はちみつが血糖値に与える影響や糖尿病でも摂取してよい理由を徹底解説

はちみつが血糖値に与える影響。糖尿病でも摂取してよい理由

はちみつは独特の甘味があり、糖分が多く含まれているため、糖尿病の人にとっては避けたほうがよい食材と考える人も多くいます。

しかしはちみつには多くの栄養も含まれているため、適切な量の摂取は体調を整えるなどの効果が見込める食品です。

この記事では、はちみつが糖尿病の指標である血糖値に与える影響や、糖尿病でも摂取してよい理由を詳しく解説しています。

糖尿病が気になっており、食生活の改善を検討している人は、是非参考にしてください。

この記事でわかること
  • はちみつに多く含まれている果糖の効果
  • はちみつと他の糖類との糖分、カロリーの違い
  • はちみつは血糖値の上昇が緩やか
  • はちみつがもつ糖分以外の栄養素とその効果
  • 適切な摂取量や摂取に適したはちみつ
  • はちみつと相性が良い食品との摂取方法

それでは、1つずつ詳しく見ていきます。

目次

はちみつに多く含まれている果糖の摂取は血糖値上昇の直接の要因とはならない

はちみつに含まれている果糖。血糖値上昇の直接要因ではない

はちみつは、単糖類に分類される果糖を多く含んでいます。

単糖類は、炭水化物の中で食物繊維を除いた糖質の1つであり、他の糖質や糖の名称は以下のとおりです。

糖質の種類糖の名称
単糖類・果糖
・ブドウ糖
二糖類・ショ糖
・麦芽糖
・乳糖
多糖類・デンプン
・グリコーゲン

単糖類は体内の消化液では分解できない炭水化物の最小単位であるため、二糖類や多糖類よりも早く体内に吸収されます。

そして果糖は、同じ単糖類のブドウ糖よりも体内の吸収スピードは遅いといわれています。

果糖が体内で利用される成分に変化するための酵素は、インスリンの作用を受けないため、果糖の摂取が血糖値上昇の直接の要因とはなりません。

一方で果糖は、肝臓の働きによって中性脂肪に合成され、肥満の要因になる特徴があります。

このようにはちみつに多く含まれている果糖は血糖値を上げる直接の要因とはならないものの、過剰な摂取は肥満の要因となるため、適切な量に抑える必要があります。

はちみつは砂糖よりも糖分が低く、血糖値の上昇も緩やか

一般的に糖質の量が多く、高カロリーの食品を摂取した場合、血糖値は大きく上昇します。

はちみつは砂糖などの糖類よりも糖質の量、カロリーともに低いため、同じ量を摂取した場合は血糖値の上昇が抑えられる可能性が高いです。

一方で、同じ質量の糖質でも食品によって血糖値上昇の速さは異なります。

はちみつはブドウ糖と比べて血糖値の上昇が緩やかであり、糖質以外にも栄養が豊富であるため、摂取によりさまざまな効果が期待できます。

はちみつは砂糖よりも糖分が低い

はちみつおよび一般的に白砂糖といわれる上白糖などの、100gあたり糖質の量やカロリーは、以下のとおりです。

はちみつ/砂糖糖質の量カロリー
はちみつ81.9g329kcal
上白糖99.3g391kcal
グラニュー糖100.0g394kcal
黒砂糖90.3g352kcal
和三盆糖99.0g393kcal

上記のとおり同じ質量であれば、上白糖の代用としてはちみつの使用は糖質やカロリーを抑えられます。

一方、計量スプーン大さじ1杯あたりのはちみつと上白糖の重さや糖質の量、カロリーは、以下のとおりです。

はちみつ/上白糖大さじ1杯あたりの重さ大さじ1杯あたりの糖質の量大さじ1杯あたりのカロリー
はちみつ21g17.2g69kcal
上白糖9g8.9g35kcal

上記のとおり、計量スプーンで上白糖の代用としてはちみつを使用する場合は糖質の量、カロリーともに過剰摂取となります。

そのため、この場合は上白糖大さじ1杯あたりはちみつ小さじ1杯の割合を目安としましょう。

はちみつは砂糖などよりも血糖値の上昇が緩やか

はちみつは、インスリンの作用を受けない果糖を多く含んでいるため、ブドウ糖などよりも血糖値の上昇は緩やかです。

急激に血糖値が上昇する食品の摂取では多くのインスリンが必要となりますが、分泌が追いつかないため高血糖となる場合があります。

中には血糖値が急上昇し、その後急降下する血糖値スパイクが起きているケースもあり、以下のような症状が現れる可能性が高いです。

  • イライラする時が多い
  • 疲労を感じる時が多い
  • がんや認知症のリスクが高い
  • 太る可能性が高い
  • 空腹感がある
  • 集中力が低下する

食後に眠くなる症状も、血糖値スパイクが原因である可能性があります。

従って、血糖値が急上昇する食品は避け、血糖値の上昇が緩やかな食品の摂取を心がける必要があります。

はちみつは血糖値の上昇が緩やかであり、適正な量の摂取は血糖値スパイクになる可能性も低いです。

シドニー大学の研究によると、はちみつのGI値は58であり、中GI食品に該当します。

GI値とは、ブドウ糖摂取時の血糖値上昇度を100とした場合の食品ごとの血糖値の上昇度を表す指標のことです。

数値が高いほど血糖値の上昇スピードが早く、インスリンが多く必要になります。

シドニー大学の研究によると炭水化物を含んでいる食品は、GI値によって以下の3つに分類されています。

分類GI値代表的な食品
高GI食品70以上キャンディ、チョコレート、食パン、コーンフレークなど
中GI食品56~69カステラ、パスタ、かぼちゃ、長いもなど
低GI食品55以下さつまいも、豆腐、フルーツ、ヨーグルトなど

2003年にはWHO(世界保健機関)より、低GI食品が肥満や2型糖尿病の発症リスクを低減させる可能性がある旨のレポートが発表されています。

GI値と糖質の量やカロリーには相関関係がないため、低GIの食品でも糖質の量やカロリーの過剰摂取となる可能性があります。

一方で日本で有数の養蜂場である山田養蜂場の研究では、国産やルーマニア産のアカシアはちみつ、レンゲはちみつは低GI~中GIです。

糖尿病予防目的ではちみつを摂取する場合は、アカシアはちみつレンゲはちみつを選びましょう。

はちみつは栄養素が豊富であり、さまざまな効果が見込める

はちみつは栄養素が豊富。さまざまな効果が見込める

はちみつの約80%が果糖やブドウ糖、オリゴ糖などの糖質であり、約18%が水分です。

残りの約2%には、多くの栄養素を含んでいるため、適切な摂取によりさまざまな効果が見込めます。

疲労回復

はちみつに含まれる単糖類の果糖やブドウ糖は、胃腸への負担も軽いうえに短時間で糖分補給が可能であるため、疲労回復効果が見込めます。

整腸作用

はちみつには腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を抑制するオリゴ糖やグルコン酸が含まれています。

善玉菌が増えると腸内が活発となるため、便秘が解消するなど腸内環境が良くなります。

ただし、善玉菌が増えすぎると下痢を引き起こす可能性があるため、はちみつの摂取は適切な量までにとどめましょう。

抗菌、殺菌作用

はちみつには抗菌および殺菌作用があるため、喉の痛みを和らげたり、口内炎や口臭を予防したりできます。

さらにはちみつに含まれるビタミンやミネラルにより、風邪の予防にも効果があります。

美肌効果

はちみつには皮膚の代謝を整え、美白が期待できるビタミンB2やB6が含まれています。

さらにはちみつには抗酸化作用があるポリフェノールも含まれているため、シミやそばかすが予防できる可能性は高いです。

一方で加熱したはちみつには、感染症予防が見込めるタンパク質である顆粒球コロニー刺激因子の産生を誘発する成分が現れ、免疫力が向上します。

この加熱はちみつが持つ免疫力向上効果については、2018年に名古屋市立大学大学院薬学研究科の研究チームより発表されました。

はちみつの中には、上記の効果のほかに固有の効果が見込めるものもあります。

マヌカハニー

マヌカハニーとは、ニュージーランドのごく一部の地域で原生するマヌカの花から採れるはちみつのことです。

マヌカハニー特有の成分であるメチルグリオキサールには強い抗菌作用があり、原産国のニュージーランドでは、医療機関でも用いられています。

マヌカハニーによりピロリ菌除去も可能と考えられており、胃がんや胃潰瘍の予防が見込めます。

ソバはちみつ

ソバはちみつとはソバの花から採れるはちみつのことであり、他のはちみつよりも鉄や銅などのミネラルを多く含んでいるため、貧血予防が見込めます。

このようにはちみつには栄養素が豊富であるため、さまざまな効果が見込めます。

高血糖による糖尿病リスクを下げるため摂取量やはちみつ選びが重要

糖尿病リスクを下げる。摂取量やはちみつ選びが重要

はちみつは血糖値の上昇も緩やかで、さまざまな効果が期待できます。

しかし、過剰な摂取はカロリーオーバーで糖尿病のリスクが高まるため、摂取量やはちみつ選びは重要です。

WHOによるとはちみつは、1日に大さじ1杯程度の摂取が理想的とされています。

一方で、はちみつ本来の栄養素がそのまま含まれているため、純粋はちみつや非加熱もしくは低温加熱した加熱はちみつが理想的です。

さらに、はちみつと相性が良い食品との摂取により、はちみつのみを摂取するよりも大きな効果が期待できます。

WHOの推奨基準によりはちみつの適量は1日1杯程度

WHOでは2015年に、肥満や虫歯などの予防のため、1日の摂取カロリーの10%未満の砂糖類の摂取を推奨しています。

例えば、1日の摂取カロリーが2,000kcalである場合は、砂糖類は100kcal以内に抑えなければなりません。

はちみつ100gあたり329kcalであるため、以下の計算式により100kcalとなるはちみつの質量は30.5gとなります。

100g×(100kcal÷329kcal)≒30.5g

さらにWHOでは、追加で健康上の利点が得られるため砂糖類の摂取量を1日約25g以内とするよう求めています。

はちみつの大さじ1杯の質量は21gであるため、砂糖類を全てはちみつで代用する場合の目安は1日大さじ1.2~1.5杯です。

しかし、他の食事にも砂糖類は使用される場合が多いため、はちみつは1日大さじ1杯程度に抑えましょう。

純粋はちみつや非加熱もしくは低温加熱のはちみつが理想的

摂取するはちみつは、比較的高価であるものの、本来の栄養素が含まれている純粋はちみつが理想的です。

一方で市販されているはちみつは、以下のように特徴が異なる3つに分類できます。

はちみつの種類特徴
純粋はちみつ人工的に手を加えていないはちみつ
加糖はちみつ砂糖や水あめなど人工の甘味料を加えたはちみつ
精製はちみつ加工製品や調味料、化粧品などに利用されており、はちみつ特有のにおいや色、栄養成分を除去した無色無臭の甘味料

値段も手ごろな加糖はちみつは、砂糖や水あめなどの人工の甘味料を加えているため、純粋はちみつよりも血糖値が早く上がる傾向にあります。

一方ではちみつは、不純物などを除去するための加熱処理の有無によっても分類できます。

本来はちみつは粘度が高いため、不純物の除去などに相当時間を要しますが、作業効率を上げるために加熱によって粘度を下げたものが加熱はちみつです。

加熱処理の有無によって血糖値への影響はありませんが、含まれている栄養素は異なる場合があります。

加熱はちみつは比較的安価で入手できますが、加熱によって一部の栄養素が損なわれている可能性があります。

これに対して非加熱はちみつは、比較的高価ではあるものの加熱処理がされていないため、はちみつ本来の栄養素が摂取できる可能性は高いです。

なお、加熱はちみつの中には栄養素を損なわないよう低温加熱処理されているものもあります。

はちみつと相性が良い食品との摂取で大きな効果が期待できる

はちみつと相性がいい食品。大きな効果が期待

豊富な栄養素が含まれているため、はちみつのみの摂取でも効果が期待できますが、相性が良い食品との摂取により大きな効果が期待できます。

はちみつと相性が良い食品例として、以下の3つが挙げられます。

  • ヨーグルト
  • レモン
  • 大根

はちみつと合わせた摂取方法や摂取した際の効果は、以下のとおりです。

ヨーグルト

無糖ヨーグルトとはちみつを混ぜるのみであるため、簡単に摂取できます。

ヨーグルトに含まれているビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が、はちみつに含まれているオリゴ糖によって増えるため、腸内環境の改善に効果が期待できます。

レモン

スライスしたレモンをはちみつに漬け込んだものであり、そのまま食べる以外に水や炭酸水で割ったドリンクにして摂取できます。

レモンに含まれているクエン酸はエネルギー代謝を促す効果があるため、速やかな疲労回復が期待できます。

大根

スライスもしくは角切りにした大根をはちみつに漬け込んだものであり、大根だけでなくシロップまで摂取できます。

大根の抗炎症作用とはちみつの殺菌作用により、のどの痛みや風邪の症状を和らげる効果が期待できます。

このように、はちみつと相性が良い食品と合わせた摂取により大きな効果が期待できますが、いずれも血糖値が上がりすぎないよう摂取量を抑えなければなりません。

はちみつは砂糖などよりも血糖値に与える影響は小さいものの過剰摂取は厳禁

はちみつが多く含んでいる単糖類の果糖は、インスリンの作用を受けないため、血糖値上昇の直接の要因とはなりません。

従ってはちみつは、砂糖など他の糖類よりも糖質の量やカロリーが低いうえに血糖値の上昇も緩やかです。

さらに栄養素が豊富であるため、健康面においてもさまざまな効果が期待できます。

しかしはちみつの過剰な摂取は、高血糖による糖尿病のリスクを高めます。

WHOでは1日の砂糖類の摂取量を摂取カロリーの10%未満に抑えるよう推奨しており、はちみつで換算すると大さじ1杯程度に抑えなければなりません。

限られた摂取量の中で大きな効果が得らえるよう、純粋はちみつや非加熱もしくは低温加熱のはちみつを選び、はちみつと相性が良い食品と合わせて摂取しましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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