糖尿病と診断されていない人でも、食後に血糖値が乱高下する現象があるのをご存じでしょうか。
血糖値スパイクは太っていない若い人でも起こりうる現象で、食後すぐに血糖が急上昇して急降下するため健康診断では血糖の値を調べても正常という結果が出る人が多いです。
血糖値スパイクが自分の体内で起こっているのに気づかずに長期間放置すると、気づいた頃には糖尿病などの生活習慣病を発症してしまうリスクもあります。
糖尿病をはじめとする生活習慣病を予防するために、血糖値スパイクがどのようなものなのか知っておきましょう。
- 血糖値スパイクとは
- 血糖値スパイクを発見するためのポイントとなる症状
- 血糖値スパイクを予防するための生活習慣
食後に起こる現象「血糖値スパイク」はなぜ良くないのか
糖尿病という病気は知っていても、血糖値スパイクという言葉を聞きなれない人は多いのではないでしょうか。
血糖値スパイクだから必ず近い将来糖尿病になるというわけではありません。
しかし放置すると、糖尿病だけでなく認知症やがんなど重大な病気の引き金になる可能性があります。
日本国内でも糖尿病患者は増加していますが、糖尿病患者数と比較して血糖値スパイクを起こしている人は9人に1人の割合で存在するといわれています。
血糖値スパイクは年齢や体型に限らず、痩せ型の20代女性でも60代男性でも生まれながらの体質や遺伝などが原因で起こるのです。
では血糖値スパイクはどのような現象なのか、なぜ良くないのかについて解説していきます。
血糖値スパイクとは
健康な人の血糖値は食事前の空腹時に70〜90mg/dLまで低下し、食事摂取によって140mg/dL程度まで上昇します。
しかし体内で血糖値スパイクを引き起こす人の血糖値は、食前の空腹時血糖が正常な値でも食後の血糖は140mg/dLを超えてしまうのです。
健康診断で血糖値スパイクに気がつかないのは、空腹時に測定する血糖値は正常な値が検査結果に反映される場合が多いためです。
高血糖は血管の壁に傷をつけたり血管の壁が硬くなったりするため、糖尿病だけでなく心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなります。
血糖値スパイクの原因
血糖値スパイクが起こる理由は、インスリンの分泌不足あるいはインスリン自体の作用低下です。
食生活の乱れや運動不足などがまねく肥満、老化など何らかの問題による膵臓機能の低下がインスリンの分泌不足を引き起こします。
インスリンの分泌量が不足したり作用が低下したりすると、ブドウ糖を細胞内に取り込むために分泌されるインスリンの量が少なくなります。
結果的に血液中のブドウ糖の量が多くなるため、食後の血糖値が高くなってしまうのです。
また血糖値スパイクを引き起こす原因であるインスリンの作用不足や、分泌量の低下をまねく原因を下記にまとめました。
- 加齢:基礎代謝が低下するためエネルギーとして細胞内に取り込むブドウ糖の量が減る
- ストレス:自律神経の乱れによって血糖値が上がる
- 遺伝:食後高血糖を引き起こしやすい体質が遺伝している
- 運動不足:消費できなかった糖が脂肪として体内に蓄積される
- 過食:必要としている糖の量より多くのブドウ糖を摂取してしまっている
- 肥満:余分な体脂肪が蓄積し高血糖を引き起こす物質が出る
上記のような原因がインスリンの分泌不足や作用低下を引き起こし、血糖値スパイクを引き起こします。
血糖値スパイクが起こっているときに自覚する症状
血糖値スパイクは健診の一般的な採血検査で発見される例は少ないのですが、食後の高血糖として特徴的な症状を自覚する場合もあります。
血糖値スパイクが起こるのは基本的に食後1〜2時間が多く、自覚する症状も食後1〜2時間後に起こる場合が多いです。
体内で血糖値が急激に上がっている時に自覚しがちな症状を、下記にまとめました。
- 眠気や倦怠感
- 頭痛や肩こり
- 意識消失
- 尿量の増加と口渇
眠気や倦怠感
一般的に食事はパスタや白米などの炭水化物を摂取する方が多いですが、摂取量によっては血糖値が急上昇する場合があります。
血液中のブドウ糖濃度が高くなると血糖値を適正に保つため、大量のインスリンが分泌されて血糖値が一気に下がります。
血液中のインスリンが急激に下がると、十分な量のブドウ糖が脳に行き届かなくなるわけです。
すると、脳が飢餓状態となり眠気や倦怠感を引き起こすとされています。
頭痛や肩こり
血糖値スパイクによって食後の血糖値が急激に上昇すると、インスリンが大量に分泌され血糖値が急激に下がります。
血液中のブドウ糖の濃度が急激に増えると、血液の粘稠度が高くなるといわれています。
また急激に高くなった血糖値を正しい状態に戻すために、インスリンが分泌され急激に血糖値が下がるのも頭痛の原因になります。
急激な血糖値の低下は脳や神経へのエネルギーの供給不足となり、アドレナリンが分泌され血管が収縮します。
脳の血管が収縮し、血液の流れが滞るため頭がズキズキするような頭痛を自覚するのです。
意識消失
血糖値スパイクによりインスリンが大量分泌されると、血糖値が急激に下げられ低血糖状態になる場合があります。
しかし血糖値が急激に低下し50mg/dL以下になってしまうと、中枢神経系に影響が及び意識消失を引き起こすのです。
尿量の増加と口渇
食後に血糖値が急激に上昇する血糖値スパイクでは、高血糖症状として尿量が増えたり喉が乾いたり(口渇)します。
血液中のブドウ糖濃度があまりにも高くインスリンで処理しきれなくなると、余分なブドウ糖を尿と一緒に排出するため尿の量が増えるのです。
結果的に体内の水分量が不足するため、脱水状態となり喉の渇きを自覚します。
血糖値スパイクを予防するために生活習慣で気をつけたい3つのポイント
糖尿病予備軍ともよばれている血糖値スパイクは、糖尿病と同様に身体へさまざまな影響を及ぼします。
高血糖が持続すると糖尿病を引き起こすだけではなく、歯周病や脳血管障害などさまざまな疾患を引き起こします。
そのためさまざまな疾患を予防するために、血糖値スパイクが起こらないような生活習慣を心がけるのは将来にとって非常に有益といえるでしょう。
ここからは血糖値スパイクを予防するため、生活習慣のなかで気をつけたいポイントを解説していきます。
規則正しい食生活をする
血糖値を適正に保つためには、1日3食規則正しく栄養バランスの整った食事を摂るのがポイントです。
毎日3食しっかり食事を摂っていたのに、急に1日2食にしたり昼食はパンだけで済ませたりという食事の方法は血糖値が乱れる原因となります。
さらに糖質を多く含む白米やパスタなどばかりを集中的に食べてしまうと、体内に取り込まれる血糖値の量が多くなります。
急な血糖値の上昇を防ぐためにも、食べる順番を野菜から食べる方法に変えたりジュースを飲むのではなく水かお茶を飲んだりといった食事方法にすると良いでしょう。
野菜類やタンパク質のみ摂取するというような偏った食事内容ではなく、食事バランスガイドなどを活用した献立で3食しっかり摂るのが大切です。
運動を習慣づける
運動は基礎代謝を上げるため、筋肉の細胞においてブドウ糖の吸収を促進させるだけでなく消費自体も促進します。
食後30分を目安にランニングや筋力トレーニングを取り入れると、血糖値が急上昇するのを防ぐ効果もあります。
しかしその反面、食後の運動は消化器系の臓器に負担をかけるというデメリットもあります。
そのため食後30分を目処に運動を始めるのであれば、早歩き程度の散歩をおこなうと良いでしょう。
また運動は短期的にはあまり効果は出ないものの、長期的に継続すると基礎代謝そのものが上がるだけでなく、高血圧や肥満の改善などその他の病気予防にも役立ちます。
ストレスを溜め込まない
ストレスは生活する上での活気が失われるだけでなく、血糖値の代謝にも影響を及ぼします。
日常のなかでストレスを感じると、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンが分泌されるのです。
アドレナリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞に作用して、インスリンの分泌を抑えます。
以上のことからストレスがたまると血糖値も上がってしまう傾向にあるため、日頃からストレスの解消が必要です。
ストレス解消のために散歩でリフレッシュしたり、運動で汗を流したりするのもよいでしょう。
血糖値スパイクについて心配な場合は医療機関を受診する
血糖値スパイクは健診で発見するのが難しく、症状自体を自覚しない場合があります。
血糖値スパイクを放置してしまうと、糖尿病になるリスクが上昇するだけでなく食後の眠気や倦怠感で仕事のモチベーションなどにも影響が出てきます。
血糖値スパイクが体内で起きないよう、しっかりと睡眠をとるだけでなく栄養バランスの整った食事を3食摂るなどの規則正しい生活習慣を送るのが大切です。
簡単にできる検査もあるため、心配な場合は医療機関を受診してみましょう。