糖尿病で足がつる原因と対策を理解して合併症を防ぐ

糖尿病で足がつる原因と対策。合併症を防ぐ方法を解説

糖尿病で足がつると痛くてつらいものですが、予防が可能です。

毎日一度以上こむら返りが起こる人は、糖尿病でない人にはみられないのに対し、糖尿病患者では4.5%にみられました。

参照元:糖尿病患者にみられる有痛性筋痙攣(こむらがえり)の特徴 – J-STAGE

糖尿病で足がつるのを防ぐには、原因や対処方法の正しい知識がとても重要です。

今回は糖尿病で足がつる原因と対策、合併症を防ぐ方法を解説します。

この記事でわかること
  • 糖尿病で足がつる原因は神経障害や血行不良、電解質のバランスの乱れ
  • 足がつった時の対処方法は適切な血糖コントロールやストレッチ、水分補給
  • こむら返りを予防する方法は十分な睡眠と適度な水分補給

痛くてつらいこむら返りを防ぐための簡単なストレッチ方法も紹介しているため、快適な毎日を過ごすためにぜひご一読ください。

目次

糖尿病の影響で足がつる原因は神経障害である

末梢神経損傷が原因で足がつる

糖尿病の影響で足がつるのは、末梢神経が損傷を受けるのが原因とされています。

この神経障害は、高血糖による神経細胞の変質や、動脈硬化による血流不足が関係します。

参照元:糖尿病性末梢神経障害-日本内科学会雑誌第108巻第8号

足先などの末端部分にしびれや痛みなどの異常が生じ、神経の働きが低下すると、筋肉を動かす指令がうまく伝わりません。

その結果、ふくらはぎの筋肉が異常に収縮し、急なこむら返りや痛みを引き起こします。

血行不良が糖尿病患者の足がつる原因になる

血液の流れが悪くなった結果足がつる

糖尿病患者は、血行不良が原因で足がつってしまいます。

主な原因は、筋肉の活動に必要な酸素や栄養が充分に届かなくなるためです。

とくに、糖尿病患者は末梢動脈(手足など体のすみずみに血液を届けるための血管)疾患のリスクが高いと報告されています。

糖尿病患者の場合血の流れが悪くなった部分に新しい血管を作って回復する力が落ちてしまいます。

結果的に血液の流れが悪くなり、糖尿病患者は糖尿病でない方よりも足がつる頻度が多いです。

参照元:Diabetes impairs arteriogenesis in the peripheral circulation: review of molecular mechanisms – PubMed

電解質バランスの乱れが糖尿病患者の足の痙攣を引き起こす

電解質バランスが乱れて筋肉に影響

糖尿病の人が頻繁に足をつる理由の一つに、体内のミネラルバランスの崩れがあります。

血糖値が高い状態が続くと、脱水を誘発させます。

これは、腎臓が余分な糖分を体外に排出しようとする過程で、水分も一緒に失われるためです。

その結果、カリウムやマグネシウムといったミネラルが不足します。

これらの成分は神経の信号伝達や筋肉の動きをサポートしているため、不足すると足の筋肉が痙攣します。

糖尿病患者が足がつる場合は血糖コントロールが重要である

血糖値を管理して筋肉収縮を制御

糖尿病患者で足がつるのを予防するには、血糖の適切なコントロールが大切とされています。

高血糖状態が続く原因は、神経細胞の変化や動脈硬化による神経細胞への血流不足により、末梢神経が傷つくためです。

末梢神経が傷つくと筋肉を正常に動かすための指令がうまく伝わらず、ふくらはぎの筋肉が収縮します。

筋肉が突然収縮すると足がつってしまうため、普段から食事や運動、薬物療法による血糖の適切な管理が重要です。

足がつる症状を和らげるために筋肉の柔軟性を高める必要がある

ストレッチで症状改善の可能性も

糖尿病で足がつる際は、症状を和らげるために筋肉の柔軟性を高める必要があります。

筋肉の柔軟性が低下すると筋肉が緊張状態におかれるため、こむら返りが頻発する傾向にあります。

筋肉の柔軟性を高めるには、ストレッチを行うと効果的といわれています。

縮みすぎた筋肉をのばすと、足の痛みやしびれなどの症状の改善につながるのです。

足がつる症状を和らげるために、具体的なストレッチの方法を下記で紹介します。

足がつる症状を和らげる、具体的なストレッチの方法

普段からストレッチを習慣化するとこむら返りの予防にもなるため、糖尿病で足がつって困る人は参考にしてください。

  1. 座った状態で両足を前にのばす
  2. 上体を前に倒しながら、足の指をつかんで自分の方に向ける
  3. 足の裏から太ももの裏までのばす
  4. 3の状態を10秒間キープし、これを3回行う

参照元:Joannes M.Hallegraeff 他:Stretching before sleep reduces the frequency and severity of nocturnal leg cramps in older adults:a randomised trial, Journal of Physiotherapy,58(1):17-22, 2012.

ストレッチする際は反動をつけず、呼吸をしながらゆっくり持続的に伸ばすように意識しましょう。

適切な水分補給が糖尿病患者の足がつる症状の緩和に役立つ

水分とカルシウムの摂取を欠かさない

糖尿病による足のつりを軽減するには、十分な水分補給が欠かせません。

水分が不足すると体内のミネラルバランスが乱れ、神経の働きが低下し、筋収縮の制御が困難になります。

その結果、足がつる原因になってしまいます。

とくに、こむら返りはカルシウムやカリウムの不足が原因のひとつです。

脱水状態になるとこれらのミネラルが不足し、足のつりを誘発するため、こまめな水分補給を心がけましょう。

カルシウムを多く含む食品には、以下のようなものがあります。

  • 牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品
  • 骨ごと食べられる小魚
  • 豆腐や納豆などの大豆食品
  • 野菜類
  • 海藻類

参照元:農林水産省-成長期にカルシウムをたくさんとって骨の貯金をしよう

ビタミンやミネラルの補給が足がつるリスクを軽減する

筋肉収縮に関係する栄養素を摂取

糖尿病で足がつるのを防ぐためには、ビタミンやミネラルの補給が非常に重要です。

これらの栄養素が不足すると、神経の伝達に支障が出て筋肉の動きが乱れ、足がつる原因となりえます。

特にビタミンKには、筋肉のけいれん予防に役立つ可能性があるという研究報告もあります。

参照元:Tan, J., Zhu, R., Li, Y., Wang, L., Liao, S., Cheng, L., Mao, L., & Jing, D. 

(2024). Vitamin K2 in managing nocturnal leg cramps: A randomized clinical trial. JAMA 

Internal Medicine, 184(12), 1443-1447. 

食事に取り入れると良い、ビタミンやミネラルを含む食べ物

ビタミンKは以下のような濃い緑色の野菜に豊富に含まれているため、食事にとり入れると良いでしょう。

  • ほうれん草
  • ケール
  • レタス
  • 芽キャベツ

参照元:Dietary reference values: EFSA publishes advice on vitamin K-efsa

また、下記で紹介するカルシウムカリウムといったミネラルを豊富に含む食品も、筋肉の正常な働きを助けるため、積極的に取り入れましょう。

  • 牛乳やチーズなどの乳製品
  • トマト
  • 枝豆
  • かぼちゃ
  • ブロッコリー

参照元:高血圧を上手に予防するライフスタイル-平成17年度 保健師中央研修会

糖尿病の人で足がつって困る人は、ビタミンKやカルシウム、カリウムなどを意識して摂取しましょう。

糖尿病患者の足がつる症状は睡眠の質とも関連性が高い

足がつる症状は睡眠の質と関連あり

糖尿病患者の足がつる症状は、睡眠の質とも関連が高いといわれています。

不眠症の人が糖尿病である割合は13.1%であり、糖尿病でない人の5%と比べて高いという報告がありました。

参照元:糖尿病における睡眠障害の臨床-日本内科学会雑誌;110(4):753-760,2021

睡眠不足が続くと筋肉が疲労して、乳酸がたまり脳の指令が鈍くなります。

脳が異常に興奮し、筋肉が収縮して足がつる原因になるのです。

最適な睡眠時間は個人差がありますが、国立睡眠財団のレポートによると、最低でも7時間睡眠をとるのがよいと考えられています。

参照元:National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations: methodology and results summary-SLEEP HEALTH

糖尿病の人は睡眠をしっかりとり、つらいこむら返りを防ぎましょう。

糖尿病で足がつる原因を理解して日常生活で予防する

糖尿病で足がつる原因を理解。日常生活で予防

糖尿病によって足がつるおもな理由には、以下の3つが挙げられます。

  • 神経の損傷
  • 血液の流れの悪化
  • ミネラルや電解質の不均衡

このような足のけいれんを予防するには、ビタミンやミネラル、水分などの適切な補給が効果的です。

血糖値を安定させるために、食事管理・運動・薬の使用などを適切に行いましょう。

質の良い睡眠の確保も、こむら返りの予防につながります。

快適な毎日を過ごすために、糖尿病に伴う足のつりの原因やその対処法についてしっかりと把握し、その知識をぜひご活用ください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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