糖尿病を治すには生活習慣の改善が欠かせない!正しい方法で寛解を目指す

糖尿病を治すには生活習慣の改善が欠かせない!正しい方法で寛解を目指す

糖尿病と聞くと、治らない病気というイメージから、不安に感じる人も少なくありません。

糖尿病は完全に治すのは難しい病気ですが、生活習慣を改善すると薬に頼らず、これまでと変わらない日常生活を送れます。

そのため、糖尿病と分かった段階で早期より治療を開始し、医師や栄養士の指導のもと食事の見直しや運動を取り入れた生活をする必要があります。

この記事で分かること
  • 糖尿病の完治と寛解
  • 寛解に不可欠な生活習慣の改善方法
  • 食品交換表を使用した食事の工夫 
  • 専門医や栄養士に相談するメリット

糖尿病と診断された人は、寛解を目指すための正しい知識を習得し、糖尿病と向き合いましょう。

目次

糖尿病は完全には治らないが症状の進行を予防できる病気である

糖尿病とは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが上手く働かなかったり分泌量が足りなかったりするため、血糖値が慢性的に高くなる病気のことです。

完全に治すのは難しい病気ですが、血糖値を正常に近づけるのは可能であり、病気の進行を抑えながらこれまでと変わらない生活を送れます。

血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度を示す数値のことで、ご飯などに含まれる糖質を摂取すると体内で消化されてブドウ糖に変わり、血液中に吸収されてその値が上昇します。

血糖値が上昇すると、膵臓はインスリンを分泌させて下げようとしますが、食事前の血糖値に戻るまでにかかる時間は通常2時間程度です。

しかし血糖値が急上昇すると膵臓はインスリンを過剰に分泌させて下げなければならず、疲弊し、やがて機能低下を起こしてインスリンの分泌量が減少します。

さらに、肥満も脂肪細胞から分泌される物質の影響でインスリンの働きを弱めるため、膵臓に負担をかける原因のひとつです。

インスリンの働きが弱まり、量も足りない場合は血糖値が十分に下がらないため、高血糖の状態が続いて糖尿病を発症したり進行させたりします。

糖尿病の治療は病気を治すのではなく、病気や合併症への進行を予防するために行われ、血糖値を正常に戻すのが重要です。

高血糖の状態を放置すると動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞を招いたり、網膜症などの合併症を引き起こしたりして、日常生活に悪影響を及ぼします。

加えて血糖値が改善しても再び生活習慣が乱れると、すぐにコントロール不良となるため、糖尿病は治らないといわれています。

しかし、完治できなくとも健康的な生活習慣の継続によって、これまで通りの生活を送るのは可能です。

糖尿病の寛解とは症状の出現や進行を抑え日常生活に支障がない状態のことである

糖尿病の寛解とは日常生活に支障がない状態

糖尿病は一度発症すると長く付き合っていく必要のある病気ですが、ある条件を満たした場合、寛解という状態を目指せます。

完治とは、病気そのものの原因が取り除かれて再発の可能性がないことであり、寛解は病気自体は治っていないものの検査値が正常に戻ったり症状が消失したりした状態をいいます。

寛解が得られる可能性が高い条件は、以下のとおりです。

  • 発症からの期間が短い
  • 体重を5%以上減量できている
  • HbA1cの初期の値が相対的に低い
  • BMIが高い
  • 薬の治療を開始していない

糖尿病が寛解すると、血糖値やHbA1cが正常に近い値まで下がり、血糖降下剤やインスリン注射を使用しなくても血糖値コントロールができるようになります。

HbA1cは、過去1〜2ヶ月の血糖値を反映しており、検査前の数日間食事や運動に気をつけたからといって数値が良くなるものではありません。

そのため、HbA1cは日々の血糖値コントロール状態の指標となり、数値が高い場合は過去1〜2ヶ月間の血糖値が高値で推移していたと分かります。

生活改善を行い、HbA1や血糖値が安定しても急上昇させる食生活に戻ると再び数値は高くなり、治療が必要になる場合もあります。

したがって糖尿病の治療は、血糖値やHbA1cの値を良好にコントロールするのが目標であり、寛解の状態をできるだけ維持する心がけが大切です。

糖尿病の寛解には食事や運動など生活習慣の改善が必要不可欠である

糖尿病の寛解に必要不可欠なこと

糖尿病を寛解させるためには、継続的に生活習慣を改善する努力が欠かせません。

血糖値が高くなるのは、インスリンが十分に働いていなかったり、分泌量が足りなかったりするためです。

これはインスリンの分泌を行う膵臓の機能が低下している状態であり、その負担を減らす生活を送る必要があります。

膵臓の負担を減らすためには、以下の治療が重要です。

  • 食事療法
  • 運動療法
  • 薬物療法

食事は血糖値上昇と深く関わるものであり、糖質の過剰摂取や暴飲暴食は糖尿病の要因になるため、血糖値を安定させる工夫をした食事をする必要があります。

さらに、運動はブドウ糖の利用を促進したり、肥満を解消したりします。

ほかにも薬物療法によって、膵臓の働きが助けられると、早期の血糖値コントロールが可能となるでしょう。

糖尿病の治療は膵臓を休ませるために薬を使用する場合もありますが、基本的には食事や運動など生活習慣を整えるのが大切です。

食生活の改善は血糖値の急上昇を防ぎコントロールに効果がある

血糖値を正常に近づけるために大切なのは、健康的な食事への切り替えです。

糖質を摂取すると血糖値は上昇しますが、食べ方や食品選びを工夫して血糖値の急上昇を防ぎ、インスリンを過剰に分泌させないようにする必要があります。

血糖値を急上昇させないためには、以下のような工夫が血糖値コントロールに役立ちます。

  • 野菜など食物繊維が豊富な食品を食事の最初に摂取する
  • 白米など糖質を豊富に含む食品を食事の最後に摂取する
  • 低GI食品を摂取する

食事の最初に糖質を摂取すると直後より血糖値は上がりますが、食べる順番を工夫すると抑えられます。

食物繊維は糖質のように消化吸収されず、血糖値上昇を緩やかにさせる働きがあるため、食事の最初に摂取するのが望ましいです。

食物繊維の中でも特に水溶性食物繊維は、小腸で糖質が消化吸収される速度を遅らせるため、食後の血糖値変動を抑制する効果があります。

水溶性食物繊維が豊富な食品には、以下のようなものがあります。

  • わかめ
  • おくら
  • 里芋
  • 大麦
  • 昆布

これらの食品を食事の最初に摂取すると、膵臓の負担が軽減され、血糖値コントロールは良好になります。

次に脂質やタンパク質を摂取すると、糖質を消化吸収する速度が抑えられ、食後血糖値の変動を穏やかに保てます。

糖質は摂取後2時間以内に全て消化吸収されて血糖値を上昇させますが、脂質は食後4〜10時間、タンパク質は3〜5時間かけて血糖値に影響を与える栄養素です。

脂質やタンパク質を摂取すると、小腸からインクレチンと呼ばれる消化管ホルモンが分泌されて、胃の運動を抑制するため消化がゆっくり進みます。

さらに、インクレチンはインスリンの分泌を促したり、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制したりする働きもあります。

インクレチンの働きにより、糖質を摂取しても消化吸収に時間がかかるため、血糖値の急上昇予防が可能です。

ほかにも、低GI食品を摂取するなどの工夫は、血糖値変動の抑制に役立ちます。

GI値とは、食品が血糖値にどのくらい影響を与えるのかを示した数値のことです。

GI値が低い食品は血糖値を緩やかに上げるのに対し、高い食品は糖質の消化吸収が早いため、血糖値は短時間で高くなります。

低GI食品には、以下のようなものがあります。

  • 全粒粉パン
  • 玄米
  • 肉類
  • 魚介類
  • そば
  • キノコ類
  • 豆類

食物繊維が豊富な食品が低GI食品には多いため、血糖値への影響が少ないです。

そのため、高GI食品を低GI食品に置き換えるなどの工夫を継続的に行うと膵臓への負担を減らせ、血糖値が安定します。

このような食事の工夫は、糖尿病の寛解を目指すには非常に大切です。

運動はブドウ糖を効率よく消費できるため血糖値を下げるのに役立つ

運動は血糖値を下げる。ブドウ糖を効率よく消費できる

運動療法は、効率よくブドウ糖をエネルギーとして使用できるため、血糖値上昇の抑制に役立ちます。

ブドウ糖は、体を動かしたり脳を働かせたりするのに必要な栄養素です。

糖尿病はブドウ糖が血液中に過剰に存在している状態であり、運動によるエネルギー消費でブドウ糖が使われると血液中の濃度は下がり、血糖値の改善につながります。

中でも有酸素運動は血液中のブドウ糖を効率よく消費し、肥満の解消にも役立ち、インスリンの効果を高める働きが期待できます。

血糖値を下げるのに効果がある有酸素運動は、以下のとおりです。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 水泳
  • サイクリング

激しい運動ではなく、無理せずに継続できる運動を生活の中に取り入れるのが大切であり、目安としては週に3〜5回を合計150分程度行うのが望ましいです。

加えて食後30分〜1時間以内の有酸素運動は、食後血糖値の急上昇抑制に役立つため、食後に散歩をするなど体を動かす工夫も必要でしょう。

一方、筋肉トレーニングによる筋肉量の増加も、さらにブドウ糖の消費を促すため血糖値を下げるのに効果があります。

以下のような筋肉トレーニングは、血糖値コントロールに有効です。

  • スクワット
  • 腹筋
  • 腕立て伏せ
  • 踵の上げ下げ

ブドウ糖はエネルギーになるほか、余分なものはインスリンの作用によってグリコーゲンに変換されて肝臓や筋肉に貯蔵されます。

貯蔵されたグリコーゲンは、運動時などブドウ糖が不足した時に再び変換されて消費されます。

筋肉はブドウ糖を効率よく消費するだけでなく、筋肉量の増加はブドウ糖を貯蔵する能力も高めるため、血糖値を良好に保つうえで大切です。

そのため筋肉トレーニングは週に2〜3回取り入れるのが有効ですが、心疾患など持病がある人は医師の指導のもと、運動強度を決めてください。

有酸素運動と筋肉トレーニングは、両方継続するのが大切です。

ほかにも、通勤の際に一駅分多く歩いたり階段を使ったりするなど日常生活の中で体を積極的に動かす習慣も、血糖値の安定につながります。

薬物療法は膵臓の負担を減らすため早期に血糖値が安定する

食事療法や運動療法で十分な効果が得られない場合には、薬物療法を併用して血糖値コントロールを行います。

薬物療法には、内服インスリン注射があり、体質や症状に応じて使用される薬が違います。

糖尿病の治療で使用する薬は、以下のとおりです。

薬の種類効果
経口血糖降下剤・膵臓のインスリン分泌を促す
・インスリンの働きを改善する
・糖の吸収を抑えて血糖値の急上昇を防ぐ
・尿から余分な糖を排出する
GLP-1受容体作動薬・膵臓のインスリン分泌を促す
・血糖値を上げるグルカゴン分泌を抑制する
・胃の働きを遅らせて食後血糖値の急上昇を防ぐ
インスリン注射・インスリンを体の外から補充する

内服治療から開始される場合が多いですが、糖尿病の発症初期は、膵臓を休ませるためにインスリン注射を導入する場合もあります。

これらの薬を使用すると、膵臓の負担が減るため、血糖値は薬を使用していない場合に比べて早期に安定するでしょう。

一方で、薬を使用した場合に食事をしなかったり激しい運動をしたりすると血糖値が下がり、気分不良や意識障害など低血糖症状を引き起こす可能性があります。

低血糖症状に気づいた時は、血糖値を測定したり飴やブドウ糖を摂取できるように常に持ち歩いたりして対処する必要があります。

さらに糖尿病の治療薬は人によって異なるため、薬物療法を導入する際に、食事や運動について気をつけるポイントや低血糖時の対応を医師と確認しておくのが望ましいです。

薬を飲み忘れた場合も、次にまとめて服用したり自己判断で中止したりせず、医師の指示通りの容量や用法を守ってください。

このように、正しい使用法に留意したうえでの薬物療法は、血糖値の安定に良い効果をもたらします。

しかし、薬に頼るだけでなく、並行して食事や運動などを意識した生活を続けていくのが糖尿病の寛解を目指す過程において何よりも大切です。

糖尿病の食事は食品交換表を使用して栄養バランスを整える

糖尿病の食事は栄養バランスを整える

糖尿病の食事療法は、食べるものを制限するのではなく、適切な量をバランスよく食べるのが基本です。

極端な制限で血糖値をコントロールするのを避けて、食生活の改善を継続して行う必要があります。

食事療法を行う前に、過食をしないよう1日に必要な摂取エネルギー量を知るのが大切です。

人によって身長や体重、活動量などに違いがあるため、医師や栄養士の指導を受けて摂取エネルギーを把握しましょう。

その範囲内で、栄養バランスが整った食品を選び、食事ごとのエネルギー量が偏らないようにします。

栄養バランスを整えるために必要な栄養素は、以下のとおりです。

栄養素効果
炭水化物エネルギー源
タンパク質筋肉など体のあらゆる組織を作る
脂質細胞やホルモンの材料
ビタミン炭水化物、タンパク質、脂質の働きを助けて、体の機能を保つ
ミネラル骨や歯の構成成分

栄養バランスが整った食事を作るには、糖尿病の食事療法に役立つ食品交換表を活用すると、毎日の献立作りに役立ちます。

食品交換表は、食品の栄養素を特徴ごとに6つのグループに分類し、1単位を80kcalとして整理したものです。

この表を利用して1日の摂取カロリーのうち何単位まで摂取が可能なのか確認し、主食や主菜など各食品の単位数を参考に選びます。

例えば、ご飯の量を調整して魚料理や豆腐を組み合わせたり、ビタミンやミネラルが足りない場合は表を参考に海藻などを追加したりするとバランスが整った食事ができます。

食品交換表の利用は、決められたエネルギー量の範囲内で料理が可能になり、継続した食事療法を行うのに効果的です。

一方、毎日自炊するのが難しかったり付き合いで外食をしたりする場合もありますが食事の工夫は大切であり、この時も栄養バランスが整う食品を選ぶようにします。

麺類や丼ものなど炭水化物中心の単品のものではなく、定食を選んだり野菜を追加で注文したりします。

さらに野菜から摂取するなど食べる順番の工夫や、糖質が多い場合は半分残すのも血糖値を急上昇させないためには大切です。

糖尿病の食事療法は1日に必要なエネルギー量の範囲で栄養バランスを整えるのが基本であり、継続して行うと血糖値コントロールにつながり、糖尿病の病状が安定します。

糖尿病は専門医や栄養士による適切な指導のもと治療をする必要がある

糖尿病は適切な指導のもと治療をする

糖尿病の治療方法は糖尿病の人すべてに共通するものではなく、一人ひとりの病状や生活に合わせて調整される必要があります。

そのため自己判断で食事を工夫をしたり運動を取り入れたりすると、かえって血糖値が乱れ、重症化する可能性もあります。

糖尿病の寛解を目指すには、糖尿病専門医や栄養士がいる医療機関を受診し、血糖値を定期的に確認するのが望ましいです。

空腹時血糖値やHbA1cの数値から現在の状態を把握し、食事や運動の状況と合わせて適切な指導を受けましょう。

血糖値の数値から糖尿病が悪化していると分かった場合には、早期の対応も可能であり、進行の抑制にもつながります。

さらに、栄養士から摂取カロリーに見合った栄養バランスや食事改善のポイントなど具体的に学べるため、効率的に食生活の見直しが行えます。

継続的な血糖値把握と適切な指導を受けるのが、糖尿病の病状を寛解させるには重要であり、医師や栄養士と一緒に今後の治療方針を確認していくのが大切です。

糖尿病の寛解は適切な治療と毎日の努力が欠かせない

糖尿病は完治は難しいといわれていますが、食事や運動などの生活習慣の改善によって、寛解の状態を目指せる可能性は十分にあります。

薬物療法をしていても、日常生活を見直すと薬に頼らずに生活できる場合もあります。

しかし自己判断で食事改善や運動を行うと症状が悪化する危険性もあるため、医療機関を受診して医師や栄養士の指導のもと、治療方針を決めるのが大切です。

さらに定期的に検査を受けると血糖値の推移を把握できるため、成果を感じられ、治療への意欲も高まります。

糖尿病の治療は一時的なものではなく、毎日の努力と継続が欠かせません。

食品交換表を使用して、栄養バランスの整った食事を摂るのもひとつの方法です。

寛解の状態になった場合でも、生活習慣が乱れると血糖値も再び上昇します。

そのため、自分でできることをしながら医師や栄養士のサポートも受け、適切な治療を継続して糖尿病と向き合っていきましょう。 

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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