血糖値を下げる食べ物や食べる順番を解説!工夫次第で血糖値を安定化できる

血糖値を下げる食べ物や食べる順番を解説!

血糖値と食事は、深い関わりがあります。

食べ物や食べる順番次第で、血糖値を急上昇させたり緩やかにしたりします。

血糖値の急上昇は、糖尿病や動脈硬化などの疾患を引き起こす危険性があるため、血糖値の安定化は大切です。

この記事で分かること
  • 血糖値を上昇させる食べ物
  • 食物繊維は血糖値の急上昇を抑制させる
  • 低GI食品は糖質をゆっくり吸収する
  • タンパク質と脂質は消化管ホルモンの分泌を促進する
  • 食べる順番を変えるだけで血糖値は安定する
  • 発酵食品は血糖値管理に役立つ

食後に眠くなる人は、血糖値の急激な変動が関係している可能性があるため、ぜひ参考にしてください。

目次

血糖値と食事の関係を理解する

血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の濃度という意味です。

炭水化物を摂取すると、胃や腸で消化吸収されて、糖質と食物繊維に分かれます。

食物繊維は、消化酵素で分解されませんが、糖質は消化されて小腸から吸収されます。

糖質が血糖値を上げる仕組みは、以下のとおりです。

  1. 糖質は消化によってブドウ糖に分解される
  2. ブドウ糖は小腸から吸収される
  3. 吸収されたブドウ糖は肝臓へ運ばれる
  4. 肝臓へ運ばれたブドウ糖は血液中に放出される
  5. 血糖値が上昇する

タンパク質や脂質も血糖値の上昇に関与していますが、炭水化物は、食事開始直後から血糖値を上昇させます。

血糖値を容易に上昇させる代表的な食品は、以下のとおりです。

  • 白米
  • うどんやそうめんなどの麺類
  • 果物
  • 菓子
  • パン
  • 清涼飲料水
  • 砂糖

健康な人の場合は、上昇した血糖値も食後2時間経過すると、インスリンの働きによって空腹時の値に戻ります。

インスリンは、血糖値を下げる唯一のホルモンです。

糖質の多い食品を過剰に摂取する食生活を続けると、インスリンの分泌能力が低下し、血糖値が急上昇したり下がらなくなったりします。

血糖値の安定化ができなくなった場合、以下のような疾患にかかる危険性があります。

  • 糖尿病
  • 動脈硬化
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞

このような疾患にかかる危険性を減らすためには、普段の食生活が大切です。

しかし、血糖値を上昇させないために、炭水化物の摂取を極端に減らしてはいけません。

炭水化物が不足すると、エネルギー不足や疲労感、集中力の低下が起こります。

炭水化物を摂取する際は、血糖値の上昇を緩やかにする食べ物を選んだり、食べる順番を工夫したりすると良いでしょう。

血糖値の急上昇を防ぐ食べ物や食べ方の知識を身につけると、病気の予防につながります。

食物繊維が豊富な食品は血糖値の上昇を抑える

食物繊維が豊富な食品。血糖値の上昇を抑える働きがある

食物繊維は、食後の血糖値上昇を抑制する働きがあります。

食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類ありますが、両方とも体内で消化吸収されません。

消化吸収はされませんが、第六の栄養素といわれており、生活習慣病予防など健康維持に重要な役割を果たしています。

食物繊維を多く含む食品は、以下のとおりです。

  • 大麦や玄米などの穀類
  • ごぼう、ブロッコリー、カボチャ
  • エノキや椎茸などのきのこ類
  • 大豆や小豆などの豆類
  • わかめや昆布などの海藻類
  • サツマイモやジャガイモなどの芋類
  • 全粒粉やライ麦パン

上記の中でも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に大別可能で、それぞれ効果に違いがあります。

種類効果食品
水溶性食物繊維水に溶ける
小腸で糖質の吸収を遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑える
コレステロールを吸着し体外に排出する
ナトリウムを排出し高血圧を予防する
オクラ、昆布、果物、こんにゃく、里芋、大麦、オーツ麦など
不溶性食物繊維水に溶けない
水分を吸収して便の容積を増やす
便が増えた結果、大腸が刺激されて排便が促進される
きのこ、ごぼう、野菜、果物、海藻、豆類など

では、なぜ食物繊維が血糖値の急激な上昇を抑えるといわれているのでしょう。

実は、血糖値上昇の抑制には、水溶性食物繊維が関わっています。

水溶性食物繊維の働きは、以下のとおりです。

  1. オクラや昆布などの水溶性食物繊維を摂取
  2. 水溶性食物繊維が腸の中で糖質を包み込みながらゆっくり移動
  3. 消化酵素から糖質が守られる
  4. 糖質の消化吸収スピードが緩やかになる
  5. 血糖値上昇も緩やかになる

水溶性食物繊維の働きにより、これを豊富に含む食品と糖質の多い食品を一緒に摂取すると、糖質がゆっくり消化吸収されて血糖値の急上昇を抑えられます。

低GI食品の選択が血糖値管理に有効である

GI値の低い食品は、血糖値の上昇を緩やかにします。

GI(グリセミック・インデックス)とは、炭水化物50gを摂取した時に、どのくらいのスピードで血糖値が上昇するかを数値化した指標のことです。

GI値には、以下のような目安があります。

分類GI値特徴
低GI55以下血糖値がゆっくり上昇
中GI56〜69血糖値の上昇は中程度
高GI70以上血糖値が急激に上昇

高GI食品を摂取すると、糖質が急激に吸収されて多量のインスリンが分泌されたり、分泌が追いつかなくなったりします。

高GI食品には、以下のような食品があります。

  • 白米
  • 白パン、イングリッシュマフィン
  • せんべい
  • 飴、キャラメル
  • ドーナツ
  • カボチャ
  • にんじん

このような食品を摂取すると、血糖値が急上昇するなど、血糖値の乱高下を招きます。

繰り返される血糖値の乱高下は、動脈硬化など血管系の疾患を引き起こす危険性があります。

反対に、低GI食品は、糖質の消化吸収が穏やかです。

そのため、インスリンの分泌も穏やかになり、血糖値の上昇を緩やかにします。

低GI食品には、以下のような食品があります。

  • 大豆、煮豆
  • そば
  • パスタ
  • サツマイモ
  • オレンジ
  • いちご
  • バナナ
  • ヨーグルト
  • きのこ類
  • 牛乳
  • 全粒粉パン
  • ちくわ
  • ツナ缶

食後の急激な血糖値の上昇を防ぐためには、糖質をゆっくり吸収する低GI食品を選ぶと良いです。

いつも食べる白米を玄米にしたり、白いパンをライ麦パンにしたりなど、意識的に低GI食品を食事に取り入れましょう。

低GI食品は、血糖値を安定させる効果があるため、肥満や糖尿病のリスクを軽減します。

タンパク質と良質な脂質の摂取が血糖値の安定に有効

タンパク質と良質な脂質。血糖値の安定に有効

タンパク質と良質な脂質は、ゆっくりと消化吸収されるため、食後の急激な血糖値上昇を抑制します。

タンパク質と脂質は、炭水化物と合わせて三大栄養素と呼ばれています。

これら三大栄養素が血糖値に反映されるまでの時間は、以下のとおりです。

栄養素血糖値に反映される時間
炭水化物食事開始直後から2時間以内
タンパク質食後3〜5時間
脂質食後4〜10時間

タンパク質や脂質を摂取すると、十二指腸や小腸からインクレチンという消化管ホルモンが分泌されます。

インクレチンの働きは、以下のとおりです。

  • グルカゴンの分泌を抑制
  • 胃の運動を抑制、胃の内容物排出時間を遅らせる
  • 膵臓に働きかけインスリン分泌を促す

分泌されたインクレチンの血中濃度が上昇すると、その働きにより、血糖値を上昇させるホルモンであるグルカゴンを抑制します。

さらに、胃の運動を抑制したりインスリン分泌を促したりするため、ゆっくり消化吸収を行い、食後の血糖値上昇を緩やかにします。

炭水化物を摂取した場合もインクレチンは分泌されますが、タンパク質や脂質の方がインクレチンの分泌刺激作用は強いです。

そのため、脂質やタンパク質は血糖値の安定に有効であるといえます。

食事の順番を工夫すると血糖値の上昇を抑えられる

食物繊維を多く含む食品を炭水化物より先に食べると、食後の血糖値上昇を抑えられます。

食事開始直後から血糖値を上昇させる食品は、お米やパンなどの炭水化物です。

そのため、一番初めに炭水化物を食べた場合は、血糖値の上昇は抑えられません。

食べ始めには、野菜などの食物繊維を食べると良いです。

食物繊維は、糖質の消化吸収を緩やかにして、血糖値の上昇を抑えます。

さらに、肉料理に含まれる脂質の吸収も遅らせる働きがあるため、肥満の予防にも役立ちます。

次に、肉や魚などのタンパク質や良質な脂質を含んだ食品を摂取しましょう。

魚や肉のほとんどは低GI食品であるため、血糖値上昇は緩やかです。

他にも、インクレチンの分泌を促進したり炭水化物の消化吸収を穏やかにしたりするため、食後の血糖値上昇を抑制する働きがあります。

このように食べる順番に気を付けると、糖質の吸収を緩やかにするため、血糖値の急上昇を防げます。

発酵食品の摂取が腸内環境を整え血糖値管理に役立つ

発酵食品。腸内環境を改善する働きがある

発酵食品は、腸内環境を改善する働きがあるため、血糖値を安定化する働きがあります。

微生物の働きによって糖やタンパク質などを分解し、食材の栄養価や風味を高めたものが発酵食品であり、以下のようなものがあります。

  • 漬物
  • 味噌
  • 醤油
  • 納豆
  • キムチ
  • ヨーグルト

腸内には、約1000種類、100~1000兆個もの腸内細菌が生息しています。

これらの腸内細菌は、種類ごとに塊になって腸の壁に隙間なしで張り付いており、腸内環境を整えています。

便秘や下痢などお腹の不調にはさまざまな要因がありますが、腸内環境の悪化が原因の一つです。

さらに、腸内環境の悪化は、インスリンの分泌機能を低下させ血糖値の調整が困難になります。

そのため、腸内環境を整えて、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性を改善する必要があります。

加えて、肥満もインスリン抵抗性を引き起こす原因です。

腸内環境が悪化すると、短鎖脂肪酸の生成が抑制されます。

短鎖脂肪酸の働きは、以下のとおりです。

  • 食欲のコントロール
  • 脂肪蓄積の抑制
  • 脂質やブドウ糖代謝の促進

短鎖脂肪酸の生成が抑制されて腸内環境が悪化した場合、食欲のコントロールができなくなったり脂肪が蓄積されたりします。

肥満は、脂肪が蓄積された結果です。

肥満によって内臓脂肪が増えると、増大した脂肪細胞からインスリン抵抗性を引き起こす物質が産生されて、血糖値が下がらない状態になります。

これらは、腸内環境の悪化が原因です。

腸内環境を整えるためには、善玉菌を増やす食べ物を積極的に摂りましょう。

善玉菌は、腸内細菌の中でも体に良い細菌で、腸内環境や便通を整える働きがあります。

この善玉菌が豊富に含まれている食品が、発酵食品です。

発酵食品を摂取して腸内環境を整えると、インスリン抵抗性が改善され、血糖値管理に役立ちます。

血糖値を下げる食生活のポイントを再確認する

炭水化物を多く含む食品は、容易に血糖値を急上昇させます。

血糖値が急上昇するような食生活を続けた結果、将来的に脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病などの疾患にかかる可能性があります。

このような疾患を予防するためにも、血糖値の安定化は大切です。

炭水化物を食事開始時に摂取すると、血糖値は食直後より上昇するため、食べる順を見直しましょう。

食物繊維を最初に摂取すると、糖質や脂質の消化吸収を緩やかにするため、血糖値の上昇を抑えます。

次に、タンパク質や脂質を含む肉や魚を摂取すると良いです。

肉や魚は低GI食品でもあり、炭水化物の消化吸収を緩やかにする働きもあるため、食後の血糖値上昇を抑制します。

さらに、発酵食品は、腸内環境を整えてインスリン抵抗性を改善します。

このように、食べる順番に気をつけたり血糖値の上昇が緩やかな食品を選んだりする食生活は、血糖値の安定化に効果的です。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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