糖尿病の診断で参照される空腹時血糖の検査は、食事を摂らない状態で血糖値に異常がないか確認します。
検査で判定された数値が基準値を超えていると、高血糖や糖尿病と診断されます。
この記事では、空腹時血糖について、糖尿病の診断における基準値や検査方法などをまとめました。
- 空腹時血糖が糖尿病の検査に用いられる理由
- 血液検査における空腹時血糖の基準値
- 空腹時血糖を検査できる方法
基準値を知りたい人や健康診断以外の検査方法を知りたい人は、参考にしてください。
高血糖や糖尿病の場合には食事なしでも空腹時血糖の数値が高くなる
糖尿病を発症している場合、血糖値は食事の有無に関係なく、常に高い状態です。
しかし、食事で糖質を摂取して一時的に血糖値が上がった状態と常に高血糖な状態は簡単に見分けられません。
そのため、糖尿病の検査においては、基本的に何も食べない状態で血糖値を測定する必要があります。
空腹時血糖の数値を測定する際の空腹とは、朝まで10時間以上絶食した状態のことです。
実際の検査では前日の夜寝る前から食事を摂らないようにするなど、病院や医師の指示に従いましょう。
糖尿病はインスリン本来の働きができなくて高血糖が恒常化した状態
食事で糖質を摂取した場合、一時的に血糖値は上昇しますが、以下の仕組みで下げられます。
- 糖質が体内でブドウ糖となり、エネルギーとして消費される
- 余ったブドウ糖はすい臓から分泌されるインスリンの働きによって、グリコーゲンや中性脂肪に合成される
- 上記の作用により摂取した糖質が消費されて、血糖値が下がる
しかし、すい臓やインスリンの異常が発生していると、余ったブドウ糖を消費できません。
ブドウ糖が血液中に残ったままになり、食事をしていなくても血糖値が高い状態が続きます。
身体はブドウ糖を尿に含めて排出しようとするため、尿中に糖が多い糖尿病の症状が発生します。
糖尿病はインスリン異常が発生した原因によって1型と2型に分けられる
糖尿病は大きく分けると、以下の2つに分類されます。
- 1型糖尿病:すい臓でインスリンを作るβ細胞が破壊されて、インスリンが分泌されなくなる、もしくは分泌されるインスリンの効果がなくなる
- 2型糖尿病:生活習慣の乱れや親族からの遺伝により、インスリンの分泌量が減る、もしくはインスリンの効果が薄まる
国内における1型糖尿病の割合は非常に低く、大半の糖尿病患者は2型糖尿病にあたります。
2型糖尿病の原因である生活習慣の乱れには、以下のような内容が含まれます。
- 栄養素の過剰摂取:血糖値を上げる糖質、肥満につながる脂肪の元になる脂質を食事で摂りすぎる
- 運動不足:運動によって糖質や脂質のエネルギー消費ができず、過剰摂取していなくても血液中のブドウ糖残留や脂肪の蓄積につながる
肥満はインスリンの働きを弱めてしまうため、脂質の摂取量も血糖値に影響を与えます。
空腹時血糖の数値は血液検査によりHbA1cと同時に判定される
糖尿病の検査には血液検査と尿検査が用いられており、空腹時血糖の基準値は血液検査により判定されます。
しかし、糖尿病か否かは、空腹時血糖の数値のみでは判断できません。
血液検査で同時に判定できるヘモグロビンA1cや、尿検査の数値と合わせて判断されます。
空腹時血糖とHbA1cの数値に対する判断基準は、以下のとおりです。
正常 | 正常高値 | 予備群(境界型) | 糖尿病型 | |
---|---|---|---|---|
空腹時血糖値 | ~99mg/dl | 100~109mg/dl | 110~125mg/dl | 126mg/dl~ |
HbA1c | 〜5.5% | 5.6~5.9% | 6.0〜6.4% | 6.5%~ |
血液検査の片方のみの異常、もしくは尿検査の数値に異常が見られた場合、後日再検査をします。
尿検査で尿中の糖質量が多い場合も糖尿病と診断される
糖尿病を発症している場合、尿や腎臓にも以下のような症状が出てきます。
- 血液中の余分なブドウ糖を尿によって体外へ排出しようとするため、尿中の糖質が多くなる
- 糖尿病の合併症の1つである糖尿病性腎症により、腎機能に異常が発生する
尿検査は尿の糖質量や腎機能の状態を確認するために行われており、以下の基準で判断されます。
ブドウ糖(尿検査) | 以下のいずれかで判定される ・- ・+- ・+=1+ ・2+ ・3+ ・4+ |
---|---|
尿中アルプミン(尿検査) | 正常:~29mg/gCr 早期腎症:30~299mg/gCr 顕性腎症:300mg/gCr~ |
ブドウ糖はプラスの数値が多いほど尿中の糖質が多い状態であり、糖尿病の疑いが濃くなります。
血液検査と尿検査のどちらかに異常がある場合は再検査する
糖尿病の初回検査のうち、以下の結果が出た場合は再検査をします。
- 空腹時血糖のみ異常:血液検査と尿検査による再検査
- HbA1cのみ異常:血液検査と尿検査による再検査
- 尿検査のみ異常:尿検査のみ再検査、必要に応じて血液検査も行う
再検査でも基本的に同じ検査で数値を検出して、異常判定を受けた数によって診断されます。
初回検査 | 2回目の尿検査 | 2回目の血液検査 | その他の症状 | 診断結果 |
---|---|---|---|---|
空腹時血糖値のみ異常あり | 異常あり | 異常あり | – | 糖尿病 |
異常あり | – | – | 糖尿病 | |
– | 異常あり | – | 糖尿病 | |
– | – | ・糖尿病の典型的な症状あり ・糖尿病性網膜症の症状が明確にあり | 糖尿病 | |
– | – | – | 糖尿病の疑いあり | |
HbA1cのみ異常あり | 異常あり | 異常あり | – | 糖尿病 |
異常あり | – | – | 糖尿病の疑いあり | |
– | 異常あり | – | 糖尿病の疑いあり | |
– | – | – | 糖尿病の疑いあり |
再検査で異常が検出されなかった場合でも、糖尿病の疑いは完全には消えません。
空腹時血糖に異常がない場合でも食後高血糖に該当する可能性がある
空腹時血糖やHbA1cは糖尿病の判断材料になりますが、異常がない場合でも食後高血糖の可能性があります。
隠れ糖尿病とも言われており、食後高血糖の場合は検査前に食事で糖質を摂っていないと、判断できません。
そのため、検査においては75gのブドウ糖を飲んでから、30分おきに採血をして数値の変化を見ていきます。
経口ブドウ糖負荷試験における基準値は、以下のとおりです。
正常 | 予備群(境界型) | 糖尿病型 | |
---|---|---|---|
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT) | ~139mg/dl | 140~199mg/dl | 200mg/dl~ |
ブドウ糖によりある程度血糖値が上がった状態であるため、空腹時血糖の基準値と数値が異なります。
糖尿病の検査は糖尿病内分泌科の受診もしくは検査キットを購入する
会社等の健康診断以外で糖尿病の検査を自主的に受けたい場合は、以下の方法があります。
- 病院の内科や糖尿病内分泌科で血液検査と尿検査を受ける
- インターネットや薬局で販売されている尿糖検査キットや血液検査キットを購入して、自分で採取した後に提出する
- 全国の薬局に設置されているゆびさきセルフ測定室で、測定器による採血からHbA1cの数値を判定する
検査キットを使用すれば病院に行かなくても検査ができますが、検査機関に提出する必要があります。
すぐに検査結果を知りたい場合は、病院や薬局の測定器が向いています。
それぞれの検査でかかる費用は、以下のとおりです。
検査方法 | 参考価格 |
---|---|
病院の検査 | 2,000~4,000円程度 (医療保険適用あり) |
自宅用尿検査キット | 1,500~3,000円程度 |
自宅用血液検査キット | 4,400~4,950円 |
ゆびさきセルフ測定室 | 550円~1,650円程度 |
検査キットは販売元によって料金が異なる場合があり、医療保険が適用されない分、病院よりも少し料金が高くなります。
空腹時血糖は糖尿病を血液検査で判定する基準になる
空腹時血糖は、食事をせずとも血糖値が高い状態であるかを判断するための基準です。
同じ血液検査で判定されるHbA1cや尿検査の結果と合わせて、糖尿病に該当するか判断されます。
例外的に検査直前にブドウ糖を飲む検査もありますが、基本は指示された時間帯から食事を摂らないようにしましょう。
糖尿病に関連する数値が気になる場合は、病院以外にも検査キットや薬局のセルフ測定室という選択肢もあります。
検査費用を抑えたい場合は、病院の内科や糖尿病内分泌科で糖尿病の検査を受けてみてください。