血糖値スパイクを予防するために必要な正しい生活習慣

血糖値スパイクを予防する。正しい生活習慣

血糖値スパイクを予防するためには、正しい生活習慣をおこなう必要があります。

血糖値スパイクの放置は、糖尿病や動脈硬化といった病気を引き起こすリスクを高めます。

そのため、食事や運動による生活習慣の改善が重要です。

この記事では、血糖値スパイクを予防するために必要な正しい生活習慣について解説します。

この記事で分かること
  • 血糖値スパイクが起こる原因
  • 血糖値スパイクと糖尿病、動脈硬化の関係性
  • 血糖値スパイクを予防するための生活習慣改善のポイント

血糖値スパイクが起こる原因や血糖値スパイクと糖尿病、動脈硬化の関係性から予防のための具体的な生活習慣改善のポイントを紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

血糖値スパイクが起こる原因を理解して糖尿病を予防に導く

血糖値スパイクを放置すると、糖尿病へと進行するリスクが高まります。

そのため、血糖値スパイクが起こる原因の理解が糖尿病を予防に導く上で重要となります。

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が正常範囲を超えて急上昇した後、急降下して正常範囲に戻る状態のことです。

食後2時間後の血糖値は、140mg/dL未満が正常範囲となります。

しかし、血糖値スパイクが起こっていると、食後2時間後の血糖値が140mg/dL以上になる場合があります。

こうした血糖値スパイクが起こるのは、インスリンの分泌異常が原因です。

通常、食べ物に含まれる炭水化物は分解されてブドウ糖になり、小腸から吸収されてエネルギー源として血液により全身に運ばれます。

インスリンの分泌不全や機能不全が起こると、ブドウ糖を細胞内に取り込めません。

そのため、血液中のブドウ糖の濃度が上昇して食後高血糖の状態になります。

血糖値スパイクは耐糖能異常、いわゆる糖尿病予備軍の人に多い症状です。

健康診断では空腹時血糖値のみを測定するため、血糖値スパイクの有無を判断するのは難しいといえます。

以下のような症状は血糖値スパイクが原因の可能性があるため、自身で血糖値スパイクに気づく重要なポイントとなります。

  • 眠気や倦怠感
  • 頭痛
  • 集中力の低下
  • めまいやふらつき
  • 動悸
  • 冷や汗
  • 手の震え
  • 不安感やイライラ感
  • 意識消失
  • 吐き気

上記のような症状に気づいたら、速やかに医療機関を受診してください。

血糖値スパイクの原因を理解して、速やかに対処するのが糖尿病を予防に導く大きなポイントといえるでしょう。

血糖値スパイクを放置すると糖尿病や動脈硬化のリスクが高まる

血糖値スパイクの放置。糖尿病や動脈硬化のリスクが高まる

血糖値スパイクを放置すると、血管に負荷がかかって糖尿病の発症や動脈硬化が進行するリスクが高まります。

持続的な血糖値スパイクは、インスリン抵抗性が増大します。

インスリン抵抗性とは、インスリンが十分に分泌されているにもかかわらず、作用が不十分な状態のことです。

こうしたインスリン抵抗性が、糖尿病や動脈硬化のリスクを高めます。

糖尿病や動脈硬化は、以下のような命にかかわる血管障害を引き起こす要因になります。

  • 脳卒中
  • 脳梗塞
  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 閉塞性動脈硬化症

さらに糖尿病を発症すると、以下の糖尿病による三大合併症を発症するリスクが高まります。

  • 糖尿病性腎症
  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性神経障害

他にも糖尿病により、認知症を発症するリスクも高くなるといわれています。

上記のような合併症を予防するためにも、血糖値スパイクに対して適切な対処が必要です。

食事の選び方と摂取順序の意識が血糖値スパイクを予防につながる

血糖値スパイクを予防するためには、食事の選び方と摂取順序を意識するのが重要です。

主食のみの食事は、血糖値スパイクを引き起こす原因となります。

ただし、過度な炭水化物の制限は、エネルギー源が不足して身体に様々な悪影響を及ぼします。

そのため、炭水化物は適量摂取するのが大切です。

さらに糖質の多い食品は、以下の血糖値の上昇を予防する効果のある低GI食品に置き換えるとよいでしょう。

  • 穀類(玄米やライ麦パン)
  • 果物(グレープフルーツやバナナ)
  • 野菜(ほうれん草やブロッコリー)
  • きのこ類(えのきやエリンギ)
  • 乳製品(牛乳やヨーグルト)
  • 大豆食品(豆腐や納豆)

他にも血糖値スパイクの予防には、摂取順序が重要です。

以下の順序で食べると、消化と吸収が緩やかになって食後血糖値の急上昇を抑制できます。

  1. 野菜
  2. タンパク質
  3. 炭水化物

食事をする際は、野菜から摂取するベジファーストを心がけてください。

食後の適度な運動が血糖値の急上昇を抑制する効果を持つ

食後の適度な運動。血糖値の急上昇を抑制する

食後に適度な運動をすると、血糖値の急上昇を抑制できます。

一般的に食後血糖値は、食事から1時間後に最も高くなります。

そのため、食後1時間後のタイミングで運動をおこなうのが血糖値の急上昇を抑制するのに効果的です。

毎日30分程度を目安に、以下の有酸素運動を取り入れましょう。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 水泳
  • サイクリング

さらに筋力トレーニングには、血糖値を下げて糖尿病を予防します。

これは、筋力トレーニングによって筋肉量が増えて、体内のブドウ糖を効率的に消費できるのが理由です。

特に血糖値の上昇を抑制するには、筋肉量の多い背中や下半身を中心とした筋力トレーニングが有効とされています。

他にもストレスは、血糖値を上昇させて糖尿病を発症するリスクが高まるといわれています。

そのため、ストレス解消効果のあるヨガやストレッチ、体操をおこなうのがおすすめです。

上記のような運動によりエネルギーが消費されると、血液中のブドウ糖が細胞内に取り込まれて血糖値が低下します。

ただし、運動を継続しないと、血糖値の上昇を抑制する効果は約3日程度で失われます。

血糖値の急上昇を抑制して安定した血糖コントロールをするためにも、適度な運動を継続的におこなうのが最も大切です。

食間の間隔や間食の内容が血糖値の安定維持に関与する

血糖値の安定を維持するには、食事の間隔や間食の内容が重要です。

健康的な人の場合、食後血糖値は約2時間で空腹時のレベルに戻ります。

そのため、食事は1日3食を基本として、3〜5時間の間隔を空けるのが理想的です。

ただし食事の間隔が長くなると、低血糖になったり、次の食事で高血糖になったりするリスクが高まります。

血糖変動を抑えるためにも、適切に空腹時間を確保してから食事するのが大切です。

さらに、間食の内容も血糖値の安定に大きく関与します。

間食による血糖値の影響を少なく抑えるために、1日あたりの間食は80〜160kcalに収めるのが理想的です。

その上で間食は、以下の食品を選ぶとよいでしょう。

  • ナッツ類(アーモンドやカシューナッツ)
  • フルーツ(キウイやグレープフルーツ)
  • 豆類
  • 小魚
  • ゆで卵
  • 野菜スティック

ナッツ類にはミネラルや良質な油、フルーツや野菜にはビタミンや食物繊維といった、食事で足りない栄養素が豊富に含まれています。

ただし、過剰摂取は肥満につながるため、必ず適量摂取するのが重要です。

今までの食事の間隔や間食の内容を少し工夫するのみで血糖値が安定するため、積極的におこなってください。

睡眠やストレス管理も血糖値スパイクの予防に密接に関連する

睡眠やストレス管理。血糖値スパイクの予防に密接に関連

睡眠やストレス管理は、血糖値スパイクの予防に密接に関連します。

睡眠不足や不眠は、インスリン感受性を低下させて血糖値スパイクを引き起こすといわれています。

そのため、質の高い睡眠をとるのが重要です。

睡眠の質を高める方法としては、以下の習慣が挙げられます。

  • 睡眠時間を7時間以上とる
  • 毎朝日光を浴びる
  • 同じ時間に起床と就寝する
  • 就寝前にスマートフォンやパソコンの使用を控える
  • 就寝前のカフェインやアルコール摂取を控える
  • 睡眠環境を整える(寝室の明るさや温度)
  • 定期的に運動する
  • 朝食は欠食しない
  • 就寝前に食事をしない

さらにストレスは、血糖値スパイクを引き起こす要因の1つです。

人はストレスを感じると、アドレナリンやコルチゾールといった血糖値を上昇させる働きをもつホルモンを分泌します。

慢性ストレスは、こうした血糖値を上昇させるホルモンの分泌を促進させます。

そのため、定期的に以下のようなストレス発散をするのがよいでしょう。

  • 適度な運動をする(ジョギングやヨガ)
  • 音楽や映画鑑賞
  • 読書
  • マッサージを受ける
  • ゆっくりと湯船に浸かる
  • 友人や家族と話す
  • アロマなどの香りを楽しむ
  • 十分な睡眠をとる

他にも血糖値が大きく変動すると、自律神経の働きが乱れます。

自律神経とは、循環や呼吸など人間の生命活動を維持する機能を担っている神経系のことです。

こうした機能をもつ自律神経が乱れると、以下のような様々な心身の不調が現れます。

身体的な症状

  • 動悸や息切れ
  • 頭痛
  • めまいや立ちくらみ
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 血圧上昇
  • 食欲低下
  • 多汗や冷や汗
  • 便秘や下痢
  • 肩こりや腰痛
  • 微熱

精神的な症状

  • 不安感
  • うつ
  • 不眠
  • 倦怠感や疲労感
  • イライラ感
  • 集中力の低下

血糖値を安定させて健康的に生活するためには、良質な睡眠や定期的なストレス発散をするのが大切となります。

血糖値スパイクの予防には朝のルーティンの工夫が有効である

血糖値スパイクの予防。朝のルーティンの工夫が有効

血糖値スパイクの予防には、朝のルーティンの工夫が有効です。

朝食を欠食すると、肝臓のインスリンを分泌する機能が低下します。

インスリンを分泌する機能の回復には時間がかかるため、インスリンの作用が低下して昼食や夕食後の血糖値が急上昇します。

そのため、血糖値スパイクを予防するには毎日朝食を摂るのが重要です。

ただし、朝食で糖質を過剰摂取すると血糖値が急上昇するため、副交感神経が一時的に優位になります。

こうした副交感神経が優位になる状態が続くと、自律神経が乱れて様々な心身の不調を引き起こす可能性があります。

そのため、糖質のみでなく、バランスの良い朝食を摂るのが大切です。

血糖値スパイクを予防するために、具体的に以下のような食品を朝食に取り入れてみてください。

  • 主食:玄米や雑穀米、ライ麦パン
  • 主菜:納豆や魚、豆腐
  • 副菜:サラダやわかめ、ひじき
  • その他:牛乳やヨーグルト、バナナ

さらに、食事中の水分摂取も血糖値スパイクの予防に効果的です。

食事中の水分摂取は消化を助け、血糖値の急上昇を抑制します。

そのため、朝食中にもこまめに水分補給を心がけるのが大切です。

他にも朝食前の運動は、血糖値スパイクを予防する効果があるといわれています。

運動をすると、筋肉への血流が増えて血糖値が低下します。

ただし、朝食前に運動をすると、低血糖を引き起こすリスクがあるため、無理のない程度の軽い運動をおこなうのがよいでしょう。

血糖値スパイクの予防には生活習慣全体の見直しと持続的な意識が重要となる

血糖値スパイクの予防には、今までの生活習慣全体の見直しと持続的な改善意識が最も重要です。

血糖値スパイクを放置すると、糖尿病の発症や動脈硬化が進行するリスクが高まります。

糖尿病や動脈硬化は、糖尿病による三大合併症や脳梗塞、心筋梗塞などの命にかかわる病気を引き起こす可能性を高めます。

こうした病気を予防するためにも、血糖値スパイクを予防する生活習慣の改善が必要です。

はじめは自分のできる範囲から、食事や運動習慣の改善を持続的におこないましょう。

他にも、良質な睡眠をとり、定期的なストレス発散をするように意識してください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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