朝の血糖値が高い理由を解説!夜間に起こる身体の秘密と対処方法について

朝の血糖値が高い理由を解説!夜間に起こる身体の秘密と対処方法

血糖値といえば、食事後に高くなると思っている人が多いかもしれませんが、実は朝起きた直後に高い状態になる場合があります。

しかし、早朝の血糖値を検査する機会は多くないため、発見が遅れるケースが多いです。

今回は、朝の血糖値が高い理由について解説をします。

夜間に身体で起こっている作用の説明や、適切な検査の内容および対処方法についても紹介します。

この記事でわかること
  • 朝の血糖値が高くなる理由は夜間の身体作用が影響する
  • ホルモンの作用で高血糖が起こる暁現象
  • 夜間の血糖値低下の反動で発生するソモジー現象
  • 服用する薬による影響も関与している
  • 空腹時高血糖の測定と診断分類
  • 朝の血糖値が高い状態を確認する適切な検査の方法
  • 朝に血糖値が高い状態を放置すると健康上のリスクが高い
  • 高血糖を改善する夜間および普段からの対策

今回紹介する内容を参考にして、ぜひ高血糖によるリスクを解消してください。

目次

朝の血糖値が高くなるのは夜間の身体内作用に秘密がある

朝の血糖値が高くなる理由。夜間の身体内作用に秘密がある

朝の血糖値が高くなる要因の1つとしては、夜間の身体内作用が影響していると考えられます。

眠っている間にも、身体はさまざまな活動を行うのが一般的です。

本来は血糖値が正常になるような調整作用が身体内で発生しますが、調整作用に異常がある場合は早朝に高血糖の状態になってしまいます。

朝の血糖値が高い状態について、以下の2つの視点から解説をします。

  • 夜間に身体内で起こる生理的な作用が影響している
  • 朝に血糖値が高い状態になる主な要因は2種類ある

朝に血糖値が高くなる理由について、理解を深めるための一助として活用いただけると幸いです。

夜間に身体内で起こる生理的な作用が影響している

朝に血糖値が高くなるのは、夜間に身体内で起こっている生理的な作用が影響しているケースが多いです。

通常は空腹時に血糖値が低くなりますが、夜間は血糖値を高める作用が体内で起こっています。

主に、夜間のホルモンの分泌や肝臓の働きにより血糖値が高くなります。

健康な人は血糖値の上昇を抑える作用も同時に起こるため、早朝の血糖値は低く保たれるのが一般的です。

しかし、インスリンの働きが不十分であるなど、正常な作用が起こらない場合には高血糖の状態になってしまいます。

糖尿病のリスクを考えるうえで、早朝の血糖値についても考慮するとよいでしょう。

朝に血糖値が高い状態になる主な要因は2種類ある

朝に血糖値が高くなる主な要因は、以下の2種類です。

  • 成長ホルモンなどが影響して血糖値が高くなる暁現象
  • 夜間の血糖値低下の反動で血糖値が高くなるソモジー現象

いずれも、身体にもともと備わっている生理作用が影響している現象です。

健康な人は、インスリンなどのホルモンや身体の生理作用が働いて正常な血糖値に戻ります。

しかし、疾患があるなど何らかの健康上の問題がある人は、以上2つの現象によって高血糖の状態になってしまうケースがあります。

それぞれの現象の詳細については後述しますので、血糖値に不安を覚える人は参考にしてみてください。

朝の血糖値を上昇させる身体の仕組みである暁現象を理解しよう

朝の血糖値を上昇させる身体の仕組みである暁現象

朝に血糖値が高い要因の1つに、暁現象が挙げられます。

暁現象とは、夜間に作用するホルモンの影響で血糖値が高い状態のまま起床する現象のことです。

暁現象の詳細について、以下の3点を中心にして解説します。

  • 早朝の4時~6時頃に起こる血糖値が自然に高くなる症状
  • 成長ホルモンやコルチゾールなどのホルモンが血糖値を上昇させる
  • 血糖値管理作用のあるインスリン不足により高血糖の状態になる

早朝に血糖値が高い人は、1つの可能性として、暁現象について理解を深めてみてください。

早朝の4時~6時頃に起こる血糖値が自然に高くなる症状

暁現象とは、早朝の4時から6時頃にかけて血糖値が高くなる現象のことです。

早朝の時間帯に起こる現象であると判明したため、暁現象と呼ばれるようになりました。

暁現象の要因となる各種ホルモンは誰もが体内で分泌しており、インスリンの作用などにより血糖値を適正に保つ生理作用もあるため、血糖値は正常に保たれます。

しかし、暁現象が起こる人は本来の血糖値調整機能が十分に働かないために、早朝になっても血糖値が下がりません。

朝に血糖値が高い人は、要因の1つとして暁現象を疑ってみるとよいでしょう。

成長ホルモンやコルチゾールなどのホルモンが血糖値を上昇させる

暁現象が起こるきっかけとして、夜間に成長ホルモンやコルチゾールなどのホルモンが分泌され、血糖値を上昇させる作用が挙げられます。

成長ホルモンやコルチゾールなどのホルモンは、インスリン拮抗ホルモンと呼ばれ、血糖値を管理するインスリンの働きを低下させる作用をもっています。

さらに、これらのホルモンは肝臓からの糖新生を促進する作用がある点も特徴です。

結果的に夜間に血糖値が上昇して、早朝に高血糖の状態で起床してしまいます。

暁現象は、夜間のホルモン分泌という誰にでもある生理作用が起因となって起こる現象です。

血糖値管理作用のあるインスリン不足により高血糖の状態になる

夜間のホルモンの作用により血糖値が上昇するものの、健常者の場合にはインスリンが正常に作用して血糖値を適正に保てます。

しかし、インスリンの分泌が不足していたり、インスリンの働きが不十分であったりする人は血糖値が上昇した状態を十分に改善できません。

そのため、暁現象は糖尿病患者に多くみられる現象です。

高血糖に悩む人は、食後の血糖値上昇のみでなく、早朝の血糖値の状況も確認するとよいでしょう。

一方、高血糖の自覚がない人でも早朝に血糖値が高い状態であるのが判明して、糖尿病のリスクが高いと気付くケースもあります。

健康だからと油断せず、定期的な検査をするのが肝要です。

ソモジー現象は夜間に血糖が下がった後の反動で発生する仕組み

血糖が下がった後の反動で発生ソモジー現象

朝に血糖値が高くなる要因として、暁現象以外にソモジー現象が挙げられます。

ソモジー現象も、暁現象と同様に就寝中に身体で起こる生理現象が起因として起こる現象です。

早朝に高血糖になる主な要因の1つであるため、血糖値に問題を抱える人は知っておくとよいでしょう。

ソモジー現象について、以下の2つのポイントを通して詳細を紹介します。

  • ソモジー現象とは低血糖後の反動で血糖値が上昇する作用のこと
  • インスリンの過剰投与や食事量の不足などにより発生するケースが多い

ソモジー現象も、身体の生理作用が起因で発生するとはいえ、健康な人には起こりません。

血糖値に不安を抱える人は、仕組みや発生の理由について事前に理解しておいてください。

ソモジー現象とは低血糖後の反動で血糖値が上昇する作用のこと

ソモジー現象とは、就寝中に低血糖になった後の反動で血糖値が上昇する作用のことです。

一般的に、就寝中に血糖値が下がっても、健康な人では適正値から大幅に下がるケースはありません。

ソモジー現象がみられる人は、就寝中に極端に血糖値が下がってしまうため、身体が血糖値を上げようと作用して逆に血糖値が上がり過ぎてしまう現象です。

身体には防御機能が備わっているため、血糖値が下がり過ぎた場合には血糖値上昇に向けた作用が過剰に働きます。

ソモジー現象は、身体に本来備わっている防御機能が影響して血糖値が上昇する現象です。

血糖値が水準よりも下がり過ぎてしまう点が問題で、反動で高血糖が起きる原因となっています。

インスリンの過剰投与や食事量の不足などにより発生するケースが多い

ソモジー現象は、糖尿病患者がインスリンを過剰に投与してしまった場合や、食事量が足りず糖質摂取量が不足してしまった際に起こるケースが多いです。

インスリンを投与するタイミングや食事を取る時間帯によっても、ソモジー現象の発生する可能性が変化します。

ソモジー現象が起こり早朝に血糖値が上がり過ぎないように、インスリン投与の量やタイミングを間違えないよう、専門医の指示をしっかりと守る必要があります。

就寝前に糖質を意識的に摂取するのも、ソモジー現象の発生を抑える方法です。

糖尿病の治療中はインスリン投与や食事の摂取の仕方が重要であるため、ソモジー現象も考慮しながら専門医と相談して対応しましょう。

朝に血糖値が高い原因は暁現象とソモジー現象以外にもある

朝に血糖値が高い原因、他の要因もある

朝の血糖値が高い理由としては、暁現象とソモジー現象が多いですが、他にも要因が考えられます。

基本的な生活習慣や服用している医薬品など、血糖値はさまざまな要因に影響を受けます。

血糖値が高くなっている要因を特定するためにも、高血糖になる原因の可能性について理解しておくとよいでしょう。

暁現象とソモジー現象以外に、早朝に高血糖になる要因を以下に3例紹介します。

  • 運動不足や食習慣の悪化が血糖値に悪影響を及ぼすケースが多い
  • 服用している医薬品が高血糖に影響している場合もある
  • 肥満による代謝異常やストレスが原因になっている可能性もある

血糖値に影響を及ぼす要因について理解を深めて、適切な対策を取ってください。

運動不足や食習慣の悪化が血糖値に悪影響を及ぼすケースが多い

普段の生活における運動不足や食習慣の悪化が、血糖値管理において悪影響を及ぼすケースが多くみられます。

運動は血糖値を適正に保つうえで重要な要素であり、運動をしてカロリー消費をすると、血液内の糖質のエネルギー変換を促進できます。

さらに、食べ過ぎや高カロリーな食事などの食習慣も、慢性的な高血糖を招く要因です。

就寝前や夜間に食事をするなど、食生活のリズムの悪さも血糖値が上昇するリスクを高めます。

日常生活に適度な運動を取り入れ、かつ食生活を適正に保って、血糖値を正常に維持するよう取り組みましょう。

服用している医薬品が高血糖に影響している場合もある

服用している医薬品が、空腹時高血糖の要因になる場合もあります。

たとえば、ステロイド空腹時の血糖値を高める可能性があると考えられています。

ステロイドは肝臓に作用して糖の生成を促進する作用があると同時に、インスリンの働きを抑制する作用も持っているため、高血糖に悩む人にとっては相性が悪いといえるでしょう。

利尿薬も、空腹時高血糖の原因となる場合が多い薬です。

利尿薬の服用によって、インスリン分泌を助ける作用のあるカリウムの排泄量が増え、インスリンの分泌反応の低下につながると考えられています。

高血糖に悩む人は、普段服用している医薬品について専門医に相談するのが肝要です。

肥満による代謝異常やストレスが原因になっている可能性もある

肥満による代謝異常やストレスが原因になって、血糖値が上昇してしまうケースも多いです。

肥満の状態が継続すると、中性脂肪やコレステロールの代謝が十分に行えなくなり、血液にも悪影響が及びます。

肥満は、高脂血症や高尿酸血症の原因となり、血糖値の上昇にもつながってしまいます。

さらに、過剰なストレスはアドレナリンの分泌を促進させ、空腹時血糖を上昇させる要因です。

アドレナリンにはインスリンの分泌を抑制する作用があるため、結果的に血糖値を高めます。

他にも、アドレナリンは血糖値を上げる作用をもつグルカゴンの分泌を促進します。

肥満およびストレス過多の状態を避けると、血糖値管理にとって効果的です。

朝の血糖値が高いかどうか判断する際の空腹時血糖の水準を理解しておこう

朝の血糖値が高いかどうか判断する際の空腹時血糖の水準

朝の血糖値が高いかどうかは、一般的には空腹時血糖の水準で判断します。

空腹時血糖とは、一定時間食事を取っていない状態で測定した血糖値のことです。

血糖値の測定において、食後の数値が重要であると考える人が多いかもしれません。

しかし、早朝の血糖値について検討する際は、起床時における血糖の状態に近いと考えられる空腹時血糖の水準を用いた方がよいでしょう。

空腹時血糖に関して、以下の2つの視点で解説します。

  • 空腹高血糖は10時間以上食事を取らない状態で判断する
  • 空腹時血糖の測定結果は数値によって3つに分類できる

血糖値を確認する際は、食後のみでなく空腹時血糖も重要な測定のタイミングです。

空腹高血糖は10時間以上食事を取らない状態で判断する

空腹時血糖値とは、食後10時間以上経過した状態で測定して得られる血糖値のことです。

一般的には、起床後食事を取る前に血糖値を測定します。

空腹時血糖値の測定結果は、糖尿病に罹患するリスクを判断する有効な指標です。

健康な人であれば空腹時に血糖値は上昇しない一方で、糖尿病など高血糖が原因で病気につながる可能性の高い人は、空腹時でも高い血糖値を示します。

食後血糖値の結果と併せて、空腹時血糖値の測定結果を診断基準として用いる方法は、高血糖による病気のリスクを検討するうえで重要な情報です。

空腹時血糖の測定結果は数値によって3つに分類できる

空腹時血糖の測定結果は、得られた数値によって以下の3段階に分類できます。

正常型~109mg/dL
境界型110~125mg/dL
糖尿病型126mg/dL~

mg/dLとは、血液1dL当たりに含まれる血糖値の数値のことです。

正常型の範囲で、99~109mg/dLを正常高値と分類するケースもあります。

糖尿病型に分類された人は、すでに糖尿病に罹患している可能性が高いです。

境界型に分類される人は、計測後の生活状況によっては糖尿病などの病気に発展するリスクが高いと考えられます。

空腹時血糖の測定結果は、高血糖による疾病リスクを判断する重要であるため、早朝の血糖値測定には健康状態を判断するうえで大いに意義があります。

朝の高血糖の原因を特定するために適切な検査を受診しよう

原因を特定するために適切な検査を受診しよう

朝に高血糖となる原因を特定するためには、正しい形式で検査を実施する必要があります。

暁現象やソモジー現象、あるいは他の要因が影響して早朝に高血糖となっている可能性があります。

効果的な対処をするために原因を特定するのは重要であるため、正しい検査を実施して対処しましょう。

朝の高血糖の原因を特定するための検査実施について、以下の3点から解説をします。

  • 就寝前から起床後にかけて血糖値測定を実施する
  • 医療機関で血糖値やHbA1cおよびインスリン検査を受診する
  • 連続血糖モニタリングで詳細なデータを取得する

実際に検査に臨む際は、専門医と相談しながら適切に対処してください。

就寝前から起床後にかけて血糖値測定を実施する

就寝前および深夜、起床後にかけて段階的に血糖値測定をすると早朝の高血糖の要因の特定につながります。

深夜の時間帯に極端な低血糖の状態になってから早朝に高血糖になっている場合は、ソモジー現象が疑われます。

一方、自然な上昇傾向がみられる場合は成長ホルモンの分泌により血糖値が上昇したと判断され、暁現象の可能性が高いです。

測定結果から自分で判断するのではなく、専門医に結果を報告してその後の対処方法を検討するほうがよいでしょう。

血糖値は、食事や運動および服用する薬品などさまざまな要因が影響して変動します。

自己判断に基づき誤った対処をすると、状態が悪化する可能性もあるため、専門医の指示を仰ぎながら取り組んでください。

医療機関で血糖値やHbA1c測定およびインスリン検査を受診する

医療機関では、血糖値検査に加えてHbA1c測定およびインスリン検査を受診するとよいでしょう。

HbA1c測定とはグリコヘモグロビンとも呼ばれ、過去2〜3か月の平均血糖の状態を測定する検査のことです。

早朝に血糖値が高い状態が、単発であるのか慢性的に起こっているのかを判断する際に役立ちます。

インスリン検査は、身体のインスリン分泌能力や抵抗性を診断する有効な検査です。

複数の検査を組み合わせると、高血糖の原因を高い精度で判別できます。

専門医の立場としても、多くの判断材料があったほうが、効果的な対策を講じられます。

血糖値管理においては、複数の検査を受診して適切な治療計画の実施を目指してみてください。

持続血糖モニタリングで詳細なデータを取得する

持続血糖モニタリングを実施すると、詳細かつ正確なデータを取得できます。

持続血糖モニタリングとは、CGMとも呼ばれるもので、皮膚の下にセンサーを装着して血糖値をおよそ2週間連続して測定し記録する装置のことです。

持続血糖モニタリングを実施すると、夜間から早朝にかけての血糖値の変動パターンが把握できます。

暁現象とソモジー現象のどちらが早朝の高血糖の起因になっているのか、有効な判断基準として活用可能です。

持続血糖モニタリングを実施して早朝に血糖値が高くなる原因を特定すると、治療方針や対策を適切に講じられるでしょう。

朝の血糖値が高い状態を放置すると健康上のリスクが増加する

朝の血糖値が高い状態を放置すると健康上のリスクが増加

朝に血糖値が高い状態が判明したにも関わらずそのまま放置していると、健康上のリスクが増加します。

血糖値が上昇し高血糖の状態が続くと、糖尿病をはじめ重大な病気につながるリスクが高まるため、適切な予防が重要です。

高血糖の放置により罹患のリスクが高まる糖尿病の合併症のうち、代表例を以下に3例紹介します。

  • 手足の神経に異常をきたしてしまう糖尿病神経障害
  • 視力障害を引き起こし失明のリスクもある糖尿病網膜症
  • 老廃物を排泄する機能が低下する糖尿病腎症

いずれも生命に関わる可能性のある病気であるため、高血糖の状態は早めに改善するように心掛けてください。

手足の神経に異常をきたしてしまう糖尿病神経障害

糖尿病神経障害は、手足の神経に支障をきたしてしまう病気です。

高血糖が身体に悪影響を及ぼし、神経が傷ついた結果、しびれや痛みおよび筋力低下などさまざまな症状を引き起こします。

自律神経にも異常をもたらし、下痢や便秘など胃腸のコントロール異常や起立時のふらつきなどが起こって日常生活に支障をきたします。

病状が進行すると、手足の傷ができて放置した場合に、感染症の罹患により手足が壊死して切断を余儀なくされるリスクもある怖い病気です。

手足にうずくような痛みやしびれの症状などがみられる場合は、糖尿病神経障害の可能性を疑って専門医に相談するとよいでしょう。

視力障害を引き起こし失明のリスクもある糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、視力障害を引き起こす糖尿病の代表的な合併症です。

目の網膜にある毛細血管が、高血糖の影響で損傷を受けて視力障害を引き起こします。

血管からの出血を繰り返して、網膜剥離につながる場合もあります。

症状の進行によっては失明につながるリスクもある怖い病気ですが、初期症状がないケースも多く、発見された時には症状が大幅に進行してしまっている場合も多いです。

高血糖と診断された場合は、自覚症状がなかったとしても定期的な眼科検診を受けるほうがよいでしょう。

特に糖尿病の治療中は専門医の指示に従い、適切な検査を受診して合併症の早期発見に努めるのが大切です。

老廃物を排泄する機能が低下する糖尿病腎症

糖尿病腎症は、老廃物を排泄する機能が低下する病気です。

老廃物の排泄に重要な役割を持つ腎臓内の血管が損傷を受けて、排泄機能が低下してしまいます。

糖尿病網膜症と同様、糖尿病腎症も自覚症状がないまま病状が進行してしまうケースが多く、気付いたときには人工透析が必要になっている場合もあります。

そのまま症状がさらに進むと、腎不全や尿毒症などを発症し、日常生活に重大な影響が及んでしまいます。

糖尿病腎症になると、たんぱく質が尿中に現れるようになるため、尿検査で発覚するケースも多いです。

治療方法は、血糖値の抑制を最優先に行います。

早期に発見できると症状の進行を早い段階で抑えられるため、高血糖と診断された場合には専門医と相談して予防対策をしましょう。

朝の血糖値を改善するために夜間に取り組みたい対策を解説

朝の血糖値を改善する夜間に取り組みたい対策

朝の血糖値改善を目指すためには、夜間に適切な対策を取る必要があります。

就寝中の身体の作用が影響して早朝の高血糖につながるため、就寝前の対策は重要です。

少しの心がけと行動で血糖値が改善されるケースも多いため、できるところから試してみてください。

朝の血糖値改善のために夜間に取り組みたい対策として、以下に3種類紹介します。

  • 夕食の時間や量および献立などの内容を見直す
  • 夕食後や就寝前に軽い運動を行いインスリン感受性を高める
  • インスリン注射や内服薬を利用するタイミングに留意する

可能な限り継続して実施し、適正な血糖値管理に努めましょう。

夕食の時間や量および献立などの内容を見直す

夕食を取る時間帯や量および献立など、夕食の内容を見直すと血糖値の改善につながります。

寝る直前に夕食を取ると、適正な血糖値の水準に戻る前に就寝してしまいます。

なるべく夕食と就寝時間の間隔を空けるようにし、夕食の量が多いのも血糖値管理には適さないため食べる量を調整しましょう。

さらに、糖質の多い夕食も血糖値を高める要因になります。

夕食の量や献立に気を配り、血糖値の上昇を可能な限り抑えると、暁現象やソモジー現象の発生リスクを軽減できます。

夕食の時間が遅くなるケースが多い人や、糖質の多い食事を食べ過ぎてしまう人は、夕食を見直すのが血糖値管理上必要不可欠です。

夕食後や就寝前に軽い運動を行いインスリン感受性を高める

夕食後や就寝前に軽い運動を行うと、血糖値管理に高い効果が期待できます。

適度な運動をして血中の糖質消費を促進すると、インスリン感受性を高められます。

就寝前にインスリンの働きが高まり、暁現象やソモジー現象が起こるのを防げるでしょう。

そのほかに、身体を動かしたほうが睡眠の質もよくなるため、生活習慣の改善の面でも効果があります。

激しい運動をする必要はなく、ストレッチなど自宅内でできる運動で十分です。

可能な範囲の運動を継続するほうが高い効果が期待できるため、軽めの運動から開始して習慣化を目指してみてください。

インスリン注射や内服薬を利用するタイミングに留意する

病気で治療中の人は、インスリン注射や内服薬を利用するタイミングも、朝の血糖値管理において重要な要素です。

糖尿病治療のためインスリン注射をしている人は、効果を夜間に持続させるために適切なタイミングで行う必要があります。

注射する薬品の種類によって効果の持続時間が異なるため、専門医と相談しながら最適な注射の時間帯を把握するとよいでしょう。

普段から内服薬を利用している人も、薬品の内容によっては血糖値に影響を及ぼす場合があるため気を配る必要があります。

治療中の病気の状況を考慮しながら決める必要があるため、自分で判断をせずに必ず医師の指示に従ってください。

夜間の対策以外に基本的な生活習慣を改善するのも大切

夜間の対策以外、生活習慣を改善するのも大切

朝の血糖値を適正に保つためには、前日の夜間対策のみでなく、普段の生活において基本的な習慣を改善するのも大切です。

血糖値は毎日の生活習慣との相関関係が高いため、日常の食生活や運動習慣の改善は血糖値管理において高い効果をもたらします。

血糖値を適正に保つために、毎日の生活を見直して改善できるところから取り組みましょう。

基本的な生活習慣を改善する点について、以下の3つの視点から解説をします。

  • ウォーキングなど軽めの運動を継続して定期的に実施
  • 普段の食事における食べ方や食べる順番を工夫する
  • 健康な状態でも定期的な検診を受けて高血糖の早期発見に努める

専門医のアドバイスを守りながら、自分に合った血糖値対策に取り組んでください。

ウォーキングなど軽めの運動を継続して定期的に実施

ウォーキングなど、軽めの運動を継続して定期的に実施する習慣を作ると、血糖値の改善効果が期待できます。

普段から運動をしていない人は、トレーニングなど急に激しい運動を開始しても長続きさせるのが難しいです。

一方、ウォーキングの場合は身体的な負担が少なく気軽に始められます。

最初は10分程度のウォーキングから開始して、毎日の習慣にするのが大切です。

運動の実施により、筋肉への血流量が増えて血中の糖質消費が促進され、血糖値の改善につながります。

無理のない範囲で継続できる運動習慣を取り入れて、血糖値の改善を目指しましょう。

普段の食事における食べ方や食べる順番を工夫する

日常の食事において、食べ方や食べる順番を工夫すると血糖値改善効果が期待できます。

しっかりと噛んで食べると、血糖値を下げるインスリンの分泌を促す効果があります。

さらに、ゆっくりと食事をするため炭水化物の吸収が緩やかになり、血糖値を抑えられる点でも効果的です。

食べる順番を決める際は、最初に炭水化物の食材を食べるのは避けるほうがよいでしょう。

炭水化物から摂取すると糖質の吸収が促進されるため、野菜から優先的に食べて、主食は食事の中盤から終盤にするほうが血糖値管理に適しています。

しっかりと噛んで食べたり食事の順番を意識したりするのは、誰でもすぐに取り組める手軽な対策です。

健康な状態でも定期的な検診を受けて高血糖の早期発見に努める

特に身体に異常を感じず健康であったとしても、定期的に検診を受けて高血糖の早期発見に努めるのも大切です。

自分では健康であると思っていても、実は糖尿病予備群の状態である場合があります。

糖尿病は、自覚症状を感じられないケースが多い病気です。

身体に異常がないとしても、気が付くと症状が進行している場合も少なくありません。

最低でも年に1回は検診を受けて、高血糖の疑いがないか確認するとよいでしょう。

特に高血糖と診断された経験がある人は、再発の可能性が高いため定期的に専門医の診断を受けて身体的異常の早期発見に努めるのが大切です。

朝の血糖値が高い理由を特定し適切かつ効果的な対策を取ろう

朝の血糖値が高い理由の大半は、夜間に身体内で起こる生理作用が原因と考えられます。

ホルモンの作用により起こる暁現象や、就寝中の低血糖の反動で起こるソモジー現象が代表例です。

いずれの現象も、インスリンの働きなど身体内の血糖値管理機能が正常に働くと発症しません。

朝の血糖値が高いと診断された場合は、身体に何らかの異常がある可能性が高いため、専門医の指導のもと適切な対策を講じましょう。

夕食の内容や時間および就寝までの運動習慣など、改善できる部分は多くあります。

インスリン注射のタイミングや内服薬服用の状況によっても、早朝の高血糖を引き起こす可能性があります。

高血糖の状態が継続すると糖尿病罹患のリスクが高くなるため、専門医と相談しながら早期に対策を講じるのが肝要です。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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