糖尿病の前段階とされる糖尿病予備群の中には、正常時は血糖値が安定していても食後にだけ血糖値が急上昇する人が少なくありません。
血糖値スパイクが継続すると、自分では気がつかないうちに糖尿病を進行させ、全身の血管に障害を起こすリスクが高まります。
血糖値スパイクの治し方の基本は、食事と運動です。
この記事では、血糖値スパイクの治し方について詳しく解説します。
- 血糖値スパイクの原因と放置してはいけない理由
- 血糖値スパイクを治す食事の方法
- 血糖値スパイクを治す運動の方法
具体的な食事の工夫や運動を継続させる方法についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。
食後血糖値の急激な上昇と降下を血糖値スパイクという
血糖値スパイクとは食後の血糖値が急激に上昇し、その後急降下する状態のことです。
この急上昇と急降下によって全身の血管が傷つきボロボロになると、様々な血管障害を起こすリスクが上がります。
普段は血糖値が安定している人でも血糖値スパイクが継続すると、やがては糖尿病へ進行する可能性も高まります。
食事や運動といった毎日の生活習慣に強く影響を受けるのが、血糖値スパイクです。
そのため、若い人や高齢者、痩せている人であっても血糖値スパイクが起こり得ます。
以下では、血糖値スパイクの原因や放置してはいけない理由について解説します。
健康な人の食後血糖値は2時間程かけて正常値に戻る
健康な人の場合、血糖値は食後にゆっくりと上昇し、2時間程かけて正常値に戻ります。
食事から摂取した炭水化物などの糖質は、体内で消化吸収されてブドウ糖に変わり血液中に流れ込みます。
ブドウ糖はインスリンによって全身の細胞に取り込まれ、体や脳を動かすエネルギー源になります。
インスリンにはブドウ糖を肝臓でグリコーゲンに変換し、筋肉や脂肪に貯蔵する働きがあり、血糖値を安定させます。
インスリンが正常に機能した状態では、血糖値スパイクは起こりません。
血糖値スパイクが起こるのは過剰な糖質の摂取が原因
血糖値スパイクが起こる原因は、ご飯や麺類などの炭水化物を代表とする糖質の摂りすぎです。
過剰に糖質を摂取すると急激に血液中のブドウ糖濃度が上がり、通常の量のインスリンでは血糖値をコントロールできません。
そのため、膵臓ではインスリンの分泌量を増やして対応しようとします。
インスリンの大量分泌によって血糖値は急激に下がり、低血糖の状態を起こします。
このような症状が頻繁に起こる場合は血糖値スパイクの疑いがあるため、病院で検査を受けましょう。
血糖値スパイクを放置すると動脈硬化のリスクが高まる
血糖値スパイクを放置すると、血管が傷つき動脈硬化を起こすリスクが高まります。
動脈硬化とは健康な人であればしなやかで柔軟性のある血管が、硬く弾力のない状態になることです。
動脈硬化によって血液循環が悪化し、血管のつまりが起こったり血管が破壊されたりすると、生命にも関わる重篤な疾患を招く可能性があります。
動脈硬化が原因で起こる疾患は、心臓の血管に障害が起こる心筋梗塞や脳の血管に起こる脳卒中などです。
高血糖による動脈硬化は、糖尿病を発症するよりも前の段階から始まります。
血糖値スパイクを治す食事の4つのポイント
血糖値スパイクは摂取した食べ物の影響を受けて起こるため、食事を工夫するのは非常に重要です。
食事の偏りや不規則な食習慣は、血糖値の急上昇を招き血糖値スパイクを起こすリスクを高めます。
食事で大切なのは、血糖値を急上昇させない食べ方です。
普段何気なくしている食事にも、食べるスピードや量、食事を摂るタイミングなどに血糖値の急上昇を抑えるポイントがあります。
まずは自分の普段の食習慣を見直し、改善していきましょう。
以下では、血糖値スパイクを治す食事のポイントについて解説します。
食べる順番を工夫する
血糖値スパイクは過剰な糖質の摂取によって起こるため、食事の最初に糖質の多い食品を食べると血糖値が急上昇します。
食品には血糖値を急上昇させるものと、緩やかに上げるものがあります。
血糖値を急上昇させるものは、ご飯や麺類、パンなど主に主食とされる食品です。
野菜やきのこなどの食品はビタミンやミネラル、食物繊維を多く含み、血糖値の上昇を緩やかにします。
| 血糖値を急上昇させる食品 | 血糖値を緩やかに上げる食品 |
|---|---|
| 白米 麺類 パン ジャガイモ 果物 ジュース 甘いお菓子 | 玄米 十割そば 全粒粉のパン 野菜 きのこ 海藻 ナッツ類 |
早食いをしない
早食いは、よく噛まないために消化吸収が悪く血糖値を上昇させます。
さらに、早食いでは満腹感を得られないため食べ過ぎてしまう傾向があります。
食べ過ぎや暴飲暴食は、肥満の原因です。
肥満は内臓脂肪の蓄積が膵臓の機能を低下させ、インスリンの分泌を減少させるため糖尿病を発症するリスクを高めます。
早食いの予防には、一口につき30回噛むのを目安にして食べると効果的です。
そのほか、一口の量を減らす、噛んでいる間は箸を置くなどの対策で早食いを予防できます。
ゆっくりできる時間を確保し、丁寧な食事を心がけましょう。
1日3食を決まった時間に食べる
不規則な時間帯の食事や朝食を抜くなどの食生活の乱れは、血糖値を急上昇させます。
朝食を食べると眠くなってしまう場合には、糖質を多く含む炭水化物を少なくしたり食後に軽めの運動をしたりして対策しましょう。
夜ご飯は就寝前の最低でも3時間前までにすませると、胃腸への負担が軽減し睡眠の質が向上します。
決まった時間に食べる習慣を身につけると、体内時計が整い肥満のリスクも軽減します。
甘いジュースやお菓子を摂りすぎない
糖分の多いジュースやお菓子を大量に摂取すると、血糖値が急激に上昇し血糖値スパイクのリスクが上がります。
暑い日などには清涼飲料水を一気飲みしてしまいがちですが、清涼飲料水には多量の糖分が含まれているため控えるようにしましょう。
間食で食べる甘いお菓子やスナック菓子だけではなく、果物も糖質を多く含むため食べ過ぎに気をつける必要があります。
間食が止められない場合は、ナッツやヨーグルトなどの糖質を多く含まない食品を摂るようにして甘いものを摂取する量を減らす方法が有効です。
血糖値スパイクを治す運動の3つのポイント
血糖値は運動によって下げられるため、血糖値スパイクを治すために運動は効果的です。
運動には、体を動かすためのエネルギーとして細胞内のブドウ糖を消費して血糖値を下げる効果があります。
運動は膵臓から分泌されるインスリンの効きを良くする効果もあるため、血糖値の安定には欠かせません。
普段から運動をしない人でも、少しずつの継続が自信に繋がっていきます。
以下では、血糖値スパイクを治す運動の3つのポイントについて解説します。
毎日30分のウォーキング
ウォーキングは手軽にできる有酸素運動であり、血糖値を下げる効果が期待できます。
ウォーキングには、30分以上の運動量で脂肪を燃焼させる効果があります。
そのため肥満が解消され、他にも心肺機能の向上や筋肉や骨を丈夫にする効果、血管の老化予防にも効果が期待できます。
通勤や買い物の際などに遠回りをしたり一駅分多く歩いたりするなど、毎日意識的に歩くようにしましょう。
筋肉量の多い下半身のトレーニング
血糖値の上昇を抑えるためには、有酸素運動に加えて筋力のトレーニングが重要です。
血液中の過剰なブドウ糖は、インスリンによって筋肉内に貯蔵されます。
筋力トレーニングによって筋肉量が増加すると、その分糖を蓄える場所も増加するため血糖値を下げる効果があります。
筋力トレーニングでは、全身でも筋肉量の多い下半身の強化が大切です。
スクワットや階段の昇り降り、かかとの上げ下げ運動などは自宅で簡単にできる手軽な筋力トレーニングとして効果が期待できます。
テレビを見ている間や就寝前などリラックスできる時間に、ながら運動として取り入れてみましょう。
運動が苦手な人は軽めのストレッチから始めましょう
運動する時間がない人や運動が苦手な人は、軽めのストレッチから始めても継続すると効果が得られます。
ストレッチは力加減を自分で調整できるため体への負担をかけず、高齢者や運動をほとんどしない人でも気軽に始められる方法です。
ストレッチには、全身を伸ばしたりひねったりして血流を良くする効果があり、食後に行うと血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。
ラジオ体操やヨガなども、効果的です。
まずは継続を目標にして、取り組んでみましょう。
血糖値スパイクの治し方の基本は食事の工夫と運動の継続
血糖値スパイクとは食後の血糖値が急上昇し、その後急降下する状態のことです。
食事の度に血糖値スパイクが起こる状態が継続すると、血管が傷つきボロボロになり動脈硬化を起こすリスクを高めます。
動脈硬化によって起こる疾患は、心筋梗塞や脳卒中など生命にも関わる重篤な疾患です。
さらに血糖値スパイクが継続すると、糖尿病を進行させてしまう恐れもあります。
血糖値スパイクを治すための基本は食事の工夫で血糖値の急上昇を抑え、運動で血糖値を下げる方法です。
食事では、糖質の多い炭水化物から食べ始めないよう順番を工夫する方法や、早食いを避け1日3食を決まった時間に食べる方法があります。
糖質を多く含むジュースやお菓子は、なるべく控えましょう。
運動では、1日30分のウォーキングが肥満の予防に効果的であり、筋力トレーニングは血糖値を下げる効果が期待できます。
運動が苦手な人は気軽に始められるストレッチでも、血行を良くして食後の血糖値の上昇を穏やかにする効果が期待できます。
