糖尿病患者こそ炭水化物との共存が重要!血糖値を上げない適量と質の考え方

炭水化物、糖尿病患者こそ共存が重要。血糖値を上げない適量と質の考え方

糖尿病患者をはじめとした、高血糖に悩む人にとっては、炭水化物は摂取してはいけない栄養素と認識されているかもしれません。

しかし、炭水化物はエネルギー源として欠かせない栄養素であるため、高血糖の状態でも上手に共存していくのが大切です。

今回は、糖尿病患者が炭水化物と上手に向き合うための、量と質の考え方について解説します。

炭水化物摂取時に血糖値を管理する工夫や、薬物療法や運動療法など他の対策との関係性についても紹介します。

この記事でわかること
  • 糖尿病対策で炭水化物を完全に断つ必要はない
  • 炭水化物摂取により血糖値が上昇する仕組み
  • 血糖値安定のための炭水化物の量と質の検討の重要性
  • 炭水化物摂取時に血糖値を急激に上げない工夫
  • 糖尿病合併症の発症を予防するための取り組み方
  • 薬物療法や運動療法と炭水化物の摂取の関係性

今回の記事が、炭水化物との正しい取り組み方についての理解を深める一助になると幸いです。

目次

糖尿病対策のために炭水化物を完全に断つ必要はない

完全に断絶せず適量を摂取

糖尿病患者など高血糖に悩む人には、血糖値が上がらないように炭水化物の摂取を避けているケースもあります。

しかし、炭水化物は日常生活に必要不可欠なエネルギーを補う栄養素であるため、高血糖に悩んでいても完全に断つ必要はありません。

炭水化物の重要性について、以下の2点を通して解説をします。

  • 炭水化物は生きていくうえで必要不可欠なエネルギー源
  • 炭水化物の制限により起こる身体上のリスクや健康への影響

糖尿病患者など高血糖に悩む人こそ、炭水化物について正確に理解して正しく普段の食事に取り入れるのが大切です。

炭水化物は生きていくうえで必要不可欠なエネルギー源

炭水化物は、人間が生きていくうえで必要不可欠なエネルギー源です。

特に、脳にとって最も重要な栄養素の1つが炭水化物から生成されるブドウ糖であるため、脳が正常に働くためには炭水化物を摂取する必要があります。

高血糖を改善するために炭水化物を摂取しなかった場合、ブドウ糖が不足して脳に栄養素が行き届かなくなり、集中力の低下や疲労感およびイライラ感などがみられるようになります。

さらに、ブドウ糖は身体全体の筋肉を維持するためにも必要不可欠です。

高血糖を改善するために炭水化物を取らない対策は、身体にとって悪影響を及ぼす行動といえるでしょう。

炭水化物を断つのではなく、適量を見極めながら上手に付き合っていくのが重要です。

炭水化物の制限により起こる身体上のリスクや健康への影響

炭水化物の制限。身体上のリスクや健康への影響

炭水化物を制限すると、身体にさまざまな悪影響が及びます。

ブドウ糖が脳にとって重要な栄養源であるため、炭水化物不足により感情のコントロールが難しくなってしまいます。

集中力が低下したりイライラ感が抑えられなくなったりするのは、脳が正常に働かなくなっている証拠です。

さらに、糖質が不足した食生活を継続していると、かえって血糖値管理が難しくなってしまう場合もあります。

糖質不足により体内のエネルギーが足りなくなり、たんぱく質をエネルギーに変換する作用が体内で発生するため、筋肉量の低下につながるのも問題です。

炭水化物を断つと、多くの悪影響が身体に及んでしまうため、極端な制限をするのは避けましょう。

低血糖の状態は高血糖と並び身体に大きな悪影響を及ぼす状態

炭水化物を極端に制限した結果、低血糖の状態に陥ってしまう場合があります。

低血糖は、高血糖と並んで身体に大きな悪影響を及ぼす可能性のある状態です。

低血糖の状態が継続した場合、以下のような症状がみられます。

  • 冷や汗
  • 動悸
  • 手の震え
  • 空腹感
  • 不安感

さらに症状が悪化すると、意識障害やけいれんが引き起こされ、場合によっては生命の危険に至ってしまう可能性もあります。

高血糖に悩む状況において、血糖値は下げれば下げるほどよいわけではなく、低血糖も身体に重大な影響を及ぼす可能性があります。

高血糖に悩む状況でも、炭水化物の摂取を止めるのではなく適度な量の摂取は必要不可欠であると理解して、専門医と相談しながら調整しましょう。

炭水化物の摂取により血糖値が上昇する仕組みを理解しよう

糖が血液に取り込まれ血糖値上昇

炭水化物は血糖値を上昇させる要因であると同時に、生命活動を維持するうえで欠かせない栄養素でもあります。

糖尿病患者など高血糖に悩む人が炭水化物と上手に付き合っていくために、糖質による血糖値の上昇の仕組みを理解しておくとよいでしょう。

適度な炭水化物の摂取を目指すうえで、糖質が血糖値に及ぼす影響を理解しておくのは大切です。

炭水化物の摂取により血糖値が上昇する仕組みを、以下の3点を通して解説します。

  • 炭水化物は体内に取り込まれてブドウ糖になり血液中に吸収される
  • 血糖値の管理においてインスリンというホルモンが重要な働きをもつ
  • 炭水化物の過剰摂取が血糖値スパイクを引き起こす要因となる

炭水化物を摂取しながら血糖値管理を行う上で欠かせない知識であるため、ぜひ参考にしてみてください。

炭水化物は体内に取り込まれてブドウ糖になり血液中に吸収される

摂取した炭水化物は、体内に取り込まれて分解されてブドウ糖になります。

血糖値が上昇するのは、ブドウ糖が血液中に吸収されて体内を巡るため、血液中の糖質量が増えるという仕組みです。

血液中に吸収されたブドウ糖は、血液によって身体の各細胞にエネルギー源として吸収されて、各器官がそれぞれの役割をこなす栄養源となります。

特に脳でのエネルギー消費量は多く、人間の生命活動を維持するうえで重要です。

炭水化物がブドウ糖に分解されて血中に吸収されるのは人間の生理作用であるため、食後に血糖値が上昇するのは避けられません。

健常者の場合は上昇した血糖値を下げる作用が起こり、食事前の正常な血糖値に戻ります。

血糖値の管理においてインスリンというホルモンが重要な働きをもつ

血糖値の管理。インスリンが重要な働きをもつ

血糖値を適正に管理するうえで、重要な働きをするのがインスリンと呼ばれるホルモンです。

インスリンとは、すい臓で生成されるホルモンのことで、血糖値が上昇すると分泌されます。

インスリンは血中の糖質を分解して細胞の中にエネルギー源として取り込む作用があり、インスリンが正常に作用しないと血中の糖質は細胞に吸収されず、血糖値が高いままとなります。

糖尿病の人は、何らかの要因でインスリンの分泌量自体が不足したり働きが弱くなってしまったりして、血糖値のコントロールが十分にできません。

インスリンの働きが不足している糖尿病患者は、インスリンを人工的に投与して血糖値を適正な水準に下げる治療を行います。

炭水化物の過剰摂取が血糖値スパイクを引き起こす要因となる

炭水化物を過剰に摂取すると、血糖値スパイクを引き起こす要因となります。

血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急激に上昇と下降を繰り返す現象のことです。

血糖値をグラフにすると、上向きに針が飛び出ているように見える点から、血糖値スパイクと呼ばれています。

本来は、高血糖の状態になるとインスリンが分泌されて、すぐに血糖値を下げるように作用します。

しかし、炭水化物の摂取量が多く急激に血糖値が上昇すると、インスリンの働きが追い付きません。

インスリンが正しく血糖値管理効果を発揮するためには、炭水化物を一気に大量摂取するのは避けるほうがよいでしょう。

血糖値を安定させる炭水化物の量と食材を戦略的に検討しよう

極端な制限をする必要はない

血糖値を安定させるため、炭水化物の摂取量と摂取する食材質について戦略的に検討するのは大切です。

血糖値の安定に加えて、健康の維持に関しても考慮しないといけません。

炭水化物は避けたほうがいいのではないか、と安易に判断して食事制限をするのは危険です。

血糖値を安定させるため、炭水化物について考慮するポイントを以下で3点紹介します。

  • 糖尿病患者は1日のエネルギーを炭水化物で50%強摂取する
  • GI値を基準として血糖値の上昇が緩やかな炭水化物の食材を取り入れる
  • GL値の性質も加味して具体的な食事量についても考慮する

炭水化物と上手に付き合って、安全かつ健康を維持しながら血糖値管理に努めましょう。

糖尿病患者も1日のエネルギーを炭水化物から50%強摂取する

糖尿病患者であっても、1日のエネルギーを炭水化物から50〜60%摂取するのが理想的であると考えられています。

参照元:4 食事療法 – 一般社団法人 日本糖尿病学会4 食事療法 – 一般社団法人 日本糖尿病学会

炭水化物で50〜60%のエネルギーを摂取するのは、健常者と変わりません。

日本糖尿病学会の資料では、炭水化物やたんぱく質および脂質のバランスが大切であり、ビタミンやミネラルも適度に摂取してすべての栄養素を過不足なく摂取する重要性が述べられています。

極端な制限をする必要はなく、バランスを意識した食事をするのが肝要です。

ただし、症状によって対処の仕方は変わってくるので、必ず専門医の指示に従いましょう。

GI値を基準として血糖値の上昇が緩やかな炭水化物の食材を取り入れる

GI値を基準。血糖値上昇が緩やかな食材を選ぶ

炭水化物の食材を取り入れる際は、GI値を基準として、血糖値の上昇が緩やかなものを選びます。

GI値とは、グリセミックインデックス(Glycemic Index)の略称で、糖質の吸収度合いを数値で示した食材ごとの指標のことです。

ブドウ糖を100として他の食材の糖質吸収度合いを数値化しており、GI値が高い食材ほど血糖値が早く上昇します。

穀物の中でもGI値には違いがあり、白米は高く玄米や雑穀米は低めです。

糖尿病患者の場合は、GI値の低い炭水化物の食材を優先的に選んで、血糖値の上昇を抑えるようにするとよいでしょう。

専門医とも相談しながら、GI値を意識して食材選びをして血糖値の適正な管理に努めてください。

GL値の性質も加味して具体的な食事量についても考慮する

GI値に加えて、GL値の性質も考慮に入れて、具体的な食事量を決めていくのも大切です。

GL値とは、グリセミックロード(Glycemic Load)の略称で、GI値に食べる量を加味した指標のことを指します。

GL値は、以下の計算式で算出されます。

GL値=食品に含まれる炭水化物の量(g)×GI値÷100

GI値と同様に血糖値の上昇度合いを示す指標ですが、1食あたりに食べる量を加味しているのが特徴です。

GI値では低い数値を示していても、GL値でみると高い数値となる食事もあります。

たとえば、さつまいもはGI値の低い食材ですが、焼き芋にすると1本すべて食べるケースが多くGL値が高くなります。

糖尿病など高血糖の人が献立を考える際は、GI値とともにGL値も加味して、決めていきましょう。

炭水化物との上手な付き合い方を普段の生活において意識する

普段の生活で血糖値管理を意識

普段の生活において、炭水化物との上手な付き合い方を意識すると、血糖値管理に効果的です。

外食やコンビニでの買い物など、日常生活で炭水化物を取る機会はさまざまにあります。

普段の食事において、血糖値上昇を抑える意識をもって食べるものを選びましょう。

普段の食生活における炭水化物との付き合い方を意識した取り組みについて、以下の3つのポイントを通して紹介します。

  • 外食時は炭水化物過多にならないような配慮が必要不可欠
  • コンビニでの食事においても工夫次第で健康面に配慮できる
  • 忙しい日に備えて適正な炭水化物の摂取ができるよう準備する

日常生活において、偏った食事をして健康を害さないように意識するのが大切です。

外食時は炭水化物過多にならないような配慮が必要不可欠

外食時は、炭水化物が過多にならないような配慮をする必要があります。

特に外食時に気を付けなければならないのが、丼の単品です。

ラーメンや牛丼など、丼ものの単品の場合はバランスが悪く炭水化物過多になってしまいます。

定食メニューを選ぶなど、可能な限りさまざまな栄養素をバランスよく取れるように配慮しましょう。

外食時には、食べる順番を意識するのも重要です。

炭水化物の食材は最後に食べたほうが、血糖値の上昇を抑えられます。

外食時は炭水化物過多をはじめとした栄養バランスの欠如が多くみられるため、バランスの取れたメニュー選びや食べる順番を意識して取り組むのが大切です。

コンビニでの食事においても工夫次第で健康面に配慮できる

コンビニでの食事。工夫次第で健康面に配慮できる

忙しい時や時間がない時に、コンビニで食べ物を購入して昼食や夕食にする機会が多い人もいるでしょう。

コンビニで購入する食事でも、工夫次第で健康面に配慮できます。

たとえば、おにぎりやパンのみを購入したりパスタ単品のみにしたりするのではなく、サラダや野菜入りスープを副菜に付けると栄養バランスを確保できます。

さらに、炭水化物を購入する際も白米ではなく玄米などGI値が低い食材を選ぶと血糖値の管理が可能です。

近年は、コンビニスイーツという名目で、見た目もおしゃれでおいしいスイーツ商品が充実しています。

しかし、血糖値管理の面では相性の悪い商品であるため、高血糖に悩む人は避けたほうが無難です。

コンビニに関して、バランスの悪い食事しかできないというイメージがあるかもしれませんが、購入する商品を選ぶと十分にバランスに配慮した食事ができます。

忙しい日に備えて適正な炭水化物の摂取ができるよう準備する

忙しい日に備えて、血糖値の管理に効果のある炭水化物の摂取ができるように、あらかじめ準備しておく方法もあります。

たとえば、玄米を多めに炊いて冷凍保存しておくと、時間がない時でも電子レンジで加熱してすぐに食事に利用できます。

調理した野菜を小分けして冷凍保存しておくと、必要な時に適量を手軽に利用できて便利です。

近年は、一食分のパックタイプのご飯も販売されているため、時間がない忙しい時に重宝します。

玄米を使ったものも販売されているため、GI値に配慮しながら食材選びが可能です。

冷凍保存やすぐに食べられるタイプの商品を活用して、忙しい時でもバランスよく血糖値上昇を抑えられる食事ができるように心がけるとよいでしょう。

炭水化物を摂取する際は血糖値を上げない工夫をするのも重要

炭水化物を食べる際の工夫を習慣化

炭水化物は、糖尿病など高血糖に悩む人も摂取したほうがよい栄養素です。

しかし、炭水化物は血糖値を高める栄養素である点は変わらないため、炭水化物を摂取する際に血糖値を上げない工夫が必要となります。

食事をする際の習慣を意識するだけで、血糖値の上昇を抑えられます。

炭水化物を含んだ食事をする際に、血糖値を上げないための方法として、主なものは以下の3つです。

  • 野菜を先に食べるベジタブルファーストの方法を取り入れる
  • セカンドミール効果を意識して1日の始めに摂取する食材を考慮する
  • 早食いをせずしっかりと噛みながらゆっくりと食べる習慣も大切

普段の生活に取り入れられる簡単なものばかりであるため、ぜひ実践してみてください。

野菜を先に食べるベジタブルファーストの方法を取り入れる

野菜を先に食べる、ベジタブルファーストを食事の際の習慣にすると血糖値の急上昇を抑えられます。

ベジタブルファーストとは、言葉のとおり野菜を最初に食べる習慣のことです。

野菜には、糖質の吸収をゆっくりにする食物繊維が豊富に含まれています。

最初に野菜を食べて食物繊維を摂取すると、急激な血糖値上昇を抑制できます。

しっかりと噛んで食べると、満腹感も得られて食べ過ぎを予防できるのも特徴です。

野菜の次にたんぱく質を含む食材、最後に炭水化物を多く含む食材という順番で食べるのが、血糖値管理の面で優れています。

ベジタブルファーストは、普段の食事をする際に意識するだけで取り組める高血糖対策であるため、ぜひ実践してみてください。

セカンドミール効果を意識して1日の始めに摂取する食材を考慮する

セカンドミール効果。1日の初めに摂取する食材を考慮

摂取する栄養素の種類を1日単位で考慮して、セカンドミール効果を意識するのも血糖値管理に有効です。

セカンドミール効果とは、1日のうち最初に食べた食事の内容が、次に食べる食事の後の血糖値上昇に影響する効果のことを指します。

たとえば、バナナのような食物繊維が豊富な食材や全粒粉パンのようなGI値が低い食材を朝食に食べると、昼食における血糖値上昇が抑えられます。

したがって、朝食に血糖値の上昇を抑える食材を選択すると、昼食時の血糖値の急激な上昇の抑制が可能です。

血糖値管理を目指す際は、特に朝食に食べる食材に配慮すると、効率よく血糖値の上昇を抑えられます。

早食いをせずしっかりと噛みながらゆっくりと食べる習慣も大切

食事をする際に、早食いをせずしっかりと噛みながらゆっくりと食べる習慣も大切です。

早食いをすると、血糖値のコントロールをするインスリンが食物の摂取に追い付かず、血糖値が急激に上がるケースが増えます。

インスリンの分泌を急激に行うよう身体が反応するため、身体の負担が大きくなるのも欠点です。

さらに、しっかりと噛まないと身体の満腹中枢が十分に刺激されず、満腹感が得られないまま食べ過ぎてしまいます。

しっかり噛んでゆっくり食べる行為により、唾液の分泌を促し食物の消化を助ける働きも期待できるため、身体への負担を軽減できます。

食事をする際は、噛む回数を増やしてゆっくりと時間をかけるようにすると、血糖値管理に有効です。

炭水化物の賢い活用により糖尿病合併症のリスクを軽減できる

糖尿病が原因で重篤な病気に発展

糖尿病に罹患すると、さまざまな合併症のリスクが上昇します。

糖尿病の主な合併症は、以下のとおりです。

  • 糖尿病性神経障害:手足のしびれや痛みおよび感覚の低下
  • 糖尿病性網膜症:視力低下や失明の恐れ
  • 糖尿病性腎症:腎臓のろ過機能の低下

糖尿病を起因として重篤化につながらないよう、普段の食事への配慮は必要不可欠です。

糖尿病合併症のリスクを軽減するために、食事に関連するポイントを、以下に3点紹介します。

  • 食事療法を糖尿病重篤化予防につなげるには継続実施が必須
  • 炭水化物を断つのではなく上手に付き合って健康と糖尿病予防を両立
  • 自己判断をせず必ず専門医の指示を守りながら取り組む

炭水化物との賢い付き合い方を学び、糖尿病合併症のリスクを軽減できる食べ方を理解しましょう。

食事療法を糖尿病重篤化予防につなげるには継続実施が必須

食事療法を、糖尿病を起因とした重篤化の予防につなげるためには、継続的な実施が必要不可欠です。

糖尿病になったからといって、急に炭水化物の摂取を止めて症状が改善されるものではありません。

適度な炭水化物を含めて、日々栄養バランスの取れた食事を継続する必要があります。

糖尿病の食事療法といっても専門的な取り組みをするものではなく、具体的な内容は規則正しい食生活の継続です。

満腹になるまで食べない、ゆっくり噛んで食べる、間食を避けるなど小さな心掛けを継続する取り組みが重要となります。

バランスの取れた食事を継続して血糖値を安定させると、投与する薬物の効き具合を確認する上でも効果があります。

糖尿病による重篤化リスクを軽減するため、日々の食事における小さな心掛けを継続して取り組むのが大切です。

炭水化物を断つのではなく上手に付き合って健康と糖尿病予防を両立

炭水化物と上手に付き合う。健康と糖尿病予防を両立

糖尿病になったからといって、炭水化物を断つのは正しい対応ではありません。

炭水化物と上手に付き合って健康と糖尿病予防を両立させる対応が必要です。

前述のとおり、炭水化物はエネルギー源として必要不可欠な栄養素であるため、摂取を止めると身体に悪影響が及んでしまいます。

糖尿病になった人あるいは高血糖に悩んでいる人は、白米の量を減らして玄米などGI値の低い食材に変えるなど、血糖値上昇を抑えるための工夫をしましょう。

健康にとって炭水化物は必要不可欠な栄養素であるため、糖尿病予防といえども完全に断つのは避けて上手に付き合っていくのが正しい対応方法です。

自己判断をせずに必ず専門医の指示を守りながら取り組む

自己判断をしない。必ず専門医の指示を守り取り組む

食事療法など、炭水化物の摂取を含めた糖尿病対策を講じる際には、自己判断をせずに必ず専門医の指示を守りながら取り組むのが大切です。

糖尿病患者でも、炭水化物により50~60%のエネルギーの摂取が推奨されています。

しかし、患者1人1人の状況により対処方法はさまざまで、場合によっては炭水化物の摂取量をより減らす必要があるかもしれません。

投薬治療中の人は、医師より炭水化物の摂取量を指定される場合もあるでしょう。

糖尿病治療は、専門医の判断のもと慎重な判断を要するケースが多いです。

自己判断をした結果、症状が悪化してしまう可能性もあるため、必ず専門医の指示を聞いてしっかりと守りましょう。

糖尿病の薬物療法と炭水化物の摂取量は密接に関係している

投薬中は食事内容を特に意識する

糖尿病の治療において、薬物療法を用いる際は、炭水化物の摂取量にも配慮する必要があります。

投与する薬物の効果を最大限に高めたり、薬品の効果を確認したりするために、炭水化物の摂取量を調整します。

薬物治療をしている場合でも、他の治療時と同様に炭水化物の摂取量に関して十分な配慮をしましょう。

糖尿病の薬物治療と、炭水化物の摂取量の関係性について、以下の2点を踏まえて解説します。

  • 1日の炭水化物摂取量の平準化が薬物の効果確認において重要
  • 薬物療法中は炭水化物の過剰摂取および不足の両面を回避する

医師の指示を受けながら、適切な対処ができるように取り組んでください。

1日の炭水化物摂取量の平準化が薬物の効果確認において重要

1日の炭水化物摂取量の平準化。薬物の効果確認において重要

1日当たりの炭水化物摂取量の平準化は、薬物療法における投薬の効果を確認するうえで重要です。

糖尿病治療においては、投薬の効果を確認するために、定期的に血糖値の測定を行います。

投薬によって得られた効果を確認するうえで、他の条件を可能な限り一定にするのが重要です。

そのため、炭水化物の極端な制限あるいは予定以上の摂取をしていると、投薬による身体への影響を正確に判断できなくなってしまいます。

糖尿病の薬物療法において、正確な血糖値測定は必要不可欠であるため、測定結果に信頼性を与えるために炭水化物の摂取量を一定に保つように日々の食生活に配慮しましょう。

薬物療法中は炭水化物の過剰摂取および不足の両面を回避する

薬物治療中は、炭水化物の過剰摂取および不足の両面を回避する必要があります。

投薬の効果を正確に把握するために、炭水化物の摂取量は一定に保たないといけません。

過剰摂取はもちろん不足するのも、検査結果と現実との差が開いてしまう結果となります。

さらに、炭水化物の不足は糖尿病治療以前に、身体に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。

薬物治療中は、いつも以上に食事内容に配慮して、炭水化物の摂取量を一定に保つのが重要です。

治療を効率的に進めるためにも、炭水化物の摂取量には特に注視しながら取り組んでみてください。

食事への配慮に加えて他の血糖値改善方法を並行して取り入れる

食事以外で血糖値管理に効果あり

炭水化物の摂取量を含め、食べ物による血糖値に与える影響は大きいです。

糖尿病治療や高血糖対策に、食事療法を採用したり食事の改善を行ったりするケースも多いでしょう。

食事療法に加えて、血糖値改善の方法を並行して実践すると、より高い血糖値管理効果が得られます。

食事以外で血糖値管理上重要と考えられる内容について、以下に3点紹介します。

  • ストレスの多い生活は血糖値の管理において悪影響を及ぼす
  • 喫煙も糖尿病リスクを高める要因であるため禁煙が推奨される
  • 適度な運動習慣を食事療法と組み合わせて実施すると効果的

糖尿病治療を効率よく進めるため、炭水化物管理に加えて他の手法についても積極的に取り入れるとよいでしょう。

ストレスの多い生活は血糖値の管理において悪影響を及ぼす

ストレスの多い生活は、血糖値に悪影響を及ぼす要因です。

強いストレスを感じた際は、自律神経のうち交感神経が刺激されて、血糖値を上昇させる効果をもつホルモンが生成されます。

近年は、以前にはなかったSNSの普及など、ストレスにつながるものが増加傾向にあります。

血糖値管理の面からも、適度にストレスを解消できるような取り組みが必要です。

義務的にならずに、心底楽しめる趣味を見つけるのも、効果的な対策といえるでしょう。

ストレスの血糖値への悪影響を理解して、ぜひストレスを定期的に解消できる取り組みをしてみてください。

喫煙も糖尿病リスクを高める要因であるため禁煙が推奨される

喫煙も糖尿病リスクを高める。喫煙の実施が推奨

喫煙も、糖尿病リスクを高める要因と考えられているため、禁煙の実施が推奨されています。

喫煙をすると、交感神経が刺激されて血糖値の上昇につながります。

さらに、喫煙にはインスリンの働きを妨げる作用があるため、糖尿病のリスク上昇要因の1つです。

たばこ好きの人にとっては、ストレス発散の目的で喫煙をするケースも多いでしょう。

ストレスの解消は、前述のとおり糖尿病リスクの軽減に効果があります。

しかし、喫煙によりストレスが発散できたとしても、喫煙自体が糖尿病リスクになりうるため糖尿病リスクが軽減されません。

糖尿病の患者や、高血糖に悩んでいる人は、血糖値管理の面において禁煙に取り組むのも大切です。

適度な運動習慣を食事療法と組み合わせて実施すると効果的

食事療法に加えて、適度な運動習慣を同時に実践すると、糖尿病リスクの軽減に効果的です。

糖尿病患者向けの治療方法は、食事療法以外にも多く存在します。

その中でも運動療法は、多くの糖尿病患者向けに実践されている療法です。

運動療法は、主に以下の2種類が用意されています。

  • 有酸素運動
  • 筋力トレーニング

有酸素運動とは、運動強度が中程度の継続的な運動のことです。

有酸素運動の具体例としては、ジョギングやウォーキング、および水泳やサイクリングなどが該当します。

さらに、筋力トレーニングを行うと筋肉量が増加し基礎代謝が上昇するため、血糖値管理に効果があります。

有酸素運動と筋力トレーニングは、継続して実施するのが大切です。

食事療法と合わせて運動習慣を取り入れると、糖尿病患者の治療や糖尿病予防に高い効果が期待できます。

糖尿病患者こそ炭水化物を上手に取り入れストレスのない食事を目指す

糖尿病になったからといって、完全に炭水化物を断つ必要はありません。

炭水化物は、生命活動を維持するうえで必要不可欠な栄養素です。

糖尿病になった人あるいは糖尿病予防を実施する人は、炭水化物を摂取する際に適切な量と食材に配慮する必要があります。

量の面では、1日のエネルギー摂取量の50〜60%を炭水化物から摂取するのが推奨されています。

白米は血糖値上昇の指標であるGI値が高いため、玄米などをGI値の低い食材にすると効果的です。

食事療法を実践する際は、医師の指示に従いながらベジタブルファーストの考え方に従って野菜を先に食べるようにしましょう。

運動療法など他の治療も実践しながら、炭水化物を上手に取り入れて血糖値管理に努めてみてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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