糖尿病が心配な人必見!検査や診断基準を詳しく解説

糖尿病が心配な人必見!検査や診断基準を詳しく解説

糖尿病と診断された人の中には、自分が糖尿病だとは全く気がつかなかったという人も少なくありません。

痩せている若い男女でも糖尿病と指摘される人は一定数おり、診断されるまでは全く気がつかなかったという人もいます。

健康診断の結果が手元に戻ってきたときに血糖値が高いと指摘され、糖尿病が心配になる人もいるのではないでしょうか。

今回は糖尿病についてどのような検査をおこない、どのような診断基準に沿って診断するのかを分かりやすく解説していきます。

この記事でわかること
  • 糖尿病とはどのような病気なのか
  • 糖尿病を診断する前におこなう検査
  • 糖尿病の診断基準
目次

糖尿病はどんな病気か、知っておきたい糖尿病についてのポイント2つ

糖尿病はどんな病気?知っておきたいポイント

糖尿病についてどんな病気なのか、診断されてから調べ始める人もいるのではないでしょうか。

糖尿病という病気をしっかり把握しようと調べても、専門的な内容が書かれている場合も多く、よくわからないという人もいると思います。

血糖値が気になり糖尿病を予防をしたい人や糖尿病が心配な人のなかには、糖尿病という病気を知っておきたい人もいるでしょう。

実は、糖尿病そのものを予防したり糖尿病の進行や合併症を予防したりするのは、糖尿病について2つのポイントを押さえておくだけでも十分可能です。

ここからは糖尿病という病気自体の予防や糖尿病の進行を防ぐために、押さえておきたい糖尿病の特徴を紹介していきます。

糖尿病の特徴を知っておくだけでも糖尿病という病気の理解につながり、予防行動に役立ちます。

主な原因はインスリンの不足や作用の低下

糖尿病についてのポイント1インスリン分泌不足・作用不足

糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病のほかに妊娠糖尿病などがありますが、ここでは2型糖尿病について説明します。

2型糖尿病は、正常時と比べて血液中のブドウ糖が多くなっていく病気です。

本来であれば血液中のブドウ糖は、インスリンの働きによって血管から筋肉などの細胞に取り込まれ全身のエネルギーの源となります。

インスリンを分泌する場所は、膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞です。

膵臓がインスリンを休まず分泌し続けると、膵臓が徐々に疲弊してインスリンの分泌が少なくなります。

血液中にブドウ糖が多くなると、インスリンが筋肉などの細胞に取り込まれる頻度が多くなるため、インスリンの働きに対して筋肉の細胞の反応が弱くなります。

インスリンが正常に働いても、インスリンに対して体の細胞が反応しなくなっていく現象がインスリン抵抗性です。

結果的にインスリンの分泌量が低下したり作用が低下したりすると、血管内のブドウ糖が溢れて高血糖の状態が持続します。

糖尿病は高血糖が持続する状態

糖尿病についてのポイント2高血糖持続

糖尿病のなかでも2型糖尿病は、炭水化物をはじめとする糖質や脂質の摂りすぎ、運動不足が高血糖を助長させます。

運動不足や食べ過ぎなどの生活習慣の乱れにより高血糖が持続すると、肝臓や筋肉でブドウ糖がエネルギーとして吸収される時に利用されるインスリンの作用が弱まるのです。

糖尿病になると食前も血糖値が高い状態になるため、規則正しく食事を摂っていても食事のタイミングでインスリンがしっかり分泌されなくなります。

結果として、食事によって体内に吸収された余分なブドウ糖が、インスリンの働きによって肝臓や筋肉に吸収されなくなっていきます。

健康診断だけではわからない、糖尿病の診断基準と必要な検査

健康診断だけではわからない。診断基準と必要な検査

健康診断では、年齢によって血糖値やHbA1cなどの糖尿病に関する検査を実施しています。

しかし、糖尿病に関する検査を全ておこなうわけではありません。

そのため、健康診断では特に検査に引っ掛からなくても、なにかのきっかけで精密検査を受けたときに糖尿病と診断される場合があります。

特に初期の糖尿病であった場合や健診でHbA1cを検査する年齢ではない若い世代の人は、健診でも空腹時血糖のみ測定する場合があるため、糖尿病でも気づかない人もいます。

糖尿病は太っているとかかるとの認識も多く、若い世代で痩せ型の人が糖尿病と診断されて驚いたという人もいるでしょう。

では糖尿病は、どのように診断しているのか解説していきます。

糖尿病は医師が明確な診断基準と検査結果もとに診断する

糖尿病は、診断するためのガイドラインが明確に決まっています。

医療機関で必要な検査をおこない、検査の結果とガイドラインに基づいて糖尿病であるのかどうかを決めていきます。

さらに問診の内容で患者本人から聴取した既往歴や親族が罹患する病気は、糖尿病を診断するうえで非常に重要な情報です。

ここからは、糖尿病の診断に関係している検査や病歴などについて説明していきます。

健診で要精密検査となった場合は医療機関で改めて検査する

糖尿病を診断していくにあたって、大切な指標となるのは血糖値です。

過去に健診で必要な項目の検査をしていても、診断をするうえでその時に測定した血糖値で判断する必要があるため、医療機関ではさらに詳しい検査がおこなわれます。

血糖値は、空腹時血糖のみを測定するのではなくさまざまな方法で数種類の血糖値を測定した結果を、診断の際に利用します。

以下の表は、糖尿病の検査に用いる血糖値の検査項目と検査方法についてまとめたものです。

糖尿病の検査項目とその方法
空腹時血糖10時間以上絶食とし、空腹の状態で血糖値を測定する
ブドウ糖負荷試験空腹時血糖を測定後、ブドウ糖を溶かした水を飲み30分後、1時間後、2時間後の数値を測定する
随時血糖絶食等をせずに血糖値を測定する
HbA1c空腹時血糖や随時血糖に用いた血液で検査が可能。

上記の血糖値を測定し、その結果をもとに医師が糖尿病であるかどうかを判断します。

表の4つの検査をおこなった結果、検査値が2回とも糖尿病型であれば糖尿病と診断される場合が多いです。

糖尿病型という検査値はそれぞれの検査によって異なりますが、ガイドラインには以下の検査値が糖尿病型であると明記されています。

糖尿病の検査項目
  • 空腹時血糖:空腹時≧126mg/dL
  • ブドウ糖負荷試験:2時間値≧200mg/dL以上
  • 随時血糖:随時≧200mg/dL以上
  • HbA1c:≧6.5%以上

これらの検査を違う日付で2回測定し、HbA1cのみならず血糖値の結果において糖尿病型が2回以上認められた場合には、糖尿病と診断されます。

また血糖値とHbA1cが同じ血液を用いて検査した結果、糖尿病型だった場合は1回の検査でも糖尿病と診断される場合もあり、診断されるタイミングは人によってさまざまです。

糖尿病の症状や合併症がある場合はより一層気を付ける

検査で一度だけ糖尿病型であるとされても、人によって高血糖症状が続いている場合や過去に糖尿病であると診断を受けている場合は、糖尿病と診断される可能性があります。

検査の結果糖尿病型に該当する数値が1回だけの場合や血糖値またはHbA1cのどちらかが糖尿病型であっても、以下に当てはまると一度の検査で糖尿病と診断されます。

  • 確実に糖尿病網膜症がある場合
  • 糖尿病の症状がある場合

糖尿病の代表的な症状は、以下のような症状です。

糖尿病の代表的な自覚症状
  • 口渇感(口が渇く感覚)がある
  • 必要以上に水分を摂取したくなる
  • 食事を摂っているにも関わらず体重が減っている
  • 尿の量が多い

上記に示した症状が長期間持続している場合は、たとえ一度目の検査で血糖値だけもしくはHbA1cだけが糖尿病型であっても、再検査をせず糖尿病と診断される場合があります。

糖尿病は早期受診と早期治療がなによりも大切

糖尿病は高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病と同様で、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を引き起こす可能性のある病気です。

初期の糖尿病は自覚症状に乏しく、症状を自覚してから病院を受診すると糖尿病がある程度進行した状態で発見される人も多くいます。

自覚症状に乏しい疾患として知られる糖尿病を、早期に発見できる手がかりのひとつが健康診断です。

現在では初期の糖尿病や症状の場合、食事や運動療法だけで血糖値の改善が目指せ、インスリン注射を使用せずに飲み薬のみで対処できる場合もあります。

糖尿病の場合は進行を防ぎ、その後の合併症や重大な疾患の予防が必要です。

糖尿病と診断されても数十年先まで元気で若々しくいるためにも、心配な場合は早期受診と早期治療の継続を心がけましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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