近年、健康志向の高まりから菊芋が注目を集めています。
今回は、菊芋から得られる健康効果と効果的な食べ方についてまとめました。
- 菊芋はキク科の植物
- 菊芋から得られる健康効果
- 菊芋の効果的な食べ方と具体的なメニュー例
- 菊芋を食べる際の注意点
菊芋の血糖値に対する効果が知りたい人、血糖値に良い食材を探している人はぜひ参考にしてください。
菊芋はじゃがいやさつまいもとは異なるキク科の植物である

菊芋は名前に芋という言葉が入っていますが、じゃがいもやさつまいもとは異なるキク科の植物です。
菊芋には、じゃがいもやさつまいもに多く含まれているでんぷんがほとんど入っていません。
原産地は北アメリカで江戸時代末期に日本に持ち込まれましたが、現在では日本各地で生産されています。
参照元:食育・農業体験 – マイナビ農業
見た目はしょうが、香りと風味はごぼうに似ており、くせが少なくほのかな甘味が感じられるのが特徴です。
秋から冬が旬にあたり、11月から3月頃に直売所や通販で購入できます。
生の菊芋は一般的なスーパーではあまり販売されていませんが、生以外に乾燥させて粉末状にしたパウダーやお茶、漬物などもあります。
体に良い影響を与える成分が含まれており、健康食材として注目されています。
菊芋は糖尿病患者や血糖値が気になる人にうれしい効果が期待できる

菊芋は、糖尿病患者や血糖値が気になる人にうれしい以下のような効果が期待できます。
- 食後の血糖値の急上昇を抑える
- コレステロール値を低下させる
- 高血圧やむくみを予防する
- 代謝を促進して脂肪の蓄積を防ぐ
- 腸内環境の改善に役立つ
これらの効果は、主に水溶性食物繊維のイヌリンとミネラルの一種であるカリウムによるものです。
菊芋の主成分はイヌリンであり、他にビタミン類やミネラル類などが含まれています。
参照元:菊芋の成分 – 菊芋普及会
ミネラル類の中でも、特に豊富なのがカリウムです。
ここでは、菊芋から得られる健康効果について詳しく解説します。
菊芋に含まれるイヌリンは食後の血糖値の急上昇を抑える
菊芋に含まれるイヌリンは水溶性食物繊維の一種であり、食後の血糖値の急上昇を抑えるのに有効です。
水溶性食物繊維は体内で糖質を包み込んでゆっくり移動し、糖質の吸収速度を遅らせて血糖値の上昇をおだやかにします。
イヌリンの摂取は、血糖値スパイクの予防にも効果的です。
血糖値スパイクとは食後の血糖値が急上昇した後に急降下する現象のことで、糖尿病を発症する要因となります。
さらに血糖値スパイクは血管に損傷を与えて動脈硬化を進行させるため、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが高まります。
菊芋にはイヌリンが豊富に含まれており、血糖値の上昇や血糖値スパイクを予防するのに役立つ食品です。
イヌリンにはコレステロール値を下げる効果が期待できる
イヌリンは体内の余分なコレステロールを包み込んで体外に排出するため、コレステロール値を下げる効果が期待できます。
さらに、イヌリンにはコレステロール値に影響を及ぼす胆汁酸を体外に排出する働きもあります。
イヌリンの摂取によって胆汁酸が排出されると血液中のコレステロールが使われるため、コレステロール値が低下します。
血糖値が高い人の中にはコレステロール値が高い人も多く、イヌリンの持つ作用が良い影響を及ぼします。
菊芋に含まれるカリウムが高血圧やむくみを予防する
菊芋に含まれるカリウムには体内の余分な塩分を排出する働きがあり、高血圧やむくみを予防できます。
高血圧には塩分の過剰摂取や肥満、運動不足などの生活習慣が関係しています。
1日あたりの塩分摂取量の目標値は男性が7.5g未満、女性が6.5g未満ですが、調査によると実際の食塩摂取量の平均値は男性が10.5gで女性は9.0gです。
参照元:令和4年国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省
塩分の過剰摂取によって体内の水分バランスが崩れ、むくみも引き起こします。
カリウムには細胞内液の浸透圧を調節する働きもあり、むくみの予防に効果的です。
イヌリンの摂取により短鎖脂肪酸の生成が増えて代謝が向上する
イヌリンの摂取によって短鎖脂肪酸の生成が増えて代謝が向上するため、脂肪の蓄積を防げます。
短鎖脂肪酸の中でも、特に代謝に効果がある成分は酪酸と酢酸です。
酪酸は交感神経に作用して心拍数や体温を上昇させて基礎代謝の向上を促し、酢酸は白色脂肪細胞に働きかけて脂肪が蓄積されるのを防ぎます。
参照元:腸活ナビ – 大正製薬
菊芋を食べると善玉菌の一種であるビフィズス菌が増殖し、短鎖脂肪酸が生成されます。
血糖値と肥満は密接に関係しており、代謝の向上は肥満を予防するのに効果的です。
イヌリンが腸内の善玉菌を増やして腸内環境の改善に役立つ
イヌリンは腸内で善玉菌のえさとなり、善玉菌を増やして腸内環境の改善に役立ちます。
腸内環境において善玉菌は悪玉菌よりも多い状態が望ましいとされており、善玉菌が優位な状態は腸内環境を良好に保ちます。
イヌリンが生成する短鎖脂肪酸も、腸内を弱酸性に傾けて悪玉菌が増殖するのを防ぐのに有効です。
腸内環境の改善は便秘や下痢を予防し、免疫細胞の働きを活性化させて免疫力の向上に役立ちます。
腸には免疫細胞のうち約7割が集まっており、細菌などの病原体から体を守る働きをしています。
糖尿病患者の中には高血圧や肥満、脂質異常症などの合併症を持つ人も多く、菊芋が生活習慣病の予防に役立つでしょう。
菊芋にはさまざまな健康効果がありますが、食べ方によって摂取できる栄養素に差が出ます。
血糖値の上昇を抑える効果を得るには菊芋の食べ方も重要である

血糖値の上昇を抑える効果を得るには菊芋の食べ方も重要であり、以下のようなポイントがあります。
- 茹でる調理法は避ける
- 血糖値の上昇を防ぐには朝食に食べるのが効果的
- 継続するには加工品も活用する
新鮮な菊芋は実が硬く、丸くて太いほど栄養素を多く含んでいるため、購入する際は実が硬くて重みがある物を選びましょう。
表面に傷がなく、できる限り芽が出ていない物を選ぶのもおいしい菊芋を選ぶコツです。
栄養素は調理によって失われる可能性があり、効率的に成分を摂取するには調理法にも気を配る必要があります。
調理法や食べ方により、菊芋の栄養素を最大限に摂取できます。
イヌリンを効率的に摂取するには茹でる調理法を避ける
水溶性のイヌリンは水に溶け出す性質があり、効率的に摂取するには茹でる調理法は避けたほうがよいでしょう。
長時間茹でるとイヌリンが溶け出して含有量が減ってしまうため、加熱調理する場合は少量の水で蒸し煮する、または汁ごと食べる料理が向いています。
そのため、効率的にイヌリンを摂取したい場合は長時間高温で調理する揚げ物などは向いていません。
長時間水にさらすのもイヌリンが流れ出る原因となり、あく抜きで水につける場合は5〜10分の短時間にとどめるのが大切です。
血糖値への効果を十分に得るには朝食で食べるのが効果的
菊芋を朝に食べると日中も血糖値の上昇を抑える作用が持続するため、血糖値への効果を十分得るには朝食に食べるのが効果的です。
参照元:時間生物学を利用した機能性食品開発 – 日本生物工学会
菊芋は糖質の吸収がおだやかな低GI食品であり、朝食に低GI食品を食べるとセカンドミール効果が期待できます。
朝食で血糖値の上昇を抑えられると昼食後の上昇もおだやかになり、数値の安定につながります。
糖尿病の予防や改善には、血糖値の数値を正常な範囲に近づける血糖値コントロールが求められます。
水溶性食物繊維が豊富で低GI食品の菊芋は血糖値コントロールに役立つ食品であり、血糖値が気になる人の朝食に適した食品です。
菊芋を継続して摂取するにはパウダーなどの加工品も活用する
健康効果を得るにはある程度継続した摂取が必要であり、パウダーなどの加工品も活用すると便利です。
生の菊芋は流通量が少なく収穫できる時期も限られているため、一般的なスーパーではほとんど販売されていません。
通販や直売所などで売られている場合もありますが、入手するのが難しいという欠点があります。
近年は菊芋に対する関心の高さから加工品を販売するドラッグストアやスーパーなどが増えており、生の菊芋よりも簡単に入手できます。
菊芋パウダーは普段の料理に混ぜて使えるため、初めて菊芋を食べる人も手軽に試せるでしょう。
菊芋は日常生活で食べるさまざまな料理に活用できる

菊芋はくせが少なく、日常生活で食べるさまざまな料理に活用できます。
今回紹介するのは、簡単にできる以下3つのメニューです。
- サラダ
- スープや味噌汁などの汁物
- 漬物
菊芋をパウダーで取り入れる場合は、普段の料理に混ぜる方法が簡単です。
カレーやシチュー、お好み焼きなどのメニューで小麦粉の一部を菊芋パウダーに置き換えて使えます。
パウダーは料理だけでなく、飲み物やお菓子作りにも取り入れられます。
普段飲んでいる飲み物に混ぜる方法は、料理をあまりしない人も気軽に挑戦できるでしょう。
ここからは、菊芋を使ったメニューについて紹介します。
生の菊芋をサラダにするとシャキシャキした食感が楽しめる
生の菊芋は加熱した時と食感が異なり、サラダにするとシャキシャキした食感を楽しめます。
食べ慣れていない人は他の野菜やツナなどと合わせると、無理なく食べられます。
千切りやスライス、小さめの角切りなど切り方によって食感が変わるのも特徴です。
菊芋の風味が苦手な人はマヨネーズや好みのドレッシングなど、普段から食べている味付けで抵抗感を減らせます。
サラダは和食と洋食のどちらにも合わせられるため、朝食にもおすすめのメニューです。
スープや味噌汁などの汁物は栄養素を無駄なく摂取できる
イヌリンは水に溶け出す性質を持っているため、汁ごと食べるスープや味噌汁などの汁物は栄養素を無駄なく摂取できます。
菊芋を加熱するとホクホクした食感になり、食感が似ているじゃがいもの代わりに使うと便利です。
味噌汁やコンソメスープ、ミネストローネなど色々な汁物に活用が可能で、時間がある時に作っておくと好きな時に温め直して食べられます。
具として入れるだけでなく、すり潰した菊芋を使ってポタージュにする方法もあります。
漬物は自分で簡単に作れて常備菜として毎日続けられる
漬物は調理の工程が少なく自分で簡単に作れるため、常備菜として毎日続けられます。
菊芋の健康効果を得るにはある程度継続して食べる必要があり、漬物は手軽に続けられるメニューの1つです。
作り方は菊芋を薄い輪切りにし、調味液に漬けて冷蔵庫で冷やします。
漬物はみそ漬けやしょうゆ漬け、甘酢漬けなど、味付けの種類も豊富で飽きずに継続できます。
菊芋の漬物は通販でも多く販売されており、定番の食べ方です。
今回紹介したメニューは日常的に菊芋を取り入れられますが、食べる際は注意点もあります。
菊芋を食べる時は食べ過ぎとキク科アレルギーに注意が必要

菊芋を食べる時は、以下のような注意点があります。
- 一度に多くの量を食べ過ぎないようにする
- キク科アレルギーがある人は食べるのを控える
1日に食べる菊芋の量に明確な基準はありませんが、血糖値の上昇を抑える目的で食べる場合は1日8.4g程度で効果が期待できます。
研究により、1日にイヌリンを600mg以上摂取した場合に食後の血糖値が上がるのを抑制する効果が報告されています。
イヌリン600mgを摂取するのに必要な菊芋の量は、8.4g程度です。
健康効果が期待される菊芋ですが、一度に多く食べると体に悪影響を及ぼします。
菊芋の食べ過ぎは下痢や腹痛を引き起こす原因となる
菊芋の食べ過ぎは下痢や腹痛を引き起こす原因となるため、一度に多くの量を食べ過ぎないのが大切です。
菊芋には難消化性デキストリンという食物繊維が豊富に含まれており、難消化性デキストリンの過剰摂取は下痢や腹痛を引き起こす原因となります。
イヌリンはほぼ100%が腸内細菌のえさとなりますが、難消化性デキストリンは大腸に届いたうちの半分が体外に排出されます。
以下は、消費者庁が発表している難消化性デキストリンの摂取量の目安です。
用途 | 1日あたりの摂取量の目安 |
---|---|
お腹の調子を整える | 3〜8g |
糖の吸収をおだやかにする | 4〜6g |
脂肪の吸収を抑えて食後の中性脂肪の上昇をおだやかにする | 5g |
参照元:特定保健用食品 – 消費者庁
食物繊維の過剰摂取は下痢や腹痛を引き起こすため、食べ過ぎないように注意が必要です。
キク科アレルギーがある人は不快な症状が出る恐れがある
キク科アレルギーがある人は菊芋によって不快な症状が出る恐れがあるため、食べるのを控えたほうがよいでしょう。
アレルギーを引き起こすキク科の植物にはブタクサやよもぎなどがあり、以下はキク科アレルギーの症状の具体例です。
- 鼻水
- 鼻づまり
- くしゃみ
- 目のかゆみ
- 喉がイガイガする
- 咳が出るなど
重篤な場合は、全身に症状が現れて生命に関わるアナフィラキシーショックを起こす恐れもあります。
ごくまれにですが、体質によっては以下のようなイヌリンアレルギーを起こす人もいます。
- お腹の張りや腹痛
- 下痢
- 体のかゆみなど
菊芋を食べる際には注意点もありますが、日々の食事に取り入れるとさまざまな効果が期待できます。
菊芋は糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防に役立つ食材である
菊芋にはさまざまな健康効果があり、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防に役立つ食材です。
水溶性食物繊維のイヌリンは血糖値が急激に上がるのを防ぐ効果があり、コレステロール値や血圧の低下、腸内環境の改善などが期待できます。
菊芋の栄養素を効率的に摂取するには茹でる調理法を避け、朝食に食べるのが効果的です。
毎日の食事に取り入れるには、菊芋を使ったパウダーなどの加工品も活用しましょう。
健康効果がある菊芋ですが一度に多く食べるのは避け、キク科アレルギーの人は食べるのを控えるのが大切です。