血糖値を上げない食べ方の知識は血糖値を安定させて糖尿病を予防する

血糖値を上げない食べ方。知識は糖尿病を予防する

血糖値は食事をすると上昇しますが、過剰な糖質摂取は急上昇を招き、将来的に糖尿病を発症したり症状を悪化させたりする可能性があります。

糖尿病の発症を予防するためには、血糖値の急上昇を抑える食品を選ぶほか食べ方を工夫するなどの食生活の改善が大切です。

この記事でわかること
  • 食後血糖値の乱高下が体に与える影響
  • 食後の血糖値を急上昇させないための食事方法
  • 血糖値の急上昇を抑える食品
  • 血糖値に影響を与える食後の行動や生活習慣
  • 間食に適した食品とタイミング
  • 外食をする際の工夫
  • 旬の食材を取り入れた血糖コントロール

日々の食事に関する正しい知識を身につけて、糖尿病の予防や改善に役立てましょう。

目次

食事が引き起こす血糖値変化と糖尿病の関係を理解すると予防に役立つ

糖質の消化吸収が血糖値に関係

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖濃度のことです。

ご飯やパンなどの炭水化物に含まれる糖質やでんぷんは体の中で消化吸収された後、ブドウ糖に変換されて血液中に取り込まれるため、血糖値はすぐに上昇します。

血液中のブドウ糖濃度が増えて血糖値が上昇した際、それを下げるために膵臓から分泌されるのがインスリンというホルモンです。

このインスリンの働きによって、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれ、食後2時間ほどで通常は空腹時の血糖値に戻ります。

しかし、糖質の摂取方法や種類によって膵臓に負担がかかるとインスリンが十分に分泌されず、血糖値が下がらないなど糖質と血糖値は密接に関係しています。

血糖値が高い状態が続くと糖尿病を発症する危険性が高まる

通常、糖質の摂取により血糖値は一時的に上がりますが、時間の経過とともに下がります。

しかし暴飲暴食や糖質の過剰摂取が長期に及ぶと、インスリンを分泌する膵臓が疲弊してしまい分泌不足が起こります。

さらに、肥満によってインスリンの効きが悪くなった場合は分泌されていても血糖値は下がらず、慢性的に高い状態が続きます。

このようにインスリンの効果が十分に発揮されないと糖尿病を発症する危険性は高まりますが、初期は自覚症状に乏しく、早期発見が難しい病気です。

最初の段階では糖質を過剰に摂取しても、膵臓の働きでインスリンが多量に分泌されて血糖値が下がるため、健康診断では異常と判断されないケースも多くあります。

ただし、健康診断で指摘されないからといって糖質の多い食生活を続けていると、やがて膵臓の働きが弱まってしまい血糖値を十分に下げられなくなります。

糖尿病の診断基準は、以下のとおりです。

  1. 空腹時血糖値は126mg/dL以上
  2. 糖負荷試験(75g OGTT)2時間値は200mg/dL以上
  3. 随時血糖値は200mg/dL以上
  4. HbA1cは6.5%以上

上記のうちHbA1cが6.5%以上で、そのほかに糖尿病の症状があったり、1〜3のいずれかを満たしていたりする場合に糖尿病と診断されます。

境界型糖尿病は糖尿病の前段階の状態であり、症状や健康診断の採血だけでは気づくのが難しいため、食生活の改善ができずに糖尿病を発症する危険性が高まります。

空腹時血糖値と食後血糖値の測定は糖尿病の早期発見や予防につながる

空腹時血糖値と食後血糖値。測定は糖尿病の発見や予防になる

血糖値は、測定するタイミングによって空腹時血糖値と食後血糖値に分けられます。

空腹時血糖値とは、食事をしてから10時間経過した状態で測定される血糖値のことです。

食後2時間の血糖値が140mg/dl以上の食後高血糖がある人でも、通常は食後10時間ほどで正常値に戻るため、空腹時血糖値は食事による影響を受けない状態で検査ができます。

そのため、空腹時血糖値は糖尿病の診断基準にも用いられており、この値が高い場合は糖尿病の可能性があると判断されます。

空腹時血糖値の基準値は、以下の通りです。

正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値〜99mg/dL〜109mg/dL〜125mg/dL126mg/dL〜

空腹時血糖値を測定する検査は、食事による影響を受けていない状態で行うため、値が高い場合は異常であると判断されます。

この時点で仮に境界型と診断された場合、食生活を改善して血糖値のコントロールを行うと、糖尿病の発症リスクを減らせる可能性があります。

空腹時血糖値は糖尿病の診断に用いられ、食後血糖値の診断や早期発見に非常に重要な指標です。

一方、食後血糖値は食事を摂取してから2時間が経過した時の血糖値を指します。

通常はインスリンの働きにより140mg/dLに戻りますが、食後高血糖を患っているとその値を超えて境界型に分類されます。

このように空腹時血糖値に異常がなくても、食後血糖値が高値の場合は、糖尿病を発症している可能性が高いです。

しかし、それに気づかずに不規則な食生活を送り続けると、いずれ糖尿病を発症したり悪化させたりする危険性があります。

食後高血糖の有無を確認するためには、75g経口ブドウ糖負荷試験の検査を行いましょう。

この検査は、10時間以上絶食した後に75gのブドウ糖を摂取し、その後30分ごとに採血を行って血糖値の推移を確認します。

とくに、ブドウ糖を摂取して2時間経過した時点で血糖値が140mg/dL以上の場合は食後高血糖と診断され、血糖値を改善するには食生活の見直しが必要になります。

食後血糖値の乱高下は動脈硬化の進行や血管障害の発症リスクを高める

食後血糖値の乱高下。血管障害のリスクを高める

暴飲暴食や糖質を多く含む食事を摂取して急激に上昇した血糖値は、膵臓からの大量のインスリン分泌により急降下します。

このような食後に起こる血糖値の乱高下を血糖値スパイクといいますが、これこそが倦怠感や集中力の低下を引き起こす要因です。

さらに、血糖値スパイクは血管を傷つけて動脈硬化を進行させるため、心筋梗塞や脳梗塞など血管障害を引き起こす危険性があります。

血糖値スパイクからこのような病気を発症させないためには、糖質の種類や摂取方法を工夫するなど食生活の改善を行い、食後血糖値の急上昇を抑制する必要があります。

糖尿病を予防するには食物繊維や低GI食品の摂取が有効である

空腹時の摂取が急上昇につながる

通常、炭水化物など糖質を多く含む食品を食事の最初や空腹時に摂取すると、血糖値は急激に上昇します。

とくに血糖値を急上昇させる食品は、以下のとおりです。

  • 精白米
  • 菓子パン
  • そうめん、うどん
  • 清涼飲料水
  • せんべい
  • 飴、キャラメル
  • ケーキ

このような食品を日常的に取り入れた場合、インスリンの分泌不足やインスリンの効果が弱まり、いずれ糖尿病を発症する可能性が高まります。

血糖値を急上昇させないように食べる順番を工夫したり低GI食品の摂取を意識したりするなど、日々の積み重ねが血糖値の安定につながります。

食物繊維を含む食品は糖質の消化吸収を遅らせる

食物繊維は食後の血糖値上昇が緩やかに

食物繊維は、ブドウ糖の吸収を抑える作用があるため、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。

食物繊維を多く含む食品には、以下のようなものがあります。

  • 玄米、麦芽米、麦飯
  • ごぼう、セロリ、ブロッコリー
  • 海藻
  • きのこ類
  • サツマイモ、ジャガイモ

食物繊維は、糖質のように消化されたり吸収されたりせず、そのまま大腸まで達します。

食物繊維を食事の最初に摂取すると、後から入ってきた糖質が消化酵素に触れないため、消化吸収がゆっくりです。

そのため、同じ糖質を摂取した場合でも、食物繊維を多く含む食品を食事の最初に摂取した方が食後血糖値の上昇が緩やかになります。

GI値が低い食品は食後血糖値の急上昇を防ぎ糖尿病予防に効果がある

GI値が低い食品。食後血糖値の急上昇を防ぐ

食品にはGI値が設けられており、GI値が低い食品は消化吸収が緩やかであるため血糖値もゆっくり上昇しますが、高いと急激に上昇します。

GIとは、食品を食べた後にどのくらいのスピードで血糖値が上昇したかを数値化したもののことです。

GI値の指標は、以下のとおりです。

分類GI値
高GI食品70以上
中GI食品56〜69
低GI食品55以下

高GI食品である白米や白パンは、体内に速やかに吸収されて血糖値が上がるため、食後高血糖を引き起こす食品です。

反対に、低GI食品には食物繊維やタンパク質が多く含まれており、消化吸収がゆっくり進むために血糖値が緩やかに上昇します。

その結果、インスリンが過剰に分泌されないため、血糖値の急激な変動を抑えるのに役立ちます。

低GI食品には、以下のようなものがあります。

  • 玄米
  • 全粒粉パン
  • きのこ類
  • 海藻類
  • 大豆、煮豆
  • 肉、魚
  • 低脂肪乳
  • ヨーグルト
  • そば
  • バナナ、りんご

これらの低GI食品は食後血糖値の急上昇を防ぐため、糖尿病の予防に効果が期待できます。

食物繊維から炭水化物の順に食べると食後の血糖値上昇を抑えられる

食べ方を意識するだけで効果あり

食事をしても血糖値が急に上がらないようにするためには、食べる順番を意識した食生活が非常に重要です。

空腹の状態でご飯やパン、麺類など糖質を多く含む食品を最初に摂取すると、体はそれをすぐに消化吸収して血糖値を急激に上昇させます。

こうした血糖値の変動は、インスリンの過剰分泌を引き起こしたり膵臓に負担をかけたりして、糖尿病を発症させる危険性を高めます。

そのため最初に野菜やお肉などのおかず、そして最後に炭水化物をとると血糖値の急激な上昇を抑制でき、同じ食事でも食べる順番を変えるだけで糖尿病予防に役立つでしょう。

食物繊維は糖の吸収を緩やかにする

食物繊維。糖の吸収を緩やかにする

野菜を食事の最初に摂取すると、食物繊維の働きにより、血糖値の上昇が緩やかになります。

食物繊維を多く含む食品は、以下のようなものがあります。

  • 切り干し大根
  • パセリ
  • ごぼう
  • モロヘイヤ
  • 大根
  • ほうれん草
  • ブロッコリー
  • オクラ

前述のとおり野菜に豊富に含まれている食物繊維には、糖質の消化吸収を遅らせて、食後血糖値の上昇を抑制させる働きがあります。

さらに、食物繊維が豊富な野菜はよく噛んで食べる必要があるため、自然と食事のペースがゆっくりになります。

その結果、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎ防止につながりますが、食物繊維を摂取した後すぐに糖質を摂取しても意味がありません。

糖質の吸収速度を抑えるという食物繊維の効果を十分に得るには、摂取してから少なくとも5分以上経過した後に糖質を摂取する必要があります。

食後の血糖値上昇を抑制するためには、食物繊維を豊富に含んだ野菜を最初に摂取しましょう。

タンパク質や脂質は糖質より消化吸収に時間がかかる

タンパク質や脂質。糖質より消化吸収に時間がかかる

実はタンパク質や脂質も、血糖値に影響を与えている栄養素です。

食事後の炭水化物は急速な消化吸収によって血糖値を上昇させますが、2時間後には空腹時の血糖値に戻ります。

一方、タンパク質は3〜5時間脂質は4〜10時間かけてゆっくり消化吸収されて長時間にわたって血糖値に影響を及ぼします。

タンパク質は、多くのアミノ酸が結合してできているため、摂取してもすぐには吸収されません。

最初に胃や小腸でアミノ酸が2〜50個繋がったペプチドという状態に分解され、その後さらに個々のアミノ酸にまで分解されて小腸から吸収されます。

さらに、脂質は胃ではほとんど消化されず、十二指腸に到達した後にリパーゼという消化酵素の働きによって分解されて小腸で吸収されます。

タンパク質と脂質が糖質に比べて消化吸収に時間がかかるのは、これらが要因です。

ほかにも、消化管ホルモンであるインクレチンが、インスリンの働きを高めたり血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑えたりします。

タンパク質や脂質を摂取すると、このインクレチンの働きによって血糖値の急上昇を抑制する効果が期待できます。

肉や魚などのタンパク質や脂質を含んだ食品は低GI食品が多かったり満腹中枢を刺激して満腹感が得られたりするため、積極的に食事に取り入れましょう。

しかし、糖質ほどではないですが脂質やタンパク質も血糖値を上げる作用があるため、先に食物繊維を摂取した方が血糖値の上昇が緩やかになります。

したがって、食物繊維に続いてタンパク質や脂質という順番が糖尿病や食後高血糖の予防に効果があります。

炭水化物を食事の最後に摂取するカーボラスト法を取り入れる

炭水化物を食事の最後に摂取するカーボラスト法

三大栄養素のうち、血糖値に最も影響を与えるのは炭水化物です。

炭水化物を摂取するとその直後から糖質が消化吸収されて、血糖値が急上昇するため、食事の最初に炭水化物を摂取するのはよくありません。

タンパク質や脂質、そして野菜に含まれる食物繊維は糖質の吸収を緩やかにする働きがあるため、これらを食事の初めに摂取するのが効果的です。

このように炭水化物を最後に摂取する食事法はカーボラストと呼ばれており、血糖値の上昇を抑えるだけでなく、満腹感も得られて食べ過ぎ防止にもつながります。

さらに、よく噛んでゆっくり食べると食べ物が体内で消化吸収される前からインスリンの分泌が促されるため、血糖値の上昇をより効果的に抑制できるでしょう。

血糖値の上昇速度は食事に含まれる食品の種類が関係している

血糖値の上昇速度。摂取する食品の種類が関係している

食事で摂取する食品の種類によって、血糖値が上昇するスピードには違いがあります。

食後に血糖値が急上昇すると倦怠感を感じたり動脈硬化が進行したりするほか、糖尿病を発症する危険性が高まるため、血糖値のコントロールが非常に重要です。

血糖値の上昇を緩やかにする食品は、低GI食品以外にも食物繊維や難消化性でんぷんを含んだもの、酸味のあるレモンなどがあります。

これらの食品を日々の食生活に意識的に取り入れると、食後の急激な血糖値上昇に加え糖尿病の発症予防や改善に役立ちます。

食物繊維は不溶性と水溶性の2種類があり働きが異なる

食物繊維は、人の消化酵素では分解されない難消化性成分でありながら、健康に欠かせない役割を果たすため第6の栄養素として注目されています。

食物繊維は、不溶性と水溶性の2種類に分かれますが、それぞれ異なる働きがあります。

水に溶けずに胃や腸で水分を吸収してふくらみ、腸の蠕動運動を促して便通を改善したり腸内環境を整えたりする働きがあるのが、不溶性食物繊維です。

不溶性食物繊維には、以下のようなものがあります。

  • 穀類
  • 野菜
  • 豆類
  • きのこ類

水溶性食物繊維は水に溶けるとゼリー状となってゆっくりと腸内を移動するため、糖の吸収速度が緩やかになり、食後の急激な血糖値上昇を予防する効果が期待できます。

さらに、水溶性食物繊維は血中のコレステロールを低下させる働きもあるため、生活習慣病の予防にもつながるでしょう。

水溶性食物繊維には、以下のようなものがあります。

  • 昆布
  • わかめ
  • 大麦
  • オートミール

食物繊維の中でも水溶性のものは血糖値の上昇を緩やかにする食品として非常に重要であり、血糖値管理を意識した食生活では、積極的に取り入れていく必要があります。

レジスタントスターチは消化酵素で分解されないでんぷんである

冷蔵庫で冷やすとでんぷんが増える

レジスタントスターチとは食物繊維のように消化酵素で分解されないでんぷんのことで、血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。

食事として摂取した糖質は、ブドウ糖や果糖などが含まれた食品の甘味となる主成分である糖類とそれ以外に分類されます。

糖類はさらに単糖類と二糖類に分類されて、このうち消化を必要とせず、食後すぐに吸収されるのが単糖類です。

二糖類は体内でブドウ糖に分解されてから吸収されるため、単糖類に比べて吸収される速度はゆっくりですが、それでも比較的早く血糖値を上昇させます。

一方、糖類以外の糖質において大部分を占めているのは、複数の糖類が鎖状に連なった構造をしているでんぷんです。

でんぷんは体内で鎖状に連なった糖類を分解する必要があり、吸収するまでに時間がかかるため、糖類に比べて食後の血糖値上昇を緩やかにします。

このでんぷんの中でも、とくに注目されているのがレジスタントスターチです。

レジスタントスターチは難消化性でんぷんとも呼ばれており、小腸で消化されずに大腸まで到達するため、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。

そのほかにも、腸内環境の改善や脂質代謝の促進など、健康維持にさまざまな効果が期待されています。

レジスタントスターチは4つのタイプがありますが、その分類は以下のとおりです。

分類特等食品
RS1細胞壁に包まれていて消化酵素がでんぷんまで届かない全粒粉、ライ麦、豆類、パスタ、精製度の低い穀物
RS2でんぷんの粒子自体の消化が難しい構造未熟バナナ、長芋、非加熱の米粉、非加熱の片栗粉
RS3加熱後冷却されると再結晶し、消化が難しくなるタイプ冷やご飯、冷えた調理済みじゃがいも、春雨
RS4加工されたでんぷんパン、うどん

レジスタントスターチの中でもRS3は特定保健用食品の食パンなどに利用されている成分であり、ご飯やじゃがいもなどを加熱後に冷ますと形成されます。

この変化によって小腸で消化されないまま大腸に届くため、糖質の吸収量や速度が緩やかになり、結果として血糖値の上昇も抑えられます。

そのため、おにぎりやポテトサラダといった冷えた状態で摂取する食品は、温かい状態よりもレジスタントスターチの量は多いです。

とくに、冷蔵庫で4〜5度の温度で保存した際にレジスタントスターチが増える傾向があるため、おにぎりなどは冷やして摂取しましょう。

加熱する際の調理方法も重要で、焼くよりも茹でたり蒸したりする方がレジスタントスターチの生成に向いています。

しかし、長芋のように生で食べられるものは加熱によってレジスタントスターチが大幅に減少するため、全ての食品を茹でたり温めたりしたらよいわけではありません。

冷ました食品を60度以上に再加熱した場合はでんぷんが元の状態に戻ってしまうため、レジスタントスターチも減少してしまいます。

再加熱はせずに冷えた状態で摂取すると、レジスタントスターチの効果を十分に得られ、血糖値の急激な上昇を抑制できます。

クエン酸はインスリンの効果を高める働きがある

レモンなど酸味のある食品には、クエン酸が多く含まれており、これが血糖値の急激な上昇を抑える働きをします。

クエン酸を含む食品には、以下のようなものがあります。

  • レモンやみかんなどの柑橘類
  • 果実酢
  • 梅干し
  • パイナップル

クエン酸は、レモンなどの柑橘類に豊富に含まれており、インスリンの働きを助けたり感受性を改善したりする効果があります。

このクエン酸の働きによって、食後の急激な血糖値上昇が抑制されます。

ほかにも食前のレモン水は空腹感を抑える効果も期待できるため、食事の10〜15分前にレモン水を飲むとより効果が高まるでしょう。

食後の血糖値をコントロールするには生活習慣の見直しが重要である

食後の血糖値をコントロール。生活習慣の見直しが重要

食後の血糖値コントロールは、食事の内容だけではなく、食後の過ごし方や生活習慣全般に気を配るのも大切です。

たとえば、食事中の水分のとり方や食後に軽く体を動かすかどうかといった行動によって、血糖値の上昇スピードは変わってきます。

さらに、睡眠時間ストレスの状態も血糖値に影響を与える要因の1つです。

これらが乱れた場合、糖分を効率よくエネルギーとして使えなかったりホルモンバランスを崩したりするため、血糖値の変動を引き起こします。

生活習慣の見直しを行うと血糖値コントロールにつながり、糖尿病予防や改善に役立つでしょう。

食後に軽い運動を取り入れると糖分を効率的に利用でき血糖値が下がる

食後の血糖値が上昇し始めたタイミングで軽い運動を取り入れると、体内の糖分が効率よくエネルギーとして消費されて、血糖値の急激な上昇を抑制できます。

食後に血糖値が高い状態で有酸素運動を行うと、筋肉への血流が増え、ブドウ糖が細胞に容易に取り込まれるようになります。

その結果、体内の糖分が消費されて血糖値が下がりますが、とくに食後30分から1時間の間に運動するのが効果的です。

食後に行うとよい運動には、以下のようなものがあります。

  • ウォーキング
  • 踵の上げ下げ
  • スクワット
  • 階段を使う
  • 足をしっかりあげて足踏みをする

手軽に行える運動でも十分に効果が期待できるため、これらの運動を食後に取り入れると、血糖値変動の抑制につながります。

水分のとり方が血糖値の変動に影響を与えている可能性がある

水分のとり方。血糖値の変動に影響を与えている

血糖値を安定させるためには、食事中や食後の水分のとり方に気をつける必要があります。

適度な水分摂取は胃や腸の働きを助けて、糖の吸収スピードを緩やかにするため、血糖値の急激な上昇を抑えられる可能性があります。

しかし、食事中に大量の水分をとると胃の中にある食べ物が早く小腸へ移動してしまい、血糖値を急上昇させるため水分を一気に飲むのは控えましょう。

さらに大量の水分は咀嚼回数の減少につながり、結果としてインクレチンの分泌量を減らし、血糖値を容易に上昇させてしまいます。

反対に咀嚼回数が多いとインスリンの分泌を促すホルモンであるインクレチンの分泌が活発になり、血糖値の上昇を抑えられます。

咀嚼回数をできるだけ多くするために、口の中にある食べ物を水分で流し込んで食べるのは避けるのが望ましいです。

一方で、高血糖状態では血液中にある糖の濃度が高まり、血液がドロドロになってしまいます。

これは動脈硬化や血管障害の危険性を高めるため、血液の粘度を下げる目的で水分をしっかり摂取して、血液中のブドウ糖濃度を薄める必要があります。

血糖値の安定のために、食事中の過度な水分摂取は控えながら、1日1.5から2L程度の水分補給を心がけてください。

ストレスと睡眠不足がホルモンバランスを崩して血糖値に悪影響を与える

ストレスを感じた時に血糖値が上昇するのは、交感神経が優位になるなど自律神経が崩れるためです。

交感神経が活発になると、グルカゴンやアドレナリンといった血糖値を上昇させるホルモンが分泌されるため、血糖値が上昇します。

さらに、ストレスの影響で分泌されるコルチゾールというホルモンにも血糖値を上昇させる作用があるため、ストレスが続いて高血糖になる可能性があります。

したがって、血糖値の変動を防ぐためにも、ストレスの軽減を図りましょう。

睡眠不足も、交感神経を優位にしてコルチゾールを増加させるため、血糖値を上昇させてしまう原因です。

ほかにも睡眠不足はグレリンという食欲を刺激するホルモンを増加させて、反対に食欲を抑制するレプチンというホルモンを減少させるため、過食の危険性も高めます。

血糖値をコントロールして糖尿病の予防をするためには、良質な睡眠とストレスを溜めない生活習慣が大切です。

間食に適した食品とタイミングは血糖値を安定させる効果がある

間食に適した食品とタイミング。血糖値を安定させる効果がある

血糖値コントロールのために間食を控えている人もいますが、間食は必ずしも悪いものではありません。

たとえば、クッキーや菓子パンなどは摂取後すぐに血糖値を急上昇させますが、とくに空腹時にこのような食品をとるとより体に負担をかけてしまいます。

しかし、食物繊維が豊富な食品や低GI食品などの選択に加え、適切なタイミングで行う間食は、血糖値のコントロールに有効です。

間食をしないのではなく、間食の種類や摂取する時間帯を意識して日常生活を送りましょう。

間食として選ぶ食品は低GI食品や食物繊維が豊富なものが適している

脂質や食べ過ぎには注意

間食には、糖質の少ないものや食物繊維の豊富な食品が適しています。

摂取しても血糖値の急上昇を抑制できる間食には、以下のようなものがあります。

  • ナッツ
  • ヨーグルト
  • チーズ
  • オレンジ、りんご、キウイなど生のフルーツ
  • 野菜ステック

アーモンドや胡桃などのナッツ類は良質な脂質やタンパク質、食物繊維を含んでいるため、間食には適した食品です。

食物繊維が豊富に含まれている食品は血糖値の急上昇を抑制する効果が期待できますが、ナッツは脂質が多いため、食べ過ぎないように1日20〜30g程度を目安に摂取します。

一方、果物に含まれる果糖はブドウ糖のように血流に直接入らず、肝臓で代謝されるため血糖値を急上昇させません。 

さらに、りんごやオレンジなどには食物繊維が豊富に含まれており、血糖値の上昇を緩やかにします。

果糖を過剰に摂取すると体内で脂肪に容易に変わってしまうため、食べ過ぎて体重増加につながらないように1日80kcalに抑えましょう。

チーズもタンパク質が豊富であるため間食には適していますが、脂質やカロリーも高く、食べ過ぎないようにする必要があります。

ほかにも、にんじんやセロリなどの野菜スティックは食物繊維が豊富で低カロリーであるため、間食には向いています。

ヨーグルトは、低脂肪で無糖のものや高タンパクなギリシャヨーグルトが適切です。

これらは低GI食だったり食物繊維が豊富な食品だったりするため、間食として選ぶと血糖値の上昇を抑えられて満腹感も得られますが、食べ過ぎには気をつける必要があります。

砂糖や油の多い食品は体重管理や血糖値のコントロールを妨げる

砂糖や油の多い食品。血糖値のコントロールを妨げる

砂糖が多く含まれたジュースやお菓子は、摂取後すぐに血糖値を急上昇させてしまいます。

さらに菓子パンやスナック菓子は糖質だけでなく、カロリーも高く、脂質も非常に多く含まれています。

ほかにも以下のようなものは、糖尿病を予防する上で間食には適していません。

  • ジュース
  • 菓子パン
  • スナック菓子
  • アイスクリーム
  • おせんべい
  • 大福、たい焼き
  • カカオ70%以下のチョコレート
  • クッキー
  • ドーナツ
  • ケーキ

こうした食品を間食として習慣的に摂取し続けると肥満を引き起こし、血糖値のコントロールも難しくなって、糖尿病を発症したり悪化させたりする可能性があります。

砂糖が多く使われていたり油で揚げられていたりする食品は、体重管理と血糖管理の両方に悪影響を及ぼすため、間食をナッツやヨーグルトなどに置き換えましょう。

適切な時間帯に間食するとエネルギーとして効率よく消費できる

我慢せずに適切な時間帯を選ぶ

適切な時間帯に間食をすると、血糖値のコントロールが可能となり、食後の血糖値上昇を抑制できます。

たとえ低GI食品を間食として選んだとしても、タイミングを間違って頻繁に食べていたのでは、効果が薄れてしまいます。

食後2〜3時間後、とくに日中に活動している間は摂取した食品のエネルギーを効率よく消費できるため、間食に適した時間帯です。

さらに、空腹時間を減らせるため、次の食事で血糖値が急上昇するのを防ぐ効果も期待できます。

一方で、夕食後の間食は活動量が減るため摂取したエネルギーが効率よく消費されず、高血糖の状態が続いて睡眠を妨げたり翌朝の血糖値に悪影響を及ぼしたりする場合があります。

間食するタイミングを間違えると血糖値のコントロールが難しくなりますが、適切な時間帯の間食は食後の血糖値上昇を抑える助けになるでしょう。

外食でも血糖値管理を意識した食品選びや食べる順番の工夫が必要である

メニュー選びの工夫で予防

外食メニューは糖質が多かったり高カロリーだったりするため、外食が続くと選ぶメニューによっては、肥満や糖尿病のリスクを高める原因になります。

しかし、外食時でも食べ方や選ぶ食品によって、食後の血糖値上昇を抑制できます。

たとえば、会席料理のように前菜から一品ずつゆっくり食べるスタイルの場合は、血糖値の上昇が緩やかになって満腹感も得られるでしょう。

毎回、会席料理を選ぶのは現実的ではありませんが、食べる順番やメニュー選びの工夫は血糖値のコントロールにつながります。

外食では野菜や海藻などの食物繊維を積極的に摂取する

外食のメニューを選ぶ際は、主食と主菜、副菜がバランスよく揃ったものを選びましょう。

炭水化物のメニューばかりでは野菜の摂取量が不足して、食後に血糖値の急上昇を引き起こしてしまうため、意識して野菜を取り入れるのが大切です。

定食を選ぶ際は、最初に野菜から食べるなど食物繊維を先に摂取して、その後に炭水化物を食べる工夫をすると血糖値の上昇を緩やかにできます。

メニュー選びの際にも、野菜が不足している場合は、野菜や海藻が入った小鉢を一品追加で注文するのもよい方法です。

単品メニューを食べるときはサラダなど副菜の追加注文をする

丼ものや麺類を単品で食べるときは、炭水化物の割合が多くなるため、血糖値が急上昇します。

単品メニューはボリュームもあって満足感が得られますが、高カロリーかつ糖質の多いものが多く、こうした食事が続いた場合は糖尿病を発症する危険性が高まります。

そのまま食べてしまうと血糖値が急上昇するため、サラダやタンパク質がとれる料理を一緒に追加して食べるのが効果的です。

野菜を一緒に食べた場合、炭水化物の前に食物繊維を摂取できるうえ、血糖値の急上昇を抑制できます。

外食で単品メニューを選ぶときには、野菜を意識的に取り入れるようにしましょう。

調味料やドレッシングには糖質が多く含まれている

調味料の種類やドレッシングの選び方によって、摂取する糖質量は変わる場合があります。

糖質が多く含まれている調味料はウスターソースやトマトケチャップ、焼肉のタレなどがあり、これらの調味料を無意識に摂取していると糖質を過剰に摂取してしまう可能性があります。

ほかにも気をつけなければならないのはものは、脂質の量は少なくても商品によっては糖質が多く含まれているノンオイルドレッシングです。

糖質量の多いドレッシングを野菜にかけて食べた場合、たとえ食事の最初に野菜を摂取しても血糖値の上昇を招いてしまいます。

ノンオイルドレッシングを使用する際は、成分表示で糖質の含有量を確認するようにしてください。

一方、酢に含まれる酢酸や胡麻に含まれるリノール酸には食後の血糖値上昇を抑制する働きがあるため、酢を使ったメニューや胡麻ドレッシングを選ぶのも効果的です。

さらに、トッピングや副菜にも砂糖が多く含まれているものは血糖値を急上昇させてしまうため、砂糖を多く使った煮物や甘辛い味付けの料理はできるだけ控えましょう。

調味料やドレッシングなどを選ぶ際に少し意識するだけでも、食後の血糖値上昇を抑制する効果が期待できます。

旬の食材を使った食事は楽しく血糖値のコントロールが継続できる

旬の食材を使った食事。楽しく無理なく継続できる

野菜や果物には旬があり、その時期はみずみずしく非常に栄養価の高い状態で味わえます。

血糖値を管理するためには最初に食物繊維をとり、その後にタンパク質や脂質を摂取するといった工夫が必要ですが、食生活が楽しめないと苦痛に感じて継続は難しいでしょう。

その場合、野菜や果物のように季節によって味や見た目が変化する食材を上手に食事に取り入れると、楽しく食事ができます。

血糖値のコントロールのための食事管理は簡単ではありませんが、食べる楽しさを感じながらの食事は無理なく継続できます。

旬の食材は栄養価が高く食べる楽しみも感じられる

旬の野菜や果物はその季節でのみ収穫できて、価格も安く、栄養価も高いため効率よく栄養を摂取できます。

さらに、野菜は食物繊維が豊富だったり低GI食品だったりするため、血糖値のコントロールに役立ちます。

果物についても旬のものは栄養価が高くて甘味も強いためおいしく食べられますが、果物の甘味は果糖によるものであり、血糖値の上昇に直接関係はしません。

果糖は容易に脂肪に変わってしまうため食べ過ぎはよくないですが、自然な甘さを楽しめます。

旬の野菜や果物は血糖値を急上昇させない食材でもあり、食事に取り入れるとその効果が期待できるため、血糖値の管理にも役立ちます。

そして、香りや艶もよく食卓に彩りを添えるため、食欲が湧いて食べる楽しみや喜びも感じられるでしょう。

食生活の改善は血糖値のコントロールに役立ち糖尿病の予防につながる

血糖値を急上昇させない食事を継続して行うと、糖尿病の予防や改善につながるため、食べる順番や食品の種類に気をつけるのが望ましいです。

食事の最初に糖質が含まれている炭水化物を摂取した場合、血糖値の乱高下が起きて体や血管に負担をかけてしまいます。

血糖値の乱高下を予防するためには最初に野菜などの食物繊維を摂取して、その後に脂質やタンパク質、最後に主食であるご飯など糖質を含んだ食品を摂取します。

さらに、糖質を含んだものの中でも低GI食品を選んで摂取するなど血糖値のコントロールをするためには、食べる順番や種類の選択が大切です。

加えて、食後30〜1時間の間に軽い運動をしたりこまめに水分を摂取したりするなど、日常生活の見直しも行いましょう。

間食や外食をする場合にも、野菜をプラスして食べたり適切な時間に間食をしたりするなどの工夫が、食後の血糖値上昇を抑制します。

紹介した様々な工夫をしながら食生活を見直して、糖尿病の予防や改善に役立ててください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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