食事における食べすぎは、健康的な体を維持するうえでは防ぎたい行為です。
しかし、自分の意志とは裏腹に、なかなか食べすぎるのをやめられない人もいます。
この記事では、食べすぎを防ぐ方法について、体の仕組みや必要な栄養素に着目し防止策をまとめました。
- 神経伝達物質のドーパミンの分泌で食べすぎる
- 不健康でホルモンのレプチンが少ない場合、ホルモンのグレリンで食欲が増す
- ストレス過多で分泌されるコルチゾールも食べすぎる原因になる
- 血糖値の急激な乱高下から次の食事で空腹感が増す
- 食べすぎを防ぐにはゆっくりよく噛んで食べて、食物繊維やたんぱく質を増やす
- 小さい皿の利用や食事中のスマホ視聴をやめると、視覚的に改善される
- 定期的に好物を適量の範囲で食べると、ストレスが軽減される
- 睡眠不足やストレスの解消も食べすぎを防ぐのにつながる
病気の予防やダイエットのために食べすぎを控えたい人は、参考にしてください。
食べすぎは神経伝達物質やホルモンの分泌が影響している
食事は人間にとって必要不可欠な行為であり、食欲の増減は体の本能的な部分で調整されています。
そのため、つい食べ過ぎてしまうのは意志の弱さだけが問題ではなく、体の仕組みから仕方がない部分があります。
特に食べすぎに影響するのは、以下の神経伝達物質やホルモンです。
- ドーパミン:快感や喜びを感じたとき、もしくは快感や喜びを得ようとするときに分泌されて、食欲にも影響する
- レプチンとグレリン:食欲を抑えるレプチンの分泌が少ない場合、食欲を増進させるグレリンの影響で食べすぎる
- コルチゾール:ストレス過多から分泌されて、ストレスから体を守るために食べすぎる
最初から食べすぎを防ぐ方法を実践するよりも、体の仕組みを理解したほうが、自分の状態を把握して改善につなげられます。
過去の食事で得た快感からドーパミンが分泌されて食べすぎる
ドーパミンは脳内の神経伝達物質の1つであり、快感や意欲にかかわる感情を伝達させる役割があります。
食事で好物を食べすぎる理由の1つには、ドーパミンの分泌が影響しています。
お菓子の食べすぎを例にすると、以下のとおりです。
- 初めて食べたお菓子をおいしいと感じたとき、そのお菓子で快感を得たとドーパミンが伝達する
- 脳は伝達された快感を学習して、同じお菓子を再び食べたいという意欲がわく
- 同じお菓子を見たり、匂いを感じたりしたとき、記憶した快感から食欲がわいてドーパミンが分泌される
- ドーパミンによって食欲が増進されて、お菓子を食べすぎる
- お菓子で得た満腹感から、快感を得たとドーパミンが伝達する
好物やおいしいと感じた料理は、快感を得るために1回で多量に食べる、もしくは毎食のように食べてしまう可能性があります。
一方、食事で得た満腹感でもドーパミンが分泌されるため、食べ方を工夫した場合はドーパミンで食欲を抑制できます。
睡眠不足などが理由でレプチンが少ないときにグレリンで食欲が増進される

体内ではグレリンとレプチンという2種類のホルモンが、食欲の増減に影響しています。
- グレリン:胃から分泌される食欲を増進させるホルモン
- レプチン:脂肪細胞から分泌される食欲を抑制させるホルモン
健康な状態の場合は食べてエネルギーを得ようとする際にグレリンが分泌され、食後はレプチンの分泌で食べる必要がないと体が認識します。
しかし、睡眠不足やバランスの悪い食事を続けて不健康な状態の場合、食後に十分なレプチンが分泌されません。
レプチンが少ないとグレリンの分泌が増えて、すぐに食事を取ろうとした結果、食べすぎを引きおこします。
食べすぎによって肥満が慢性化するとレプチン抵抗性が生じるため、さらに食べすぎにつながる可能性が高まります。
ストレス過多でコルチゾールが過剰分泌されると血糖値が上昇して食べすぎる
コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンで、以下のような効果があります。
- 血糖値を上昇させてエネルギー供給を促し、代謝を促進させる
- ストレスを感じたときに分泌量が増えて、心身を活発にさせる
上記の効果からストレスホルモンと呼ばれる場合もあり、本来はストレスによる心身の負担を軽減する役割を持つホルモンです。
しかし、ストレス過多の場合はコルチゾールが過剰分泌されて、エネルギー供給のために食べすぎを引き起こしてしまいます。
血糖値の急激な乱高下も食べすぎを誘発させる原因になる

神経伝達物質やホルモンの影響で食べすぎた場合、血糖値の変動から次の食事でも食べ過ぎる可能性があります。
血糖値は血中の糖分を示す数値であり、普段の食事では以下の流れで数値が変動しています。
- 食事で糖質を摂取すると、血糖値が一時的に上昇する
- すい臓からホルモンのインスリンが分泌されて、体内の糖分が使用される
- 血糖値が下がって、元の数値に戻る
健康的な栄養バランスで普通のペースで食べている場合は、血糖値が正常な値に戻るため、食欲にも大きな影響がありません。
しかし、糖質の過剰摂取や早食いを行うと、血糖値が急上昇して、元の数値に戻す際も急激に血糖値が下げられます。
血糖値が急激に乱高下すると、血糖値が下がった際に空腹感が増して、間食や食事量が増加する傾向があります。
食べすぎを繰り返すと不健康な症状や病気につながるリスクがある
食べすぎを毎日のように繰り返した場合、以下のような症状や病気につながるリスクがあります。
- エネルギーの過剰摂取による肥満
- 糖質の過剰摂取による高血糖
- 高血糖から発展する糖尿病
- 脂質の過剰摂取による脂質異常症
- 食べる量の多さから消化器系、臓器に負担がかかる
- 腸内環境の悪化からお腹の不調、免疫力の低下
生活習慣病に分類される症状や病気が多く、栄養バランスに問題がない人や毎日運動している人でも食べすぎで発症リスクが生じます。
肥満や糖尿病、臓器への負担はさまざまな病気に発展するため、大病を防ぐ意味でも食べすぎを防いでいきましょう。
食べすぎを防ぐ方法として栄養素や食事の向き合い方を意識する

食べすぎを防ぐ具体的な方法は、以下のとおりです。
- ゆっくりよく嚙んで食べる
- 食物繊維を多めに摂取して、血糖値の急上昇を防ぐ
- たんぱく質は消化に時間がかかって、食べすぎを防ぐ
- 高GI食品の摂取量を控えて、血糖値の急上昇を防ぐ
- 小さい皿に盛って、食べる量をコントロールする
- 食事に集中するため、テレビやスマホを見ながらの食事をやめる
- 食べすぎない範囲で定期的に好物を食べてストレスを軽減する
食生活そのものに問題がある場合は、摂取する栄養素や食べ方から改善していきます。
栄養素や食べ方に問題がない人でも、食事に集中できていない場合は、食べすぎる可能性があります。
ゆっくりよく噛んで食べたときは満腹中枢が刺激されてレプチンが分泌される
食事でゆっくりよく噛んで食べた場合、以下のような効果があります。
- 時間をかけて食べるため、糖質を摂取しても血糖値が緩やかに上昇する
- 噛む時間をかけた影響から満腹中枢が刺激されて、満腹感を得られる
- 食欲を抑える効果のレプチンが分泌される時間も作れる
- 噛む回数の多さから食材が細かく刻まれて、消化に優しい
食事で満腹中枢が満たされるまでは約20分かかるため、食べすぎを防ぐうえではゆっくり食べるのが有効です。
血糖値の上昇抑制効果やレプチンの分泌も、食事に時間をかけたほうが効果を発揮します。
食べすぎ防止以外にも消化によいことから、ゆっくり噛んで食べる行為は推奨されています。
食物繊維やたんぱく質を多めに摂取して血糖値の上昇と食べすぎを防ぐ
食べすぎを防ぐ方法として栄養素の中でも注目したいのは、食物繊維とたんぱく質です。
- 食物繊維:体内で水分を吸収してお腹が膨れつつ、血糖値の上昇を緩やかにする
- たんぱく質:消化に時間がかかるため、腹持ちの良さから食べすぎを防ぐ
食物繊維は摂取した際に血糖値の上昇を緩やかにする効果があるため、血糖値の乱高下も防げます。
ただし、先に食べておかなければ効果を発揮しないため、食事では食物繊維を含んだ食材を優先的に摂取しましょう。
食物繊維とたんぱく質はあくまで多めに摂取したい栄養素であって、ほかの栄養素を一切摂取しないわけではありません。
糖質や脂質も体には必要な栄養素であり、適量は毎日摂取する必要があります。
そのため、栄養バランスの良い食事を前提として、食物繊維やたんぱく質を多く含む食材を毎日の食事で増やしてください。
GI値が高い食品は血糖値の乱高下につながる点から摂取量を減らす

GI値は対象の食材を食事で摂取した際の、食後血糖値の上昇度を数値化した指標です。
GI値は数値の大きさによって、以下の3種類に分けられます。
- 高GI食品:70以上
- 中GI食品:69〜56
- 低GI食品:55以下
血糖値の乱高下による食べすぎを防ぐうえでは、高GI食品はなるべく摂取量を減らすのが推奨されます。
高GIに該当する食品の例は、以下のとおりです。
| 分類 | 食材とGI値 |
|---|---|
| 穀物・パン・麺類 | 食パン:95 精白米:88 うどん:85 コーンフレーク:75 |
| 野菜類 | にんじん:80 かぼちゃ:65 |
| 芋類 | じゃがいも:90 とうもろこし:75 里芋:64 栗:60 |
| 果物 | イチゴジャム:82 パイナップル:65 |
| 乳製品 | 練乳:82 アイスクリーム:65 |
食物繊維の多い野菜類、たんぱく質の多い肉類や魚介類、豆類は低GI食品に分類される傾向があります。
高GI食品も一切食べてはいけないわけではないため、食べすぎないように意識する食品として覚えておきましょう。
視覚的な情報を工夫して食事に集中しながら食べすぎを防ぐ
食べすぎは噛む回数や食材だけでなく、食事中の視覚的な情報の工夫からも防げます。
デルブーフ錯視と呼ばれる現象を利用した方法であり、皿を変えるだけで実践できるため、元々食事量が多い人は試してみましょう。
テレビやスマホを見ながら食事をする、いわゆるながら食べは、ほかの行為に意識が集中して食事をしている感覚が薄まります。
食事への意識が逸れると噛む回数も減る傾向があり、満腹中枢も満たせません。
食べすぎを防ぐうえでは、食事中はテレビやスマホを見ないようにしてください。
たまには好物を食べたほうがストレスによる食べすぎを防げる
食べすぎを防ぐ方法では、栄養バランスが重視されますが、好物を一切食べてはいけないわけではありません。
たとえば、糖質や脂質が多い甘いドーナツは、毎日食べるものとしては推奨できない食品です。
しかし、普段の食事で糖質や脂質の量をコントロールできている場合は、週に1回食べても健康面では問題なく過ごせます。
毎食や1回の食事で大量に食べるのは良くありませんが、適量をたまに食べる分にはストレス軽減効果が期待できます。
好物を食べられずにストレスを感じて、ある日に我慢の限界がきて一気に食べてしまうほうが危険です。
1週間のうち6日間はバランスの良い食事ができたから、最後の1日は1食だけ好物を食べるなど、ストレスを溜めないように工夫しましょう。
食事以外の部分でもストレスや睡眠不足の解消から食欲を落ち着かせる
食事以外の部分で食べすぎを防ぐ方法としては、以下の内容が考えられます。
- 毎日十分な睡眠を取る
- 食事以外の趣味で日々のストレスを軽減する
- 毎日の食事内容を記録して、数値的に食事内容を把握する
- 突発的に食欲を感じたときは、深呼吸をして落ち着く
睡眠不足やストレスはホルモンの分泌に影響するため、過剰な分泌を避けられるように、解消したい点です。
食事内容を記録しておくと、視覚的に栄養素や食べた量を把握できて、食べすぎを防ぐモチベーション維持にもつながります。
深呼吸や少し体を動かすなど精神的に落ち着ける行動を取ると、食欲が落ち着く場合があるため、実践してみましょう。
体の仕組みを理解したうえで食べすぎを防ぐ方法を実践する
食べすぎる原因としては神経伝達物質のドーパミン、ホルモンのレプチンやコルチゾールが影響しています。
血糖値の急激な乱高下でも空腹感が増す場合があり、食べすぎで血糖値が急上昇すると、次の食事でも食べすぎてしまいます。
食べすぎを防ぐには、食物繊維やたんぱく質を多めに摂取して、ゆっくりよく噛んで食べるのが有効な防止策です。
スマホ視聴などのながら食べをやめて、小さい皿で食べるのも視覚的な効果で食べすぎを防げます。
糖質や脂質が多い食品でも適量を摂取する場合は、ストレス軽減の効果が期待できます。


