健康診断で血糖値を指摘されたあと、食事で栄養素を補って改善する方法もあります。
ここでは公的機関の資料をもとに、亜鉛と血糖値の関係と、摂取量の考え方を整理します。
- 成人男性の亜鉛の推奨量は11mg!平均摂取は9.2mg
- 不足している人では血糖値の改善が報告される
- 食事摂取基準は糖尿病予防の目標量を設定していない
- 牡蠣(かき)は100gあたり14.0mgで飛び抜けて多い
- 日本の耐容上限量は男性45mg!薬との相互作用にも注意
- 味覚の変化で気づかれる場合もある
- サプリメントの前に外来で相談を
体に不可欠な必須微量元素のひとつである亜鉛
亜鉛は、ヒトの健康と栄養の維持に欠かせない必須微量元素です。
国立健康栄養研究所の資料は、亜鉛が生体内で筋や骨格系、神経系の恒常性維持にも役割を果たすと説明しています。
味覚を正常に保つためにも必要であり、日本では若年成人女性で味覚機能の低下と低亜鉛状態との関連が報告されています。
厚生労働省eJIMによると、亜鉛は全身の細胞に存在し、侵入してきた細菌やウイルスを撃退する免疫系の助けとなる元素です。
厚生労働省eJIMは亜鉛を含む食品として、牡蠣や食肉、魚介類と強化された朝食用シリアルを挙げています。
体内では、広い範囲の働きに関わる栄養素です。
参照元:亜鉛 | 国立健康栄養研究所 健康食品の安全性有効性情報
推奨量に届かない日本人の亜鉛の平均摂取量

食事摂取基準は亜鉛の推奨量を、18歳から64歳の男性で1日11mg、女性で1日8mgと定めています。
40代から60代の男性であれば、11mgが当てはまる値です。
一方で2019年の国民健康栄養調査では、男性の平均亜鉛摂取量が9.2mg、女性が7.7mgでした。
平均値の段階で、推奨量に約2mg届いていない計算です。
この差が、亜鉛を意識して摂る意味を考える出発点となります。
65歳以降は値が変わるため、自分に当てはまる数値は外来で確認してください。
平均は集団の姿であり、一人ひとりの過不足を示すものではありません。
意味が違う亜鉛の不足を埋める場面と増やす場面
亜鉛と血糖値の関係については、糖尿病患者を含めた投与研究のメタ解析があります。
その解析では1日20〜25mgの低用量投与または長期間の投与で、空腹時血糖値や総コレステロール濃度の改善が認められる場合があると報告されています。
ここだけを読むと、亜鉛を増やすほど血糖値が下がるように見える箇所です。
ただしこの解析は複数の研究をまとめた結果であり、対象や投与期間は研究ごとに違います。
食事摂取基準を作るための研究は、この点を踏まえてメタ解析と別の結論を示しています。
糖尿病の発症リスクが高いのは亜鉛摂取量が必要量を満たしていない場合であり、必要量を超える摂取による予防効果は確認できないという結論です。
その結果、亜鉛の摂取基準策定において、糖尿病の予防または悪化防止のための目標量の設定は不要と結論づけられています。
足りていない人が推奨量まで満たす取り組みには意味がある一方、足りている人がさらに増やす根拠は基準へ採られていません。
国立長寿医療研究センターは40歳以上の男女およそ2,250名の血清亜鉛濃度を解析する研究を、2026年6月から2029年3月までの期間で実施します。
現時点の基準は、目標量を置かないという判断で止まっています。
参照元:日本人の食事摂取基準策定のための研究 | 厚生労働科学研究成果データベース
亜鉛を多く含む牡蠣や肉類など主な食品の実測値

日本食品標準成分表に収載された亜鉛の値は、次のとおりです。
| 食品 | 亜鉛 | エネルギー |
|---|---|---|
| かき 養殖 生 | 14.0mg | 58kcal |
| うし かた 脂身つき 生 | 4.9mg | 258kcal |
| アーモンド 乾 | 3.6mg | 609kcal |
| ぶた ロース 脂身つき 生 | 1.6mg | 248kcal |
| 精白米 うるち米 | 1.4mg | 342kcal |
牡蠣の14.0mgは飛び抜けて多く、100gで推奨量11mgを上回ります。
しかもエネルギーは58kcalで、並べたなかで最も低い値です。
同じ亜鉛4.9mgを牛肉から摂ると258kcal、アーモンドの3.6mgでは609kcalが伴います。
国立健康栄養研究所の資料でも、牡蠣60gあたりに含まれる亜鉛は8.4mgです。
牛肉の4.9mgやアーモンドの3.6mgは、エネルギーが高い点にも目を向ける必要があります。
亜鉛だけを見て量を増やすと、摂取エネルギーが一緒に増えてしまうためです。
同じ量の亜鉛を摂る場面で、エネルギーの負担は食品によって大きく変わります。
植物性食品では、がんもどき100gあたりに1.6mgが含まれます。
特定の食品へ偏らせるのではなく、主食と主菜、副菜を組み合わせた食事が土台です。
主菜に肉や魚介類を置き、副菜へ大豆製品を加えると、現実的な献立になります。
アーモンドなどの種実類は亜鉛を含む一方でエネルギーも高いため、少量にとどめます。
参照元:日本食品標準成分表 | 文部科学省 食品成分データベース
病気や服用中の薬に左右される亜鉛の吸収の量
亜鉛の摂取量が足りていても、吸収の側で減る場合があります。
厚生労働省eJIMは消化管手術を受けた人や消化器疾患のある人で、亜鉛の吸収量が減って尿中への排泄量が増える可能性を挙げています。
アルコール使用障害のある人でも、吸収量が減って尿中に失われる量が増える点は同じです。
服用中の薬との関係にも、目を向ける必要があります。
厚生労働省eJIMが挙げている薬との関係は、次のとおりです。
| 薬の種類 | 亜鉛との関係 |
|---|---|
| キノロン系抗菌薬 | 互いに吸収される量が減る可能性 |
| テトラサイクリン系抗菌薬 | 互いに吸収される量が減る可能性 |
| ペニシラミン | 亜鉛が吸収される量を減らす可能性 |
| チアジド系利尿薬 | 尿中へ失われる亜鉛が増える |
高血圧の治療で利尿薬を使っている場合、亜鉛の出入りもあわせて変わります。
服用中の薬は糖尿病の薬だけではないため、外来にはお薬手帳を持参してください。
厚生労働省eJIMは、成人における亜鉛の安全な上限値を1日40mgとしています。
ただしこれは米国人を対象としたデータであり、日本の基準と別ものです。
日本の食事摂取基準は耐容上限量を、30歳から64歳の男性で45mg、女性で35mgと定めています。
いずれの値も、食事とサプリメントを合わせた総量で見ます。
参照元:亜鉛 | 厚生労働省eJIM
体の変化として現れる場合もある亜鉛の不足

亜鉛が足りない状態は、体の複数の場所に現れます。
厚生労働省eJIMによると、亜鉛欠乏症は乳幼児や子供へ下痢と成長の遅れ、食欲不振を引き起こす状態です。
大人では味覚の変化として気づかれる場合があり、日本でも若年成人女性で味覚機能の低下と低亜鉛状態の関連が報告されています。
血液検査で血清亜鉛値を調べる方法があり、必要と判断された場合に測定します。
食事の内容と検査値を合わせて、初めて不足の有無が見えてきます。
症状だけでは、足りているかを見分けられません。
亜鉛の不足を疑う手がかりが乏しい場合、初めに食事の内容から確かめます。
血糖値を支える土台となる食事全体の組み立て
亜鉛は血糖値に関わる栄養素の一つであり、単独で管理を担うものではありません。
日本糖尿病学会の診療ガイドラインは、性別と年齢、身体活動量と合併症の有無を考慮して摂取エネルギー量を決めるとしています。
診療ガイドラインが薬物療法を検討する目安に挙げているのは、食事療法と運動療法を2〜3か月続けても目標に届かない場合です。
ただし開始の時期は血糖値や病型、合併症や治療の目標によって変わります。
亜鉛のサプリメントを足しても、この順番は変わりません。
血糖値の改善が報告されたのは、1日20〜25mgの投与を受けた集団です。
この20〜25mgは研究で用いられた量であり、日常の食事で目指す推奨量と別ものでした。
これは集団を対象とした解析であり、一人の血糖値がその通りに動く保証はありません。
亜鉛を意識する取り組みは、この土台の上に置く位置づけです。
亜鉛のサプリメントで確認したい表示と総量
サプリメントを検討する場面では、製品名より表示の中身が判断の材料になります。
確かめる項目は、1日摂取目安量と、その量に含まれる亜鉛のmg数の2つです。
食事から摂る亜鉛と合わせた総量が、耐容上限量の内側に収まるかを見ます。
複数の健康食品を使っている場合は、亜鉛が重なって入っていないかも確かめます。
次に当てはまる場合は、開始の前に医師または薬剤師へご相談ください。
- 糖尿病や高血圧の薬を服用している
- 抗菌薬やペニシラミンを服用している
- 消化管の手術を受けた経験がある
- 消化器の病気を指摘されている
- 腎機能の低下を指摘されている
- すでに別のサプリメントを使っている
亜鉛のサプリメントは、食事療法や運動療法、処方された薬の代わりにはなりません。
血糖値を下げる目的だけで高用量の製品を選ぶ取り組みにも、根拠は示されていません。
使い始めたあとも、検査値と体調をもとに続けるかを医療者と確かめます。
食事全体の組み立てで決まる亜鉛の摂り方の目安
亜鉛は血糖値との関わりが報告されている一方、増やすほど良い栄養素ではありません。
亜鉛が不足している場合は、推奨量を満たす取り組みに意味があります。
足りている人が血糖値のために増やす根拠は、いまの食事摂取基準へ採られていません。
自分が足りているかを確かめる方法は、食事の内容の把握と血液検査です。
服用中の薬や消化器の病気があると、同じ食事でも吸収の量は変わります。
判断の材料は、検査値と食事内容を並べて初めてそろいます。
亜鉛だけを増やす取り組みより、食事全体を整えるほうが土台として確かです。


