糖尿病の予防にはコーヒーのカフェインやクロロゲン酸が効果的である

糖尿病の予防にはコーヒーが効果的である

糖尿病は症状が進行すると専門的な治療が必要ですが、発症前は食事や運動量の改善によって予防できます。

なかでも食事では普段から摂取する食材や飲料の変化によって、健康的な効果を得られる場合があります。

コーヒーはカフェインやポリフェノールなどの主成分から、糖尿病を含めた複数の病気を予防できる飲み物です。

この記事では、糖尿病の予防に関するコーヒーの効果や1日あたりの摂取量などをまとめました。

この記事でわかること
  • 糖尿病が発症する原因
  • コーヒーの成分や健康効果
  • 糖尿病の予防を目的としたコーヒーの取り入れ方

糖尿病の予防としてコーヒーの摂取を検討している人は、参考にしてください。

目次

糖尿病は免疫異常や生活習慣の乱れによるインスリン異常から発症する

糖尿病はインスリン異常から発症。免疫異常や生活習慣病の乱れ

糖尿病は高血糖が恒常化している状態であり、尿中に糖分が混ざるなど、さまざまな異常が発生する病気です。

高血糖が恒常化する原因は大きく分けると2種類あり、それぞれ1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。

  • 1型糖尿病:免疫異常が原因で、インスリンの分泌が一切無くなる
  • 2型糖尿病:生活習慣の乱れや糖尿病患者からの遺伝が原因で、インスリンの分泌量低下やインスリンに対する抵抗性ができる

インスリンはすい臓から分泌されるホルモンであり、糖分の摂取により血糖値が上昇した際はインスリンによって正常な数値に戻されます。

しかし、免疫異常や生活習慣病の乱れでインスリンに異常が生じた場合、血糖値を下げきれません。

インスリン異常が継続すると、徐々に血糖値が高くなり、最終的には高血糖の状態が恒常化します。

2型糖尿病は発症リスクを抑えるには食事や運動から生活習慣を改善する

糖尿病の2種類のうち、1型糖尿病の原因である免疫異常は偶発的に発生するため、発症前に予防するのが困難な病気です。

発症後はインスリンの分泌が一切できず、注射などで外部からインスリンを補う必要があります。

1型糖尿病の発症率は国内で10万人に2人程度であり、発症リスクは高くありません。

国内で発症する糖尿病の多くは、2型糖尿病に該当します。

2型糖尿病を発症する主な原因は、以下のとおりです。

  • 血糖値を上昇させる糖分の過剰摂取
  • インスリンの働きを弱める脂質の過剰摂取
  • ホルモンバランスを乱れさせる運動不足や睡眠不足、ストレス
  • 血糖値に関係する臓器に負担がかかる過度な飲酒
  • 血糖値以外にも悪影響がある喫煙

上記に加えて、親族に糖尿病患者がいる場合は、糖尿病を発生させる因子が遺伝している場合もあります。

しかし、遺伝はあくまで糖尿病の発症リスクが通常よりも高い状態であり、最終的に発症させるのは生活習慣の乱れです。

そのため、2型糖尿病については食事による栄養摂取量の調整や毎日の運動、ストレス解消から発症リスクを抑えられます。

コーヒーが予防できるのは2型糖尿病であるため、生活習慣が乱れている自覚がある人はコーヒーの取り入れを検討してみましょう。

コーヒーは毎日適量を摂取した場合に複数の健康効果が得られる

コーヒーの健康効果。複数の病気を予防できる

コーヒーはコーヒー豆を乾燥させて焙煎したものを砕き、粉末をお湯や水で抽出して完成する飲料です。

成分としてはカフェインポリフェノールを多く含んでおり、適量を摂取した場合は以下の効果が期待できます。

  • 覚醒作用による集中力の増加
  • 利尿効果による体内の老廃物の排出を促進
  • 中枢神経を刺激して自立の働きを高める
  • 運動中の疲労感を軽減して持久力を向上させる
  • 脂肪燃焼の促進
  • 心臓の筋肉収縮力の強化
  • 抗酸化作用

上記の効果からコーヒーは2型糖尿病のみならず、心臓病や脳卒中、大腸がんなどの複数の病気を予防できる飲料として研究されています。

コーヒーに含まれるクロロゲン酸は血糖値の抑制に関わる効果がある

2型糖尿病に対するコーヒーの効果について、オランダとフィンランドでは以下のような研究結果が報告されています。

  • オランダ:1日に7杯以上のコーヒーを飲む人は、1日に2杯以上の飲む人に比べて2型糖尿病リスクが2分の1になる
  • フィンランド:1日に3~4杯のコーヒーを飲んだ場合は飲まない人に比べて糖尿病リスクが減少、1日10杯以上飲んだ場合はさらにリスクが減少

上記以外でも国内外の研究では、1日あたりで飲むコーヒーの杯数が多いほど、糖尿病リスクが減少する結果がでています。

コーヒーが2型糖尿病リスクを減少させている主な要因は、以下のとおりです。

  • ポリフェノールの1種であるクロロゲン酸に血糖値の抑制に関わる効果がある
  • カフェインとクロロゲン酸の脂肪燃焼の促進がインスリンの働きを弱める肥満を対策する

クロロゲン酸は抗酸化作用血糖値の上昇抑制血圧低下作用があります。

ポリフェノールは紅茶などのお茶類にも含まれていますが、成分の種類が異なるため、コーヒーと完全に同じ効果は発揮できません。

ナスやりんごなどのクロロゲン酸を含む食材の中で見た場合でも、コーヒー豆はほかの食材に比べて豊富に含まれています。

コーヒーの飲み過ぎはカフェインの過剰摂取につながる場合がある

研究結果においてはコーヒーの杯数が多いほど2型糖尿病のリスクは減少していますが、無制限に飲んでいいわけではありません。

カフェインを過剰摂取した場合、カフェイン中毒を引き起こし、神経の興奮による神経系の異常や消化器官の不調が発生します。

体質によってはカフェイン摂取による血圧上昇が大きく、長期的な摂取で高血圧になる可能性があります。

そのため、2型糖尿病の予防としてコーヒーを摂取する場合は、カフェインの過剰摂取にならない範囲に抑えましょう。

カフェインに対する耐性は人によって異なりますが、1日あたりの摂取量は400g上限が基準です。

一般的なコーヒーカップの場合は約5杯分に該当するため、1日に飲む杯数は5杯以内が適しています。

コーヒーを飲み慣れていない人は飲み始めた時期は1〜2杯程度にしておくと、血圧上昇による影響も軽減できます。

コーヒーの苦味をまろやかにする砂糖やクリーム類は糖質や脂質が含まれている

コーヒーは苦味をまろやかにするために、商品によっては以下の成分が入っている場合もあります。

  • 砂糖:糖分を含んだ調味料
  • 牛乳:カルシウムやタンパク質、飽和脂肪酸などを含んだ動物性食品
  • コーヒーフレッシュ:植物性を主原料としたクリーム
  • クリーミングパウダー:植物性脂肪やデキストリン(でんぷん)、乳製品を主原料とした粉末

上記に含まれる糖質や脂質は少量を摂取した場合、身体への影響は大きくありません。

しかし、コーヒーに入っている状態で毎日5杯前後飲んでいる場合は、過剰摂取になる可能性があります。

2型糖尿病を予防する点では、砂糖やクリーム類が入っていないブラックコーヒーが毎日の摂取に適しています。

コーヒーの苦味が苦手な場合は、なるべく糖質や脂質が少ない商品を選ぶか、ブラックコーヒーに後入れして糖質や脂質の量を調整しましょう。

脂質や糖質は食事でも摂取量が変動するため、砂糖やクリーム類を入れたい人は食事における摂取量も意識が必要です。

コーヒーは毎日5杯以内の摂取で2型糖尿病の予防が期待できる

コーヒーはカフェインやクロロゲン酸の効果から、さまざまな健康効果が得られる飲料です。

2型糖尿病を予防する場合は、余計な糖質や脂質を軽減する点から砂糖やクリーム類が入っていないブラックコーヒーが適しています。

飲み過ぎるとカフェイン中毒を引き起こす可能性があるため、1日5杯以内に留めておくと良いでしょう。

ただし、毎日のコーヒーを飲むだけで2型糖尿病の予防が完全にできるわけではありません。

2型糖尿病の主な原因である生活習慣の乱れが顕著な人は、食事や運動も改善して、コーヒーの健康効果を得られるようにしてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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