血糖値を下げる方法は食事と運動の両方を改善していく

血糖値を下げる方法。食事と運動の両方を改善

血糖値は高くなりすぎると血管へ負担をかけたり糖尿病に発展したりする可能性があり、なるべく正常値に近づけるのが理想です。

しかし、普段は目に見えない数値であるため、具体的な下げる方法がわからない人もいるでしょう。

この記事では、血糖値を下げる方法について、数値の基準や具体的な方法などをまとめました。

この記事でわかること
  • 血糖値が上下する仕組み
  • 血糖値を下げる基準
  • 血糖値を下げる食事と運動方法

糖尿病対策や健康維持のために血糖値を下げたい人は、参考にしてください。

目次

血糖値はインスリンによって正常な数値に戻される

血糖値の流れ。インスリンによって正常数値に戻る

正常な状態で糖質を摂取したとき、血糖値は以下の流れで正常な数値に戻されます。

  1. 摂取した糖質は体内でブトウ糖に変換されて、血糖値が上がる
  2. すい臓からホルモンのインスリンが分泌されて、細胞と結合して血液中のブドウ糖を取り込む
  3. 取り込まれたブドウ糖は運動などでエネルギー源として消費される
  4. 余ったブドウ糖はインスリンによってグリコーゲンや中性脂肪に合成される
  5. 細胞内のブドウ糖がなくなり、血糖値が下がる

しかし、過剰な糖質摂取やインスリンの異常などが発生している場合、血液中にブドウ糖が残って血糖値を下げきれません。

血糖値が正常な数値に戻らない状態が慢性的に続くと、高血糖や糖尿病に発展してしまう可能性があります。

血糖値は遺伝的要因や生活習慣の乱れで上がる

血糖値を上げてしまう主な原因は、以下のとおりです。

  • 遺伝的要因によるインスリンの分泌異常や受容異常
  • 食生活の乱れ
  • 運動不足
  • ストレスや睡眠不足
  • 過剰な飲酒
  • 喫煙

インスリンに関する異常は両親から遺伝する可能性があり、分泌量の減少や正常な人よりも効果が薄まる場合があります。

一方、遺伝的要因以外の原因は、生活習慣の乱れが中心になっています。

食生活では血糖値を直接上げる糖質だけでなく、脂質の過剰摂取も原因の1つです。

消費しきれない脂質は脂肪となって、インスリンの働きを弱める肥満につながってしまいます。

運動不足はブドウ糖や脂質をエネルギーとして消費できる機会を少なくし、摂取量に対して消費が間に合わなくなります。

血液検査では空腹時血糖値が基準値として参照される

血糖値は高血糖や糖尿病を判定するときの血液検査で、状態を分ける基準値として参照されます。

食事の影響で血糖値が上下する点から、血液検査の際に参照されるのは基本的に空腹時血糖値です。

空腹時血糖値は前日から10時間以上絶食した状態を指していて、以下の数値を基準に判定していきます。

血液検査の基準正常正常高値血糖予備群(境界型)糖尿病型
空腹時血糖値~99mg/dL100~109mg/dL110~125mg/dL126mg/dL~

110mg/dL以上になると糖尿病予備群に該当しますが、治療の必要性は血液検査以外も含めた検査結果や医師の判断によります。

血液検査の結果がわからなかった人は上記の基準を参考に、医師の指示に従って生活改善や治療を進めていきましょう。

血糖値は食事や運動の内容を改善すると下げられる

血糖値を下げる方法。食事や運動の内容を改善

血糖値を下げる方法として日常的に取り入れられるのは、以下の方法です。

  • 血糖値を上げる原因になる糖質や脂質の摂取量を調整する
  • 食物繊維の摂取量を増やして、食事では最初に食べておく
  • 毎日決まった時間の食事を心がける
  • 食事の間隔は2~3時間以上空ける
  • 毎日短時間でも有酸素運動を継続する
  • ストレスや睡眠不足の解消
  • 適量の飲酒と禁煙

糖尿病の治療においても、基本は食事療法と運動療法を中心に改善していきます。

血糖値を下げる薬は存在していますが、投薬治療は食事や運動で改善できない場合の治療方法です。

健康診断などで血糖値に異常がないと判定された人も、今後も血糖値を上げない対策として取り入れてみましょう。

糖質や脂質は必要な摂取量を満たしながら調整する

血糖値を下げる場合、栄養素で調整が必要なのは糖質脂質です。

糖質と脂質も身体に必要な栄養素であるため、一切摂取しないのは推奨できません。

身体の大きさや年齢などに合わせて、適切な量を摂取していきましょう。

糖質や脂質の摂取量を調整するには、以下の方法が挙げられます。

  • ご飯や小麦粉のパンを、雑穀米や全粒粉パンなど糖質の少ない食品に置き換える
  • 脂質の摂取先を魚や植物に含まれる不飽和脂肪酸にする
  • 肉類を食べる場合は脂質が多い部位を避けて、脂身などを取り除く
  • 調理後に出た余分な油を取り除く

脂質の中でもコレステロールや中性脂肪を増やすのは、動物の肉類に含まれる動物性脂肪です。

身体を動かす際の大きなエネルギーにはなりますが、血糖値を意識するときは適量の摂取が推奨されます。

一方、魚や植物に含まれる不飽和脂肪酸は、血中コレステロール値を下げる働きがある脂質です。

コレステロールの減少は肥満対策になるため、普段の肉類を魚類に置き換えるのも有効な方法といえます。

食事の順番は食物繊維を優先的に食べるのが効果的である

栄養素の中でも積極的に摂取量を増やしたいのは、糖質の吸収を緩やかにする作用がある食物繊維です。

ただし、糖質の吸収を緩やかにする作用は、摂取してすぐには発揮されません。

食物繊維を効果的に活用するには、以下のように食べる順番を意識するとよいでしょう。

  1. 食物繊維が多い食材
  2. タンパク質が多い食材
  3. 糖質が多い食材

最初に食物繊維を摂取しておいた場合、体内で食物繊維を消化するまで時間がかかります。

後から摂取する糖質の消化を遅らせながら、糖質の吸収を緩やかにした状態で糖質の消化を始められます。

タンパク質も消化に時間がかかる栄養素であるため、糖質よりも先に食べるのが効果的です。

食物繊維は以下のような野菜や大豆類、キノコ類などに多く含まれています。

食品分類100gあたりの食物繊維含有量
野菜モロヘイヤ:5.9g
ブロッコリー:5.1g
オクラ:5.0g
大豆類大豆:21.5g
キノコ類えのき:3.9g
しめじ:3.0g
海藻類わかめ:3.6g
昆布:39.1g

参考:食品成分データベース

食物繊維の量を増やしたいときは、上記の食品を選んでみてください。

食事をとる時間帯や空腹の間隔も意識する

血糖値は食後の約1時間に上昇のピークを迎えて、約2時間後には血糖値が下がって正常な数値に戻ります。

そのため、食後1時間以内に糖質を摂取するのは推奨できません。

糖質の断続的な摂取で血糖値が上がり続けると、過剰摂取やインスリンでは下げきれない状態になります。

一方で、前の食事から次の食事までの時間が長く空きすぎた場合も、血糖値を下げる点では危険な状態です。

空腹状態で食事を始めてしまうと、早食いや食べすぎになる可能性が高く、血糖値の急上昇を引き起こしてしまいます。

血糖値が下がり終わる2〜3時間以上の食間を空けつつ、空腹の時間が長くなりすぎるときは間食も検討しましょう。

間食も糖質が多いお菓子を食べすぎると意味がありませんが、適度に挟む分には次の食事量を調整するのに役立ちます。

有酸素運動は糖質の消費やインスリンの向上効果がある

有酸素運動。糖質消費やインスリンの向上効果

血糖値を下げる方法として、運動不足を改善するために取り入れたいのは有酸素運動です。

酸素や脂質、糖質をエネルギーとして使う運動であり、血糖値を上げる原因になる栄養素を効率的に消費できます。

さらに、運動したときの副産物として、以下の効果もあります。

  • 運動はホルモンを活性化させる作用があり、ホルモンのインスリンの働きも高める
  • 運動で筋肉がつくと基礎代謝が高くなり、運動していないときもエネルギーの消費効率が向上する

有酸素運動にはさまざな種類がありますが、普段から運動をしてこなかった人が比較的楽に始められるのはウォーキングです。

高血糖の改善や糖尿病治療においても、ウォーキングの時間が基準として使われています。

運動が得意な人はジョギングやサイクリング、水泳なども候補になります。

有酸素運動は短時間でも毎日の継続で血糖値を下げる効果を期待できる

有酸素運動はある程度息が上がる運動量も必要ですが、それ以上に重要なのは毎日の継続です。

毎日の食事で摂取した糖質などの栄養素は、その日の有酸素運動で消費しなければ血液中に残ってしまいます。

そのため、1日で長時間の運動をするよりも、毎日少しずつ運動していった方が血糖値を下げるのに効果的です。

以前は食後に15分間のウォーキングを毎日継続した場合に、血糖値を下げる最低限の運動とされてきました。

しかし、近年は食後に2~5分間の軽い運動でも、毎日継続した場合に一定の効果が得られる研究結果が出ています。

軽い運動の場合は1日の中で複数回の繰り返す必要がありますが、数分間の運動であれば取り入れられる人も多いでしょう。

ストレス軽減や睡眠不足の改善で暴食などの生活習慣の乱れを防ぐ

ストレスや睡眠不足は、以下のような原因で血糖値に影響を与えます。

  • ホルモンバランスの乱れが発生してインスリンに影響する
  • ストレス発散や頭が働いていない状態で暴飲暴食して糖質などの過剰摂取が起こる
  • 慢性的な疲れから、運動する気が起きない

食事や運動と比較して明確な基準はありませんが、生活習慣の乱れを発生させる点で改善が必要です。

ストレス発散として食を趣味にする場合でも、栄養バランスや摂取量はある程度意識しましょう。

仕事や家事に追われている人は、ストレス軽減や睡眠時間を確保するために思い切って休息するのも重要です。

高血糖や糖尿病だけでなく、別の病気にかかる可能性も高くなるため、できる範囲でストレス軽減や睡眠不足を見直してください。

飲酒は適量の場合は問題ないが喫煙は少しでも悪影響が出る

過度な飲酒や喫煙は身体全体に悪影響を及ぼした結果、血糖値にも影響が出て、糖尿病リスクを高めてしまいます。

  • 過度な飲酒:アルコールの過剰摂取で血糖値が不安定になる
  • 喫煙:血糖値の上昇やインスリンの働きを妨げる

飲酒については適量の摂取の場合、血糖値の影響は少ないため、お酒が趣味の人は飲みすぎないように意識しましょう。

一方、喫煙は血糖値以外でも基本的には悪影響しかないため、吸い続けるのは推奨できません。

食事や運動をどれだけ改善しても、たばこの悪影響の方が強く出てしまうと意味がなくなります。

血糖値を下げたいと考えている喫煙者は、食事や運動の改善と同時に禁煙も始めてください。

血糖値を下げる方法は食事や運動の改善を継続するのが重要である

血糖値は遺伝的要因でインスリン異常が発生していない場合、食事や運動を含めた生活習慣の改善で下げられます。

食事で血糖値を下げる方法は、栄養素の摂取量や食事の順番、時間帯の調整が重要です。

血糖値に直接影響する糖質以外にも、脂質量の調整や食物繊維を優先的に食べるとよい効果が得られます。

運動で血糖値を下げる方法は、有酸素運動を毎日継続して取り組んでいきましょう。

2分程度の軽い運動でも1日の中で何回も繰り返し行った場合、一定の効果が発揮されます。

ストレス軽減や禁煙など個人での改善も含めて、血糖値を下げる方法を実践してみてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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