焼き芋の血糖値への影響を小さくして食べる方法を徹底解説

焼き芋。血糖値への影響を小さくして食べる方法

焼き芋はその独特の甘さから人気が高く、俳句でも冬の季語として用いられるほど身近な食べ物の1つです。

近年は常時販売しているスーパーもあり、好んで食べる人も多く見られます。

一方で、焼き芋は糖質を多く含んでいるため無計画に食べると血糖値が上昇し、糖尿病や肥満の要因にもなります。

この記事では、血糖値への影響を小さくして焼き芋を楽しむ方法について詳しく解説しています。

この記事でわかること
  • サツマイモは糖質が多い
  • 焼き芋は血糖値の上昇速度が早い
  • サツマイモは栄養が豊富である
  • 焼き芋は食べ方の工夫によって血糖値への影響を小さくできる

焼き芋が好物である人、血糖値が気になる人は是非参考にしてください。

目次

焼き芋の原材料であるサツマイモは糖質が多いものの栄養が豊富な食べ物である

サツマイモ。糖質は多いが栄養豊富な食べ物

焼き芋の原材料であるサツマイモには、血糖値に大きな影響を与える糖質が多く含まれています。

糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことであり、その中でも単糖類二糖類は糖類に分類されます。

一方で食物繊維とは、人間の体内にある消化酵素では消化できない成分の総称のことであり、血糖値上昇をゆるやかにするほかに整腸作用肥満予防などが主な働きです。

サツマイモは食物繊維の他にも幅広い栄養素が多く含まれているため、積極的に摂取したい食べ物の1つでもあるため、血糖値の上昇をゆるやかにするように食べ方を工夫する必要があります。

サツマイモは糖質が多く含まれているため血糖値に与える影響は大きい

焼き芋の原材料であるサツマイモには、他の野菜よりも糖質が多く含まれているため、過剰な摂取は血糖値上昇を引き起こすうえに糖尿病が発症する可能性があります。

サツマイモ及び他の代表的な野菜の可食部100gに含まれている糖質は、以下のとおりです。

野菜状態でんぷんブドウ糖果糖ショ糖麦芽糖
サツマイモ皮なし生24.5g0.6g0.4g2.7g0.1g
にんじん皮なし生0.1g1.7g1.6g2.4g0.0g
たまねぎ0.6g2.7g2.6g0.9g
じゃがいも皮なし生14.7g0.3g0.2g0.3g0.0g
さといも8.7g0.3g0.4g0.9g– 
かぼちゃ3.1g1.4g1.4g1.9g0.0g

参照元:食品成分データベース

上記のとおり、サツマイモは他の野菜と比べてでんぷんとショ糖が突出して多く含まれています。

でんぷんは、ブドウ糖が多数結合したものであり、唾液などの消化酵素によって分解される多糖類です。

一方でショ糖や麦芽糖は、以下のとおりブドウ糖や果糖などの単糖類が結合した二糖類であり、それぞれが甘味料の原料として使用されています。

種類構造用途
ショ糖ブドウ糖と果糖が結合したもの主に砂糖の原料
麦芽糖ブドウ糖が2つ結合したもの主に水あめの原料

ショ糖と麦芽糖は二糖類であるため、同量のブドウ糖摂取よりも消化には時間がかかりますが、いずれも血糖値は上昇します。

つまり、サツマイモは他の野菜と比べてブドウ糖が多く含まれており、血糖値が急上昇する可能性が高い食品の1つです。

さらにサツマイモに含まれる糖質や食物繊維などは、調理方法や皮の有無によって異なります。

可食部100gのサツマイモにおける調理方法や皮の有無ごとの糖質や食物繊維の量は、以下のとおりです。

調理方法皮の有無食物繊維でんぷんブドウ糖果糖ショ糖麦芽糖
焼きなし3.5g13.1g0.4g0.4g4.7g15.8g
あり2.8g24.1g0.7g0.5g3.0g0.1g
なし2.2g24.5g0.6g0.4g2.7g0.1g
蒸しあり3.8g14.5g0.6g0.4g3.1g10.3g
蒸しなし2.3g17.5g0.5g0.4g2.6g9.2g

参照元:食品成分データベース | 文部科学省

上記のとおりサツマイモは、焼きや蒸しなどの加熱によってでんぷんが減少し、麦芽糖が増加する傾向にあります。

これはブドウ糖が多数結合したものであるでんぷんが、加熱によって分解され、ブドウ糖が2つ結合したものである麦芽糖に変化したためです。

特に焼き芋は、生よりも食物繊維が豊富なうえにブドウ糖自体は少ないですが、ブドウ糖を含むショ糖や麦芽糖などが突出して多くなっています。

したがって焼き芋は、血糖値への影響が大きい食べ方の1つといえます。

焼き芋はサツマイモの調理方法の中でも血糖値の上昇速度が早い

焼き芋。血糖値の上昇速度が速い

焼き芋の原材料であるサツマイモのGI値は55であるため、血糖値の上昇は緩やかであると言われていますが、調理方法によってGI値は変化します。

GI値とは、ブドウ糖摂取を100とした場合の血糖値の上昇速度を数値化したものであり、以下のとおり3つのグループに分類できます。

GI値分類該当する食べ物の例
55以下低GI値玉ねぎ、トマト、りんご、ヨーグルト
56~69中GI値くり、クロワッサン、ライ麦パン、そば
70以上高GI値にんじん、大根、食パン、うどん

GI値が高いほど血糖値の上昇速度は速くなるため、糖尿病が気になる人には低GI値の食品の摂取が有効です。

55であるサツマイモのGI値は、以下のとおり調理方法によって変化します。

調理方法GI値分類
焼き79~93高GI
炒め70~80高GI
揚げ63~77中GI
蒸し37~71低GI
ゆで44~60低GI
干し55低GI

つまり、サツマイモが低GIの食品であるという理由で焼き芋を食べると、血糖値が急上昇する事態に陥る可能性があります。

したがって焼き芋を食べる際は、血糖値の上昇をゆるやかにするような工夫が必要です。

サツマイモは栄養素が豊富に含まれている準完全栄養食である

サツマイモは栄養素が豊富。準完全栄養食

焼き芋の原材料であるサツマイモは、糖質が多いため血糖値に大きな影響を与えますが、食物繊維をはじめ栄養素が豊富に含まれている準完全栄養食とされています。

不完全栄養食とは、厚生労働省が定めている日本人の食事摂取基準に基づいた、1食あたり特定の栄養素が不足している食べ物のことです。

これに対して、1食あたり必要な栄養を全て含んだ食べ物が完全栄養食であり、近年スーパーやコンビニで販売されています。

完全栄養食とは違い、基準は曖昧であり、サツマイモ以外にも以下の食べ物などが準完全栄養食とされています。

  • 牛乳
  • 玄米
  • 納豆
  • トマト
  • ブロッコリー
  • バナナ
  • ヨーグルト

例えば日本人の食事摂取基準にもとづく30〜49歳男性が1日に必要とされる代表的な栄養素と、皮がない生のサツマイモやほかの生野菜の可食部100gに含まれる栄養素は、以下のとおりです。

栄養素1日に必要な量サツマイモにんじんたまねぎじゃがいもさといもかぼちゃ
食物繊維22.0g以上2.2g2.8g1.5g8.9g2.3g2.8g
カリウム2,500mg480mg300mg150mg410mg640mg420mg
カルシウム750mg36mg24mg17mg4mg10mg20mg
マグネシウム380mg24mg9mg9mg19mg19mg15mg
リン1,000mg47mg28mg31mg47mg55mg55mg
ビタミンB11.2mg0.11mg0.04mg0.04mg0.09mg0.07mg0.08mg
ビタミンB21.7mg0.04mg0.03mg0.01mg0.03mg0.02mg0.05mg
ビタミンB61.5mg0.26mg0.09mg0.14mg0.20mg0.15mg0.15mg
ビタミンC100mg29mg4mg7mg28mg6mg16mg
ビタミンE6.5mg1.5mg0.5mg0mg0mg0.6mg5.2mg
葉酸240μg49μg23μg15μg20μg30μg80μg

上記のとおり、サツマイモには他の野菜よりも多くの栄養素が含まれており、これらによって以下の効果が見込めます。

  • 血糖値上昇抑制
  • 便通改善
  • 高血圧やむくみの防止
  • 生活習慣病予防
  • 美肌

したがって焼き芋は、多くの効果が見込めるため、食べる際には血糖値への影響を小さくする工夫が必要です。

食物繊維によって血糖値上昇抑制や便通改善が見込める

食物繊維とは、炭水化物の中で人の消化酵素では分解できない成分の総称のことであり、野菜に多く含まれる栄養素です。

水に溶ける性質の水溶性食物繊維と水に溶けない性質の不溶性食物繊維の2種類があり、以下のとおり、それぞれの働きは異なります。

食物繊維の種類性質
水溶性食物繊維・排便をスムーズにする
・便を柔らかくする
・血糖値の上昇を緩やかにする
・コレステロールの吸収を抑制
不溶性食物繊維・便のかさ増し
・便通改善
・デトックス効果
・血糖値の吸収を妨げる

サツマイモに含まれる食物繊維は多くないため、摂取による上記の効果も限定的です。

カリウムによって高血圧やむくみの防止効果が期待できる

カリウムは体の調子を整えるミネラルの1つであり、細胞内の水分やナトリウムを調整する働きによって高血圧やむくみの防止効果が期待できます。

サツマイモは、人体で生成できないミネラルであるカリウムを他の野菜よりも多く含んでいるため、効率よく摂取できる食べ物の1つです。

一方でカリウムの過剰摂取は、高カリウム血症となり、筋力低下や不整脈などを引き起こす恐れがあります。

ビタミンEによって生活習慣病の予防が期待できる

ビタミンEの持つ抗酸化作用によって、動脈硬化や血栓の予防、LDLコレステロールの減少などが見込め、生活習慣病の予防が期待できます。

サツマイモにはビタミンEが含まれていますが、含有量は多くはないため、大きな予防効果は期待できません。

なお、ビタミンEが多く含まれている代表的な野菜として、かぼちゃやアボカドが挙げられます。

ビタミンB群によって疲労回復効果が期待できる

ビタミンB1やビタミンB2、葉酸などをビタミンB群といいますが、これらはエネルギーの代謝促進や神経機能維持の働きがあります。

このエネルギー代謝促進によって、疲労回復効果が期待できます。

ビタミンB群は水溶性のビタミンであり、体内に蓄積されないため、毎日の摂取が欠かせない栄養素です。

ビタミンCによって美肌効果、ストレス解消が期待できる

ビタミンCはビタミンEと同じく抗酸化作用をもち、皮膚や血管などを構成するコラーゲンの生成に必要な栄養素です。

美肌効果が期待できる一方で、精神的なストレスやタバコなどでビタミンCは大量に消費される特徴があり、摂取によりストレス解消の効果も期待できます。

焼き芋の過剰摂取は糖尿病になる可能性が高くなる

焼き芋の過剰摂取。糖尿病になる可能性が高くなる

焼き芋には糖質が多く含まれているうえにGI値もブドウ糖並みに高いため、無計画に食べると血糖値が上昇し、糖尿病の要因となります。

通常、血液中のブドウ糖はすい臓から分泌されるインスリンの働きによって、エネルギーとして取り込まれます。

インスリンの分泌量や機能の低下によって、血液中のブドウ糖の濃度を示す血糖値が高い状態を糖尿病といい、代表的な初期症状は以下のとおりです。

  • のどが渇く
  • 頻尿や多尿
  • 疲労感や倦怠感
  • 体重減少
  • 視力低下
  • 手足のしびれ

さらに進行すると血管や神経を痛めてしまうため、以下の重篤な症状を引き起こす可能性があります。

  • 神経障害
  • 網膜症
  • 腎症
  • 脳梗塞
  • 心筋梗塞
  • 抹消動脈疾患
  • 糖尿病ケトアシドーシス
  • 高浸透圧高血糖症候群

糖尿病を根治する治療方法は現在確立されておらず、食事療法を中心に行いますが、病気の判定には血糖値やHba1cを用います。

糖尿病の判定に用いられる血糖値は血液中の糖分濃度である

糖尿病の判定には、検査時点で血液1dl中に含まれる糖分の量を表す血糖値が主に用いられ、使用される単位はmg/dLです。

血糖値には、食後10時間以上空けた空腹時血糖値と、直前の食事からの時間を決めない随時血糖値があります。

血糖値は食事内容とその経過時間によって変動するため、一般的には空腹時血糖値が用いられており、以下の基準で糖尿病の判定を行います。

判定正常型境界型糖尿病型
空腹時血糖値110mg/dL未満110mg/dL以上
126mg/dL未満
126mg/dL以上

参照:一般社団法人日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024 1章 糖尿病診断の指針

一般社団法人日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024における糖尿病の診断基準は、以下のとおりです。

  • 糖尿病型を2回確認
  • 血糖値で糖尿病型を1回確認かつ慢性高血糖症状がある
  • 過去に糖尿病と診断されている

上記の慢性高血糖症状には、以下の5つが挙げられます。

  • のどの渇き
  • 過剰な水分摂取
  • 尿量の増加
  • 体重の減少
  • 糖尿病網膜症

サラリーマンなどは勤務先の健康診断で血液検査を実施しますが、健康診断を強制的に受けない個人事業主や専業主婦で、上記の5つのいずれかが自覚症状がある人は、病院で血液検査を受けましょう。

Hba1cは直近1~2か月の血液中の糖分の状態を示している

Hba1cとは、ヘモグロビンエーワンシーと読み、血液中の糖分濃度を示す血糖値に対して、ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合のことです。

一般社団法人日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024では、Hba1cが6.5%以上を糖尿病型と定めています。

血液の成分の1つであるヘモグロビンは、全身に酸素を運ぶ働きがありますが、血液中の糖分と結合して糖化ヘモグロビンになります。

一度糖化したヘモグロビンは、赤血球の寿命である120日間は元に戻らないため、血糖値スパイクの把握が可能です。

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇したのちに急降下する症状のことであり、隠れ糖尿病とも呼ばれています。

血糖値スパイクが起きていると空腹時血糖値は正常型となるケースがおおいですが、Hba1cの数値は高くなります。

焼き芋はGI値が高く、血糖値スパイクが起きる可能性が高いため、糖尿病が気になる人はHba1cをチェックするようにしましょう。

Hba1cは健康診断でも実施していないところがありますが、専用キットがあれば自宅でも測定可能です。

焼き芋は食べ方の工夫で血糖値への影響を小さくできる

焼き芋の食べ方の工夫。血糖値への影響を小さくできる

焼き芋の原材料であるサツマイモは、栄養が豊富であるため積極的に摂取したい食べ物の1つですが、糖質が多いため血糖値への影響が大きいです。

したがって焼き芋を食べる際には、以下の5つのポイントを守り、血糖値への影響を小さくする必要があります。

  • 皮ごと食べる
  • 1日100~200gにとどめる
  • 冷やして食べる
  • 事前に食物繊維を摂取する   
  • 朝食で食べる

上記のとおり専門的な知識やスキルなど必要ないため、可能な限り実践しましょう。

栄養素が含まれているため焼き芋は皮ごと食べる

サツマイモの皮にも食物繊維が含まれており、血糖値への影響を小さくする働きがありますが、微量であるため大きな効果は見込めません。

しかしサツマイモの皮には、実にはない栄養素が含まれているため、焼き芋は皮ごと食べましょう。

  • アントシアニン
  • ヤラピン
  • クロロゲン酸

アントシアニンは紫色を出すポリフェノールの1つであり、抗酸化作用や眼精疲労回復、アンチエイジングの効果が期待できます。

ヤラピンとは、皮付近に多く含まれている白い粘り気のことであり、サツマイモ特有の物質です。

ヤラピンには、腸の蠕動運動の促進や整腸作用があるため、食物繊維との相乗効果も期待できます。

クロロゲン酸はコーヒー豆に多く含まれているポリフェノール1種であり、抗酸化作用のほか脂肪蓄積や血糖値上昇の抑制効果が期待できます。

焼き芋は1日100~200gを目安にする

焼き芋の食べる量。目安は1日100~200g

焼き芋には糖質が多く含まれているため、1日100~200gが目安とされており、概ね中くらいのサイズ半分~1本に相当します。

目安以上を食べると、エネルギーや糖質の過剰摂取となり、糖尿病や肥満の可能性が高くなります。

したがって焼き芋を食べる際は、その日のエネルギーや糖質の量を考慮し、過剰である場合は他の食べ物で調整しましょう。

焼き芋やご飯など主食とされるものにおいて100gあたりのエネルギーや炭水化物、糖質の量は以下のとおりです。

食べ物エネルギー炭水化物糖質
焼き芋151kcal39.0g34.4g
白米156kcal37.1g34.6g
食パン248kacl46.4g44.2g
うどん95kacl21.6g19.5g

上記のとおり、焼き芋と白米はほぼ同等のエネルギーや糖質であるため、焼き芋を食べた際には白米の量を減らすなど調整しましょう。

食事バランスガイドの活用で他の食べ物との調整がスムーズになる

細かい計算が苦手な人は、食事バランスガイドを活用すると、焼き芋と他の食べ物との調整がスムーズになります。

食事バランスガイドとは、1日の望ましい食事を示したもののことであり、農林水産省と厚生労働省が共同で策定したものです。

食事バランスガイドでは、食べ物を5つの料理区分に分け、独自のSVという単位で管理できるようになっています。

それぞれの料理区分ごとの1SVの定義や具体的な食べ物の例は、以下のとおりです。

料理区分1SVの定義1SVの食べ物2SVの食べ物3SVの食べ物
主食炭水化物約40g・ご飯小盛り1杯
・おにぎり1個
・食パン1枚
・ロールパン2個
・うどん1杯
・もりそば1杯
・スパゲッティ
主菜タンパク質約6g・冷奴
・納豆
・目玉焼き1個
・焼き魚
・魚の天ぷら
・まぐろとイカの刺身
・ハンバーグステーキ
・豚肉の生姜焼き
・鶏肉のから揚げ
副菜重量が約70g・野菜サラダ
・きゅうりとワカメの酢の物
・具だくさん味噌汁
・ほうれん草のおひたし
・ひじきの煮物
・煮豆
・きのこソテー
・野菜の煮物
・野菜炒め
・芋の煮っころがし
牛乳、乳製品カルシウム約100mg・牛乳コップ半分
・チーズ1かけ
・スライスチーズ1枚
・ヨーグルト1パック
・牛乳瓶1本分
果物重量が約100g・みかん1個
・りんご半分
・かき1個
・なし半分
・ぶどう半房
・もも1個

参照:食事バランスガイド | 農林水産省

中くらいのサイズ約半分相当である焼き芋100gは、糖質が約39gであるため、1SVとして他の食べ物との調整ができます。

なお食事バランスガイドで、基本形として示されている1日あたりの食事の望ましい組み合わせは、以下のとおりです。

該当する男性該当する女性エネルギー主食主菜副菜牛乳、乳製品果物
10~11歳18~69歳で活動量が低い18~69歳で活動量が普通以上2,000~2,400kcal5~7SV3~5SV5~6SV2SV2SV

上記のとおり主食は1日あたり5〜7SVの摂取が望ましいとされているため、1食あたり約2SVとなります。

したがって、主食における適切な3食の組み合わせ例としては、以下などが挙げられます。

3食2SVとなる組み合わせ例
朝食焼き芋中1本
昼食うどん1杯
夕食おにぎり2個

上記のように一食の主食を焼き芋に置き換えると、過剰摂取を防止できる可能性が高いです。

なお、エネルギーや糖質は焼き芋がはるかに多いため、果物での調整は適していません。

冷やした焼き芋はレジスタントスターチが増加する

冷やした焼き芋。レジスタントスターチが増加

焼き芋を冷やすと、加熱によって糖化していたでんぷんがレジスタントスターチに変化するため、血糖値の上昇がゆるやかになります。

レジスタントスターチとは、難消化性でんぷんとも呼ばれており、通常のでんぷんのように小腸で消化されず大腸に届くでんぷんのことです。

レジスタントスターチは消化されないまま大腸に届き、食物繊維と同様の効果が見込めるため、血糖値の上昇をゆるやかにする働きがあります。

一方でレジスタントスターチには満腹感を得られる効果もあるため、冷やした焼き芋は食べ過ぎを防止できる可能性もあるほか、以下の効果が期待できます。

さらに、便通改善やコレステロールの低下などの効果も見込めるため、血糖値を始め栄養面からは焼き芋は冷やして食べるほうが効果的です。

風味や焼きたてを食べる楽しみが損なわれますが、血糖値上昇抑制の観点から焼き芋は冷やして食べるようにしましょう。

ただし、レジスタントスターチを過剰摂取した場合、下痢などの症状が起きる可能性があるため、適正な量にとどめる必要があります。

一般的な血糖値上昇を抑える食べ方も焼き芋には有効である

焼き芋を食べる際には、以下のような一般的に血糖値上昇を抑える食べ方も有効です。

  • 事前に食物繊維を摂取する
  • 朝食で食べる

事前に摂取した食物繊維が血糖値の上昇を妨げる

焼き芋に限らず、空腹時に糖質が多い食べ物を摂取した場合、インスリンの分泌が間に合わないため血糖値が急上昇する可能性があります。

一方でサツマイモには食物繊維が含まれていますが含有量は少なく、血糖値への影響も小さいため、焼き芋を空腹時に食べても血糖値上昇抑制効果は期待できません。

したがって、空腹時に焼き芋を食べる場合は、事前に野菜など別の食材で食物繊維を摂取するようにしましょう。

焼き芋を食べる直前に摂取した食物繊維が、糖質の吸収を妨げるため、血糖値の上昇が緩やかになる可能性が高くなります。

インスリンの分泌が活発である朝食で食べると血糖値上昇が抑えられる

インスリンの分泌は、朝食後が1日の中で最も活発であるため、焼き芋を食べても血糖値の上昇が緩やかになる可能性が高いです。

そして夕方になるほどインスリンの分泌も弱くなるため、夕食後や夜遅くの寝る前などに焼き芋を食べた場合、朝食と同じ糖質を摂取しても血糖値への影響が大きくなります。

朝食で焼き芋を食べる際のポイントは、以下のとおりです。

  • 朝の早い時間に食べる
  • よく噛んで食べる
  • 腹八分目にする
  • バランスよく食べる

上記はちょっとした意識を向ければ誰でも取り組めるため、着実に実践しましょう。

血糖値モニタリングは血糖値のコントロールに大いに役立つ

血糖値モニタリング。血糖値のコントロールに役立つ

糖尿病は根治に至る治療方法が確立されておらず、食事療法を中心とした血糖値のコントロールを中心に行います。

焼き芋は糖質が多く、血糖値への影響が大きい食べ物であるため、頻繁に食べる人は血糖値のコントロールが必要になる可能性が高いです。

糖尿病患者のみならず健康な人でも有効な血糖値コントロールができるようになるために、血糖値モニタリングを実施しましょう。

血糖値モニタリングとは食生活の中で血糖値を測定し、記録をつけることであり、以下の効果が見込めます。

  • 血糖値が変動するパターンを認識できる
  • 食事や運動、薬物などが血糖値に与える影響を理解できる
  • 合併症や低血糖、高血糖の早期把握ができる

血糖値モニタリングで主に記録する内容は、以下のとおりです。

  • 血糖値
  • 焼き芋を食べた量
  • 付け合わせに食べたものと量

血糖値は、市販されている専用機器を使用し、焼き芋を食べてから30分おきに測定すると血糖値の詳細の変動パターンがわかります。

さらに記録を続けると血糖値の変動パターンがわかるため、焼き芋の適切な量や食べるタイミングがわかるようになります。

焼き芋は血糖値への影響を小さくできる栄養豊富な食べ物である

焼き芋は糖質が多く、GI値も高いため、血糖値への影響が大きい食べ物です。

一方で焼き芋の原材料であるサツマイモにはカリウムを始め、多くの栄養素を含んでいる準完全栄養食であるため、積極的に摂取したい食べ物でもあります。

したがって、1日の適量である100~200gの冷やした焼き芋を皮ごと食べるなどによって血糖値への影響は小さくできます。

さらに焼き芋を食べる前に食物繊維を摂取するなども、血糖値上昇抑制効果があるため有効です。

焼き芋の血糖値への影響を正しく理解し、美味しく食べましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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