糖尿病や高血圧は生活習慣病の一種であり、主に生活習慣の乱れが原因で発症します。
また糖尿病と高血圧を合併すると、脳心血管病やがんなど命にかかわる病気の発症リスクが高まります。
生活習慣を改善するには、日常の食生活や運動習慣を意識的に変える必要があります。
この記事では、自宅でできる食事療法や運動療法について解説します。
- 糖尿病と高血圧の関係性
- 血糖と血圧の管理
- 自宅での食事方法や運動方法
積極的に摂取したい栄養素や避けたい栄養素、具体的な運動方法も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
糖尿病はインスリンの異常により高血糖の状態が続く

糖尿病とは、インスリンの異常により血液中を流れるブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気のことです。
インスリンとは血糖値を下げる働きを持つホルモンのことで、食後血糖値が上昇した時に分泌されます。
糖尿病になるとインスリンが十分に働かなくなるため、血液中を流れるブドウ糖が増え、血糖値の高い状態が続きます。
糖尿病は、発症機序の違いにより1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分けられます。
1型糖尿病はインスリン分泌細胞の破壊により発症する
1型糖尿病では、インスリン分泌細胞の破壊によりインスリンの分泌が低下するため血糖値が高くなります。
インスリン分泌細胞の破壊は自己免疫疾患やウイルス感染が原因であり、若年者ややせ型の人に多く見られます。
2型糖尿病は生活習慣の乱れにより発症する
2型糖尿病では、インスリンの分泌低下や作用不足により血糖値が高くなります。
遺伝的な要因に加えて生活習慣の乱れなどが原因であり、中高年や肥満の人に多く見られます。
2型糖尿病は初期症状が現れず、気づかないうちに進行している可能性があるため、定期検査や自覚症状出現時の早期受診が重要です。
糖尿病の自覚症状としては、以下が挙げられます。
- 排尿の回数が増える
- のどが渇く、水をよく飲む
- 体重減少
- 疲れやすくなる
血圧が正常値を超えると高血圧と診断される

診察室血圧測定で140/90mmHg以上または、家庭血圧測定で135/85mmHg以上であると高血圧と診断されます。

以下が動脈硬化により、発症の可能性が高まる脳心血管病です。
- 脳出血
- 脳梗塞
- 大動脈瘤
- 心筋梗塞
- 狭心症
高血圧は、脳心血管病を発症する最大の要因となるため、血圧管理が重要となります。
糖尿病や高血圧になると寿命が短くなる

健常者と比較して糖尿病患者は約10年、高血圧患者は約2年平均寿命が短くなるとされています。
糖尿病や高血圧になると長期間血管に負担がかかるため、脳梗塞や心筋梗塞などの脳心血管病を突然発症する可能性が高まります。
しかし、医療技術の進歩や生活習慣の改善により、寿命は年々のびていると調査で明らかになっています。
健康に長生きするためには、早期に適切な治療を受け、食事や運動などの生活習慣の改善に取り組む姿勢が重要です。
生活習慣の乱れが糖尿病や高血圧を招く原因となる

糖尿病や高血圧になる原因として、以下の生活習慣の乱れが挙げられます。
- 高塩分の食事の摂取
- 過食や多飲
- 喫煙
- 肥満
- 運動不足
- 過度な飲酒
- ストレス
- 睡眠不足
したがって、糖尿病や高血圧の発症を予防するためには生活習慣を正す意識が重要となります。
糖尿病になると高血圧を合併する確率が高まる

日本国内の糖尿病患者数は約370万人、高血圧患者数は約1503万人おり、年々増加している現況です。
また、糖尿病になると高血圧の合併率は健常人と比べて約2~3倍高く、以下が主な理由として挙げられます。

肥満により血圧を上昇させるホルモンが多く分泌される
肥満になると交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモンが多く分泌されます。
そのため、高血圧になります。
インスリン作用低下により血圧が上昇する
インスリンの作用が低下すると、血糖値を下げるためにより多くのインスリンが分泌されます。
血液中のインスリンが多い状態になると、交感神経の緊張や血液量の増加により高血圧になります。
腎機能の低下により血圧が上昇する
糖尿病により腎機能が低下すると、ナトリウムの排泄ができなくなるため、血液中のナトリウム濃度が高まります。
高くなった血液中のナトリウム濃度を一定に保とうとする働きにより、血液量が増え、血圧が上昇します。
動脈硬化の進行により血圧が上昇する
血糖値が高いと動脈硬化が進行するため、血圧が上昇します。
糖尿病の人は、血圧が高くなくても動脈硬化が進行しやすいといわれています。
糖尿病と高血圧の合併により死亡リスクが高まる
糖尿病と高血圧を合併すると、動脈硬化の促進や命に関わる病気になる可能性を高めます。
糖尿病性腎症、網膜症を悪化させる
糖尿病と高血圧の合併は、糖尿病性腎症や網膜症を悪化させます。
細かい血管や毛細血管は高血圧による障害を受けやすいため、放置すると更に悪化させる可能性が高まります。
また、糖尿病性腎症は、透析導入に至る最も多い原因疾患です。
透析治療が始まると1週間に3日、3~5時間治療を受ける必要があり、日常生活に大きな影響を及ぼします。
そのため、定期検査や早期治療が最も重要となります。
脳心血管病の発症リスクが高まる
糖尿病と高血圧により動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞などの脳心血管病になる危険性が高まります。
脳心血管病の発症は生活の質(QOL)の低下、健康寿命の短縮を招く恐れがあります。
脳心血管病の発症を防ぐために、適切な治療とともに生活習慣の改善が必要です。
血糖自己測定により脳心血管病の発症リスクを下げる

糖尿病による脳心血管病の発症リスクを下げるためには、自身で血糖測定を行う血糖自己測定が重要です。
糖尿病を放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などを発症するリスクが高まります。

血糖自己測定により、自身の糖尿病の状態や治療方法をより正確に確認できます。
血糖自己測定の回数やタイミングは人それぞれ異なる
糖尿病の状態、治療方法や生活スタイルなどにより血糖測定の回数やタイミングは人それぞれ異なります。
そのため、医師と相談して指示に従いましょう。
血糖値を適正範囲にコントロールする
空腹時であれば130mg/dL未満、食事2時間後であれば180mg/dL未満を目安に血糖値をコントロールします。
継続的な血糖自己測定により、自身の血糖値を予測できるようになると、血糖コントロールが可能になります。
血糖測定値は必ず記録し、受診時に持参しましょう。
死亡リスクを下げるために降圧目標を目指す

死亡リスクを下げるために、まず生活習慣の改善や薬物療法を行い、降圧目標を目指す必要があります。
糖尿病と高血圧を合併している人の降圧目標は、診察室血圧では130/80mmHg未満、家庭血圧では125/75mmHg未満です。
脳心血管病の発症リスクが高い人は、治療とともに血圧管理が特に重要となります。
家庭血圧の測定を朝晩の1日2回行う
家庭血圧は診察室血圧と同様に重要であり、朝と晩の1日2回の測定は必須となります。
朝晩の血圧測定は以下のタイミングで行いましょう。
朝
- 起床後1時間以内
- 排尿後
- 服薬前
- 朝食前
夜
- 就寝前
また、朝晩以外にも必要に応じて以下のタイミングで測定を追加するのが理想的です。
- 昼間
- 自覚症状が出現したとき
- 夕食前
- 晩の服薬前
- 入浴前
- 飲酒前
- 深夜睡眠時
家庭血圧の測定時には、以下のポイントに注意して正確に測定を行いましょう。
- 座った状態で1~2分安静後測定
- 排尿後に測定
- カフは心臓と同じ高さにする
- 厚手の服は脱ぐ
- 会話をしない
家庭血圧の測定は、一度の測定機会につき2回測定して平均値をとります。
家庭血圧の測定値は治療の参考になるため、必ず記録して受診時に持参しましょう。
血圧を下げるために生活習慣の改善を行う

血圧を下げるためには、生活習慣の改善が重要です。
生活習慣の改善が治療の基本となるため、薬物療法開始前後に関わらず積極的に以下の改善を行いましょう。

食塩制限を行う
食事での食塩摂取は6g/日未満になるように抑えます。
塩分を摂りすぎると、ナトリウム濃度上昇による血液中の水分量増加やナトリウムによる血管収縮が起こり、血圧が上昇します。
塩分摂取による血圧の上昇を防ぐために、以下の工夫を行って減塩しましょう。
- 調味料は少なめ
- 減塩調味料を使用
- 香味野菜やだしの旨味を使用
- 香辛料やレモンなどで味付けする
- 麵類の汁は飲まない
- インスタント食品を控える
- 味付けにメリハリをつける
野菜や果物を積極的に摂取する
野菜や果物には、糖尿病と高血圧の予防や改善効果があるといわれています。
さらに野菜や果物にはビタミンやミネラルも豊富に含まれており、高血圧の予防や改善に効果があるため、1日350g以上を目安に摂取しましょう。
ただし、糖尿病の人が果物を過剰摂取すると血糖値が上昇するため、1日80kcalの摂取が目安となります。
他にもカリウム制限が必要な人は、野菜や果物の過剰摂取は控えましょう。
飽和脂肪酸やコレステロールの摂取は控える
飽和脂肪酸やコレステロールの過剰摂取は、動脈硬化や心筋梗塞の発症リスクを高めます。
飽和脂肪酸やコレステロールは、以下の食品に多く含まれます。
飽和脂肪酸を多く含む食品
- 肉類の脂身
- チーズや生クリームなどの乳製品
- バターや牛脂などの動物性油脂
- ハンバーガーやピザなどのファストフード
コレステロールを多く含む食品
- 卵黄や魚卵
- レバーやモツなどの内臓類
多価不飽和脂肪酸は血圧を下げる効果がある
多価不飽和脂肪酸を含む植物油には、血圧を下げる効果やLDLコレステロールを下げる効果があるといわれています。
代表的な多価不飽和脂肪酸として、以下の3つが挙げられます。
- 大豆油、ひまわり油、コーン油に含まれるリノール酸
- えごま油やクルミに含まれるリノレン酸
- 青魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)
体内では多価不飽和脂肪酸を作れないため、食事に魚や植物由来の油を取り入れ、積極的に摂取しましょう。
低脂肪乳製品を積極的に摂取する
牛乳などの乳製品に含まれているカルシウムには、血圧調整の働きがあるため積極的な摂取が推奨されています。
ただし、乳製品には不飽和脂肪酸が多く含まれるため、肥満の人は過剰摂取を避けるのが理想的です。
そのため、脂肪分の少ない低脂肪乳製品を選ぶといいでしょう。
適正体重を維持する
肥満は心臓に負担がかかるため、BMIが25未満になるよう体重をコントロールしましょう。
適正体重の維持には、積極的な運動や食事療法が重要です。
適正体重を維持できれば、降圧、減薬、糖尿病の改善が期待できるとされています。
定期的な有酸素運動により血圧と血糖値が下がる
運動には、血圧と血糖値を低下させる効果があるといわれています。
そのため、毎日30分以上または週180分以上を目安にウォーキングなどの有酸素運動を行うのが理想的です。
また血圧と血糖値を低下させる以外にも、以下の効果があるといわれています。
- 肥満を予防
- 血管をしなやかにする
- 善玉のHDLコレステロールを増やす
長く健康でいるためには、定期的な有酸素運動が重要となります。
ただし重度の糖尿病や高血圧の人は、必ず医師に相談してから運動療法を開始しましょう。
お酒を控える
エタノールで男性20~30mL/日以下、女性で10~20ml/日以下になるようにお酒を控えましょう。
各酒類のエタノール20~30mL相当は、おおよそ以下の通りになります。
- 日本酒 1合
- ビール中瓶 1本
- 焼酎 半合
- ウイスキーダブル 1杯
- ワイン 2杯
お酒の過剰摂取は、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを高めるため控えるのが理想的です。
受動喫煙を含め禁煙する
喫煙は血糖値と血圧を上げる作用があるため、禁煙が重要となります。
またタバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて血圧を上げる作用もあるため、脳心血管病になる危険性が高まります。
受動喫煙であっても身体に悪影響を受けるため、避けるようにしましょう。
禁煙には以下の効果もあるため、年齢や病気の有無に関わらず積極的に取り組むのが理想的です。
- 心臓発作や脳心血管病の発症リスク低下
- 咳や痰などの呼吸器症状改善
- インフルエンザなどの呼吸器感染症の罹患低下
- 免疫機能回復によりかぜなどの感染症にかかりにくくなる
- 肺機能改善
血糖値の上昇を抑えるために低糖質食品や低GI食品を活用する

血糖値の上昇を抑えるために、低糖質食品や低GI食品の活用が推奨されています。
糖質を多く含む食品を低糖質食品に置き換える
糖質の過剰摂取は食後血糖値を急上昇させるため、低糖質食品に置き換えると血糖値の上昇を防止できます。
糖質は体のエネルギー源として欠かせない大切な栄養素ですが、過剰摂取は肥満や心臓病、脳卒中などの発症リスクが高まるといわれています。
低GI食品は食後血糖値の上昇を緩やかにする
低GI食品とは、血糖値の上昇速度を表すGI値が低い食品のことであり、食後血糖値の上昇を緩やかにする効果を持ちます。
代表的な低GI食品としては、以下が挙げられます。
- 海藻類
- きのこ類
- 大豆食品
- 肉や魚
- 乳製品
- 精製されていない麺やパン
- 果物
上記の食品は低GIだけでなく、食物繊維やたんぱく質も含まれているため、食後血糖値の上昇を予防できます。
ただし、過剰摂取は肥満につながるため、避けるようにしましょう。
糖尿病や高血圧には、生活習慣の改善が重要となります。
食事に低GI食品の取り入れや毎日30分ウォーキングを行うなど、意識的に生活習慣の改善に取り組みましょう。