ほうれん草はスーパーなどで手軽に入手できる食材の1つであり、含まれている栄養素によって血糖値を下げる効果が見込めます。
そのため、血糖値やHbA1cの数値の改善を目的として、ほうれん草の積極的な摂取を検討している人が多くいます。
この記事では、日本糖尿病学会の最新ガイドラインと厚生労働省の公的資料をもとに、ほうれん草と血糖値の関係やほうれん草を取り入れた食事について詳しく解説しています。
- ほうれん草に含まれる食物繊維は血糖値管理において有効
- ほうれん草は他の食品とのバランスを考慮した食事での摂取が有効
- ほうれん草の代表的な調理方法は茹で調理と炒め調理
- ほうれん草を調理する際は油や食塩の計量が重要
血糖値が気になり、食事による改善を検討している人は、是非参考にしてみてください。
ほうれん草には血糖値上昇の抑制効果やインスリン感受性の向上効果がある
ほうれん草には多くの栄養素が含まれており、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
ほうれん草が血糖値の上昇を抑える要因は、以下の4つです。
- 食物繊維
- マグネシウム
- 抗酸化作用
- 抗炎症作用
ほうれん草に含まれている食物繊維には小腸で糖の吸収を遅らせる効果があり、マグネシウムにはインスリン感受性を向上させる効果があるため、血糖値の急上昇を抑える効果があります。
さらにほうれん草の持つ抗酸化作用や抗炎症作用は、インスリン感受性を改善する効果があるため、血糖値の上昇を抑える助けとなります。
したがって、血糖値を下げる目的でほうれん草を食事に積極的に取り入れたい人も少なくありません。
ほうれん草には血糖値の急上昇を抑える水溶性食物繊維が多く含まれている
ほうれん草には、血糖値の急上昇を抑える効果が見込める水溶性食物繊維が多く含まれています。
ほうれん草及びその他の野菜100gに含まれる食物繊維は、以下のとおりです。
| 野菜名 | 食物繊維総量 | 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 |
|---|---|---|---|
| ほうれん草 | 2.8g | 0.7g | 2.1g |
| 小松菜 | 1.9g | 0.4g | 1.5g |
| キャベツ | 1.8g | 0.4g | 1.4g |
| チンゲンサイ | 1.2g | 0.2g | 1.0g |
| 水菜 | 3.0g | 0.6g | 2.4g |
上記のとおり、ほうれん草は水溶性食物繊維、不溶性食物繊維ともに他の野菜よりも多く含まれています。
ゲル状になった水溶性食物繊維は、糖の吸収を緩やかにする効果があります。
したがって水溶性食物繊維を多く含むほうれん草は、他の野菜よりも血糖値の上昇が緩やかになる効果が見込めます。
一方で、不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収して排便を促すなど腸内環境の改善に効果がありますが、水溶性食物繊維のように直接的な血糖値への影響はありません。
不溶性食物繊維は摂取の際に咀嚼回数が増える傾向にあるため、血糖値が急上昇する要因である早食いや大食いの予防効果があります。
このように、ほうれん草には他の野菜よりも多く食物繊維が含まれるため、血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。
ほうれん草に含まれるマグネシウムはインスリン感受性を向上させる
ほうれん草には、インスリン感受性を向上させるマグネシウムが多く含まれています。
マグネシウムは血糖値に影響を及ぼすだけでなく、筋機能や神経機能の調節、タンパク質や骨の生成など多岐にわたって重要である栄養素の1つです。
そのため厚生労働省では、成人男性で1日あたり330~380mg、成人女性で1日あたり270~290mgのマグネシウムの摂取を推奨しています。
ほうれん草及びその他の野菜100gに含まれているマグネシウムは、以下のとおりです。
| 野菜名 | マグネシウム量 |
|---|---|
| ほうれん草 | 69mg |
| 小松菜 | 12mg |
| キャベツ | 14mg |
| チンゲンサイ | 16mg |
| 水菜 | 31mg |
上記のとおり、ほうれん草は他の野菜と比べてマグネシウムが豊富に含まれているため、効率よく摂取できます。
ほうれん草の抗酸化作用で糖尿病の進行速度の低下や合併症の予防が見込める

糖尿病の進行や糖尿病性合併症の発症には、呼吸で発生する活性酸素による健全な組織や細胞へのダメージが関わっています。
ほうれん草や他の野菜における抗酸化作用をもたらす代表的な栄養素は、以下のとおりです。
| 野菜名 | β-カロテン | ビタミンC | ビタミンE |
|---|---|---|---|
| ほうれん草 | 4200μg | 35mg | 2.3mg |
| 小松菜 | 3100μg | 39mg | 1.0mg |
| キャベツ | 24μg | 38mg | 0.1mg |
| チンゲンサイ | 2000μg | 24mg | 0.7mg |
| 水菜 | 1300μg | 55mg | 1.9mg |
β-カロテンは、活性酸素の除去やインスリン感受性の改善に効果があります。
ビタミンCは血液中で活性酸素を中和させる効果がある水溶性抗酸化物質であり、ビタミンEはインスリン受容体の機能を保護する脂溶性抗酸化物質です。
いずれの抗酸化物質も血糖値に対する直接的な作用はほとんどないため、摂取による効果が現れるまでには時間を要します。
したがってこれらの抗酸化物質は、少しずつでも毎日の摂取しましょう。
ほうれん草がもたらす抗炎症作用は効果が現れるまでに時間を要する
ほうれん草に含まれるフラボノイドには抗炎症作用があり、インスリン抵抗性の改善が見込めます。
ポリフェノールには抗炎症作用だけでなく、抗酸化作用もあるため、血糖値のコントロールには欠かせない栄養素の1つです。
さらに、ほうれん草には抗炎症作用をもつオメガ3脂肪酸も微量ながら含まれています。
オメガ3脂肪酸は、人間が体内で生成できない必須脂肪酸の1種です。
しかしフラボノイドやオメガ3脂肪酸は、β-カロテンやビタミンCなどと同じく直接血糖値に影響を与える栄養素ではないため、摂取による効果が現れるまでには時間を要します。
ほうれん草は他の食品とのバランスを考慮したうえでの摂取が必要である

ほうれん草は、多くの栄養素によって血糖値の上昇を抑える効果をはじめとしたさまざまな効果効能があるため、積極的に摂取したい食材の1つです。
しかし、血糖値を下げる特定の治療食品としてほうれん草を推奨する記載は、日本糖尿病学会のガイドラインにも厚生労働省の公式資料にも確認されていません。
つまり、ほうれん草の摂取量を増やすのみでは糖尿病の食事療法は完結しないということです。
厚生労働省の糖尿病対策では、適量でバランスの良い健康的な食事を食事療法の基本としています。
したがってほうれん草を摂取する際には、糖尿病における食事療法の基本を理解したうえで、食事全体のバランスを考慮する必要があります。
血糖値管理のためにほうれん草を摂取するには食事療法の理解が必要である
厚生労働省の糖尿病対策では、適量でバランスの良い健康的な食事のポイントとして、以下の5点を示しています。
- 主食、主菜、副菜を組み合わせる
- 適正なエネルギー量と糖質量の摂取
- 食物繊維を多く含む食品の積極的な摂取
- 脂質や塩分を控える工夫
- 一日三食の規則正しい摂取
これらは特定の食材を重視する考え方ではなく、食事全体の質と量を通して必要な栄養素を確保する方針に基づくものです。
ほうれん草は、血糖値の上昇を抑える目的であっても大量に摂取するのではなく、この方針に沿った食材選択の1つとして適正な量を摂取する必要があります。
バランスの良い健康的な食事は主食と主菜、副菜で構成されている

厚生労働省では主食と主菜、副菜で構成された食事を、バランスの良い健康的な食事として推奨しています。
それぞれの項目ごとに主に摂取する栄養素は、以下のとおりです。
| 項目 | 主に摂取する栄養素 | 食品例 |
|---|---|---|
| 主食 | 炭水化物 | ごはん、パン、うどん、パスタ |
| 主菜 | タンパク質 | 魚料理、肉料理、卵料理、豆腐や納豆を使った料理 |
| 副菜 | ビタミン、ミネラル、食物繊維 | ほうれん草のおひたし、野菜サラダ、ひじきの煮物、野菜の和え物 |
上記のとおりほうれん草は、副菜での摂取が多いですが、主食や主菜などにも用いられる使い勝手が良い食材です。
やきそばなど主食にあたる麺と主菜にあたる肉、副菜にあたる野菜が一品に混在しているような食品の場合は、役割ごとに食材を分けてそれぞれの摂取量を把握します。
ほうれん草はこの副菜の役割に適した食材の一つであり、主食の量を適正に保ちながら足りていない栄養素を副菜で補うと、バランスの良い健康的な食事につながります。
適正なエネルギー量と糖質量の摂取を最優先にする
日本糖尿病学会のガイドラインでは、総エネルギー量と糖質量の適正な管理を食事療法の基本としています。
総エネルギー量と糖質量の適正化は、主に以下の点を中心に行われます。
- 主食の量の調整
- 間食の管理
- 飲料の選択
なお、ほうれん草100gあたりのエネルギー量と糖質の量は、以下のとおりです。
| 野菜名 | エネルギー量 | 単糖当量 |
|---|---|---|
| ほうれん草 | 18kcal | 0.3g |
ほうれん草をはじめとする副菜は、食事の質を高める補完的な役割を果たすため、総エネルギー量と糖質量の摂取量を制限される可能性は低いですが、食事全体を通じて包括的な献立の組み立てが必要です。
食物繊維を多く含む食品を選んで三食を規則正しく摂取する

ほうれん草に含まれる食物繊維は、食後の血糖値の上昇を緩やかにする働きがあり、厚生労働省でも積極的な摂取を推奨しています。
ほうれん草以外にも食物繊維を多く含む食品は、以下のとおりです。
- 野菜
- 海藻
- きのこ類
- 豆類
ほうれん草に限らず、上記の食物繊維を多く含む食品を食事のたびに意識的に摂取すると、食事全体の質の向上につながります。
例えば、食物繊維を積極的に取り入れた食事を摂取しても、欠食や不規則な食事時間では血糖値の乱高下を招く恐れがあります。
食物繊維を取り入れたうえで、1日三食の規則正しい食事を取れるようになると、血糖値の安定化をもたらします。
糖尿病の食事療法には脂質と塩分を控える工夫が必要である
脂質や塩分の過剰摂取は糖代謝の妨げとなるため、摂取を控える工夫が必要です。
脂質の過剰摂取は総エネルギー量を増加させ、血糖コントロールを妨げる原因になります。
さらに、食塩の過剰摂取は血圧の上昇につながり、糖尿病との合併症リスクを高めます。
したがって脂質や塩分を控える工夫は、糖尿病の食事療法に欠かせない要素の1つです。
脂質や塩分を控える具体的な工夫は、以下のとおりです。
- 調理法の見直し
- 調味料の使用量の管理
- 外食時のメニュー選択
ほうれん草を摂取する際にも、他の食事とのバランスを考慮したうえで上記の工夫を実践してみてください。
ほうれん草の代表的な調理方法は茹で調理と炒め調理である

ほうれん草の代表的な方法は、茹で調理と炒め調理です。
いずれの方法も手軽に調理できるうえ、ほうれん草は他の食品とも相性が良いため、さまざまな献立に合います。
| 調理方法 | 具体的な料理名例 |
|---|---|
| 茹で調理 | 和え物、おひたし |
| 炒め調理 | 炒め物、ソテー |
調理方法は、栄養価の観点だけでなく自分の生活スタイルや調理にかけられる時間、費用などの環境に合わせて決定します。
なお、ほうれん草を調理する際には食材そのものの栄養価だけでなく、調理の過程で加わる食塩や油の量など詳細まで把握する必要があります。
ほうれん草を調理する際に加える食塩や油は、計量スプーンなどを使用し、過剰摂取を防止します。
さらに、ほうれん草は加熱によって体積が変化するうえ、含まれている水分量や使用した油の量でも摂取量が異なるため、調理前の状態で計量をしましょう。
茹で調理は工夫によって水溶性成分の流出を抑えられる
ほうれん草の一般的な調理法の1つである茹で調理は、その過程でビタミンCや葉酸などの水溶性成分が茹で汁に流出します。
水溶性成分の流出があるとしても、食物繊維やビタミンKなどの水溶性成分ではない栄養素は残るため、副菜としての価値が損なわれるわけではありません。
なお、ほうれん草に含まれるシュウ酸は茹でて水にさらす調理によって量を減らせるため、腎臓に持病がある人は茹で調理が適しています。
水溶性成分の流出を抑える方法は、以下のとおりです。
- 短時間での茹で調理
- 電子レンジでの加熱
- 蒸し調理への変更
そのほか、茹で調理の中でも代表的なおひたしや和え物は、調味料の種類と量によって食塩摂取量が変わります。
例えばおひたしは低カロリーの調理法として認識されがちですが、だし醤油や白だしを大量に使用すると食塩量が多くなるため、高血圧のリスクが高くなります。
高血圧のリスクに伴い、糖尿病性合併症を発症するリスクも高まるため、醤油や塩などの調味料は計量しながら使用しましょう。
炒め調理では油や食塩の量の抑制が重要である

炒め調理は、脂質や塩分の過剰摂取の可能性が高いため、油や食塩の摂取量の抑制が必要です。
炒め調理では使用する油の量に応じてカロリーが増加するため、血糖値コントロールの妨げ要因の1つである脂質の過剰摂取リスクが高まります。
さらに炒め調理でも、食塩の過剰摂取によって高血圧リスクを高める可能性があります。
そのほか、市販の料理や調味済みの冷凍野菜を使用する場合には、食塩量の表示を事前に確認しましょう。
食事全体のバランスも重要であるが食べる行為も血糖値の変動に影響を与える
ほうれん草を摂取する際は食事全体のバランスを考慮する必要がありますが、順序や食事に掛ける時間などの食べる行為も、血糖値の変動に影響します。
食べる順序については、野菜を先に食べると食後の血糖値の上昇が緩やかになるという考え方があります。
しかし、この効果は食事全体の構成や個人の体質によって異なるため、過信は禁物です。
食べる順序よりも、食事全体のバランスが血糖値の変動に与える影響は大きいため、糖尿病の食事療法の基本を優先しましょう。
そのほか、時間をかけてゆっくりとよく噛む食事は、満腹感を感じるまでの時間が早くなり、過食を防ぐ効果があります。
早食いは、血糖値の急上昇を招くとともに必要以上のエネルギー量や糖質の摂取量につながります。
ほうれん草の摂取量や食べ方の目安について主治医への相談は有効である
- 年齢
- 体重
- 生活スタイル
- 病態
- 服薬状況
したがって、主治医や管理栄養士との個別相談を通じた指導が重要です。
診察時には、以下の項目を整理してからメモにまとめて持参すると、主治医がより的確な指導を行えます。
- 直近のHbA1cおよび血糖値の推移
- 一日の食事内容の典型的なパターン(主食・主菜・副菜の構成)
- 気になっている食材や調理法についての具体的な疑問
- 日々の運動量と生活リズムの概要
- 現在の服薬状況と自覚している体調変化
直近の検査結果の数値や食事の記録内容、体重の推移などをメモや記録アプリにまとめて持参すると、主治医による精度の高い評価と指導が受けられます。
食事記録は毎食すべてを完璧に記録する必要はなく、平均的な食事内容のみでも十分な情報として活用できるため、可能な範囲で記録しましょう。
日本糖尿病学会のガイドラインは、患者の価値観とニーズを尊重しながら、可能な限り治療法の選択に患者自身がかかわる重要性を明記しています。
ほうれん草は食事全体のバランスを考慮したうえでの摂取が効果的である
ほうれん草には食物繊維など、摂取後の血糖値の変動に作用する栄養素が含まれているため、積極的に摂取したいと考えている人が多くいます。
一方でほうれん草には、長期的に摂取すると血糖値の管理において効果のある栄養素も含まれています。
将来の深刻な状態を避けるためにも、ほうれん草を積極的に摂取するとよいですが、大量に摂取すればよいというわけではありません。
糖尿病の血糖値管理においては、ほうれん草中心の食生活よりも、糖尿病の食事療法の基本に則ったバランスの良い食生活が効果的です。
具体的な摂取量や調理方法は、個人の体重や年齢などによって異なるため、日頃の血糖値や食生活の記録をもとに主治医の指導を受けましょう。


