通常食事で糖分を摂取した場合、血糖値は一旦上昇しますが、食後2時間以内には正常な数値に戻ります。
しかし、糖分の摂取量や体内で異常が発生していた場合は、血糖値が高いままになります。
この記事では、食後の血糖値について、正常な数値に戻る仕組みや糖尿病における基準値などをまとめました。
- 食後の血糖値上昇を元に戻すインスリンの仕組み
- 糖尿病を発症する要因
- 食後高血糖に該当する基準
- 食後の血糖値上昇を抑える工夫
健康診断などで高血糖と診断された人は、糖尿病対策として参考にしてください。
食後に上昇した血糖値はインスリンの効果によって正常な数値に戻される
血糖値とは血液中の糖分量を示す数値であり、食事による糖分摂取や運動によるエネルギー消費によって数値が変動します。
食後の血糖値は健康上の問題がない場合、以下のような流れで正常な数値に戻されます。
- 炭水化物や砂糖に含まれる糖分を摂取する
- 体内でブドウ糖になり、血糖値が上昇する
- すい臓からインスリンが分泌されて、血液中のブドウ糖を取り込む
- 運動などのエネルギーを消費する際にブドウ糖が利用される
- 余ったブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成される
- 利用や貯蓄により血液中の糖分量が減少し、血糖値が下がる
血糖値を制御するためには、ホルモンの一種であるインスリンの存在が不可欠です。
しかし、以下のような項目に当てはまると、上昇した血糖値を正常な数値に戻せません。
- インスリンの分泌量以上の糖分摂取
- 運動不足によってエネルギー利用される糖分量が少ない
- インスリンに異常が発生して糖分の調節ができず、血糖値を下げられない
血糖分が消費や合成し切れず血液中に残り続けると、血糖値は常に高い状態になります。
上記の項目を理由に、高血糖の状態が継続している状態が糖尿病と呼ばれています。
インスリン異常が発生する要因によって1型糖尿病と2型糖尿病に分けられる
血糖値の上昇につながるインスリン異常は、主に以下の要因から発生します。
- すい臓のすい島にあるβ細胞が破壊されて、インスリンの分泌ができなくなる
- 糖分の過剰摂取や肥満などの生活習慣の乱れから、インスリンの分泌量低下やインスリンの効果に対する抵抗性ができる
- 血縁の糖尿病患者の遺伝から、元々の分泌量が少ない、インスリンの効果に対する抵抗性がある
すい臓の細胞の損傷が要因でインスリン異常が発生する場合、1型糖尿病に分類されます。
国内の発症率は高くありませんが、インスリンの供給がほぼ停止するため、外部からインスリンを補う必要がある糖尿病です。
一方、生活習慣の乱れや遺伝が要因でインスリン異常が発生する場合、2型糖尿病に分類されます。
国内の糖尿病の多くが該当しており、偏った食生活や運動不足が継続して、インスリンに影響が出てくる糖尿病です。
糖尿病の血液検査では食事の影響が出ていない空腹時血糖が参照される
糖尿病を判定する血液検査において、血糖値は基本的に空腹時血糖が参照されます。
血液検査では、同時にヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示すヘモグロビンA1c(HbA1c)も検出されます。
空腹時血糖とHbA1cの基準値については、以下のとおりです。
正常値 | 正常高値 | 境界型 | 糖尿病型 | |
---|---|---|---|---|
空腹時血糖 | ~99mg/dL | 100~109mg/dL | 110~125mg/dL | 126mg/dL~ |
HbA1c | ~5.5% | 5.6~5.9% | 6.0~6.4% | 6.5%~ |
正常高値までの範囲であれば、数値としては問題ありません。
食後2時間を過ぎても血糖値が正常に戻らない場合は食後高血糖に該当する
空腹時の血糖値に問題がない人でも、食後高血糖に該当する可能性があります。
本来はインスリンの効果によって、血糖値は食後2時間以内に正常値に戻るため、何らかの異常が生じています。
食後高血糖を判定する場合は、検査前にブドウ糖を摂取する経口ブドウ糖負荷試験が行われます。
経口ブドウ糖負荷試験における血糖値の基準値は、以下のとおりです。
正常型 | 正常高値 | 境界型 | 糖尿病型 | |
---|---|---|---|---|
空腹時血糖 | ~99mg/dL | 100~109mg/dL | 110~125mg/dL | 126mg/dL~ |
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT) | ~139mg/dL | – | 140~199mg/dL | 200mg/dL~ |
先に空腹時の検尿と血液検査を行い、その後にブドウ糖を摂取して、30分おきに120分後まで採血を行います。
空腹時とブドウ糖摂取時の数値の変化から、糖尿病かどうか判断していきます。
食後の血糖値を急上昇させないためには1回あたりの食事量を意識する
2型糖尿病の中でも生活習慣の乱れが要因になる場合、食生活の見直しから未然に防げる可能性があります。
糖尿病対策として食事で意識したい項目は、以下のとおりです。
- 1回の食事で大量の糖分を摂取すると、血糖値が急上昇してインスリンの供給が追いつかないため、1回あたりの糖分の摂取量を抑える
- インスリンの効果を弱める肥満対策として、脂質の摂取量も調節する
- 血糖値の吸収を緩やかにする食物繊維の摂取量を増やす
- 1回の食事で食べ過ぎないように、1日3回の決まった時間に食事を摂る
- 間食はなるべく控えて、食べる場合は糖分や脂質量が少ない食品を選ぶ
糖分の摂取量も重要ですが、血糖値を急上昇させない工夫も糖尿病対策では重要になります。
血糖値の急上昇を繰り返すと正常な数値に戻せなくなってしまうため、食べ過ぎないように意識しましょう。
食物繊維の血糖値の吸収を緩やかにする効果は発揮されるまで時間がかかる
食物繊維を多く含む主な食品は、以下のとおりです。
- モロヘイヤ
- ブロッコリー
- オクラ
- わかめ
- 昆布
- 大豆
- インゲン豆
- 納豆
- まいたけ
- えのき
- しめじ
- しいたけ
野菜類は食物繊維を含んでいる食材が多いですが、特に多いのはモロヘイヤやブロッコリー、オクラになります。
海藻類や豆類、キノコ類も食物繊維が多く、他の栄養素も豊富に含んでいます。
消化吸収していくうちに徐々に効果が出始めるため、食べる順番を意識する必要があります。
血糖値の上昇を抑える点で有効な栄養素の摂取順は、以下のとおりです。
- 血糖値の上昇を緩やかにする効果はすぐには発揮されないため、食物繊維が多い食材から食べる
- タンパク質は消化に時間がかかり、糖質が体内に摂取されるまで時間がかかるため、食物繊維の次に食べる
- 糖質が入った炭水化物を最後に食べる
上記の順番を踏まえたうえで、よく噛んで時間をかけて食事するのが推奨されます。
最後に糖質を食べた場合でも摂取量が多いと、インスリンの供給が間に合わなくなります。
食物繊維が全てを解決してくれるわけではないため、食べる量は調整しましょう。
食後高血糖の管理は目標に合わせてHbA1cの割合を制御していく
糖尿病に該当していなくても、血糖値やHbA1cの数値が高いとき、血糖コントロールを指示される場合があります。
血糖コントロールを行う場合、目標値として使用される数値はHbA1cです。
血糖値とHbA1cでは、数値の変動に以下のような違いがあります。
- 血糖値:糖分摂取量や運動によるエネルギー消費量によって数値が変動する
- HbA1c:ヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合は、赤血球の寿命の120日間は変動しない
HbA1cは数値が変動しない点から、2ヶ月間の血液中の糖分量を血糖値よりも正確に把握できます。
日本糖尿病学会の診療ガイドラインにおける血糖コントロールの目標値は、以下のとおりです。
目標 | HbA1cの目標値 |
---|---|
血糖正常化を目指す際の目標 | 6.0%未満 |
合併症予防のための目標 | 7.0%未満 |
治療強化が困難な際の目標 | 8.0%未満 |
正常な血糖値に戻す際は、正常高値の上限である5.9%が目標の基準値になります。
実際の目標や数値の設定は、患者の状態によって変わるため、医師の指示に従って食事や運動を改善していきましょう。
食後の血糖値の上昇は糖分の摂取量や食べ方を意識して対策できる
食後の血糖値は、糖分の過剰摂取やインスリン異常が原因で正常な数値に戻せなくなる場合があります。
高血糖が継続すると糖尿病の発症につながるため、普段の生活習慣を見直さなければいけません。
ただし、食物繊維の効果が発揮されるまでに時間がかかるため、栄養素の摂取順は意識しましょう。
糖尿病の血液検査は基本的に空腹時血糖値が参照され、HbA1cの結果と合わせて判定します。
食後高血糖の疑いがある場合は、検査の直前にブドウ糖を摂取する経口ブドウ糖負荷試験によって判定します。