日本糖尿病学会の「糖尿病の死因に関する委員会の調査」によると、糖尿病を発症している人の平均寿命は男性で74.4歳、女性で77.3歳です。
これは日本人の平均寿命に対し、男性では7.2歳、女性では10.4歳短命であるという結果を示しています。
糖尿病による様々な合併症は、生活の質が低下したり寿命が短くなったりするリスクを高めます。
糖尿病の治療においては血糖値を良い数値に保ち、管理する必要があり、それを血糖コントロールといいます。
- 血糖コントロールの目的と目標値
- 食事による血糖コントロールの方法
- 運動による血糖コントロールの方法
具体的な食事や運動療法について解説しているため、ぜひ参考にしてください。
血糖コントロールで良好な血糖状態を保ち糖尿病の進行を予防する

血糖コントロールとは、糖尿病や糖尿病予備群の人が血糖値を安定した状態に保つよう管理することです。
糖尿病では膵臓から分泌されるインスリンの効果や分泌量の低下によって、慢性的な高血糖が起こります。

そのため、糖尿病は予備群の状態から治療を開始し、それ以上進行するのを防ぐ必要があります。
血糖値は食事によって上がり、運動で下がるため、食事と運動は血糖コントロールの基本です。
糖尿病は生活習慣病の一つであり、日常生活における行動が病気の進行と深く関わっています。
以下では、血糖コントロールを行う目的と目標値について解説します。
血糖コントロールの目的とは糖尿病を悪化させないこと

糖尿病の治療は完治を目標とせず、血糖コントロールによって安定した血糖値が維持された状態を目指します。
血糖コントロールの主な目的は、以下の3つです。
- 高血糖を改善する
- 糖尿病の合併症を予防する
- 糖尿病のない人と変わらない生活の質と寿命を実現させる
糖尿病自体には、生命活動を脅かすような症状はありません。
しかし、合併症を発症すると腎臓機能の低下によって人工透析を余儀なくされたり、失明や手足のしびれなどが起こったりと日常生活に支障を与えます。
糖尿病の治療は、糖尿病のない人と変わらない生活の質を保ち、寿命を全うさせるのが最終的な目標です。
血糖コントロールの目標値はその人の状態に合わせて個別に設定する

血糖コントロールの目標値は、人それぞれの病気や体の状態を考慮して設定されます。
以下は、血糖コントロール目標の設定で考慮される項目です。
- 年齢
- 体重
- 糖尿病を発症してからの期間
- 臓器障害
- 低血糖のリスク
- 家族など周囲からのサポートの有無
良好な血糖コントロールができているか判断する指標として、ヘモグロビンA1c(HbA1c)検査が用いられます。
ヘモグロビンA1cは、検査を受ける1〜2ヶ月前の血糖値の平均値がわかる血液検査です。
日本糖尿病学会の「糖尿病治療のガイドライン2022-2023」では、ヘモグロビンA1cのコントロール目標を以下のように設定しています。
血糖正常化を目指す際の目標 | 合併症予防の目標 | 治療強化が困難な際の目標 |
---|---|---|
6.0%未満 | 7.0%未満 | 8.0%未満 |
高齢者の血糖コントロール目標は、認知機能や身体機能などによる影響や低血糖のリスクがあるため、医師の指導のもとで設定が必要です。
血糖コントロールは糖尿病を発症後、早期に目標を達成し、その状態を維持すると合併症の発症を遅らせる期待ができます。
食事による血糖コントロールで血糖値の上昇を抑える

血糖値を上げるのは、食事によって摂取する炭水化物などの糖質です。
糖質は体や脳を動かすエネルギー源となる栄養素であり、人が生きていく上で欠かせません。
しかし、過剰に摂取された糖質は脂肪として体内に蓄積されて肥満の状態を招いたり、高血糖を慢性化させてインスリンの効きを悪くしたりします。
食事による血糖コントロールは摂取する糖質量を適正に保ち、体重を管理するために重要です。
以下では、食事による血糖コントロールの方法を解説します。
1日3食を規則正しく摂る

血糖コントロールにおいて、規則正しい食生活は重要です。
朝食を抜くと、血糖値が上がったり下がったりする大幅な変動を招きます。
人の体は食事の間隔が長くなると、次に食べた食事の栄養を体内により多く取り込もうとする性質があります。
その結果として起こるのが、午前中は血糖値が異常に低く、午後には血糖値が急激に上昇するという状態です。
朝食を抜くと肝臓でコレステロールや中性脂肪の合成が促されるため、体脂肪の蓄積量が増加し、肥満のリスクも高まります。
1回につき30回を目安によく噛んで食べる
よく噛んで食べる習慣は、糖尿病の原因の一つである肥満の予防につながり、血糖コントロールには重要なポイントです。
少量の食事でも脳が満足感を得られ、食欲が抑えられます。
ゆっくり食べると血糖値の急上昇が抑制され、食後高血糖の予防にも効果的です。
早食いは血糖値の上昇を招くだけではなく、高血圧や脂質異常症を引き起こす原因にもなります。
少量ずつ口に入れ、1回につき30回を目安としてよく噛んで食べましょう。
栄養バランスの良い食事を摂る

栄養バランスの良い食事とは、三大栄養素である炭水化物と脂質、タンパク質を中心としてビタミンとミネラルを含めてまんべんなく摂取する食事のことです。
食事から摂取する栄養は、人の体をつくり、体を動かすエネルギー源になります。
それぞれの栄養素には役割があり、どの栄養素が多すぎても少なすぎても良くありません。
栄養バランスの良い食事を摂るためのポイントは、以下の主食と主菜、副菜を組み合わせた食事です。
- 主食:ご飯や麺類などの炭水化物を主な材料とする料理
- 主菜:肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク質を主な材料とする料理
- 副菜:野菜やいも類、きのこ、海藻などのビタミンやミネラルを主な材料とする料理
この3つを意識して組み合わせた食事を摂ると、不足しがちな栄養素であるビタミンやミネラルも含め、栄養素をバランス良く摂取できます。
甘いものを食べ過ぎない
甘い食べ物の摂りすぎは血糖値の上昇を招くだけではなく、内臓脂肪や皮下脂肪を蓄積させて肥満のリスクを高めます。
お菓子やジュースなどの甘い食べ物には依存性があり、なかなか止められないという人も少なくありません。
急には甘いものを止められない場合は、食べる量を少なくしたり夜遅くに食べないようにしたりするなど、徐々に甘いものを制限していきましょう。
甘いお菓子ではなく、ナッツ類やビターチョコ、チーズやヨーグルトなどの乳製品のような健康的なおやつに替える方法も有効です。
運動による血糖コントロールで血糖値を下げる

運動には、血糖値を下げる効果があります。
体内の糖は筋肉に貯蔵されており、運動で筋肉内の糖がエネルギーとして消費された結果、血糖値が下がります。
運動不足の人は筋肉量が少なくなり、貯蔵しておける糖の量が減少するため血糖値を十分に下げられません。

血糖コントロールに効果的な運動方法には、有酸素運動と筋力トレーニングがあります。
有酸素運動にはインスリンの効きを良くして血糖値の上昇を抑える効果があり、筋力トレーニングには筋肉量の増加によって糖を貯蔵する場所を増やし、血糖値を下げる効果があります。
この2つを組み合わせると、より効果的です。
以下では、運動による血糖コントロールの方法を解説します。
ウォーキングは血糖値の上昇を抑え脂肪の燃焼を促進する

ウォーキングには血流が良くなる効果があり、血液中にあるブドウ糖が細胞内へ取り込まれる働きを促進するため、血糖値を下げる効果があります。
ほかにも、ウォーキングには心肺機能を高める効果や、コレステロールを下げて肥満を予防する効果が期待できます。
脂肪の燃焼はウォーキングを開始してから20分程経過すると始まる点を考慮すると、30分以上の運動が効果的です。
正しいウォーキングには、以下のポイントがあります。
- 視線はまっすぐ前を向く
- 背筋を伸ばす
- 肘を曲げて腕を振る
- かかとで着地し、つま先で地面を踏んで蹴り出す
スクワットは下半身の強化のために有効
糖尿病の人は下半身の筋力低下リスクが高いため、スクワットによる筋力トレーニングが効果的です。
下半身の筋肉は、全身の筋肉の約7割を占めています。
そのため、筋肉量の多い下半身を強化して筋肉量を増加させると、血糖値の上昇を抑える効果があります。
スクワットのポイントは、以下の通りです。
- 足は肩幅に開き、背筋をまっすぐ伸ばす
- 5秒ほどかけてゆっくり腰を下ろす
- 腰を下ろした際、膝がつま先よりも前に出ないようにする
- 5秒ほどかけてゆっくり立つ
- 10回を1セットとして3セット行う
筋力トレーニングは週に2〜3回のペースで行うと、効果が得られます。
運動以外でも日常的に体を動かす習慣を身につける
座っている時間や横になっている時間の多い人は、糖尿病や肥満のリスクが高い傾向があります。
そのため、1日のなかでも座ったり横になったりしている時間が30分を超えないようにする工夫が必要です。
仕事中や自宅でパソコン作業などをする場合にも、座っている状態が30分を超えた際は、一度立ち上がって歩行やストレッチなどの軽い運動を行いましょう。
血流が良くなってむくみを解消したり、筋肉の緊張を緩めてリラックスしたりする効果があります。
軽い運動やストレッチで呼吸が整うため、ストレスの解消にも効果的です。
血糖コントロールによって血糖値を安定させ糖尿病の進行や合併症を予防する

血糖コントロールとは、血糖値を安定した状態に保てるように管理することです。
糖尿病の治療目的は、完治ではありません。
良好な血糖コントロールによって糖尿病の進行や合併症を予防し、糖尿病のない人と変わらない生活の質と寿命を実現するのが最終的な目標です。
血糖コントロールの目標にはヘモグロビンA1c検査が用いられ、年齢や病気の進行状態など個別の目標を設定します。
血糖値は食事によって上がり、運動で下がります。
そのため、血糖コントロールの基本は食事と運動療法です。
食事では摂取する糖質量を適正に保ち、体重をコントロールして血糖値の上昇を抑え、肥満を予防します。
運動にはインスリンの効果を高めたり、筋肉内の糖をエネルギーとして消費したりして血糖値を下げる効果があります。