ヘモグロビンA1cは、血糖値の状態を確認するための検査項目の1つです。
糖尿病のリスクがあるかどうかを判別するための大切な指標で、数値が高いほど糖尿病のリスクも高い状態を意味しています。
健康診断で、空腹時血糖値はそこまで高くないのにヘモグロビンA1cが高いと指摘されて、なぜだろうと疑問を持った人もいるのではないでしょうか。
毎日の食事や運動など生活習慣の改善によって、ヘモグロビンA1cは下げられる可能性があります。
- ヘモグロビンA1cと糖尿病の関係
- ヘモグロビンA1cを下げる食品
- ヘモグロビンA1cを下げる食事のコツ
ヘモグロビンA1cを下げる食品や食べ方のコツなど、具体的な対処法を知りたい人はぜひ参考にしてください。
ヘモグロビンA1cとは糖尿病リスクを判別するための数値のこと
血液中のヘモグロビンに、どれくらいブドウ糖が結合しているかをパーセントで表したものがヘモグロビンA1cです。
血液中のブドウ糖濃度が高ければ高いほどに多くのブドウ糖がヘモグロビンに結合するため、ヘモグロビンA1cは高くなります。
糖尿病を発症すると、すい臓から分泌されるインスリンが正常に働かず、血液中のブドウ糖濃度の高い状態が慢性的に続きます。
糖尿病を発症していないか確認するためには、ヘモグロビンA1cと血糖値を測る血液検査が重要です。
糖尿病が疑われるヘモグロビンA1cの基準値
特定保健指導が定めているヘモグロビンA1cの基準値は、以下のとおりです。
正常値 | 正常高値 | 境界型 | 糖尿病型 | |
---|---|---|---|---|
HbA1c | ~5.5 | ~5.9 | ~6.4 | 6.5~ |
性別や年齢において変動はありますが、ヘモグロビンA1cの正常値は5.5%以下とされています。
6.5%以上は、糖尿病型と呼ばれる糖尿病が強く疑われる状態です。
6.4%以下であっても糖尿病型に近い数値が出ている場合は、境界型と呼ばれ糖尿病が否定できない状態、または糖尿病予備群の可能性があります。
境界型の場合は放っておくと本格的な糖尿病へ発展する可能性があるため、診断を受けた時点から食事内容や運動などの生活習慣改善に取り組みましょう。
ヘモグロビンA1cと血糖値は糖尿病リスクを判断する数値だが定義が違う
健康診断で糖尿病を発症していないかどうかの診断基準となる検査項目には、ヘモグロビンA1cのほかに血糖値があります。
ヘモグロビンA1cと血糖値の違いは、以下のとおりです。
ヘモグロビンA1c | 空腹時血糖値 | |
---|---|---|
特徴 | 数値が何ヶ月間もの間変動しない 直近の食事や運動の影響を受けない | 測定のタイミングによって数値に差が出る 直近の食事や運動の影響を受ける |
検査のタイミング | いつでも測定できる | 朝や空腹時に測定する |
血糖値は、直近の食事や運動の影響を受けて短期的に上昇も下降もします。
そのため、血液検査の数日前からの食生活などの改善によって血糖値を下げられます。
しかし、ヘモグロビンA1cは検査の数日前から食生活を変えて運動をしたとしても変動しないため、数値をごまかせないのが特徴です。
ヘモグロビンA1cは長期的な血糖管理の評価指標であり、血糖値は現時点の血糖濃度を示す指標です。
ヘモグロビンA1cが高いと糖尿病や合併症を発症する場合もある
過去1~2ヶ月の平均的な血糖状態であるヘモグロビンA1cが高い場合、血糖値が継続して高い状態を意味しています。
ヘモグロビンA1cが高くなる原因は、その数値の元となる血糖値が持続的に高いためです。
血糖値の高い状態が慢性的に続く場合には、糖尿病が疑われます。
糖尿病の原因は主に2つあり、生まれ持った自己免疫に問題があり発症する1型糖尿病と、生活習慣の乱れが原因で発症する2型糖尿病です。
2型糖尿病は生活習慣病とも呼ばれる病気で、日本人成人で糖尿病と診断されたほとんどが2型糖尿病といわれています。
日本人がもともとインスリンの分泌が弱い体質である点や加齢、それに加えて以下のような生活習慣が重なり糖尿病発症に繋がっています。
- お菓子やジュースなど甘い食品が好き
- 食事は濃い味付けが好き
- 間食が多い
- アルコールをたくさん飲む
- 運動不足で活動量が少ない
- 睡眠不足
食事で取り入れた糖質はブドウ糖に分解され、血液中に入りこみ全身に運ばれます。
通常ブドウ糖が血液中に流れて血糖値が上がると、インスリンというすい臓で作られるホルモンが分泌されて血糖を一定に保つように働くため、血糖値は下がります。
血糖値が高い状態が慢性的に続き、糖尿病になります。
糖尿病は、初期段階において自覚症状がほとんどないのが特徴の1つです。
分かりやすい症状が出てきて異変を感じたときにはすでに進行しているという理由から、別名サイレントキラーとも呼ばれています。
糖尿病が進行してくるとあらわれやすい症状は、以下のとおりです。
- 異常に喉が渇き水をたくさん飲む
- トイレの回数が増える
- 尿が泡立つ
- だるくて疲れやすい
- 食べているのに体重が減る
上記のような症状を自覚した場合には、すでに進行している可能性もあるため早めに病院で診察を受けましょう。
糖尿病を放置すると起きる可能性がある合併症
糖尿病を放置すると、長い時間をかけて糖が血管の壁を傷付けたり全身の血管に支障が出たりして、さまざまな合併症を引き起こす可能性が高まります。
合併症は主に太い血管が傷つき発症する大血管症と、細い血管が傷つき発症する細小血管症の2つです。
大血管症の種類 | 細血管症の種類 | ||
---|---|---|---|
心筋梗塞 | 心臓発作や心筋細胞の壊死(えし) | 糖尿病神経障害 | 手足のしびれや痛み |
脳梗塞 | 脳の血管が硬化して詰まる | 糖尿病網膜症 | 網膜血管の出血や網膜剥離 |
末梢動脈疾患 | 足のしびれや痛み | 糖尿病腎症 | 高血圧や貧血を伴い人工透析が必要になるケースもあり |
糖尿病は一度発症するとなかなか完治が難しいとされていますが、食事や運動による血糖値の適切なコントロールによって改善が見込めます。
ヘモグロビンA1cを下げるための食品選びは重要
ヘモグロビンA1cを下げるためには、バランスの良い食事と運動習慣の確立が重要です。
同じ糖質量であっても、血糖値が急激に上昇する食品と緩やかに上昇する食品があります。
血糖値の急上昇を繰り返すと血管の内側の壁が傷つきやすくなるため、食品を選ぶ際は血糖値が急激に上がる食品は避けて、血糖値を緩やかに上げる食品を選びましょう。
血糖値の上がりやすさを表す指標として役立つのが、GIです。
GI値が高い食品を摂ると血糖値が急上昇してすい臓がインスリンを大量に出そうと働くため、すい臓に負担をかけたりインスリンの分泌が追いつかなくなったりします。
反対にGI値が低い食品を摂ると糖がおだやかに吸収されるため、血糖値も緩やかに上昇してインスリンの過剰分泌も防げます。
GI値が高い代表的な食品は、以下のとおりです。
炭水化物 | 精白米、パン、うどん、そうめん、もち、コーンフレークなど |
---|---|
野菜 | じゃがいも、にんじんなど |
菓子 | ようかん。大福、まんじゅう、せんべい、クッキーなど |
果物 | すいか、メロンなど |
飲み物 | ジュース、乳酸飲料、栄養ドリンク、 |
一般的に甘い物と呼ばれている食品は、血糖値を急激に上昇させる傾向にあります。
反対に血糖値を緩やかに上昇させる、GI値が低い代表的な食品は以下のとおりです。
炭水化物 | 雑穀米、十割そば、全粒粉、ライ麦パンなど |
---|---|
野菜 | きのこ類、ブロッコリー、ピーマン、玉ねぎ、レタス、オクラなど |
菓子 | ナッツ類、アロエ、カカオ70%以上のチョコレートなど |
果物 | りんご、キウイフルーツ、ブルーベリーなど |
飲み物 | 水、緑茶、ブラックコーヒー、無糖の紅茶など |
食物繊維を含む食品も意識して食事に取り入れよう
食物繊維には整腸作用だけでなく、血糖値の急上昇を防ぐ働きがあるため、ヘモグロビンA1cの上昇抑制にも効果的です。
食物繊維の中でも水溶性食物繊維には血糖値の上昇抑制のほか、動脈硬化を起こす原因ともいわれている血中コレステロールを下げる効果も期待できるため、積極的に摂りましょう。
水溶性食物繊維を多く含む代表的な食品は、以下のとおりです。
穀類や豆類 | 大麦、ライ麦、オーツ麦、納豆、インゲン豆、きな粉など |
---|---|
野菜 | ブロッコリー、小松菜、トマト、オクラ、ケールなど |
きのこ類 | なめこ、しいたけ、きくらげ、えのきだけ、まいたけなど |
海藻類 | 昆布、わかめ、もずく、めかぶなど |
果物 | りんご、キウイフルーツ、ブルーベリー、梨など |
穀類は、普段食べている主食を少し置き換えるだけでも取り入れやすいためおすすめです。
海藻類はヘモグロビンA1cの上昇抑制だけでなく、糖質やカロリーも低いため、味噌汁やスープなどにして積極的に食事に取り入れると良いでしょう。
食事の主菜には青背魚を積極的に摂ろう
糖を消費してくれる筋肉を維持するために必要不可欠なのが、たんぱく質です。
肉や魚はたんぱく質が豊富なため毎日の食事に取り入れたい食品の1つですが、ヘモグロビンA1cや血糖値が気になる人は、肉に比べて脂質の少ない魚を選ぶと良いでしょう。
以下のような青背魚は血糖値改善に役立つだけでなく、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐ効果も期待できます。
- イワシ
- サバ
- ニシン
- サンマ
- マグロ
- アジ
ただし衣のついた揚げ物は脂質が高いため、フライの魚は衣を外して食べるか、一部残すように調整するとカロリーの摂りすぎを防げます。
ヘモグロビンA1cを下げるためには食事の回数や食べる順番も大切
ヘモグロビンA1cを下げるためには食事内容やどんな食品を選ぶかだけでなく、1日の食事回数や食べる順番も大切です。
毎日の食事で、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 早食いをせず、ゆっくりよく噛んで食べる
- 1日3食規則正しく食べる
- 腹七分目を意識して食べる
- 夜遅い時間には食べない
食事をとる時間もなるべく一定にすると、体内のリズムが整い食べ過ぎ防止にも繋がります。
そして食事の際は、以下の順番で食べ進めるように心がけてください。
- 食物繊維が豊富な野菜や海藻、きのこ類
- たんぱく質が豊富な魚や肉
- 糖質が多い主食と呼ばれるご飯やパン、麺
食事の最初に食物繊維の豊富な野菜や海藻類、次にたんぱく質のおかずを食べるようにすると、糖の吸収を穏やかにして血糖値の急上昇を防げます。
外食する際には栄養バランスの良い定食メニューを選び、丼ものを選ぶ場合には主食を減らしてサイドメニューを取り入れると良いでしょう。
朝食は血糖コントロールを整えるために必要不可欠
1日3食の中で、血糖コントロールを整えるために必要不可欠なのが朝食です。
米国栄養学誌に掲載された研究によると、日常的に朝食を抜いている場合心血管疾患による死亡リスクが1.4倍に上がるという結果も出ています。
人間の体は、食事の間隔が長く空くほど次に摂取した栄養素を体に取り込もうとする性質があります。
そのため、朝食を抜くと長時間空腹状態だった体が昼食後に栄養をより取り込もうと働き、血糖値も急上昇してしまうのです。
反対に朝食に食物繊維をたっぷり摂ると血糖値の上昇が緩やかになり、1日を通して血糖値を穏やかに保てます。
今まで朝食を抜いていた人やトーストやおにぎりだけなど糖質中心の朝食を摂っていた人は、ぜひ明日から食物繊維とたんぱく質を中心に、バランスの良い朝食を摂るようにしましょう。
ヘモグロビンA1cを下げるには食品選びのほか運動も効果的である
ヘモグロビンA1cを下げるために、定期的に行う適度な運動も効果的です。
運動すると、摂取した糖質が消費されるため血糖値が下がります。
ヘモグロビンA1cを下げるための効果的な運動には、有酸素運動とレジスタンス運動の2種類があります。
有酸素運動は全身を使ったウォーキングやジョギング、水泳などを指し、1回20分以上持続して週3~5日くらいの頻度で行うと良いでしょう。
レジスタンス運動は筋力トレーニングを指し、ダンベルやマシンを使用する方法や手軽に行えるスクワットや腕立て伏せなど自体重を利用した運動があります。
レジスタンス運動は筋肉に負荷をかける運動のため毎日は行わず、2~3日に1回を週2~3回行うのがおすすめです。
今まで運動習慣のなかった人が突然強度の高い運動を始めると、かえって体の不調が出る場合もあるため、最初は軽い運動から自分の無理のないペースで始めてください。
運動の前には、体を傷めないように準備体操やストレッチなどをしましょう。
ヘモグロビンA1cを下げる食品を上手に取り入れて糖尿病リスクを減らそう
ヘモグロビンA1cは、食事改善や運動を始めてもすぐには下がりにくい数値です。
長期的に生活を改善していく必要があるため、ストレスにならないように無理なく、自分のペースで継続していくようにしましょう。
食事は野菜からゆっくりとよく噛んで食べる、いつも乗っているエスカレーターを階段に変えてみるなど、日常のちょっとした工夫を積み重ねていくのが大切です。
時間はかかりますが、地道に毎日の食事を意識して運動習慣を継続していれば徐々にヘモグロビンA1cは下げられます。