1型糖尿病は進行度により早期のインスリン治療が必要な病気である

1型糖尿病。早期のインスリン治療が必要な病気

1型糖尿病は糖尿病の1種であり、インスリンの分泌がほぼ停止して血糖値を下げられなくなります。

国内での発症率は高くありませんが、発症した場合は進行度によって、早急な治療が必要な病気です。

この記事では、1型糖尿病についての治療や日常生活への影響などをまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病の種類
  • 1型糖尿病の進行度による分類
  • 1型糖尿病の治療方法

1型糖尿病の知識があれば、早期の発覚にもつながるため、参考にしてください。

目次

国内の糖尿病は2型糖尿病が一般的で1型糖尿病の発症率は非常に低い

国内の糖尿病。1型糖尿病の発症率は非常に低い

糖尿病は高血糖の状態が継続して、血液中のブドウ糖(グルコース)が多くなる病気です。

高血糖はすい臓から分泌されるインスリンに何らかの異常が発生して、血糖値を下げられないために発生します。

インスリンに異常が発生する原因によって、糖尿病は以下の2種類に分けられます。

糖尿病は大きく分けて2種類
  • 1型糖尿病:すい臓のβ(ベータ)細胞が破壊されて、インスリンの分泌がほぼ停止する
  • 2型糖尿病:生活習慣の乱れや糖尿病患者の親族からの遺伝により、インスリンの分泌量低下やインスリンの効果が薄まる状態になる

国内で発症する糖尿病の多くは2型糖尿病に分類されて、初期段階であれば食事や運動により改善できます。

一方で、1型糖尿病は国内の10万人に2人程度の発症率ですが、対策が2型糖尿病よりも困難になっています。

1型糖尿病は明確な原因が判明していない点から未然の対策が難しい

1型糖尿病は免疫反応の異常から、ウイルスなどから身体を守るリンパ球がβ細胞を破壊して発症すると考えられています。

しかし、免疫反応の異常が発症する理由やβ細胞に影響が及ぶ原因は、現在も明確には判明していません。

1型糖尿病で明確にわかっているのは、以下の項目です。

数少ない判明点
  • 発症した場合、のどの渇きや頻尿などの糖尿病の症状が急激に現れる
  • 年齢に関係なく発症するが、若年層に多く見られる
  • 生活習慣の乱れや遺伝、先天性の病気ではなく、血糖値に問題がなかった人でも発症する可能性がある

明確な原因がわからない点や急激な発症から、発症するまでに発見して対策するのが難しい病気です。

1型糖尿病は病気の進行度や治療の必要性によって3種類に分類される

1型糖尿病はインスリンの分泌がほとんどできなくなるため、注射などを用いて外部からインスリンを補わなければいけません。

しかし、糖尿病の症状が現れてから治療の必要性が出てくるまでは、患者ごとに大きな差があります。

1型糖尿病は治療の必要性がある状態になるまでの進行度によって、以下の3種類に分けられます。

病気の進行度や必要性により3種類に分類される
  • 劇症1型糖尿病:最も急激に症状が現れて、1週間前後でインスリン治療が必要になる
  • 急性発症1型糖尿病:症状が現れてから数ヶ月でインスリン治療が必要になる
  • 緩徐進行1型糖尿病:半年から数年かけてインスリンの分泌量が低下していく

最も多いのは急性発症1型糖尿病であり、早ければ1ヶ月程度で外部からのインスリン補充が必要になります。

劇症1型糖尿病はさらに進行度が速く、早急にインスリン補充しなければ命にかかわる危険性もあります。

異常なのどの渇きや頻尿は糖尿病の影響から出る症状の可能性がある

1型糖尿病が発症したか否かの判断にもなる糖尿病の主な症状は、以下のとおりです。

自覚症状
  • 普段よりものどが渇く頻度が増えた
  • 頻尿
  • 疲労感
  • 急激な体重の減少

血液中の糖分が増えると、尿で糖分を体外に排出しようと身体が働きかけます。

そのため、糖尿病の発症後は頻尿になり、尿を出した分の水分を欲してのどが渇いてしまいます。

夏の暑い時期は症状と判断するのが難しいですが、違和感を覚えた場合は検査を受けるようにしましょう。

疲労感はインスリンの異常で糖分が消費できずに、エネルギー不足になっている点から発生します。

不足したエネルギーは体内の筋肉や脂肪を使用して補われるため、急激な体重の減少につながります。

疲労や体重の増減も判断が難しい症状ですが、以前と比較して異常な症状が見られる場合は警戒が必要です。

1型糖尿病の治療を国内で受ける場合は注射薬によるインスリン補充になる

1型糖尿病の治療。注射薬によるインスリン補充

インスリン分泌は以下の2種類に分かれており、1型糖尿病の場合は両方とも分泌量が足りないため、補う必要があります。

注射薬による強化インスリン療法が一般的
  • 基礎分泌:1日を通して分泌されるインスリン
  • 追加分泌:食事で糖分を摂取した際に分泌されるインスリン

国内における1型糖尿病の治療は、注射薬による強化インスリン療法が一般的です。

補充する方法としては、ペン型の注入器を用いる頻回注射法と、専用の機械を用いる持続皮下インスリン注入法があります。

  • 頻回注射法:基礎分泌を補う治療薬を1日1~2回の決まった時間に注射して、追加分泌を補う治療薬を食事の前に補充する方法
  • 持続皮下インスリン注入療法:インスリンポンプという機械を使って、超速効型インスリン製剤を一定の間隔で補充し、食事の前はボタン操作でインスリンを補う方法

インスリンポンプは基礎分泌のための注入を設定した頻度で自動的に行ってくれるため、低血糖を防ぐ効果があります。

1型糖尿病を発症しても食事や運動の内容は大幅に制限されない

1型糖尿病を発症した場合でも、食事や運動は一般的な内容であれば特に制限されません。

糖尿病の合併症がなく、血糖値が安定した状態の場合、健康的な人と同じような生活ができます。

1型糖尿病の食事や運動で気をつけるべき点は、以下のとおりです。

食事や運動は一般的な内容であれば大幅な制限はないが注意すべき点は存在する
  • 食事量や運動の頻度などは人によって異なるため、医師や管理栄養士の指示に従う
  • 糖質の摂取による血糖値上昇は必ず発生するため、追加分泌量を増やすか糖質の摂取量を減らす
  • 長時間運動するとブドウ糖がエネルギー消費されて低血糖になるため、間食により糖分摂取をするか追加分泌量を減らす

インスリンの補充量によっては、血糖値を下げすぎて低血糖状態になる可能性もあります。

糖質の摂取量や運動時間を記録しておくと、インスリンの補充量を調整する際に役立つ情報になります。

手術によって1型糖尿病を根本から治す場合はすい臓の移植が行われる

1型糖尿病を根本から治す場合移植が行われる

強化インスリン療法は必要なインスリンを補うだけであるため、破壊されたすい臓のβ細胞は元に戻せません。

自分でインスリンを分泌するためには、正常なすい臓の器官を移植手術する必要があります。

1型糖尿病の治療において、すい臓の移植手術は以下の2つ方法が候補になります。

  • すい臓移植:ドナーから提供されたすい臓を移植する方法であり、1型糖尿病の進行から腎不全になった人が膵腎(すいじん)同時移植を行う場合が多い
  • すい島移植:すい臓の中でβ細胞を含むすい島のみを分離させて、点滴を通して肝臓へ移植する

すい臓をそのまま移植する場合、患者への負担が大きいため、単独で行われる事例は少なくなっています。

移植が成功した場合、注射器やインスリンポンプによるインスリン補充は必要なくなります。

1型糖尿病は注射薬でインスリンを補充しながら日常生活を送れる

1型糖尿病において、糖尿病の症状が現れてから治療が必要になるまでの時間は、患者によって変わってきます。

早ければ発症後から1週間程度でインスリンが分泌できなくなり、身体的に危険な状態になります。

喉の渇きや頻尿などの糖尿病の症状に当てはまる不調が起こった場合は、すぐに病院で検査を受けてみてください。

1型糖尿病の発症後の治療は、基本的に注射薬で足りないインスリンを補う強化インスリン療法が用いられます。

医師や管理栄養士の指示に従って、インスリンの補充量を調整できる状態であれば、食事や運動の内容は制限されません。

適切な治療によって問題なく生活できるため、早期に発見できるよう定期的な検査を受けるようにしておきましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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