健康診断の結果で空腹時血糖値が高いけれど、何が悪いのかわからずに不安に思っている人もいるのではないでしょうか。
空腹時血糖値が高い状態を放置すると、糖尿病のリスクが高まるだけではなく、動脈硬化や心血管疾患に繋がる可能性もあります。
空腹時血糖値が高くなる原因を理解して、適切な改善方法がわかると血糖値のコントロールは十分に可能です。
- 空腹時血糖値の基準値
- 空腹時血糖値が高くなる原因
- 糖尿病への進行
- 空腹時血糖値の改善方法
空腹時血糖値の改善には、食生活や運動習慣の見直しが大切です。
指摘されると気になる空腹時血糖値の基準値をチェックしよう

健康診断の際に、空腹時血糖値という項目が、血液検査結果の中に入っているのを見た人もいるでしょう。
空腹時血糖値とは、10時間以上何も食べていない状態で測定した血糖値のことです。
ご飯やパンなど炭水化物を摂取すると、身体の中で消化吸収され、糖質と食物繊維に分解されます。
炭水化物に含まれる糖質が、ブドウ糖となり血管内に取り込まれると、血液中のブドウ糖が増えて血糖値が上昇します。
ここで作用する血糖値を下げる唯一のホルモンが、インスリンです。
血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌されて、食後2時間ほど経過すると、血糖値は空腹時の値に戻ります。
しかし、食後2時間後の血糖値では、まだ食事の影響を受けている可能性を否定できません。
この空腹時血糖値は、4つの段階に分けられており、糖尿病の診断に用いられる数値です。
空腹時血糖値は、どのくらいの値が正常なのか詳しく見ていきましょう。
空腹時血糖値の基準値を知っておくと糖尿病の早期発見に役立つ
空腹時血糖値は、糖尿病の診断基準で使用されます。
空腹時血糖値の基準値は、以下のとおりです。
空腹時血糖値の区分 | 空腹時血糖値(mg/dL) |
---|---|
正常値 | 110未満 |
正常高値 | 100~110 |
境界型糖尿病(糖尿病予備群) | 110~125 |
糖尿病 | 126以上 |
空腹時血糖値の区分は、4つに分けられます。
空腹時血糖値が110mg/dL未満であれば正常値と診断されますが、100〜110mg/dLの場合には正常高値と分類されています。
正常高値の状態が続くと、将来的に糖尿病を発症する可能性があるため、空腹時血糖値の値を気にする必要があります。
空腹時血糖値が110〜125mg/dLの場合は、境界型の糖尿病と言われ、糖尿病予備群に分類されます。
境界型の場合は、放置すると高確率で糖尿病を発症するでしょう。
その他にも、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を発症する確率も上がります。
空腹時血糖値が126mg/dL以上の場合、糖尿病の診断基準に該当します。
他の検査結果とあわせて確定診断を行いますが、糖尿病の可能性が高いです。
空腹時血糖値が高い状態でも自覚症状がない場合が多いため、空腹時血糖値の基準値を知っておくと、糖尿病の早期発見につながります。
空腹時血糖値が高い原因は生活習慣だけではなく他にもさまざまな要因が関係している

食事の影響を受けて数値が変わるのであれば、ご飯を食べてないのにどうして数値が高いのか疑問に思う人も多いでしょう。
血糖値の上昇には、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが関わっています。
インスリンは、膵臓から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む役割をしています。
インスリンの働きにより、通常は血糖値は上昇せず、正常値内に保たれている状態です。
肝臓がダメージを受けると、インスリンの分泌が減少し血糖値が高くなります。
他にも、インスリン抵抗性やインスリン分泌不足も血糖値が高くなる原因です。
インスリン抵抗性の場合は、インスリンは分泌されていますが、肥満などが原因でインスリンの働きが悪くなっています。
そのため、血糖値が下がらず、膵臓はさらにインスリンを分泌させます。
しかし、徐々に膵臓は疲れてきてインスリンの分泌が低下するため、インスリンの作用を十分に発揮できません。
このようにインスリンの分泌が低下すると、血糖値が下がらなくなり、高血糖の状態が続きます。
インスリン抵抗性やインスリンの分泌不足による疾患として有名なのが、糖尿病です。
1型糖尿病は、生活習慣は関係なく、遺伝的要因や免疫系の異常によって引き起こされる自己免疫疾患です。
子供など若い年齢で発症し、生涯にわたりインスリン注射が必要になります。
健康診断などで空腹時血糖値が高いと指摘されるのは、2型糖尿病です。
2型糖尿病は、食生活や運動不足など、生活習慣が大きく関わっています。
しかし、空腹時血糖値が高い原因は、糖尿病以外にもいくつかの要因が考えられます。
ストレスや睡眠不足などが原因で空腹時血糖値は高値になる
空腹時血糖値が高値になる原因には、ストレスや睡眠不足、薬物などが関係しています。
ストレスを感じると交感神経が活発になり、グルカゴンやアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンを分泌します。
これらは、血糖値を上昇させたりインスリンの働きを阻害したりするホルモンです。
ストレスが長期間続くと、このようなホルモンの働きによってインスリンに対する感受性が鈍くなり、血糖値のコントロールが難しくなります。
さらに、睡眠不足もインスリン感受性の低下に関係しているため、血糖値の上昇を引き起こすでしょう。
他にも、ステロイド薬に含まれるグルココルチコイドという物質は、インスリン拮抗ホルモンです。
そのため、ステロイド薬には血糖値を上昇させる作用があります。
食事に関係なく血糖値を上昇させるため、空腹時血糖値を高値にする原因になります。
ついついやりがちな夜遅い食事やアルコールの影響も関係がある
夜遅くに食事をすると、血糖値が下がるまでの時間が長くなり、翌朝の空腹時血糖値に影響を与えます。
食生活は血糖値を変動させる原因となるため、食生活が乱れると血糖値は上昇してしまいます。
朝食を抜く行為も、昼食後の血糖値を急上昇させる可能性が高いです。
このような血糖値の乱高下は、血管にダメージを与え、動脈硬化を進行させます。
さらに、過剰なアルコール摂取や喫煙も、インスリン分泌や効果に影響を与えます。
そのため、乱れた生活習慣は、空腹時血糖値を高値にする原因となるでしょう。
空腹時血糖値が高い状態続くと糖尿病発症の危険性が高まる

空腹時血糖値が高い状態が続くと、糖尿病を発症するだけでなく、体にさまざまな悪影響を及ぼします。
血液中の血糖が多くなると、尿中に糖分と水分を一緒に排泄するため、尿量が増えます。
体内の水分が失われると、脱水状態となり、喉の渇きを感じ始めるでしょう。
さらに、空腹時血糖値が高いと、細胞がエネルギー源であるブドウ糖を効率よく利用できなくなります。
そのため、エネルギー不足となり、疲労感を感じるようになります。
しかし、空腹時血糖値が高い状態が引き起こす影響は、これだけではありません。
空腹時血糖値が高値の状態では、血液の粘度が高くなり、血液の流れが悪くなります。
血液の流れが悪くなると、血管内で容易に血栓が作られる状態となり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。
糖尿病が進行すると初期には感じなかったさまざまな自覚症状が出現する
血糖値の値が常に高い状態が続くと、一般的に糖尿病予備群と呼ばれる境界型糖尿病から、本格的な糖尿病へ進行する可能性があります。
糖尿病になると、インスリンの分泌や働きが低下し、血糖値をコントロールする働きが弱まります。
糖尿病の症状としては、以下のとおりです。
- 口渇や多尿
- 疲労感や倦怠感
- 体重減少
- 傷の治りが悪くなる
糖尿病を発症した場合、食事療法と運動療法が基本です。
しかし、血糖コントロールが不良の場合は、インスリン注射や血糖降下剤の内服など薬物療法で治療する必要があります。
そのため、糖尿病の治療では、自己管理が大切です。
治療を自己中断した場合は、血糖コントロールが不良となり、糖尿病が進行して合併症を引き起こすリスクが高まるでしょう。
糖尿病の進行は動脈硬化の危険性を高めて重篤な病気を引き起こす

空腹時血糖値が高値の状態が続くと、血液の粘稠度が高くなり、血管を傷つける原因となります。
そして、傷ついた血管にコレステロールなどの物質が付着して、血管が硬くなります。
動脈硬化が進行すると、血管に付着したコレステロールなどの脂肪が蓄積して血管が細くなり、血液の流れが悪くなります。
その結果、血栓が形成されて、重篤な病気を引き起こす危険性が高まります。
動脈硬化が原因となる病気は、以下のとおりです。
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 大動脈瘤
形成された血栓が血流に乗って心臓に運ばれ、心臓の血管に詰まると心筋梗塞が起こります。
さらに、血栓が脳に運ばれて脳の血管に詰まると、脳梗塞が起こります。
これらの病気は、命に関わる病気であり、早急な治療が必要です。
このような病気を予防するためにも、空腹時血糖値を正常値に保ち、糖尿病の発症を防ぎましょう。
自覚症状がなくても糖尿病の3大合併症は進行する可能性がある
糖尿病発症後、空腹時血糖値が高い状態を放置すると、以下の合併症が進行する可能性があります。
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性神経障害
これらは、糖尿病の3大合併症であり、自覚症状がないまま進行してしまう場合があります。
糖尿病性腎症は、腎臓の血管がダメージを受けて老廃物がうまく排出できなくなる合併症です。
進行すると腎臓の機能が低下し、完全に働かなくなると最終的には人工透析が必要になります。
糖尿病性網膜症は、持続する高血糖の状態が目の網膜にある細い血管にダメージを与え、視力の低下が起こります。
最悪の場合には、失明する可能性のある合併症です。
初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると視界がぼんやりして見えます。
糖尿病性神経障害は、高血糖の状態が神経に栄養を届ける血管を傷つけて、神経の働きを悪くする合併症です。
手足のしびれや痛みなど感覚の異常が引き起こされますが、進行すると痛みの感覚が鈍くなるなどの神経障害によって、傷や感染症に気づかない場合が多くなります。
さらに、糖尿病が原因で血流障害を生じている場合は、傷を治すために必要な酸素や栄養が行き渡りません。
空腹時血糖値が高いまま放置すると重篤な感染症にかかる可能性がある
空腹時血糖値が高い状態では、免疫機能が低下し、感染症にかかる危険性が高くなります。
高血糖状態が続くと、白血球の働きが低下して細菌やウイルスへの抵抗力が弱まります。
このような働きを持つ白血球の機能低下によって、風邪やインフルエンザ、肺炎など感染症にかかるリスクが高くなります。
さらに、高血糖状態では毛細血管の血流が悪化するため、白血球が感染した部位に容易に到達できなくなります。
その結果、感染症が進行してしまい、悪化につながるでしょう。
特に、糖尿病の人は、足の傷に気をつける必要があります。
糖尿病が原因で足などの末梢神経が障害されると、痛みの感覚が鈍くなり、足の傷に気づけません。
そのため、足の傷が悪化して、壊死する可能性があります。
さらに、傷口から細菌が血液中に侵入した場合、全身に感染が広がり命に関わる重篤な状態に陥る可能性があります。
空腹時血糖値を下げるために効果的な改善方法を知ろう

健康診断で空腹時血糖値が高いと指摘されて放置していると、糖尿病を発症する可能性が高くなります。
さらに、糖尿病だけではなく、動脈硬化や腎臓病などの合併症を引き起こす可能性もあります。
空腹時血糖値を正常範囲に保つためには、生活習慣の改善が重要です。
そのため、バランスの良い食生活と、運動習慣を普段の生活に取り入れましょう。
他にも、睡眠時間の確保や、ストレスの管理も大切です。
空腹時血糖値を効率的に改善するために、今後取り入れていきたい習慣を紹介します。
毎日の適度な運動習慣はインスリンの働きを改善させる
適度な運動はインスリンの働きを改善し、血糖値を下げる効果があります。
血糖値を下げる効果が期待できる運動は、以下のとおりです。
- 有酸素運動
- スクワットなどのレジスタンス運動
- リラックスして行うストレッチやヨガ
空腹時血糖値を改善するためには、有酸素運動とレジスタンス運動を継続的に行うと良いです。
有酸素運動には、以下のものがあります。
- ウォーキング
- ジョギング
- サイクリング
- 水泳
- ラジオ体操
このような有酸素運動を行うと、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれるため、血糖値が下がります。
さらに、レジスタンス運動も取り入れると筋力が増加し、空腹時血糖値の改善に役立ちます。
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のことです。
レジスタンス運動の種類は、以下のようなものがあります。
- スクワット、腹筋運動などの自重トレーニング
- ダンベルやマシンなどの器具を用いたトレーニング
- 水の抵抗を利用して行うトレーニング
レジスタンス運動を行うと、筋肉量が増えるため、インスリン抵抗性が改善されて血糖値が下がります。
これらの運動を組み合わせると、より効果的に血糖コントロールができます。
加えて、ストレス軽減には、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動も有効です。
適度な運動を継続して行い、インスリンの働きを改善させましょう。
食事内容や食生活の見直しは血糖値の上昇を緩やかにする効果がある

血糖値を安定させるためには、食事内容を見直す必要があります。
特に、以下のような食生活を意識すると良いです。
- 低GI食品を意識して摂取する
- 炭水化物を摂り過ぎない
- 食べる順番を意識する
低GI食品とは、GI値が低い食品のことです。
低GI食品には、以下のようなものがあります。
- そば
- 玄米
- ライ麦パン、全粒粉パン
- りんご、いちご
- 大豆製品
- 海藻類
- 青魚など
低GI食品は、糖質が体内で消化吸収されるまでに時間がかかるのが特徴です。
そのため、食後の血糖値をゆるやかに上昇させて、インスリンの過剰な分泌を抑えられます。
反対に、炭水化物は、血糖値を急激に上げる食べ物です。
効果的な食生活として、食べる順番も大切です。
野菜やタンパク質を先に食べ、炭水化物を最後に摂ると、血糖値の上昇を抑えられます。
ストレス管理と睡眠の質向上は血糖値の安定につながる
ストレスや睡眠不足が続くと血糖値の上昇につながるため、リラックスできる時間を意識的に確保すると良いです。
- 適度な睡眠時間を確保する
- 夜、寝る前のスマホを使用するのを控えて睡眠の質を良くする
- 趣味や運動を取り入れてストレス発散をする
睡眠時間が短いと、糖尿病のリスクが高くなります。
寝る前にスマホを使用すると、光の刺激を受けて体の時間を調整するメラトニンの分泌が低下してしまい、寝つきが悪くなってしまいます。
寝つきが悪くなると、朝起きられず、スッキリと目覚められません。
睡眠不足を改善するためにも、リラックスする時間を確保し、睡眠の質を良くする習慣を作りましょう。
慢性的なストレスも交感神経を優位にさせ、インスリンの抵抗性を悪化させるため、血糖値が高くなってしまいます。
ストレスを溜めないように、副交感神経を優位にするためにリラックスできる時間を作る必要があります。
深呼吸や好きな音楽を聴き、お風呂にゆっくり浸かるのも良い方法です。
気になる空腹時血糖値を正常に保ち健康的な生活を送ろう
空腹時血糖値が高いからといって、すぐに糖尿病へと進行するわけではありません。
しかし、血糖値が高いまま放置してしまうと糖尿病のリスクが高くなり、さまざまな合併症を引き起こす可能性が高まります。
必ず原因となる習慣があるため、原因を理解して生活習慣を見直すと良いです。
食事や運動、そして睡眠の質を改善して血糖値を正常に保つと、健康的な生活を続けられます。
最近、血糖値が気になるという人は、生活習慣から見直してみると良いです。