリンの働きを悪くする生理活性物質を分泌する
内臓脂肪の脂肪細胞はTNF-αというインスリンの働きを悪くする生理活性物質を分泌し、その作用によってインスリンの働きが悪くなります。
日本糖尿病学会が公開している健康食スタートブックでは、内臓脂肪の蓄積が血液中のインスリンの効きを悪くし、血糖値を下げる働きを低下させると示しています。
さらに内臓脂肪の蓄積により、血糖値を下げる働きがあるアディポネクチンが減少する点も特徴です。
悪玉物質のTNF-αが多く分泌されて善玉物質のアディポネクチンが減少するため、インスリン抵抗性が生じて血糖値が上昇します。
内臓脂肪の蓄積によるインスリン抵抗性は糖代謝異常を引き起こし、糖尿病を発症するリスクが高まります。

内臓脂肪の蓄積とインスリン抵抗性で糖代謝異常の悪循環に陥る
内臓脂肪の蓄積とインスリン抵抗性は互いに影響し合っており、糖代謝の悪循環に陥る恐れがあるでしょう。
インスリン抵抗性があると慢性的に高血糖の状態が続き、体が血糖値を下げようとして膵臓からインスリンが過剰に分泌されます。
インスリンの過剰な分泌は膵臓に負担をかけるため、機能が低下してやがては十分な量のインスリンを作り出せなくなります。
血液中の糖質は通常エネルギーとして利用されますが、使い切れなかった余分な糖質は脂肪細胞に取り込まれ、中性脂肪として蓄えられます。
そのため、インスリンの過剰な分泌が脂肪の増加につながり、脂肪の蓄積や肥満を悪化させます。

内臓脂肪の蓄積はメタボリックシンドロームを招く根本原因である

内臓脂肪の蓄積は、生活習慣病の前段階にあたるメタボリックシンドロームに陥る根本原因となります。
初期の生活習慣病は自覚症状がほとんどないため、気付かないうちに動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気を発症するリスクが高まります。
内臓脂肪の蓄積は血糖値のみに限らず、複数の代謝異常に影響を及ぼして高血圧や脂質異常の発症リスクを高める要因の1つです。
メタボリックシンドロームは、単独で異常が発生するよりも重篤な病気を発症するリスクが高まるとされています。

内臓脂肪の蓄積は複数の生活習慣病に共通するリスクである
内臓脂肪の蓄積は糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こす共通のリスクです。
脂肪細胞から分泌される生理活性物質は血糖値のみに限らず、血圧やコレステロール値にも悪影響を与えます。
厚生労働省の健診・保健指導プログラムは、内臓脂肪の蓄積や体重増加が血糖値や中性脂肪、血圧などの上昇に関わると示しています。
脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪の2種類があり、内臓脂肪は主にお腹まわりにつく生活習慣病の原因となる脂肪です。
そのため、腹囲が内臓脂肪型肥満を診断する重要な指標となり、健診基準においても診断項目に含まれています。
メタボリックシンドロームの診断基準となる腹囲は男性が85cm以上、女性が90cm以上です。
健診で腹囲を指摘された段階は生活習慣を改善する好機であり、腹囲や体重の減少が生活習慣病の予防に役立ちます。
内臓脂肪を減らすには摂取カロリーの適正化と運動量の増加が効果的
内臓脂肪を減らすには食事や運動などの生活習慣の見直しが推奨されており、摂取カロリーの適正化と運動量の増加が効果的です。
さらに体重の増加は全身の臓器におけるインスリンへの反応を低下させ、血糖値の上昇を引き起こす要因の1つです。
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024でも、体重の適正化が血糖コントロールに影響すると示しています。
糖尿病治療において肥満に伴う代謝異常の改善は重要な目標として位置付けられており、内臓脂肪の減少が発症リスクを低下させます。
運動によって血液中のブドウ糖がエネルギーとして消費されるため、血糖値を下げる効果も期待できます。
日本糖尿病学会が推奨する食事療法が適正な体重の維持を支える

日本糖尿病学会が推奨する食事療法は、栄養バランスが取れた食事と適切なエネルギー量を基本としており、適正な体重の維持に役立ちます。
糖尿病において食事療法と運動療法は治療の中心となり、継続した取り組みが血糖値の安定につながります。
食事療法のポイントは、以下の4つです。
- 1日3食を規則正しく食べる習慣を身につける
- 食事全体の栄養バランスを整える
- 1日に摂取するエネルギー量を適正化する
- 脂質と塩分を控えて食物繊維を積極的に摂取する
正しい食習慣の継続が体重管理や脂肪の減少に役立ち、血糖値の安定にも貢献します。
1日3食を規則正しく食べる習慣で血糖値の急激な変動を防ぐ
1日3食を規則正しく食べる習慣は血糖値の急激な変動を防ぎ、インスリンの過剰な分泌を抑えて内臓脂肪の蓄積も予防します。
食事抜きや夜遅い時間帯の食事は糖代謝に悪影響を及ぼすため、内臓脂肪や血糖値が気になる人は避けるようにしましょう。
食事を抜くと摂取カロリーは減りますが、次の食後に血糖値が急上昇して血糖値スパイクのリスクが高まります。
血糖値スパイクとは食後に血糖値が急上昇した後に急降下する現象のことで、血管を損傷させて動脈硬化を進行させます。
特に朝食には1日を通して血糖値を安定させる役割があるため、毎朝朝食を食べる習慣が大切です。
血糖値スパイクが起こるとインスリンが過剰に分泌され、内臓脂肪が増加して内臓脂肪の蓄積にもつながります。
そのため、夜遅い時間帯の食事で高血糖の状態が持続し、余分なエネルギーが脂肪として蓄積される恐れがあります。
空腹時間が長すぎても短すぎても糖代謝に影響するため、食事の間隔は3食をできる限り均等にすると効果的です。
特定の食品に依存せずに食事内容全体の栄養バランスを整える

毎日の食事は特定の食品に依存せず、食事内容全体の栄養バランスを整える姿勢が大切です。
インターネット上には、特定の食品の摂取で内臓脂肪の減少や血糖値に効果があるという情報が流通しています。
しかし、特定の食品に依存した食事は栄養バランスの偏りを招き、体重管理や血糖管理に悪影響を及ぼす恐れがあります。
厚生労働省が公開している情報や糖尿病診療ガイドライン2024には、特定の食品の摂取で効果が得られるという根拠は示されていません。
食事療法では炭水化物とタンパク質、脂質の三大栄養素を土台として、さまざまな栄養素を適量摂取する食事を推奨しています。
三大栄養素の配分例は、以下のとおりです。
| 栄養素 | 摂取エネルギー全体に対する割合 |
|---|---|
| 炭水化物 | 40〜60% |
| タンパク質 | 20%まで |
| 脂質 | 20〜30% |
参照元:糖尿病の食事のはなし(基本編) – 糖尿病情報センター
具体的には主食にタンパク質を含む主菜、野菜が摂取できる副菜を組み合わせたメニューが基本です。
1日の摂取エネルギー量の適正化が体重や血糖値の管理に役立つ
1日に摂取するエネルギー量の適正化は食事療法の基本であり、体重や血糖値の管理に役立ちます。
食べ過ぎは摂取エネルギーの増加につながるため、食事の際は腹八分目を心がける姿勢が大切です。
消費しきれずに余ったエネルギーは脂肪として蓄積され、内臓脂肪を増加させる恐れがあります。
1日の適切なエネルギー量は、以下の式で算出できます。
エネルギー量(kcal)=目標体重(kg)※1×エネルギー係数※2
※1 目標体重
| 年齢 | 算定式 |
|---|---|
| 65歳未満 | 身長(m)×身長(m)×22 |
| 65歳以上 | 身長(m)×身長(m)×22〜25 |
※2 エネルギー係数
| 活動量の目安 | エネルギー係数 (単位:kcal/kg目標体重) |
|---|---|
| 大部分が座位の静的活動である軽い労作 | 25〜30 |
| 通勤や家事、軽い運動を含む普通の労作 | 30〜35 |
| 力仕事や活発な運動習慣などの重い労作 | 35〜 |
参照元:糖尿病の食事のはなし(基本編) – 糖尿病情報センター
ただし適切なエネルギー量は年齢や体重、病態などによって異なり、個別の判断が求められます。
自分にとって最適なエネルギー量を医師と相談し、毎日の食事が目標エネルギーの範囲内となるように調整しましょう。
脂質や塩分が多い食品を控えて食物繊維の積極的な摂取を心がける
毎日の食事は脂質や塩分が多い食品を控え、食物繊維の積極的な摂取を心がけると効果的です。
脂質は体に必要な三大栄養素の1つですが、過剰摂取は総エネルギー量を増加させて内臓脂肪の蓄積につながります。
塩分の過剰摂取は血圧の上昇につながり、生活習慣病の発症リスクを高める原因の1つです。
内臓脂肪の蓄積と高血糖を指摘されている場合、高血圧がさらにメタボリックシンドロームの複合リスクを高めます。
市販のタレや調味料には脂質や塩分が多く含まれている商品があるため、栄養成分表示による確認が大切です。
脂質の摂取量を減らすには茹でる、蒸すなどの油を使わない調理法が有効であり、これらの調理法は摂取エネルギーの減少にも貢献します。
揚げ物の衣は油を吸収して多くの脂質が含まれており、脂質の過剰摂取が内臓脂肪の蓄積や肥満を引き起こします。
食事療法だからといって食べてはいけない物はありませんが、脂質や塩分が多い食品は量の調整が必要です。
糖尿病診療ガイドライン2024でも、食物繊維の積極的な摂取は血糖値コントロールに有効であると示しています。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、特に血糖値に効果があるのは野菜や海藻類などに含まれる水溶性食物繊維です。
日本人は食物繊維の摂取量が不足している傾向があるため、積極的に食事に取り入れるように心がけましょう。
内臓脂肪の減少や血糖値の安定には食事の改善だけでなく、運動を組み合わせると相乗効果が期待できます。

日々の運動量を増やして内臓脂肪の減少や血糖値の安定を目指す

運動療法は食事療法と並ぶ内臓脂肪管理の柱であり、日々の運動量の増加で内臓脂肪の減少や血糖値の安定を目指せます。
内臓脂肪対策や血糖値対策として有効とされているのは、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせです。
有酸素運動とは比較的軽い負荷で長時間継続して行える運動のことで、具体的にはウォーキングやジョギングなどが挙げられます。
酸素を取り込みながら行う有酸素運動は体内の脂肪や糖質をエネルギーとして消費するため、内臓脂肪の減少や血糖値を下げる効果が期待できます。
筋力トレーニングは、スクワットやダンベル運動などの負荷をかけて筋力を向上させるための運動です。
糖尿病診療ガイドライン2024では、インスリン抵抗性と血糖値コントロールの改善に向けて有酸素運動と共に筋力トレーニングを推奨しています。

筋肉量の維持が基礎代謝の低下を防いで血糖値を安定させる
筋肉量の維持は基礎代謝の低下を防ぎ、血糖値を安定させる上で重要な要素です。
基礎代謝とは呼吸や心臓の鼓動など、生命を維持するために最低限必要なエネルギーのことです。
基礎代謝は1日に消費されるエネルギーのうち約60%を占めていますが、年齢に伴って減少します。
基礎代謝で消費するエネルギーの多くは筋肉で使われており、加齢によって筋肉量が減少すると基礎代謝量も減少するためです。
基礎代謝が低下すると同じ食事量でも消費エネルギーが少なくなり、内臓脂肪や体重の増加につながります。
筋肉はブドウ糖の貯蔵庫としての役割も果たしており、筋肉量の増加は血糖値の上昇抑制やインスリン抵抗性の改善に有効です。
そのため、継続した運動による筋肉量の維持が内臓脂肪と血糖値を改善する対策として効果を発揮します。
自分の体力や体の状態に合わせて無理のない運動計画を立てる
運動療法は、自分の体力や体の状態に合わせて無理のない運動計画を立てる姿勢が大切です。
内臓脂肪の減少や血糖値の改善には継続した運動が必要であり、無理な運動は長続きしません。
これまで運動習慣がなかった人が急に激しい運動を行うと体に負担がかかり、思わぬけがや体調不良を起こしてしまう可能性もあります。
特に体の一部分に痛みがある人、病気の治療中の人は医師に相談した上で運動計画を立てるようにしましょう。
運動設備や器具を必要としないウォーキングは、毎日続けられる運動として手軽に実践できます。
最初は短時間の歩行から始め、体調を確認しながら少しずつ時間と頻度を増やしていく段階的なアプローチが有効です。
特に食後の軽いウォーキングには血糖値スパイクを予防する効果があり、血糖値コントロールに役立ちます。
無理のない範囲で日々の運動量を増やす取り組みが、基礎代謝の向上やエネルギーの効率的な消費につながります。
医療機関を受診する際のポイントを整理して適切な診療を受ける

医療機関を受診する際、適切な診療を受けられるようにするためのポイントは、以下のとおりです。
- 直近の体重や腹囲、血糖値などの情報を提示する
- 自分にとって適切なエネルギーや栄養素の摂取量を質問する
- 体に痛みがある人や高齢者は運動計画を相談する
体重や血糖値の推移、食事や運動などの情報は、医師が治療計画を立てる上で重要な判断材料となります。
医療機関を受診する際に以下の項目を持参し、医師と共有する取り組みが的確な指導につながります。
- 直近の腹囲や体重の推移
- 血糖値やHbA1cの数値
- 一日の食事内容の典型的なパターン(主食、主菜、副菜の構成)
- 日々の運動の種類や時間、頻度
- 現在の服薬状況と自覚している体調変化
適切なエネルギー量や栄養素は患者によって異なり、受診時に自分にとって最適な食事管理を質問する姿勢が重要です。
体に痛みがある人や高齢者は無理な運動が体の負担となる恐れがあるため、自己判断せずに医師の指導に従って運動を行います。
医療機関と連携を図りながら自分に合った治療計画を立て、生活習慣の改善による症状の改善を目指しましょう。

地道な生活習慣の改善が長期にわたって体と豊かな暮らしを守る
毎日の食事や運動などの地道な生活習慣の改善が、長期にわたって体と豊かな暮らしを守ります。
内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を引き起こし、血糖値を上昇させて2型糖尿病の発症リスクを高めます。
さらに内臓脂肪はメタボリックシンドロームの根本原因であり、生活習慣病や心血管疾患を発症する要因の1つです。
内臓脂肪対策には摂取カロリーの適正化と運動量の増加が効果的であり、食事療法と運動療法が推奨されています。
参照元:


