糖尿病が原因で起こる寝起きの手のしびれを抑えるための血糖コントロール方法を紹介

糖尿病が原因。寝起きの手のしびれ。抑えるための血糖コントロール方法

糖尿病で高血糖の状態が続くと、血管を傷つけて神経障害が起こり、しびれを感じるようになります。

ほかにも、しびれを感じる原因として、糖尿病の合併症である手根管症候群の発症も考えられます。

この記事では、手足のしびれなどをはじめとする糖尿病が引き起こす症状について解説します。

この記事で分かること
  • 糖尿病が原因の手のしびれ
  • 糖尿病が疑われる血糖値とHbA1cの数値
  • 糖尿病によって起こる症状
  • 糖尿病による手のしびれを改善させる運動方法
  • 糖尿病による手のしびれを改善させる食事内容

運動・食事療法を中心に、糖尿病を改善させる生活習慣についても紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

糖尿病による高血糖状態が寝起きの手のしびれの原因となる

寝起きの手のしびれ。糖尿病による高血糖状態が原因

寝起きに手がしびれる原因として、糖尿病が考えられます。

糖尿病によるしびれは、手よりも足に生じる場合が多いです。

しかし、手のしびれを感じる人も少なくありません。

手のしびれが起こるのは、糖尿病による神経障害もしくは糖尿病の合併症による手根管症候群が原因です。

高血糖の持続が原因で毛細血管が傷ついたり、代謝異常が起こったりして体の感覚を司る神経が障害されてしびれが現れます。

糖尿病は摂取した糖を細胞に正常に取り込めず、長期的に高血糖状態が続く疾患です。

神経障害によるしびれを放置して糖尿病を治療しないでいると病気が進行し、徐々に手足の感覚も低下して怪我や火傷が増えます。

痛みや異変に気づかない段階では、すでに皮膚や神経、筋肉などは非常にもろい状態です。

足の場合は手よりも異変の察知が難しく、対処が遅れて血流の滞りや感染などが原因で足が壊死し、切断を余儀なくされる可能性もあります。

糖尿病の進行は、手足のしびれ以外にも目や腎臓など体の至るところの機能を障害します。

ほかにも、糖尿病の合併症である手根管症候群は、夜間から寝起きにかけて手のしびれが増強するのが特徴です。

糖尿病の合併症として手根管症候群を発症した場合は、糖尿病が原因で手の正中神経がもろくなり、神経が障害や圧迫されてしびれや疼痛が現れます。

糖尿病はHbA1cの値が5.6%以上や高血糖である場合に疑われる

糖尿病の診断基準には、血糖値とHbA1cの数値が必要になるため血液検査が必要です。

血糖値、HbA1c共に基準値以上だった場合は糖尿病が確定するのはもちろん、血糖値のみが高値でも糖尿病と診断される場合があります。

HbA1cの値が5.6%以上で、血糖値が基準値以内の場合は再検査を実施します。

以下の表は、糖尿病の診断に用いる2種類の血糖値の正常値を表したものです。

HbA1c~99
随時血糖値~199

血糖値は食事などで変動する数値であるのと比較して、HbA1cは1〜2ヶ月の血糖値を反映しているという違いがあります。

糖尿病が進行すると手のしびれや足の壊疽(えそ)などさまざまな症状が出現する

進行すると多様な症状が出現。糖尿病は合併症を引き起こす

高血糖の状態が続き、糖尿病が進行すると手のしびれや足の壊疽などさまざまな症状が出現します。

多様な症状の中でも、手のしびれは糖尿病の三大症状のうちのひとつに分類される場合があります。

糖尿病の三大症状は、以下のとおりです。

  • 糖尿病性神経障害
  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性腎症

手のしびれは「糖尿病性神経障害」に当てはまる可能性があり、神経障害をきたすとしびれのほかにも痛みが起こったり反対に感覚が鈍くなったりします。

糖尿病によって足が壊疽し、切断するまでに至る原因には以下のようなものが挙げられます。

  • 血流が悪くなる
  • 神経障害で感覚が鈍感になり、皮膚や組織の炎症に気付かず放置する
  • 糖尿病によって感染症にかかると治りが遅い

壊疽は指先から始まり、徐々に広範囲に広がっていきます。

したがって、日頃から足のケアをして怪我や靴ずれがないか、爪が皮膚に食い込んでいないかなどに意識を払いましょう。

三大症状のひとつである糖尿病性網膜症では視力が低下して失明する人もいるほか、糖尿病性腎症が進行すると透析腎移植が必要になる場合もあります。

そのほかにも、糖尿病は下記のような多くの合併症を引き起こします。

  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 足の壊疽
  • 感染症
  • 白内障
  • 緑内障
  • 糖尿病性黄色腫
  • 浮腫性硬化症
  • 歯周病
  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 脂肪肝
  • 胆石
  • 手根管症候群
  • 認知症
  • うつ病
  • 悪性腫瘍など

糖尿病は、初期では自覚症状がほとんどないという理由で病気が進んでから発見されたり、治療を途中でやめてしまったりする人が多いとされています。

しかし治療を中断してしまうと体はゆっくりと確実に蝕まれていくため、自覚症状の有無にかかわらずに自己管理を続けましょう。

糖尿病による手のしびれを改善させるために食事と運動に気を付けた生活習慣が鍵

手のしびれを改善する。食事と運動に気を付けた生活習慣

糖尿病は1型と2型に分けられ、型によって原因が異なります。

1型糖尿病遺伝、ウイルス感染など
2型糖尿病遺伝、過食、肥満、運動不足、ストレス、加齢など

糖尿病を発症している人の90%以上が2型であり、食事や運動が密接に関係しています。

1型糖尿病は遺伝や感染症の影響を強く受けているのに比べて、2型糖尿病の発症は生活習慣が要因です。

したがって、2型糖尿病による手のしびれを改善させるには食事と運動に気を付けた健康的な生活習慣を確立しましょう。

運動で糖尿病の改善が期待できる

運動を続けると血糖値やHbA1cの値が下がり、糖尿病の改善が期待できます。

とくに食後に運動すると、短期的な効果として食後の高血糖を抑えられます。

運動により、筋肉への糖の取り込みが活性化するのが理由です。

しかし、以下の症状がある人は運動療法ができない場合があるため、個人の判断で運動を始めるのは避けてください。

  • 心肺機能障害
  • 腎障害
  • 眼底出血
  • 糖尿病性自律神経障害など

これらの症状がある場合は、現在ある症状が悪化する可能性があるため、運動は医師に相談してから開始しましょう。

ウォーキングなどの有酸素運動を日常生活に組み込む

はじめに、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を組み入れましょう。

有酸素運動は、週に150分以上ならびに週3回以上を全力の60%程度の力で行うように推奨されています。

運動をしない日が2日続くのは避けたほうが良いとされているため、毎日運動する生活を目指すのがおすすめです。

平日の通勤時間をウォーキングにあてる場合は、1日30分歩く必要があります。

会社の行き帰りで15分ずつ歩く時間を増やして達成できるため、取り入れるのが容易です。

加えて、休日は家から少し離れた距離にあるスーパーやショッピングセンターに歩いて買い物に行くと運動時間が確保できます。

レジスタンス運動(筋トレ)を習慣化する

筋トレをすると筋肉量が増えるため、基礎代謝の維持および関節疾患の予防に有効です。

ウォーキングなどの有酸素運動を続けながら、レジスタンス運動(筋トレ)も習慣化しましょう。

筋トレは週に2〜3回を目安に連続しない日程で行うほか、高齢者は並行してバランス運動も行うように推奨されます。

YouTubeにも筋トレ動画が上がっているため、ジムに行かなくても自宅で気軽に始められます。

筋トレをすると筋肉量が増えるため、基礎代謝の維持や関節疾患の予防に有効です。

運動は1日10分でも毎日続ける習慣が重要

毎日の運動を習慣にするには、1ヶ月〜3ヶ月程度かかります。

さらに、新しい物事を始めたり肉体的な負荷がかかったりするとストレスを感じるため、習慣化する前に運動をやめてしまう人も多いとされています。

したがって通勤で歩く時間を増やす、意識して階段を使う、筋トレしないとお風呂に入れないルールをつくるなど続ける工夫をしてみましょう。

ドライヤーや歯磨きの最中にスクワットをするなど、すでに身に着いている習慣に運動を組み合わせるのも良い方法です。

1日10分でも毎日続ける意味があるため、運動時間よりも毎日実践するという行動を優先してください。

食事で摂取する糖質を抑え適正なカロリーを摂取する

食事で摂取する糖質。適正なカロリーを摂取する

糖尿病の改善には、食事療法を取り入れる必要があります。

成人男性の場合、1日に1600キロカロリー程度の摂取量を目安としましょう。

カロリーを気にするあまり過度に食事量を抑えると、血糖値のコントロールが乱れる原因になります。

糖質が多く含まれる米やパン、砂糖の量を抑えながら適正なカロリーを摂取するようにしてください。

カロリーは炭水化物で5〜6割、タンパク質で2割、脂質で2〜3割の摂取が推奨されています。

糖質を多く含む食品は、以下のとおりです。

  • 芋類
  • 根菜類
  • 砂糖
  • 果物など

加えて、こんにゃくやひじき、切干し大根などの食物繊維を多く含む食品を積極的に食べると急激な糖の吸収を抑制できます。

砂糖の摂取量を抑えるためにお菓子やジュースは避ける

糖質を多く含む砂糖の摂取量を抑えるために、お菓子やジュースは避けてください。

果物100%のジュースは、健康に良いと思って毎朝飲んでいる人もいるでしょう。

しかし、100%果汁使用でもジュースには糖質が多く含まれているため、毎日飲むと糖質の過剰摂取になります。

水分は固形物に比べて糖質の吸収が早いため、血糖値が急上昇する原因にもなります。

間食をする習慣がある人は、甘い物ではなく無糖の紅茶やコーヒー、緑茶を飲むようにしたりお菓子をナッツに変えたりすると良いでしょう。

ジャンクフードや脂質の多い食事を摂る頻度を減らす

糖尿病を発症すると、体の代謝機能が上手く働かなくなるため脂質異常症に警戒が必要な状態です。

したがって、ジャンクフードや脂質の多い食事を摂る頻度を減らしてください。

ジャンクフードに含まれている栄養素は脂質と糖質がほとんどであり、血糖値を急上昇させる危険があります。

味付けが濃く、塩分も多いため日常的に摂取していると高血圧のリスクも高まります。

外食も油を多く使って調理しているため、ジャンクフード以外を選んでいても頻繁な外食は脂質異常症のリスク因子です。

脂質を制限し肥満が解消されると、代謝状態を正常に近づけて糖尿病の進行を防げます。

野菜や食物繊維を豊富に摂れるように自炊をする

食事の中で野菜や食物繊維を豊富に摂るために、食事療法の一環として可能な限り自炊をしましょう。

外食やテイクアウト、スーパーのお惣菜では野菜や食物繊維が不足しがちになります。

しかし、糖尿病の食事療法において食物繊維は重要な栄養素であり、食後の血糖値の上昇を抑制する効果があるため積極的な摂取が重要です。

さらに、2型糖尿病では多くの人が高血圧であるとされています。

血圧のコントロールのためにも、塩分の多くなりがちな外食やテイクアウトを避ける意識を持ちましょう。

食物繊維は野菜300gに約10g含まれており、1日の摂取量の目安は20g以上です。

野菜の1日の摂取推奨量は350gであり、これは手のひらに山盛りいっぱいの量とされています。

野菜のみで食物繊維を補う必要はなく、きのこや海藻類の食物繊維の豊富な食品も意識して取り入れるとバランスの良い献立になるでしょう。

食物繊維の多い食品は、以下のとおりです。

  • 玄米
  • 大豆製品
  • 野菜
  • 果物
  • 海藻
  • 切干し大根
  • ひじきなど

和食の献立を作ると、食物繊維が摂りやすいでしょう。

1日3食規則正しく食事をする

規則正しく食事をすると、血糖値の急激な上昇を防げます。

忙しさを理由に朝食を抜いてしまう人も多いですが、朝食を抜いた状態で昼食を摂ると血糖値が急激に上昇します。

朝食を食べると、朝食を抜いたときと比べて昼食後の血糖値の上昇は緩やかになり、血糖コントロールに有効です。

朝・昼・夕の3食を食べると、空腹感や1食抜いているから大丈夫という理由で生じる暴飲暴食を防げます。

1食抜いたあとの食事では2食分の量を食べてしまうため、空腹感と「食べたい」という欲求の克服は困難です。

糖尿病による手のしびれは血糖コントロールで改善しよう

糖尿病では、糖が体内に正常に取り込めなくなって高血糖状態をきたします。

高血糖が続いて、血管や神経が障害されて生じるのがしびれです。

しかし、糖尿病による手のしびれは、血糖値コントロールで改善する可能性があります。

したがって、糖質を抑えたバランスの良い食事や運動習慣の確立によって血糖値の上昇を抑える努力が必要です。

高血糖の状態をそのままにしておくと糖尿病が進行し、手のしびれ以外にもさまざまな合併症を発症します。

糖尿病による合併症は、足や視力を奪ったり、腎障害によって生涯透析を受け続けたりする可能性があるなど生活の質を著しく下げます。

生活を一変させるには時間がかかりますが、可能な限り改善して糖尿病の進行を防ぎましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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