糖尿病や糖尿病予備群の人にとって、毎日の食事は血糖値の管理に影響します。
食事の内容だけではなく、規則正しい食事や間食の工夫も、血糖コントロールに役立ちます。
この記事では、糖尿病に良い食べ物や食事療法について解説します。
- 糖尿病と食事の基礎知識
- 血糖値を下げるのに良い食べ物
- 糖尿病の人の血糖管理に適したメニュー
血糖値の急上昇をおさえる食べ物の例や、具体的なレシピも紹介しているため、糖尿病と食事について知りたい人はぜひ参考にしてください。
糖尿病と血糖管理には食事への配慮が大切

糖尿病とは、すい臓でつくられるインスリンの不足や機能低下によって、血液中にブドウ糖が蓄積してしまう病気のことです。
健康な人はインスリンの働きで血液中の糖の値は正常に戻りますが、糖尿病の人は常に血糖値が高くなります。

食事に気をつける習慣をつけ、血糖値のコントロールに役立てましょう。
高血糖状態が長期間続き、合併症を起こすリスクが上がると、食事への配慮が治療の一環にもなります。
糖質の摂取量やバランスを意識しながら、適切な食事を続け、健康的な生活を維持してください。
高血糖のサインを見逃さず早めに受診する

長期間、高血糖の状態が続くと以下の症状を引き起こします。
- 喉がかわく
- 水をよく飲む
- 尿回数の増加
- 体重減少
- 疲れやすい
さらに症状が進んだ場合、以下の合併症を引き起こす可能性があります。
- 動脈硬化
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 網膜症
- 腎症
- 神経障害
糖尿病は初期には症状はありませんが、高血糖の状態が長期化すると悪化し、失明や透析につながる病気です。
上述したような症状があるときは、病状の悪化を防ぐためにも早めの受診をおすすめします。
血糖管理のために栄養バランスを意識した食事をする

糖尿病の人の食事では、特別に食べてはいけないものはありません。
食べすぎを避け、バランス良く栄養素を摂取するために、以下のポイントを意識してください。
- 三大栄養素の糖質、脂質、タンパク質をバランスよく摂取する
- 食物繊維を摂取する
- ビタミンやミネラルを摂取する
- 過度な塩分や脂質の摂取を避ける
これらのポイントを意識した食事を心がけ、血糖値の安定を図り、合併症の予防につなげましょう。
合併症が進行すると高血糖による神経障害が現れる場合があり、手足のしびれや痛み、感覚の鈍さを引き起こします。
むくみや尿量の変化、視力悪化や息切れも合併症に見られる症状です。
血糖値を下げるには効果的な食べ物選びが必要

血糖値を下げるのに良い食べ物を選ぶポイントは、以下の4つです。
- 血糖の吸収がゆるやかな食品
- 食物繊維が豊富な食品
- タンパク質が豊富な食品
- 脂質が適量に含まれている食品
血糖の上昇がゆるやかな食品は、玄米や全粒粉パンなどの低GI食品が挙げられます。
脂質は摂りすぎに気をつけ、適量を摂取しましょう。
血糖コントロールに効果的な食べ物を、以下に詳しく説明します。

血糖の吸収がゆるやかな食品は血糖値の安定に役立つ
血糖値を急激に上げない食品を選ぶ際には、低GI食品を選択しましょう。
GI値(グリセミックインデックス)とは、食品が血糖値に与える影響を数値化したもののことです。
代表的な低GI値の食品は、以下を参考にしてください。
- 全粒粉パン
- そば
- りんご
- いちご
- 葉物野菜
- きのこ類
- 豆類
- 牛乳
- バター
- 肉類
- 魚介類
低GI値の食品は血糖値の上昇をゆるやかにし、エネルギーの持続や満足感の維持が期待できます。
さらに、これらの食品は腹持ちが良く、食後の眠気や空腹感を防ぐのにも役立ちます。
健康的な血糖値管理をサポートするために、日常的に取り入れるのが大切です。

アカシアポリフェノールには血糖値を下げる効能が確認されています。低GI食品と合わせて、日常的な摂取がおすすめです。
食物繊維が豊富な食品は血糖値の上昇を抑える効果がある
食物繊維には、血糖値の上昇を抑える効果があります。
食物繊維が豊富な食材は、以下の通りです。
- ごぼう
- キャベツ
- ブロッコリー
- しめじ
- しいたけ
- えのき
- わかめ
- 昆布
- ひじき
- 大豆
- あずき
食物繊維が豊富な食品は、血糖値の上昇をゆるやかにし、満腹感を持続させる効果があります。
食べすぎ防止に役立つだけではなく、腸内環境を整える働きがあり、便秘解消や免疫力の向上にもつながります。
血糖値を管理する目的のほかにも、健康的な食生活の一環として積極的に取り入れてみましょう。


タンパク質が豊富な食品は血糖の安定を助ける
タンパク質は、筋肉の維持や臓器を作るために必要な栄養素で、血糖値の上昇をゆるやかにします。
食材については、以下を参考にしてください。
- 鶏むね肉
- 豚ひれ肉
- 牛肉赤み
- 鮭
- マグロ
- さんま
- 鶏卵
- 大豆
- 豆腐
タンパク質は筋肉をつけて代謝を促進し、血糖値のコントロールをサポートします。
糖尿病の予防や管理には有効で、インスリンの働きを助ける効果もあります。
さらに血糖値の急上昇を防ぎ、安定したエネルギー供給が可能です。
そのため、タンパク質は適量を守り、バランスの取れた食事を心がけるのが大切です。
糖尿病予防のために適量の脂質を含んだ食べ物を摂取する
脂質は、主にエネルギー源になる大事な栄養素です。
脂質を含む代表的な食品を、以下にまとめます。
- イワシ
- サバ
- アーモンド
- くるみ
- アボカド
摂りすぎは肥満や高脂血症の原因になるため、コレステロールや飽和脂肪酸が多い食品の摂取は控えるなどの注意が必要です。
適量の脂質は、血糖値の急激な上昇を抑える効果があり、糖尿病の予防や管理に役立ちます。
青魚やナッツ類に含まれるオメガ3脂肪酸は、血液をさらさらにする効果があり、糖尿病の合併症の予防にも効果的です。
これらの食品は心血管の健康をサポートし、糖尿病によるリスクを減らします。
過剰に摂取しないよう、バランスの良い食事を心がけましょう。
糖尿病の人は血糖値を下げるために食事の順番や食材選びを工夫する


血糖値を下げるための食べ方のポイントは、以下の4つです。
- 食べる順番に気をつける
- 朝食を食べる
- 間食選びに気をつける
- よく噛んでゆっくり食べる
食べる順番の工夫は、食後の血糖値の急激な上昇を予防します。
野菜やタンパク質を先に食べ、炭水化物を後にする食べ方は、糖の吸収をゆるやかにします。
朝食を抜くと空腹時間が長くなり、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなるため、朝食は欠かさずに食べてください。
間食は、ナッツやヨーグルトなど血糖値の上昇がゆるやかなものが適しており、空腹感を抑えながらエネルギー補給ができます。
さらに、よく噛んでゆっくり食べると消化がスムーズになり、満腹感が得やすくなります。
食べすぎを防ぎ、食後の血糖値の変動を安定させるために、食事の仕方にも気を配りましょう。


食べる順番に気をつけて血糖上昇を抑える
食べる順番を意識し、食物繊維が豊富な野菜やきのこ類を最初に食べると、血糖値の急激な上昇を抑えられて糖尿病の予防や管理に役立ちます。
さらに、胃の中で膨張して満腹感を感じやすくなり、糖の吸収を遅らせて血糖値の安定が期待できます。
食べる順番の工夫は、血糖値のコントロールを助けます。
朝食を食べると1日の血糖が安定して糖尿病予防につながる
朝食の摂取は1日の血糖値が安定するため、糖尿病の予防や管理に効果的です。
朝食を抜いた場合、血糖値の急激な変動を招きやすくなります。
タンパク質や食物繊維を豊富に含む食品を取り入れ、主食には白米やパンの代わりに玄米や全粒粉のパンなどの低GI食品を選んでください。
前述した通り、低GI食品は糖分の吸収を遅らせるのが可能なため、血糖コントロールには最適です。
朝食の摂取は、エネルギーの安定供給にもつながり、1日を健康的にスタートできます。


よく噛みゆっくり食べて糖尿病予防や健康に役立てる
食事をよく噛んでゆっくり食べるのが、健康にとって大切です。
よく噛めば満腹中枢が刺激され、脳が満腹感を得やすくなり、食べすぎを防げます。
ほかにも栄養素が効率的に吸収され、消化がスムーズになります。
早いペースの食事は血糖値を急激に上昇させてしまい、その後の急速な下降は空腹を感じる原因になるため注意が必要です。
糖尿病のリスクを減らせるよう、食事をよく噛み、ゆっくり食べるように意識してください。
間食選びに気をつけて血糖値の急上昇を防ぐ
食事はしっかり摂っていても、どうしてもお腹が減ってしまうときもあります。
間食として良いものに、以下のような食品が挙げられます。
- ブルーベリー
- りんご
- ぶどう
- レーズン
- 梨
- バナナ
- グレープフルーツ
- くるみ
- アーモンド
- カシューナッツ
- プレーンの胚芽ビスケットのクラッカー
- ヨーグルト
血糖値の急激な変動を防ぐためにおにぎりやスナック、甘い飲み物は避けて、適量のナッツやヨーグルトなどを摂取するのが良いです。
夜は消費エネルギー量が少なく、余った分が脂肪に変わり、肥満につながります。
血糖値の安定に影響を与えるため、夜遅くの食事はできるだけ控えましょう。



ブルーベリーやりんごにはポリフェノールが豊富に含まれています。
近年ポリフェノールが持つ健康効果に注目が集まっています。
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糖尿病の人はライフスタイルに合ったレシピを取り入れよう


個人のライフスタイルや生活環境によって、適した食事内容は異なります。
糖尿病予備群の人は、自分に適したエネルギー量の把握が大切です。


自分に適したエネルギー量は、下記の式で求められます。
1日の適正なエネルギー量 (kcal)=標準体重 (kg)(注 1)× 身体活動量(注 2)
(注 1)標準体重
標準体重( kg)= 身長( m) × 身長(m)×22
(注 2 )身体活動量
軽労作(デスクワークが多い職業など):25 ~ 30(kcal/kg 標準体重)
普通の労作(立ち仕事が多い職業など):30 ~ 35(kcal/kg 標準体重)
重い労作(力仕事が多い職業など):35 ~(kcal/kg 標準体重)
引用元:糖尿病の食事のはなし(献立編)|糖尿病情報センター
1日の総エネルギー量によって食事内容が変わるため、紹介したレシピを参考に、必要に応じてエネルギー量を調整してください。
糖尿病の人の血糖管理に適したレシピを紹介
糖尿病の食事療法では、血糖値の急上昇を防ぎ、栄養バランスを維持するのが大切です。
以下に、簡単にできるものを中心にした具体的なレシピと糖尿病に良い理由を解説します。
鶏むね肉と野菜のホイル蒸し 128kcal
材料 1人分
鶏むね肉60g、白ねぎ20g、にんじん10g、えのき10g、しめじ15g、料理酒7.5g、にんにく1.25g、無塩バター5g、小ねぎ1g、ぽん酢かしょうゆ6g
- アルミホイルに白ねぎを並べ、その上にそぎ切りにした鶏むね肉をのせる。
- 細切りにしたにんじん、石付きを取りほぐしたえのき、石付きを取って細かく切ったしめじを散らす。
- 料理酒とすりおろしたにんにくを混ぜて上からかけ、バターと小ねぎをのせてアルミホイルを包む。
- フライパンにのせ、周りに1〜2cmほど水を入れる。
- 中火にかけ、沸騰したら弱火にして15分ほど加熱する。
- ホイルごと器に盛り、ぽん酢かしょうゆをかける。
鶏むね肉は高タンパクで低脂肪であるため、筋肉量を維持して満腹感を得られます。
野菜は食物繊維が豊富で、血糖値の上昇をゆるやかにします。
根菜と水菜の豆腐サラダ 52kcal
材料 1人分
ごぼう10g、れんこん10g、水菜20g、木綿豆腐20g、八方だし小さじ⅔、すりごま小さじ1、一味適量、酢1Lの水に対して大さじ1
- お湯を沸かし、3cm程度に切った水菜にサッとかける
- 沸騰したお湯に酢を入れ、ささがきにしたごぼうと薄切りにしたれんこんを1分程度ゆでる。
- 豆腐と八方だし、すりごまをペースト状になるまで混ぜ合わせる。
- 器に盛り、七味をかけて完成
根菜は食物繊維が豊富で、血糖値の上昇をゆるやかにします。
すりごまはビタミンEが豊富で抗酸化作用があるため、動脈硬化の予防に役立ちます。
具沢山みそ汁 84kcal
材料 1人分
玉ねぎ30g、にんじん10g、キャベツ30g、ニラ5g、油揚げ10g、だし汁150cc、麦みそ9g
- 薄切りの玉ねぎとイチョウ切りしたにんじん、だし汁を鍋に入れ中火で加熱する。
- 具材が柔らかくなったら3cm程度のざく切りにし、キャベツ、3cmに切ったニラと短冊切りにした油揚げを入れて更に中火で加熱する。
- みそを溶かし入れ、ひと煮立ちさせて火からおろす。
- 器に盛り付ける。
野菜が豊富で食物繊維を多く摂取できるため、血糖値の上昇をゆるやかにします。
油揚げは油抜きによって、カロリーを抑えられます。
りんごとキウイのヨーグルト添え 70kcal
材料 1人分
りんご40g、キウイ30g、プレーンヨーグルト50g
- 皮をむき、食べやすい大きさに切ったりんごとキウイを器に盛り付ける。
- ヨーグルトを添える。
りんごやキウイは低GI食品であり、食物繊維が豊富なため、急激な血糖上昇を防ぐのに最適です。
ヨーグルトはタンパク質が豊富で、代謝アップにもつながります。
紹介したレシピはあくまで一例として、自分の体調や治療内容に合わせて、医師や栄養士に相談してください。
糖尿病に良い食べ物と食べ方を実践して健康を維持しよう
糖尿病や糖尿病予備群の人は、毎日の食事において食べ物や食事の順番などに気をつけてみてください。
食べたいものが食べられないのが辛いときは、糖尿病に良い食べ物の選択や食べ方の工夫で負担なく続けられます。
少しずつ生活習慣に取り入れていくと、長期的な健康維持にもつながります。
日々の食事を見直し、自分に合った方法で健康的な生活を送ってください。