糖尿病性神経障害を解説!足のしびれや痛みを緩和して進行を食い止める方法

糖尿病性神経障害を解説!しびれや痛みを緩和し進行を食い止める

糖尿病性神経障害は、長年の高血糖によって神経が徐々に傷つき、足のしびれや痛みなどの不調が日常生活に影響を及ぼします。

他にも、睡眠の質が落ちたり歩行が辛くなったり、生活の質の低下を実感する傾向にあります。

症状の程度には個人差がありますが、強い不安や慢性的な痛みによるストレスを抱える人も多いです。

この記事では、糖尿病性神経障害の代表的な症状や治療法、日常の対策について解説します。

この記事で分かること
  • 糖尿病性神経障害は高血糖状態が持続すると、神経細胞の働きが低下して発症する可能性が高い
  • 糖尿病性神経障害を放置した場合は、深刻な合併症に繋がる
  • 糖尿病性神経障害の痛みを軽減するためには、薬物療法の他にも複数の治療がある
  • 糖尿病性神経障害の進行を防ぐためには、日常的なセルフケアが必要である

糖尿病合併症の指摘を受けた人や糖尿病との付き合いが長い人、足のケアに興味がある人は最後までご覧ください。

目次

糖尿病性神経障害は高血糖状態が慢性的に持続すると発症リスクが高まる

糖尿病性神経障害は、長期間の高血糖により神経の構造や機能が損なわれるために発症します。

特に足先などの末端部分に強いしびれや痛みが生じ、夜間に手足のしびれや刺すような痛みが増し、不眠や違和感に悩まされる人もいます。

糖尿病性神経障害は、主として末梢神経系の障害です。

慢性的な高血糖状態が持続すると、神経そのものの損傷や神経に栄養を届ける細い血管の血流障害が起こり、感覚神経および運動神経の機能低下がみられます。

初期段階は手足にしびれや痛みなどが生じ、症状が進行すると足先から膝へ手先から肘へと、体の中心に向かって広がっていきます。

一方で、自律神経障害という側面もあり、血圧調整や消化運動など体のさまざまな無意識の働きを司る神経も侵されるのです。

そのため、立ちくらみ発汗異常排尿障害などが現れます。

このように糖尿病性神経障害は、夜になると増す痛みやしびれという末梢神経障害の苦しさと、体の基本機能を左右する自律神経障害による不安定さが同時に生じてしまうのが特徴です。

参照元:糖尿病性神経障害,公益社団法人日本薬学会

糖尿病神経障害 (とうにょうびょうしんけいしょうがい)とは,社会福祉法人恩恵財団済生会

糖尿病神経障害 健康日本21,厚生労働省

高血糖により神経細胞の働きが低下して糖尿病性神経障害が発症する

糖尿病性神経障害。高血糖により神経機能が低下し発症

糖尿病性神経障害は、高血糖によって神経細胞の代謝が乱れ、さらに血流障害が進行して神経の機能が低下する合併症です。

初めに、高血糖状態が続くと、神経細胞内で本来とは違う形の代謝産物が蓄積して神経細胞の働きが乱れます。

さらに、長期間の高血糖は毛細血管の細小血管障害を引き起こし、神経を栄養する血管の血流が悪化します。

これにより神経への酸素や栄養の供給が不足し、機能不全をきたすのです。

糖尿病の罹患期間が長いほど、あるいは血糖値の調整が不良な状態が続いているほど、この神経障害が起こる可能性が高くなります。

参照元:神経障害,糖尿病情報センター

神経障害を放置すると深刻な合併症が引き起こされる

糖尿病性神経障害を放置すると、深刻な健康被害に繋がる可能性があります。

初めに、手足の感覚麻痺が進むとちょっとした傷や切り傷に気づかないまま、それが足潰瘍に繋がります。

足潰瘍とは、足の皮膚が壊れて傷になる状態のことです。

さらに悪化すると皮膚や脂肪組織の壊死に至り、最終的には四肢の切断が必要になる人もいます。

その上、自律神経障害を伴うと、心臓や消化器系にも影響が及ぶ恐れがあります。

例えば心拍の異常や不整脈、さらには心筋梗塞のリスクも指摘されており、糖尿病患者における自律神経障害は生命予後にも関係する合併症です。

消化器では胃腸の運動障害などが起こり、生活の質を低下させます。

こうした深刻な合併症を避けるためには、血糖値の安定が最も重要です。

血糖管理を徹底して定期的な神経機能のチェックを受けると、不可逆な合併症の進行を抑えられます。

参照元:糖尿病足病変に対する下肢切断術,JSTAGE

糖尿病患者の心合併症評価と心電図異常, 特に突然死の成因へのアプローチ,JSTAGE

4.自律神経障害 日本内科学会雑誌,JSTAGE

神経障害の苦痛を緩和するには薬物療法の他にも複数の治療法がある

神経障害の苦痛を緩和。複数の治療法

糖尿病性神経障害の痛みやしびれを和らげるには、薬物療法をはじめとした複数の治療法があります。

初めに、症状が軽度の場合は、適切な血糖値の管理生活習慣改善によって症状が軽快する場合があります。

次に、症状が中等度の場合はこれに加えて、次のような治療が有効です。

  • 薬物療法
  • 温熱療法や電気刺激療法
  • 認知行動療法など心理的サポート
  • フットケア

薬物療法では、糖尿病診療ガイドラインで推奨されている薬剤としてプレガバリンミロガバリンデュロキセチンが挙げられます。

さらに、三環系抗うつ薬も古くから神経障害性疼痛に対する有効性が確認されている薬剤です。

日本ペインクリニック学会のガイドラインでも、同様にこれらの治療薬が第一選択薬に位置づけられています。

温熱療法や電気刺激療法は、血流を改善して、神経の働きを補助する効果が期待される手法です。

これらの方法も、痛みの軽減および生活の質の向上に繋がります。

認知行動療法など心理的サポートは、患者の痛み体験や日常生活の負担を緩和できる治療です。

慢性痛では痛みの度合いと不安が互いに影響し合うため、心理的サポートがこの悪循環を断つ助けとなります。

さらに糖尿病性神経障害が進行した場合は、定期的な足のチェックと皮膚の保湿などのフットケアも重要です。

これは症状を直接治す治療ではありませんが、二次的合併症の予防と生活の質の維持に繋がります。

これらの治療により、痛みやしびれをより管理できる状態に近づけます。

医師と相談しながら、自分に合った治療戦略を見つけましょう。

参照元:ミロガバリン長期投与時の安全性の検討―タリージェ®錠特定使用成績調査結果,JSTAGE

10 章 糖尿病性神経障害,糖尿病診療ガイドライン

帯状疱疹痛を含む神経障害性痛,日本ペインクリニック学会

医療用医薬品 : デュロキセチン (デュロキセチン錠20mg「ケミファ」 他),KEGG

糖尿病性神経障害の病態と治療,日本内科学会雑誌

糖尿病性神経障害の進行を防ぐための日常的なセルフケアがある

糖尿病性神経障害の進行を防ぐには、日常生活におけるセルフケアは重要です。

1つ目に、フットケアの習慣は欠かせません。

鏡を使って足裏や指の間を確認して、小さな傷や赤みなどの異変を見逃さないようにしましょう。

爪はまっすぐ切り、角をやすりで整えて、肌を保湿して保護します。

もし異変を見つけた際は、自分で判断せずに医療機関を受診してください。

これは、糖尿病性神経障害の早期発見と重症化予防において重要です。

2つ目に、生活習慣の見直しも意味を持ちます。

例えば、運動療法として週150分程度の有酸素運動と週2〜3回の筋力トレーニングが推奨されており、これが血糖値の安定やインスリン感受性の改善に繋がります。

食事療法では栄養バランスの取れた規則正しい食事が推奨され、特に炭水化物やたんぱく質、脂質の比率に気をつけて過食を避けるのが重要です。

このようなセルフケアを日常に取り入れると、足のトラブルを早期に発見できるため、神経障害の進行を抑えるのに役立ちます。

参照元:糖尿病フットケアノート,厚生労働省

糖尿病を改善するための運動 健康日本21アクション支援システム,厚生労働省

糖尿病 健康日本21アクション支援システム,厚生労働

糖尿病性神経障害の進行を食い止め生活の質を改善する

糖尿病性神経障害は、進行すると深刻な合併症に繋がる恐れがあります。

ただし正しい知識と日常のケア、適切な治療を組み合わせると、その進行は抑えられます。

手足のしびれや痛みは、薬物療法や血糖調整、生活習慣の見直しで改善や軽減が期待できる症状です。

さらに毎日の足の観察や適度な運動など、セルフケアの積み重ねが重症化を防ぎ、生活の質を守る力となります。

これまでの知識と実践法を生活に取り入れて、神経障害の進行を食い止め、痛みや不安に振り回されない日常を取り戻しましょう。

症状に合わせた治療や生活習慣の改善を継続して、自分自身の健康管理に積極的に取り組むのが、未来の生活の質を守る確かな方法です。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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