糖尿病は血糖値のコントロールが重要!効果的な食事や運動について解説

糖尿病、血糖値のコントロールが重要!効果的な食事や運動について解説

血糖値は、糖尿病の診断や治療の経過を確認するために利用されている数値です。

血液中のブドウ糖の濃度を示し、食事の前後で変動します。

血糖値は体内のホルモンが作用して一定に保たれていますが、糖尿病や生活習慣の乱れによって高いままの状態となる場合があります。

糖尿病の治療において、血糖値のコントロールは重要です。

この記事では、血糖値が高くなる原因や糖尿病の治療と血糖値のコントロールについて解説します。

この記事でわかること
  • 血糖値が高くなる原因と症状
  • 糖尿病の種類と治療の目的
  • 血糖値をコントロールする方法

糖尿病の種類や具体的な血糖値のコントロール方法についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

糖尿病に関係する血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のこと

血糖値とは?血液中のブドウ糖の濃度のこと

血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度を示す数値のことです。

食事で摂った炭水化物などはブドウ糖に変化し、血液に入ります。

そのため、血糖値は食事の前後で変動します。

ブドウ糖は脳や体内のエネルギー源として使われるため、人体にとって重要な栄養素の1つです。

血糖濃度しくみ

血糖値が上がると、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用によって、血液中のブドウ糖が体内の細胞に取り込まれます。

余分なブドウ糖は、グリコーゲンに変換されて筋肉や肝臓に蓄えられる仕組みです。

血糖値が下がると、膵臓から分泌されるグルカゴンというホルモンの作用によって、筋肉や肝臓に蓄えたグリコーゲンが分解されてブドウ糖になります。

グリコーゲンを分解してできたブドウ糖が血液中に放出されると、血糖値は上昇します。

体内のホルモンの働きによって、血糖値のコントロールが可能です。

血糖値は、糖尿病の診断だけではなく治療効果の確認にも利用されています。

ここでは、血糖値が高くなる原因と症状について解説します。

血糖値が高くなる原因

血糖値が下がらず、高いままの状態は高血糖です。

高血糖の多くは、膵臓から分泌されるインスリンの不足や効き目の低下が原因で起こります。

インスリンの不足や効き目の低下を引き起こして高血糖になる原因を、以下にまとめました。

高血糖原因
  • 遺伝
  • 偏った食生活
  • 運動不足
  • 強いストレス
  • 肥満
  • 睡眠不足
  • 喫煙
  • 過度な飲酒
  • 薬の作用

生活習慣の乱れは血糖値に悪影響を与え、高血糖の原因となります。

遺伝が影響してインスリンの不足や効き目の低下が起こり、高血糖になる場合もあります。

そのため、身内に糖尿病患者がいる人は、整った生活習慣でも高血糖になる可能性があると把握するのが大切です。

高血糖の状態が続くと血管が傷つき、動脈硬化など血管障害を引き起こします。

さらに、治療しないまま放置すると、糖尿病の発症リスクが高まります。

血糖値が高いと起こる症状

血糖値が高い状態であっても、基本的に自覚症状はありません。

しかし、気付かない間にも体内では高血糖による血管障害が進み、糖尿病がかなり進行してから自覚症状が現れます。

症状を自覚したころには、血管や心臓、脳の病気になっている場合もあります。

血糖値が高い状態が続くと現れる代表的な症状を、以下にまとめました。

糖尿病の自覚症状
  • 喉が渇く
  • 尿の回数が増える
  • 尿量が増える
  • 常に疲労感や倦怠感がある
  • 集中力がなくなる
  • 体重が減る

喉の渇きや尿量、尿の回数の増加は高血糖による脱水が原因です。

疲労感や倦怠感を感じたり集中力がなくなったりするのは、体内のエネルギー不足が関係しています。

インスリンの不足や効き目の低下によって、エネルギー源となるブドウ糖が体内の細胞に効率的に取り込まれなくなった結果として起こります。

糖尿病は血糖値やHbA1cなど複数の検査を組み合わせて診断される

糖尿病の診断、複数の検査を組み合わせる

糖尿病の診断には、空腹時血糖値や75g経口ブドウ糖負荷試験など、複数の検査が必要です。

糖尿病に関連する検査は、大きく分けると血糖値を調べるものとインスリンの分泌を調べるものがあります。

検査

血糖値を調べる検査は、以下のとおりです。

  • 空腹時血糖値
  • HbA1c
  • 簡易血糖自己測定
  • 尿糖
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験
  • グリコアルブミン
  • CGM

健康診断では一般的に空腹時に採血がおこなわれるため、空腹時血糖値がわかります。

特定健診では、空腹時血糖値が126mg/dL以上で医療機関への受診を推奨しています。

HbA1cは、検査前1〜2ヶ月の血糖値を反映して日常的な血糖値の状態がわかる数値です。

空腹時血糖値がその瞬間の血糖値を調べる検査であるのに対し、HbA1cは血糖値の平均値を示します。

インスリンの分泌を調べる検査は、以下のとおりです。

  • インスリン濃度
  • Cペプチド

インスリンの分泌を調べる検査は、どちらも採血によっておこなわれます。

インスリン濃度とは、血液中のインスリン濃度を示す数値のことです。

インスリン濃度と血糖値の2つを併せて見ると、糖尿病の状態をより把握できます。

例えば、インスリン濃度が高いのに血糖値が下がらない場合は、インスリン抵抗性の可能性が高いと考えられます。

一方、血糖値が高いのにインスリン濃度が低い場合は、インスリンの分泌機能が低下している可能性が高いです。

ここでは、糖尿病の種類と症状や治療の目的について解説します。

糖尿病の種類と症状

糖尿病とは、血液中のブドウ糖の濃度が高くなりすぎる病気のことです。

膵臓から分泌されるインスリンの不足や効き目の低下により、血液中のブドウ糖が効率的に細胞に取り込まれなくなる結果として起こります。

糖尿病にはいくつかの種類がありますが、大きく分類すると以下の2つが挙げられます。

糖尿病は大きく分けて2種類
糖尿病の型1型糖尿病2型糖尿病
発症年齢若年に多い傾向中高年に多い傾向
症状の現れ方急激に症状が現れる症状が現れない場合もある
体型やせ型が多い傾向肥満の人もやせ型の人もいる
原因膵臓でインスリンを作る細胞が壊れた結果として、インスリンがほとんど分泌されなくなる生活習慣や遺伝的な影響の結果として、インスリンが不足したり効き目が低下したりする
治療方法インスリンの注射食事療法、運動療法、服薬、インスリン注射など

1型糖尿病は、膵臓からインスリンがあまり分泌されないのが主な原因です。

症状が急に現れる場合が多く、注射でインスリンを補う必要があります。

2型糖尿病は遺伝的な要素だけでなく、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が主な原因です。

2型糖尿病は自覚症状がほとんどないため、気付かない間に進行している可能性があります。

糖尿病の治療の目的は重症化や合併症の予防

糖尿病の主な治療は、血糖値のコントロールです。

血糖値のコントロールは、糖尿病の重症化や合併症の予防を目的としておこなわれます。

血糖値が高い状態が続くと、血管が傷ついたり詰まったりして血流が滞る可能性が高いです。

血流が滞ると、血管や血管につながる臓器に悪影響を及ぼします。

糖尿病の慢性合併症と言われる網膜症や腎症、神経障害の多くは、血流の滞りが原因です。

腎臓の病気が進むと人工透析が必要になる場合もあり、生活が制限されてしまいます。

他にも、血液中のブドウ糖が血管を破壊してしまい、脳卒中や心筋梗塞になる可能性もあります。

糖尿病の治療は、日常生活が制限されない期間を伸ばすのが目的です。

糖尿病の血糖値をコントロールする方法には食事療法や運動療法などがある

血糖値をコントロールする方法。食事療法や運動療法

糖尿病の血糖値をコントロールする方法は、主に以下の3つがあります。

糖尿病の血糖コントロールの方法
  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

血糖値は食事や運動、ストレスなどにより1日の中でも大きく変動します。

血糖値を安定させるためには急上昇を防ぎ、高血糖になる可能性がある生活習慣の見直しが大切です。

バランスの良い食生活や運動習慣への意識は、血糖値のコントロールにつながります。

ただし、血糖値のコントロール方法は糖尿病の種類や状態によって異なります。

例えば、多くの1型糖尿病患者はインスリン注射による薬物療法が必要で、食事や運動を厳しく制限する必要はありません。

一方、多くの2型糖尿病患者は、まず食事療法と運動療法がおこなわれます。

ただし、重い合併症がある場合には、運動を制限される場合があります。

血糖値のコントロール方法は、主治医や医療スタッフに確認して取り組みましょう。

ここでは、糖尿病の血糖値をコントロールする食事療法や運動療法について解説します。

糖尿病の食事療法はバランスの良い食事を規則正しく摂る

食事療法

糖尿病の食事療法は、特別な食事を摂るわけではありません。

糖尿病の食事療法をする際には、特に以下の3つを意識する必要があります。

  • 適正な食事量にする
  • 栄養バランスが整った食事を摂る
  • 1日3食を決まった時間に摂る

正しい食生活を身につけて過食を避け、バランスの良い食事を規則正しく摂取しましょう。

適正な食事量は、年齢や性別、日常生活での運動量などによって異なります。

さらに、食事の際に以下に気をつけると、血糖値の急上昇の予防につながります。

  • 食物繊維を積極的に取り入れる
  • 良く噛んでゆっくり食べる
  • 炭水化物は少なめにする

食物繊維は、糖質の消化や吸収を緩やかにするはたらきがあるため、積極的に食事に取り入れると良い栄養素です。

良く噛んでゆっくり食べると、インスリンの分泌と消化のタイミングが合わせられ、血糖値の急上昇の予防が期待できます。

他にも、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防げます。

炭水化物は体内でブドウ糖に分解されるため、食べ過ぎないような心がけが大切です。

糖尿病の運動療法には有酸素運動と筋力トレーニング

糖尿病の運動療法。有酸素運動と筋力トレーニング

血糖値のコントロールを目的に運動をする場合は、有酸素運動と筋力トレーニングをおこないましょう。

運動療法

有酸素運動とは、長時間継続しておこなう運動のことです。

有酸素運動をおこなうと筋肉への血流が増えるため、ブドウ糖が効率的に細胞に取り込まれます。

その結果、血糖値を下げる効果が期待できます。

筋力トレーニングとは、筋力の向上を目的におこなう運動のことです。

筋力トレーニングによって筋肉が増えるとインスリンの効果が高まるため、効率的に血糖値が下げられます。

ただし、有酸素運動も筋力トレーニングも途中でやめると効果が失われるため、継続が大切です。

血糖値をコントロールする効果が期待できる有酸素運動を、以下にまとめました。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 水泳
  • サイクリング

ウォーキングは軽く腕を振って、少し汗ばむ程の強度で1日1万歩を目安におこないます。

ジョギングやサイクリングも、体に負担がかからない程度の強度で取り組みます。

水泳は浮力によって体重が軽くなるため、足腰への負担が不安な人におすすめです。

以下の筋力トレーニングは、血糖値を下げる効果が期待できます。

  • 上体起こし
  • スクワット
  • 背筋
  • かかとの上げ下げ

背中や足などの大きな筋肉を中心に、全身の筋肉を使う筋力トレーニングをおこないます。

道具不要な筋力トレーニングは、日常生活の中で継続できるためおすすめです。

歯磨きをしている間にかかとの上げ下げをおこなう、料理の合間にスクワットをおこなうなど、日常の行動と関連させると習慣化できます。

ただし、糖尿病の程度が重い人や高齢者が強度の高い運動をおこなうと、血管などの負担になる場合があります。

どの程度の運動強度が適切か、事前に主治医や医療スタッフに相談しましょう。

糖尿病は血糖値のコントロールをおこない重症化や合併症を予防するのが大切

血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度を示す数値のことで、糖尿病の診断や治療の指標として使われます。

食事で摂った炭水化物などがブドウ糖に変化して血液に入るため、食前や食後は特に血糖値が変動します。

血糖値が高くなる主な原因は、膵臓から分泌されるインスリンの不足や効き目の低下です。

インスリンの不足や効き目の低下の多くは、遺伝だけでなく偏った食生活や運動不足などの生活習慣の乱れによって起こります。

血糖値が高くても症状に気付かず、症状を自覚したころには糖尿病が進行している可能性が高いです。

糖尿病の治療は、重症化や合併症の予防を目的に血糖値のコントロールをおこないます。

血糖値のコントロールは、主に食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて取り組みます。

糖尿病の状態や年齢によって食事量や運動強度などが異なるため、医師と相談しながら自分に合う方法で取り組みましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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