糖尿病と肌荒れの関係性を正しく理解して適切な皮膚の手入れを実践しよう

糖尿病と肌荒れの関係性。正しく理解し適切な手入れを実践

糖尿病が発病すると、皮膚の乾燥が続いたり小さな傷であるにも関わらず、治りが悪かったりする場合があります。

こうした皮膚に関する問題の背景には、高血糖による血管や神経への負担が原因である可能性があります。

皮膚の保水機能の低下や感染症リスクの上昇、および傷の治りの悪さは、高血糖が原因で起こりうる状態です。

今回は、高血糖が皮膚の問題を引き起こす仕組みや感染症リスクを下げるための皮膚の手入れ方法、受診を急ぐべき症状の前兆を解説します。 

この記事でわかること
  • 糖尿病による保水力の低下が肌荒れを起こし、傷の治りを遅らせる
  • 糖尿病に伴う感染症リスクの上昇は皮膚の異常にもつながる
  • 血管機能の低下により、創傷治癒が遅くなる
  • HbA1c 7.0%未満を目安とした血糖管理が、皮膚の状態に良い影響をもたらす
  • 毎日の皮膚観察で高血糖の早期発見につながる
  • 受診を急いだほうがよい皮膚症状の前兆を見逃さない

皮膚の変化は、血糖管理の状態を反映する指標のひとつです。

この記事を参考にして、血糖と皮膚の関連性についての理解を深めてください。

目次

高血糖は皮膚の保護機能と免疫機能を低下させて肌荒れを引き起こす

血糖値が高い状態が継続すると皮膚の保護機能や免疫機能が落ちてしまい、肌荒れの原因となります。

糖尿病の人に肌荒れが生じる理由は、高血糖が血管と神経の両方に負担をかけ、皮膚の機能を低下させるからです。

高血糖が身体にもたらす悪影響が、皮膚の問題にもつながる仕組みを理解しましょう。

高血糖と肌荒れの関係について、以下の2点を解説します。

  • 高血糖になると皮膚の保水能力の低下につながる
  • 白血球の機能低下が皮膚の状態にも悪影響を及ぼす

血糖値が高いと診断された場合は、肌荒れを起こしていないかを定期的に確認をしてください。

高血糖になると皮膚の保水能力の低下につながる

高血糖状態が続くと体内の水分バランスや血流の状態が乱れ、皮膚の保水能力が低下します。

厚生労働省 e-ヘルスネットでは、糖尿病の3大合併症として以下の3つを挙げています。

  • 糖尿病網膜症:網膜につながる毛細血管が障害を受けて失明につながる
  • 糖尿病性腎症:腎臓の老廃物をろ過する機能が低下して腎不全を引き起こす
  • 糖尿病神経障害:神経細胞への血流が不足し手足に麻痺を引き起こす

高血糖による血管障害と神経障害は、全身の組織機能を低下させる要因になり、皮膚もその影響を受ける組織のひとつです。

皮膚の表面が乾燥し、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぐ保護機能が弱まります。

特に、すねや足先は末梢血流が届かない部位のため、乾燥が顕著に進行する部位です。

高血糖により全身の組織機能が低下し、皮膚の保水能力が下がると肌荒れにつながります。 

白血球の機能低下が皮膚の状態にも悪影響を及ぼす

白血球の機能低下が影響すると、皮膚の状態も悪くなります。

血液中の糖濃度が高い状態は、白血球の機能を低下させる要因です。

白血球は体内に侵入した細菌や真菌を排除する役割を担いますが、その働きが弱まると病原体への対応が遅くなります。

健康な状態の場合は自然に治癒する程度の小さな傷や摩擦でも、糖尿病のある状態では炎症が長引いたり化膿に発展したりする場合があります。

糖尿病患者にとっては、皮膚を清潔に保ち傷を作らない習慣が感染リスクを下げる基本的な対策です。

高血糖による白血球の機能低下は、皮膚の問題の要因になる点を理解しておきましょう。

糖尿病の肌荒れが悪化すると感染症リスクが上昇して皮膚の異常が深刻化する

糖尿病の肌荒れが悪化。皮膚異常が深刻化

糖尿病に伴う肌荒れを放置すると、皮膚の保護機能が破綻して感染症へと進展する恐れがあります。

糖尿病は感染症全般のリスクを高める疾患であり、皮膚はその影響を強く受ける部位のひとつです。

高血糖と診断された人は、血糖管理とともに皮膚の状態にも配慮するとよいでしょう。

感染を起因とした肌荒れの悪化について、以下の2点を通して解説します。

  • 皮膚に現れる感染症の種類は多岐にわたる
  • 感染リスクを下げるためには日常の皮膚の手入れが欠かせない

糖尿病による感染症リスクの増加は、合併症のみでなく皮膚の問題にもつながる点を十分に理解してください。

皮膚に現れる感染症の種類は多岐にわたる

皮膚に現れる感染症の種類は多岐にわたり、主なものとして以下の事例が挙げられます。

種類特徴
膿瘍、蜂窩織炎などの細菌感染傷口や乾燥した皮膚から細菌が侵入し、赤みや腫れおよび熱感が生じる
足白癬、カンジダなどの真菌感染足指の間や皮膚のひだ部分に真菌が繁殖し、かゆみや皮むけが続く
壊疽血流障害が進んだ部位で組織が黒く死んでしまい、足先など末端から進行する

水虫は一般的な皮膚疾患ですが、糖尿病のある場合には感染が深部まで及び、重症化するリスクが高まります。

足指の間の確認を毎日行い、皮むけや白くふやけた状態、亀裂が続く場合は皮膚科を受診してください。

感染リスクを下げるためには日常の皮膚の手入れが欠かせない

皮膚が感染するリスクを下げるためには、日常生活における皮膚の手入れが欠かせません。

皮膚の清潔を保つためには、入浴時に足指の間や爪の周囲を丁寧に洗い、入浴後は水分をしっかり拭き取ります。

乾燥が著しい部位には保湿剤を塗布し、皮膚の亀裂形成を防ぎます。

ただし、足指の間は蒸れる状態となるため、保湿剤を塗布しないほうがよいでしょう。

靴下は綿素材など通気性の高い素材を選び、きつい靴や縫い目が当たる靴下は皮膚への摩擦を生じさせるため、避けたほうが無難です。

皮膚を清潔に保ちながら爪の手入れも欠かさず行い、爪を切る際は深爪を避けてまっすぐ切ると爪周囲の炎症を防げます。

毎日の皮膚ケアが感染リスクを避ける近道であるため、こまめに取り組んでください。

糖尿病の肌荒れが長引く理由は創傷治癒の遅れにある

糖尿病の肌荒れが長引く理由。創傷治癒の遅れにある

糖尿病の人が長期間の肌荒れに悩む要因として、傷の治癒が遅い点が挙げられます。

糖尿病のある人が肌荒れや傷の治りが遅いと感じる場合、その背景には血流障害神経障害が関係している場合が多いです。

血流障害と神経障害が影響すると、肌の傷の治癒に時間がかかる可能性があります。

普段よりもひどい肌荒れが継続したり傷の治りが遅いと感じたりする場合は、高血糖が影響しているかもしれません。

糖尿病による傷の治りの遅れに関して、以下の2つのポイントを通して解説します。

  • 糖尿病による傷の治癒の遅れは、末梢血流の低下や神経の鈍化が影響する
  • 傷ができた場合の応急処置方法と受診する目安を理解する

糖尿病の人は小さな傷が重篤な状態につながる可能性もあるため、単なる肌荒れと油断せずに正しい対処方法を理解してください。 

糖尿病による傷の治癒の遅れは末梢血流の低下や神経の鈍化が影響する

傷の治癒が遅くなった背景として、糖尿病による末梢血流の低下や神経の鈍化が影響している可能性があります。

健常者の場合、肌に傷ができた際は酸素や白血球および成長因子などが傷口に集まり、修復作業を開始する反応が一般的です。

しかし高血糖による血管障害で末梢血流が低下すると、これらの供給が滞ります。

さらに神経障害により痛みの感覚が鈍る状態では、傷を作っても気づくのが遅れる場合が多いです。

そのため、通常であれば数日で治る小さな傷がなかなか治らなかったり、組織が欠損して潰瘍へと進行したりします。

足の感覚が鈍いと感じるなど、高血糖が影響して神経が鈍化している場合は、傷がないかを定期的に確認しましょう。

傷ができた場合の応急処置方法と受診する目安を理解する

傷ができた場合の一般的な応急処置方法は、以下のとおりです。

状態対応
小さな切り傷や擦り傷流水で洗浄後、清潔なガーゼで保護して経過観察する
2日以上改善しない傷がある医療機関を受診する
赤みや腫れ、熱感および膿が出る感染の可能性があるため速やかに医療機関を受診する
足指、足裏の黒変、壊死緊急性が高く、当日中に医療機関の受診が必要

傷の治りが遅いと感じた場合、それは血糖管理の状態が不十分である可能性があります。

主治医に速やかに相談し、HbA1cや血糖値の測定を行い治療していくとよいでしょう。

合併症予防のためのHbA1c目標値の達成が皮膚の状態改善を後押しする

合併症予防。HbA1c目標値の達成

高血糖が原因で起こる皮膚の問題は、血糖値の改善を目指さないと好転しません。

皮膚の問題への対処方法は保湿を行ったり傷を治療したりするだけでなく、根本的な血糖管理も行う必要があります。

皮膚の状態の改善のみでなく、糖尿病の合併症を予防するためにも早期に適切な血糖管理を行いましょう。

HbA1c目標値設定や血糖値安定に関して、以下の2点を解説します。

  • 合併症予防の一般目標としてはHbA1c 7.0%未満が推奨されている
  • 食事療法や運動療法を継続して血糖を安定させる

血糖安定がさまざまな健康上の基礎となっている事実を理解し、適正な血糖管理の目標を設定してください。

合併症予防の一般目標としてはHbA1c 7.0%未満が推奨されている

日本糖尿病学会は、合併症予防を目的とした血糖管理目標としてHbA1c 7.0%未満を推奨しています。

しかし、一律に目標値を掲げているわけではなく、患者それぞれの状況に見合った個別設定が重要です。

たとえば、治療の強化が難しい高齢者では8.0%未満を目安とするなど、年齢や罹病期間および臓器障害の有無などを踏まえて目標を設定します。

血糖値が安定した状態を維持すると、血管への負担が軽減され、皮膚への血流供給と白血球の機能が改善されます。

血流供給と白血球機能の改善は、感染リスクの低下や皮膚の修復力向上にもつながるでしょう。

食事療法や運動療法を継続して血糖を安定させる

血糖値の安定を達成するためには、食事療法と運動療法の継続が重要です。

規則正しい3回の食事と適正エネルギーの維持、および食後の軽い有酸素運動の組み合わせが、HbA1cの改善と維持に寄与します。

一時的な取り組みではなく、日常の習慣として継続して実施すると、血糖値の安定を図れます。

食事療法や運動療法を実施する際は自己判断で行わず、必ず主治医の指示に従いましょう。

なぜなら自分に合った栄養量や運動内容の決定は、専門的な知見がないと難しいからです。

食事療法や運動療法の継続的な実施により、血糖を安定させて皮膚の状態を長期的に守ってください。

毎日3分の皮膚観察を習慣化して問題を早期に発見する

毎日3分の皮膚観察。習慣化し問題を早期に発見

糖尿病に伴う肌荒れや傷の変化に早期に気づくためには、毎日の皮膚観察が最も効果的な手段です。

早期に発見して迅速な対策を講じると、感染や潰瘍の重症化を防げる可能性が高くなります。

特に、高血糖と診断された人は、毎日自分の皮膚の状態に異常がないかを確認しましょう。

皮膚の状態を自分で確認する方法として、以下の2点を解説します。

  • 特に気をつけて見た方が良い部位と確認の方法を理解して実践する
  • 肌の状態を確認した記録を医療機関に受診する際に活用する

自分で肌の確認をするコツを身に付けて、毎日の習慣として取り入れてみてください。 

特に気をつけて見た方が良い部位と確認の方法を理解して実践する

皮膚を自分で点検する際に、特に重点的に確認が必要な部位とその方法を以下にまとめました。

確認する部位皮膚の状態で見るべき項目
足の裏やかかと・亀裂やマメの有無
・角質の厚みや色の変化がないか
足指の間・白くふやけた状態
・皮むけ
・赤みがないか
爪の周囲・爪の食い込みの有無
・爪周囲が赤くなっていないか
すねやふくらはぎ・著しい乾燥
・鱗状の皮むけ
・色素沈着がないか
その他の傷跡数日以上経過しても改善しない傷や赤みが広がっていないか

足裏など自分では見えない部位は、鏡を床に置いて確認すると良いでしょう。

自分では見えにくい部位は、家族に見てもらってください。

肌の状態の記録を医療機関に受診する際に活用する

気になる変化があった場合は、異常を発見した日時や部位およびその状態をメモしておくと、受診時に主治医や皮膚科医が状況を把握できます。

スマートフォンで写真を撮って記録しておき、受診時に主治医に見せる方法も有効です。

定期受診のたびに確認した結果を報告すると、変化の経過を視覚的に把握できるため、継続的に記録や撮影をするとよいでしょう。

受診時に正確な情報を主治医に伝えると病状の正確な判断材料となり、治療方針の決定や現状把握に大いに役立ちます。

肌の状態を確認した結果を可能な限りありのままに記録し、主治医に伝えると効果的です。 

皮膚の異常が持続する場合は血糖確認と専門医への受診を行う

皮膚の異常が持続する場合。血糖確認と専門医への受診

自分で行うケアで改善しない皮膚の異常がある場合は、主治医または皮膚科への受診が最優先です。

高血糖を起因とした皮膚の問題の場合、主治医に相談したうえで正しい対策を講じる必要があります。

自分での確認や判断では限界があるため、早期に主治医や皮膚科の診断を受けましょう。

皮膚の異常が継続する場合に専門医に相談する重要性について、以下の2点を解説します。

  • 速やかな受診が必要な皮膚症状の前兆を見逃さない
  • 皮膚科と糖尿病内科の連携が早期回復を支える

症状の悪化を防止するため、異常が継続する場合は早めに専門医に相談してください。

速やかな受診が必要な皮膚症状の前兆を見逃さない

以下の症状が1つでも当てはまる場合は自己判断で市販薬を使用せず、主治医または皮膚科への受診を優先してください。

  • 2〜3日経過しても改善しない傷、赤み、腫れがある
  • 傷口から膿や浸出液が出ている
  • 足指、足先、かかとが黒く変色している
  • 足裏や足指に痛みや熱感はないが、傷が広がっている
  • 皮膚の症状と同時に発熱や倦怠感がある

糖尿病神経障害が進んでいる人は、足に重篤な傷があっても痛みを感じない場合があります。

目視で確認できない異常があると気づいた際は、触覚や臭い、皮膚の色の変化を手がかりにしてください。

皮膚科と糖尿病内科の連携が早期回復を支える

皮膚の症状は、皮膚科の診断と血糖管理など内科の治療を組み合わせると効果的です。

受診時には直近のHbA1c値や服用中の薬剤に加えて皮膚症状の経過をまとめて持参すると、皮膚科と糖尿病内科の連携が円滑になります。

皮膚科を受診する場合は、糖尿病についての相談をしている主治医に紹介状を書いてもらう形が望ましいです。

医師の間で治療内容が共有されるため、効果的な治療を受けられます。

既に皮膚科に通院中の場合は、糖尿病内科の主治医に皮膚症状を報告し、治療方針に一貫性を確保したほうがよいでしょう。 

血糖管理と皮膚の手入れを両立させて肌荒れを防ぎ皮膚の健康を守る

血糖管理と皮膚の手入れを両立。肌荒れを防ぎ皮膚の健康を守る

糖尿病に伴う肌荒れは、適切な血糖管理と肌の確認を継続して肌を清潔に保ちながら保湿も行う必要があります。

以下のように、身体の内側からの取り組みと、外側からの手入れを組み合わせると効果的です。

分類内容目的
体内の血糖をコントロールする・HbA1c目標の維持
・食事や運動療法を継続する
血流と免疫機能の維持
手足を清潔にする・足を毎日きれいに洗う
・足の汚れを拭き取る
・爪をケアして清潔に保つ
感染経路の遮断
手足を保湿する・入浴後に保湿剤を塗布する保護機能の強化、亀裂予防
肌の状態を確認して記録する・毎日目で見て確認する
・異常がないかや変化を記録する
・受診時に医師に記録したメモをもとに報告する
早期発見、重症化防止

高血糖と診断された場合は、血糖値管理に加えて皮膚の自己管理についても考慮してください。

糖尿病治療をする際は肌荒れ対策にもしっかり取り組もう

糖尿病になると、皮膚の保護機能や免疫機能が低下する影響で、肌荒れが長期的に起こります。

神経障害により傷に気付かない場合も多く、重篤化につながるリスクもあります。

糖尿病治療をする際は、皮膚の状態を定期的に確認して、早めに治療する習慣をつけましょう。

皮膚の症状が改善されない場合は、糖尿病の主治医に加えて皮膚科の専門医にも相談すると効果的です。

高血糖と診断された人や糖尿病治療中の人は血糖値の管理のみではなく、自分の皮膚の状態にも気を配り、身体全体の健康を維持してください。

参照元:

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第2章 糖尿病治療の目標と指針https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/02.pdf

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第1章 糖尿病診断の指針 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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