健康診断で血糖値を指摘されたあと、飲み物の選び方も見直しが必要な場合があります。
そのなかで抹茶は、健康に良いという印象が先に立つ飲み物です。
ここでは何が確かめられていて何が確かめられていないかを、成分と研究の両面から整理します。
- 抹茶で血糖値が下がる根拠は資料の範囲で見つからない
- 茶葉100gの炭水化物39.5gのうち38.5gは食物繊維
- 抹茶1杯2gの利用可能炭水化物は0.19g
- 確認できたのは体脂肪と循環器!血糖値ではない
- 特保の緑茶飲料の食後血糖抑制は難消化性デキストリンによる
- 緑茶4杯以上で脳卒中の発症が0.80倍!分析対象はせん茶
- 抹茶ラテやアイスでは抹茶以外の材料が糖の大半
茶葉ごと飲む抹茶とせん茶の浸出液で違う成分の量
抹茶とせん茶の違いは、茶葉を飲むか浸出液を飲むかという点です。
日本食品標準成分表によると、抹茶の茶葉100gは237kcalで、炭水化物39.5gのうち38.5gを食物繊維が占めます。
成分表には差引き法による利用可能炭水化物という項目もあり、こちらは9.5gです。
一方でせん茶の浸出液は100gあたり2kcalで、カリウムは27mgにとどまります。
抹茶は茶葉をそのまま溶かして飲むため、食物繊維もあわせて口へ入ります。
成分表で玉露の茶葉100gは241kcalで、食物繊維総量43.9gとカリウム2800mgです。
抹茶と玉露のいまの数値は、いずれも茶葉のままの状態を指しています。
ただし玉露は湯で浸してから飲むため、口へ入るのは浸出液の側にとどまります。
茶葉を粉にして飲む抹茶と、浸出液だけを飲むせん茶や玉露では、口に入る成分の範囲が同じではありません。
参照元:日本食品標準成分表 | 文部科学省 食品成分データベース
抹茶1杯2gで計算した成分の数値と血糖値への影響

抹茶を1杯2gとして計算した値は、次のとおりです。
| 項目 | 抹茶100g | 抹茶2g |
|---|---|---|
| エネルギー | 237kcal | 4.7kcal |
| 炭水化物 | 39.5g | 0.79g |
| うち食物繊維 | 38.5g | 0.77g |
| 利用可能炭水化物 | 9.5g | 0.19g |
| カリウム | 2700mg | 54mg |
この利用可能炭水化物は、100gから水分やたんぱく質と脂質、灰分や食物繊維などを差し引いて求めます。
炭水化物の欄と別の計算で出るため、39.5gから38.5gを引いた値には一致しません。
でん粉やぶどう糖も含むため、糖類だけを表す数値ではない点にご注意ください。
血糖値の変化を、この数値だけで予測はできません。
1杯あたりのエネルギーは4.7kcalにとどまり、利用可能炭水化物も0.19gという水準です。
食物繊維0.77gも、果物や野菜から摂る量と比べて小さな値にとどまります。
砂糖やミルクを加えた抹茶ラテでは、加えた分がそのまま上乗せされます。
緑茶と血糖値を直接結ぶ研究の見当たらない現状
特定保健用食品には、食後の血糖値が気になる人向けの緑茶飲料もあります。
国立健康栄養研究所の資料によると、健常成人男性10名を対象とした試験で難消化性デキストリン5g配合の緑茶飲料を摂取したとき、食後血糖の上昇がプラセボ飲料より低い値でした。
ここで働いているのは、緑茶そのものではなく配合された難消化性デキストリンです。
国立健康栄養研究所は難消化性デキストリンの食後血糖上昇抑制について、上部消化管で炭水化物の消化と吸収を遅らせる働きと説明しています。
難消化性デキストリン6gを飲料へ配合してデンプン質の食事と摂った試験では、血糖上昇の抑制は約20%でした。
同じ量を食事の中へ配合した場合、抑制は約10%にとどまっています。
同じ成分でも、飲料と食事のどちらへ入れるかで血糖値の結果は変わります。
これらはいずれも難消化性デキストリンを加えた製品の試験であり、抹茶を飲んだ試験ではありません。
これらは緑茶に飲みやすさを持たせた製品であり、茶の成分による効果と分けて考えます。
参照元:食後の血糖値が気になる人向けの緑茶飲料 | 国立健康栄養研究所 健康食品の安全性有効性情報
抹茶のカテキンで認められた体脂肪の低減の範囲

特定保健用食品の表示で認められているのは、血糖値ではなく体脂肪です。
特定保健用食品の表示内容では、茶カテキンが脂肪の分解と消費に働く酵素の活性を高め、脂肪代謝力を高めて内臓脂肪の減少を助けるとされています。
試験では、茶カテキン555.4mgおよび901.9mgを摂取した群で、対照群と比べて腹部内臓脂肪面積が低減しました。
内臓脂肪の管理は糖尿病を含む生活習慣病の管理と関わる一方、血糖値そのものへの効果として認められた表示ではありません。
国立健康栄養研究所は抹茶にも含まれる茶カテキンの体脂肪低減について、作用機序を脂質代謝の亢進(こうしん)と推察しています。
試験で用いられた飲料の茶カテキンは101.5mgから901.9mgの範囲で、内臓脂肪の低減が示されたのは555.4mg以上の群でした。
最も少ない101.5mgの群では、内臓脂肪面積の低減が示されていません。
なお試験で用いられた量は数百mg単位で、抹茶1杯で届く量とは異なります。
参照元:茶カテキンを含む特定保健用食品 | 国立健康栄養研究所 健康食品の安全性有効性情報
緑茶で報告されたのは血糖値ではなく循環器の結果
血糖値ではありませんが、循環器については大規模な報告があります。
国立がん研究センターの多目的コホート研究では、毎日4杯以上の緑茶を飲む群で脳卒中を発症した人の割合が、飲まない群の0.80倍でした。
緑茶を1日2杯以上またはコーヒーを1日1杯以上摂る群では、どちらも飲まない群と比べて循環器疾患や脳卒中を発症した人の割合が低いという関連が報告されています。
糖尿病のある人にとって循環器疾患は重要な合併症であり、この報告が持つ意味は小さくありません。
ただし、注意点があります。
同じ緑茶類でも、せん茶の浸出液と抹茶では口に入る成分の量が違います。
さらにこの研究が調べたのは循環器の発症であり、血糖値の変化は対象の外です。
何を緑茶として数えるかも、研究によって違います。
脳卒中を調べたこの研究はせん茶のみを緑茶として扱い、番茶と玄米茶を分析へ含めていません。
一方で国立がん研究センターの別の研究は、せん茶と番茶、玄米茶をまとめて緑茶として数えています。
抹茶はそのどちらにも入っておらず、抹茶入り玄米茶も同じ扱いです。
抹茶を飲む習慣へこの数値をそのまま当てはめる読み方は、成り立ちません。
参照元:緑茶とコーヒーの摂取と脳卒中発症との関連 | 国立がん研究センター 多目的コホート研究
注意が要る場合もある抹茶に含まれるカリウム

抹茶は茶葉ごと口にするため、カリウムも一緒に摂り入れられます。
茶葉100gあたり2700mgのため、1杯2gでは54mgという計算です。
1杯では54mgでも、1日に何杯も重ねると積み上がります。
飲む杯数について、主治医へご確認ください。
必要な配慮は腎機能や血清カリウム値、食事の内容と飲む量によって変わります。
心配な場合の判断は、血液検査の値を確認したうえで行います。
茶葉ごと摂る抹茶の飲み方では、カフェインも同じように口へ入る点が特徴です。
日本調理科学会誌の報告は緑茶粉末を使った料理について、カフェインの過剰摂取へ留意する必要があると述べています。
抹茶を1日に何杯も重ねる場合、カフェインの量も一緒に増えていきます。
睡眠へ影響する場合は、夕方以降の杯数を控えてください。
抹茶の飲み方で大きく変わる糖とエネルギーの量

抹茶を飲む場面で注意が要るのは、抹茶そのものより加える材料のほうです。
無糖の抹茶と加糖の抹茶飲料では、体に入る糖の量がまったく変わります。
砂糖やミルクを加えた抹茶ラテでは、加えた分がそのまま糖とエネルギーとなります。
抹茶アイスは成分表に個別の収載がなく、参考になるのはその区分にあるアイスクリーム普通脂肪の値です。
その100gは178kcalで、同じ欄の利用可能炭水化物は23.6gにのぼります。
この23.6gは、抹茶2gの0.19gと桁が2つ違います。
ただしアイスクリームの値は抹茶アイスそのものの数値ではないため、実際に食べる製品は1個あたりの表示をご確認ください。
抹茶豆乳の土台となる調製豆乳も、100gで61kcalと利用可能炭水化物3.7gを含みます。
抹茶パウダーは茶葉を挽いたものであり、上の表の数値がそのまま当てはまります。
製品名に抹茶が付いていても、糖の量を決めるのは抹茶以外の材料です。
菓子に用いる抹茶も同様で、抹茶が入っているという理由で糖の量が減るわけではありません。
菓子に用いた抹茶では、カテキンがどれだけ残るかも変わります。
日本調理科学会誌の報告は緑茶粉末を加えた料理から、カテキンとカフェインの検出率を測定しました。
カテキンの検出率はカフェインより低く、ホットケーキ粉などと混ぜた段階で低下し、焼いたあとにはさらに下がりました。
カテキンは食品素材へ吸着する性質を持ち、熱にも不安定であるためです。
参照元:緑茶粉末を用いた料理におけるカテキン及びカフェインの検出率 | 日本調理科学会誌
参照元:アイスクリーム 普通脂肪 | 文部科学省 食品成分データベース
飲み物として抹茶を選ぶ場面では、何も加えない方法が基本となります。
市販の抹茶飲料を選ぶ場合は、栄養成分表示の炭水化物の量をご確認ください。
抹茶そのものは、砂糖を加えない限り糖をほとんど含みません。
食事全体とあわせて決める抹茶の飲み方の目安
抹茶は茶葉ごと摂る飲み方であり、せん茶の浸出液と入る成分が違います。
一方で1杯2gあたりのエネルギーは4.7kcalで、血糖値を直接動かす量には届きません。
抹茶で血糖値が下がるという根拠も、今回の資料の範囲では見つかりませんでした。
抹茶のカテキンで示されているのは体脂肪の低減であり、血糖値そのものへの効果ではありません。
菓子に使われた抹茶では、カテキンの残る量も落ちていきます。
砂糖やミルクを加える飲み方では、加えた分だけ糖とエネルギーが増えます。
飲み物の選び方に迷う場合は、検査結果をお持ちのうえ医師や管理栄養士へご相談ください。


