糖尿病の人でもバナナを食べて血糖値をコントロールする方法を解説

糖尿病の人でもバナナを食べて血糖値をコントロールする方法を解説

この記事では、バナナの成分や熟度を理解して食事療法を行うと、糖尿病の人でもバナナを摂取できる点について解説をします。

ダイエットや運動の際にもよく取り入れられるバナナは、カロリーや糖質が高いですが、糖尿病の人もバナナを我慢する必要はないと理解してもらえる内容になっています。

この記事でわかること
  • バナナに含まれるミネラルには血圧を下げる効果がある
  • バナナは糖質が高いが豊富な食物繊維とビタミンB1の働きにより血糖値の急上昇を防げる
  • バナナの血糖指数は比較的低く、糖尿病の人は青いバナナか黄色のバナナを選ぶと良い
  • シュガースポットのあるバナナは、血糖指数も高いため糖尿病の人には非推奨
  • バナナは朝に食べると血糖値スパイクを防げる可能性が高い
  • 糖尿病の人もバナナを食べて良いが、食事療法による栄養バランスを軸にした献立作りが大切

この記事を読んで、糖尿病の人でもバナナを食べるメリットと、バナナの取り入れ方を学んでください。

目次

バナナは豊富な栄養素をバランス良く効率的に摂取できる優秀な果物

バナナは優秀な果物。豊富な栄養素を摂取できる

バナナには多くの栄養素がバランス良く含まれ、多くの日本人に好まれる果物です。

糖尿病の人は糖質が高いという理由から、バナナを避ける傾向にあります。

しかし、バナナの成分は糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐのが特徴です。

血糖値の急上昇を防ぐ代表的な成分として、以下のものが含まれます。

  • ミネラル(マグネシウム・カリウム)
  • ビタミン群(ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ナイアシン・葉酸)
  • 食物繊維(水溶性食物繊維・不溶性食物繊維)

この3つの成分について、1つずつ解説します。

バナナに含まれるミネラルは血圧を下げる効果と生命維持に不可欠

ミネラル。血圧を下げる効果と生命維持に不可欠

バナナに含まれるミネラルにはマグネシウムとカリウムがあり、マグネシウムは体内の数百もの酵素の働きを助け、特にカルシウムに作用して骨の形成に大きく関与します。

もう1つのミネラルであるカリウムの効果として挙げられるのは、腎臓でナトリウムの吸収率を維持し一定の数値に保つ作用です。

腎臓内でナトリウムの吸収を調整し、不要な量を排出して高めの血圧を下げるほか、細胞の浸透圧を維持してむくみを取る作用もあります。

このようにカリウムは、体内の塩分の維持管理や心臓機能、血圧機能を調節する重要な成分で人体に必要不可欠な栄養素の1つです。

バナナ1本100gに含まれるミネラル量

成分成分量機能
カリウム360mg・ナトリウムとともに細胞の浸透圧を維持
・ナトリウムの再吸収を抑制、排泄し血圧を下げる
マグネシウム32mg・多くの酵素の働きを活性化させ、生命維持に不可欠
・筋収縮の制御や血管を拡張し血圧を下げる作用

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07107_7&MODE=0)

(参照元:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-k.html)

(参照元:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-mg.html)

バナナに豊富に含まれるビタミンが体に与える作用について解説

バナナに含まれるビタミンには糖質の代謝を助けるビタミンB1に加えて、脂質の代謝を促進するビタミンB2やナイアシン、葉酸も含まれます。

ビタミンは体内で十分に生成や合成ができず、大半は食べ物から摂取する必要があります。

そのため、効率良く摂取したい場合にも、バナナを食べるのは有効です。

バナナ1本100gに含まれる主なビタミン

成分成分量機能
ビタミンB10.05mg・糖質の代謝を助ける
・むくみ対策
・疲労回復
・神経の働きを正常に保つ
ビタミンB20.04mg・脂質の代謝を助ける
・過酸化脂質の分解促進
・口内炎対策
ビタミンB60.38mg・タンパク質の代謝を助ける
・神経伝達物質の合成を助ける
ナイアシン0.7mg・脂質の代謝、アミノ酸の代謝に関係
・皮膚や粘膜の健康をサポートする
葉酸26㎍・ビタミンB12とともに造血を担う
・貧血対策に効果的

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07107_7&MODE=0)

バナナに含まれる食物繊維は血糖値急上昇を防ぎ満腹感も持続させる

食物繊維。血糖値急上昇を防ぎ満腹感も持続

バナナに含まれる食物繊維の効果として、食後血糖値の急激な上昇を抑える作用や、排便を促進し便秘を改善する効果があります。

バナナに含まれる食物繊維には水溶性と不溶性のものがありますが、いずれも腸内の善玉菌やビフィズス菌の栄養源となり、腸の消化吸収を助けてくれます。

特に水溶性食物繊維の働きは、小腸まで届き余分な脂質を吸着して排出するものです。

そして、バナナにもう1つ含まれる不溶性食物繊維は、難消化性デンプンとも呼びます。

デンプンは一般的に小腸で消化吸収されエネルギー源となりますが、難消化性デンプンは大腸まで届き腸内環境を良くする働きを持ちます。

不溶性食物繊維は咀嚼回数を増やすため、満腹感も持続するのです。

バナナ1本100gに含まれる食物繊維量と難消化性デンプン

成分成分量
食物繊維総量1.1g
水溶性食物繊維0.1g
不溶性食物繊維1.0g

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07107_7&MODE=8)

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/nutman/nutman_08.html)

(参照元:https://www.banana.co.jp/nutrition-function/dietary-fiber/)

(参照元:https://www.nippn.co.jp/BrandB/eiyou/column/08.html)

バナナは糖質が多いものの体内で分解できる成分が多く含まれている

バナナには特に血中に比較的多く吸収される糖質であるブドウ糖や果糖、ショ糖が含まれるため、食べると血糖値が高くなると思われがちです。

しかし、バナナに豊富に含まれる食物繊維が糖質の吸収を緩やかにし、血糖値上昇も穏やかにする効果があります。

食物繊維に加えて、ビタミンB1は中枢神経や末梢神経を正常に保つために、糖からエネルギーを得て糖の代謝を助ける役割も持ちます。

このように、糖質が多いバナナですが、体内では比較的糖質が分解されうる成分で構成されているのです。

バナナ1本100gのタンパク質中に含まれる糖質

成分成分量機能
ブドウ糖2.6g・体の主要エネルギー源
・摂取後、すぐにエネルギーに変換される
果糖2.4g・体のエネルギー源になる
・甘味をより感じられるようにする
ショ糖10.5g・ブドウ糖と果糖が結合した糖質で、腸内で分解されそれぞれ吸収される

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07107_7&MODE=7)

(参照元:https://www.banana.co.jp/nutrition-function/sugariness/)

(参照元:https://imfc.jp/blog/515)

バナナの成分にはストレスによる血糖値上昇を防ぐアミノ酸も含まれる

アミノ酸。ストレスによる血糖値上昇を防ぐ

もう1つ解説したいバナナの成分としては、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンについてです。

NPO法人「食と健康プロジェクト」の研究によると、脳がストレスを受けるとインスリンの分泌を阻害して血糖値が上昇する現象が、2型の糖尿病の人に現れると確認されました。

アミノ酸の1つであるトリプトファンからは、脳にある伝達物質のセロトニンが合成されます。

セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンを制御し、神経を安定させる作用を持つため、ストレスに敏感で精神状態を安定させたい人にもバナナは有効です。

バナナ1本100gのトリプトファン中に含まれる糖質

トリプトファン10mg

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07107_7&MODE=1)

(参照元:https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001414.html)

(参照元:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-074)

(参照元:https://www.banana.co.jp/nutrition-function/amino-acid/)

糖尿病の人がバナナを食べる際はGI値とバナナの熟度に注目

GI値とバナナの熟度に注目

糖尿病の人が食事の際に気にすべき値は血糖指数を指すGI値であり、GI値は血糖値の管理において重要です。

GI値とは、食品に炭水化物を食べた後にどれぐらいの速度で血中の糖度が上昇するか示す数値のことで、食後2時間までの血糖値をもとに算出します。

GI値の定義として、70以上は高GI、56~69は中GI、55以下が低GIです。

高GI食品は糖質の吸収率が高いため血糖値を急激に上昇させる一方、低GI食品は緩やかに糖質を吸収し、血糖値もゆっくりと上昇します。

このようなGI値による糖質の吸収スピードを考慮すると、血糖値を気にする人や糖尿病の人は低GIの食品を選ぶのが望ましいです。

この定義を見ると、糖質が多く含まれるバナナのGI値も高いのではないかと不安になる人もいるでしょう。

実はバナナ1本あたり51~54と低GIに分類されるため、糖尿病の人でも1日1本であればバナナを食べても問題ありません。

ただし、次に説明するバナナの熟度によって糖度は変化し、GI値も変化するためしっかりと見極めてください。

(参照元:http://www.gikenkyukai.com/topics/1101.html)

(参照元:https://www.sumifru.co.jp/trivia/calorie/)

(参照元:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/osaka/cat080/kashitsuke-131227/20250613/)

バナナのGI値はバナナの熟成度で変化するため気を付けよう

GI値。バナナの熟成度で変化する

バナナのGI値の基準となるのは一般的に想像される黄色のバナナであり、先ほど提示したGI値51~54のバナナはこれに該当します。

しかし、バナナは熟度によってGI値42~62程度と変化する特徴があり、特に低GIのバナナはまだ熟しきっていない両先端が緑色のバナナです。

反対に、シュガースポットと呼ばれる茶色の斑点があるバナナは糖度が高く甘味も増しますが、その分糖質が高くなるため中GIに分類されます。

青いバナナは低GIである上に、黄色やシュガースポットのあるバナナよりも難消化性デンプンが多く、歯ごたえがあるのが特徴です。

弘前大学の「バナナの澱粉」という論文では、未熟なバナナはデンプン:糖の割合が20:1であるのに対し、バナナが熟すにつれてデンプンが糖化し比率が1:20に変化するという研究結果も示されています。

血糖値が気になる人や糖尿病の人は、なるべく青いバナナか熟度の低い黄色のバナナを積極的に選ぶようにしましょう。

バナナの熟度と特徴

バナナの熟度特徴
青いバナナ・固めで歯ごたえがある実
・低GI値
・難消化性デンプンが最も多く含まれる熟度で、特に腹持ちが良い
黄色いバナナ・ほどよい弾力があり、均整の取れた味
・低GI値
・ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6が最も多く含まれる熟度
茶色いバナナ
(シュガースポットあり)
・柔らかく甘い
・中GI値
・胃粘膜を保護する成分であるリン脂質が多く含まれる
・熟したバナナほど、ポリフェノール含有量が増加する・シュガースポットが出ると糖度が上がるため、血糖値が気になる人や糖尿病の人には非推奨

(参照元:https://www.banana.co.jp/health-lab/3step/function/)

(参照元:https://www.banana.co.jp/health-lab/3step/)

(参照元:https://giadinh.suckhoedoisong.vn/nguoi-benh-tieu-duong-nen-an-chuoi-theo-cach-nay-de-on-dinh-duong-huyet-172240612155927016.htm)

(参照元:https://hirosaki.repo.nii.ac.jp/records/2428)

1日1本のバナナは食べて良いが食べ過ぎると健康に悪影響が出る

1日1本。食べ過ぎると健康に悪影響

糖尿病の人が1日に食べて良い果物量の目安は、150g(80kcal)まで、バナナに換算すると1日1本が目安です。

バナナは栄養価も高く優れた果物ですが、エネルギー量や糖質に加えてミネラルも多く含まれるため、食べ過ぎると体に悪影響を及ぼします。

バナナを過剰摂取した場合に起こる健康への悪影響は、いくつか考えられます。

  • カロリー過多による体重増加
  • 糖質の摂りすぎにより中性脂肪が上昇
  • 腎臓機能が低下している場合、カリウム過多による高カリウム血症

糖尿病の人は特に、日々の食事で血糖コントロールが必要となります。

バナナを食事に取り入れたい場合は、日本糖尿病学会の健康食プラン表をもとにカロリーを計算してみましょう。

バナナを食べるタイミングとしては、最もエネルギーを吸収できる朝が推奨されます。

実際に日本バナナ輸入組合の研究では、朝にバナナを摂取した場合は血糖値スパイク発現率が低下するという結果も出ています。

(参照元:https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/kenkoshoku_startbook/kenkoshoku_startbook.pdf)

(参照元:https://tokubai.co.jp/news/articles/5578)

(参照元:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-k.html)

(参照元:https://www.banana.co.jp/nutrition-function/blood-glucose-level/)

バナナを冷凍および加熱した場合の成分の違いと手軽な摂取方法を紹介

冷凍・加熱の成分の違い。手軽な摂取方法を紹介

バナナを生で食べた状態について説明してきましたが、今回はバナナを冷凍した状態と、加熱した状態のバナナの成分に違いが出るのか解説します。

バナナを冷凍した場合、抗酸化作用が強く、生活習慣病を予防する効果が期待できるポリフェノールが増加します。

バナナは常温で保存すると早く熟すため、皮を剥いてラップに包み冷凍用容器に入れて冷凍すると、バナナの栄養価を保ちながら保存が可能です。

バナナを加熱した場合は、難消化性のオリゴ糖であるフラクトオリゴ糖が増加します。

フラクトオリゴ糖は大腸まで届き善玉菌の働きを助けるため、腸内環境を整える効果が期待できます。

ただし、バナナを加熱する場合のデメリットもあるため確認が必要です。

バナナに含まれるビタミンB1や葉酸、カリウムは熱を加えると大きく損失します。

加熱してバナナを食べる場合は、他の食品で栄養を補うようにしましょう。

(参照元:https://magokoro-care-shoku.com/column/banana-frozen-heating-nutrition/?srsltid=AfmBOorB8lcK_B25hMypRPkEiQQk288CJdsC7oIcutOwClnOMg2DBSnb)

(参照元:https://kinarino.jp/cat4/10470)

バナナをヨーグルトやナッツと組み合わせて手軽に美味しく摂取しよう

バナナは生のままでも十分美味しいですが、他の食材を加えてアレンジすると気分転換もできます。

バナナとの良い組み合わせの例としては、ヨーグルトナッツ類の2つです。

ヨーグルトには、乳酸菌やビフィズス菌による善玉菌が腸内環境を良くし、血糖値の急上昇も防ぐ効果があります。

そして無糖のヨーグルトは100gあたり56kcalと低カロリーで、GI値も27と低GIに分類されます。

少し甘味が欲しい人は、低糖のヨーグルトかつ、機能性表示食品の商品を選びましょう。

もう1つ例として挙げたナッツ類は、GI値が18~35程度と低く、ビタミン類や食物繊維などを多く含みます。

バナナとヨーグルトとともに合わせると、腸内環境を整える成分の相乗効果も期待できます。

ナッツ類は1日25~30gまでの摂取が目安で、摂りすぎると肥満に繋がるため、小袋タイプであれば管理が容易でおすすめです。

おすすめのナッツとして、塩分無添加の商品も比較的簡単に手に入れられるアーモンドピスタチオの2つを紹介します。

この2つは悪玉コレステロールを下げる不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含むほか、食物繊維やビタミンなど、血糖値を緩やかに上げる効果があります。

主なナッツ類に含まれる成分と効果

ナッツの種類25gあたりのエネルギー量主な成分
アーモンド152kcal・タンパク質
・食物繊維
・ビタミンE
・ビタミンB2
・脂質(オレイン酸)
・亜鉛
ピスタチオ154kcal・脂質(オレイン酸)
・食物繊維
・ビタミンB群
・カリウム
・鉄分

(参照元:https://fooddb.mext.go.jp/freeword/fword_top.pl)

(参照元:https://onoyuri-clinic.jp/archives/3585)

(参照元:https://onoyuri-clinic.jp/archives/2902)

(参照元:https://www.banana.co.jp/health-lab/3step/morning/)

糖尿病の人は生活習慣を整えて長期的なHbA1c減少を目指そう

生活習慣を整えてHbA1c減少を目指そう

糖尿病の人にとって重要な数値に、HbA1c血糖値の2つがあります。

HbA1cとは、糖化タンパク質がヘモグロビン中に含まれる割合を示す数値のことです。

糖化タンパク質は、赤血球中のヘモグロビンと血中の糖が結びついたものを指します。

HbA1cは過去1~2ヶ月の平均血糖値を示す長期的な数値で、血糖値は測定時の血中のブドウ糖の濃度を示す短期的な数値です。

HbA1cは、食事療法が継続できているか経過観察をする指標になる一方、血糖値は食後の血糖値スパイクの発見やその日の血糖値の状況を把握できます。

空腹時血糖値は140から、HbA1cは8.4から合併症のリスクが高まります。

糖尿病の人は食事療法や可能な限り運動も取り入れて生活習慣を整え、少しずつHbA1cと血糖値の改善を目指しましょう。

空腹時血糖値とHbA1cの目安となる数値

正常値正常高値境界型糖尿病型
空腹時血糖値~99~109~125126~
HbA1c~5.5~5.9~6.46.5~

(参照元:https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column/column20130927.html)

(参照元:https://www.yotsuya-naishikyo.com/diabetes-lab/hba1c-blood-sugar-level-important/)

糖尿病の人でもバナナを食事の中に上手く取り入れた食事療法を行おう

バナナの特性を理解した上で上手に食事の中に組み込むと、糖尿病の人でも糖質を気にせず食べられます。

糖尿病の人は、血糖コントロールやエネルギー量の管理を行うに当たり、栄養バランスを考えた食事療法が必要です。

どのように栄養素を配分するか、目安となる割合を記載します。

1日の摂取エネルギー量の割合(参考:「日本糖尿病学会がすすめる健康食スタートブック」)

成分1日の摂取エネルギー量
炭水化物40~60%
タンパク質20%まで
脂質25%まで

その他にも補助的な成分として、体の調子を整えるビタミンやミネラルの摂取も必要です。

糖尿病の人が1日に摂取するべきエネルギー量は、目標体重×エネルギー係数で計算が可能で、このエネルギーを3で割った数値が1回の食事の目安になります。

基本的には医師や管理栄養士との相談が必要のため、目安となる数値として紹介します。

目標体重(kg)=身長(m)×身長(m)×BMI(kg/m2)
※BMI=体重(kg)÷身長(m)の二乗で算出できる
・目標体重の設定は、体格や食事状況によって医師や管理栄養士との相談が必要
エネルギー係数(kcal/kg 目標体重)・軽い身体活動量:25~30
・普通の身体活動量:30~35
・重い身体活動量:35~

(参照元:https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/kenkoshoku_startbook/kenkoshoku_startbook.pdf)

バランスの良い食事を摂るために「糖尿病食事療法のための食品交換表」には、食品グループを6つのグループと調味料に分け、1単位80kcalに該当する食品の重量が記載されています。

「糖尿病食事療法のための食品交換表」より6つの食品グループと調味料(一例)

食品の分類分類基準具体的な食品の例
炭水化物を多く含む食品
(Ⅰ群):表1
穀物・芋・炭水化物を多く含む野菜と種実・大豆を除く豆・ごはん(50g)
・食パン(30g、1/2枚)
・じゃがいも(110g)
炭水化物を多く含む食品
(Ⅰ群):表2
果物・バナナ(100g)
・りんご(150g、1/2個)
・いちご(250g)
タンパク質を多く含む食品
(Ⅱ群):表3
魚介・大豆・チーズ・卵・肉・鶏卵(50g)※脂質5g以上含む
・鶏肉ささみ(80g)
・鮭の切り身(60g)
タンパク質を多く含む食品
(Ⅱ群):表4
牛乳とチーズ除く乳製品・ヨーグルト全脂無糖(120g)
・脱脂粉乳(20g)
・牛乳※普通牛乳(120g)
油脂を多く含む食品
(Ⅲ群):表5
油脂・脂質の多い種実・多脂性食品・マヨネーズ(10g)
・アボカド(40g)
・ベーコン(20g)
ビタミン・ミネラルを多く含む食品
(Ⅳ群):表6
野菜(炭水化物の多い野菜は除く)・海藻・きのこ・こんにゃく・緑黄色野菜と淡色野菜の組み合わせ(300g)
・海藻、きのこ、こんにゃく(無制限)
調味料みそ・みりん・砂糖など・みそ(40g)
・トマトケチャップ(60g)
・砂糖(20g)

(参照元:https://hb-life.jp/docs/pdf/document01.pdf)

バナナを始めとする果物も炭水化物Ⅰ群の表2に含まれているほか、糖度や脂質が高くて糖尿病の人が避けがちな食品も記載されています。

この表にある食材を見ても、糖尿病の人でも摂取が可能な食品の範囲は極端に狭まらないのです。

どのようなものを食べられるか把握して気分によって食品を置き換えながら献立を決め、1日3食、毎日規則正しい時間に食べるようにしましょう。

それでは、例として規則正しい食事時間の紹介をします。

  • 朝食はなるべく早めに済ませる
  • 食事は4~5時間ほど間隔を空ける
  • 夕食は寝る2~3時間前までに済ませる

食事で糖分を摂取すると、消化吸収されブドウ糖へ変化します。

ブドウ糖により血糖値は上昇しますが、インスリンの分泌により食後2時間以内で正常値に戻ります。

医師や管理栄養士とも相談をしながら、バランスの良い食事を心掛けて日々の食事を楽しんでください。

(参照元:https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/020/02-1.html)

バナナを賢く食事に取り入れて美味しく楽しい食生活を送ろう

糖尿病の人はバナナを食べても問題ありませんが、バナナの熟度とインスリンの分泌が活発な朝に食べるというポイントを押さえておきましょう。

バナナの血糖指数を表すGI値は、黄色のバナナで51~54と低GIであり、糖尿病の人でも1日1本まで食事に取り入れられます。

特に青いバナナの場合は難消化性デンプンが多く含まれるため、噛み応えがあり咀嚼回数も増え、満腹感も増す特徴があります。

少しバナナに甘味が欲しい場合は、シュガースポットの出ていない黄色のバナナを選んでください。

バナナの糖質は血中に多く吸収されるものが多いのですが、豊富な食物繊維と糖質を分解するビタミンB1のおかげで血糖値の急上昇を防げます。

バナナを食事に取り入れる場合は、気軽に担当医や管理栄養士に相談した上で、本記事内でも参照した「日本糖尿病学会がすすめる健康食スタートブック」や「糖尿病食事療法のための食品交換表」も参考に日々の献立を考えてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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