果物が血糖値に与える影響や効果的な摂取方法を徹底解説

果物が血糖値に与える影響。効果的な摂取方法を徹底解説

果物は食後のデザートとして食べられるだけでなく、サラダやスイーツにも添えられるなど、人気が高い食品の1つです。

一方で果物が好物であるものの、血糖値の上昇が気になるため、思い切り食べられない人は多くいます。

この記事では、果物が血糖値に与える影響や効果的な摂取方法を詳しく解説しています。

この記事でわかること
  • 果物に含まれる糖質によって血糖値は変動する
  • 果物には血糖値の上昇を緩やかにする栄養素が含まれている
  • 果物の食べ方によっても血糖値は変動する
  • 血糖値の上昇を抑える果物の食べ方

果物を食べたくても血糖値が気になる人や、血糖値のコントロールが必要な人は、是非参考にしてください。

目次

主に果物に含まれるブドウ糖の影響を受けて血糖値は変動する

果物に含まれるブドウ糖。血糖値は影響を受けて変動する

果物には、血糖値の変動に影響を与えるブドウ糖をはじめ、炭水化物から食物繊維を除いた栄養素である糖質が多く含まれています。

血糖値とは、血液1dLに含まれるブドウ糖の量のことであり、体の状態を示す重要な指標の1つです。

ブドウ糖は食事で摂取された後、膵臓で分泌されたインスリンの働きによって細胞に取り込まれ、人が活動するエネルギー源として消費されます。

そのため血糖値は、ブドウ糖が消化吸収される食後1時間程度が最も高くなり、その後時間が経過するほど低下します。

一方で、血糖値の変動は食事の内容によって異なり、その要因は以下のとおりです。

  • 含まれるブドウ糖などの糖質の量
  • 糖質の吸収速度
  • 血糖値に影響を与える他の成分

上記の要因は果物も例外ではなく、種類ごとに糖質の量や吸収度合が異なるため、摂取後の血糖値の変動に違いがあります。

さらに果物には、血糖値の上昇に直接影響しない糖質や抑制効果がある成分が含まれているものもあります。

したがって健全に果物を楽しむためには、正しい知識に基づいた方法で、適切な量の摂取が重要です。

果物には主にブドウ糖など3つの糖質が含まれている

果物に含まれている分子構造が異なる3つの糖質

果物には、主に以下のブドウ糖や果糖、ショ糖など分子構造が異なる糖質が含まれています。

糖質代表的な糖の名称特徴
単糖類・ブドウ糖
・果糖
・ガラクトース
・炭水化物の最小単位
・水溶性である
二糖類・ショ糖
・麦芽糖
・乳糖
・2つの単糖類が結合したもの
・体内では酵素の働きによって単糖類に分解される
・水溶性である
多糖類・でんぷん
・グリコーゲン
・10個以上の単糖類が結合したもの
・消化、吸収には時間がかかる
・血糖値の上昇は緩やかになる傾向

結合している糖類の数が少ないほど、消化や吸収にかかる時間は短いため、摂取してからすみやかに血糖値が上昇する傾向にあります。

果物に含まれるブドウ糖や果糖、ショ糖の主な特徴は、以下のとおりです。

ブドウ糖は体や脳が活動するためのエネルギー源として利用される

ブドウ糖は別名グルコースと呼ばれており、体や脳が活動するエネルギー源となる重要な栄養素です。

食事で摂取されたブドウ糖は小腸で吸収され、血液中ですい臓から分泌されたインスリンの働きによって、エネルギー源として細胞に取り込まれます。

果物や穀類など多くの食品に含まれており、単糖類であるため体内で消化や吸収が速い点が特徴です。

なお体内で利用されなかったブドウ糖は、肝臓や筋肉でグリコーゲンとして貯蔵され、運動や空腹時のエネルギー源として利用されます。

果糖は血糖値上昇の直接要因にならない単糖類である

別名フルクトースと呼ばれる果糖は、果物やはちみつに含まれる単糖類であり、ショ糖と比較して1.2~1.5倍ほどの強い甘さが大きな特徴です。

食事で摂取された果糖は、肝臓でインスリンの影響を受けない酵素により、体内で利用される成分に変換されます。

一方で、体内で利用されなかった果糖は肝臓で中性脂肪に変換されるため、血液中の中性脂肪値が上昇します。

したがって果糖の摂取は血糖値上昇の直接要因とはならないものの、過剰摂取により中性脂肪が増え、肥満や内臓脂肪となるリスクが高いです。

ショ糖は消化吸収に時間がかかる

別名スクロースと呼ばれるショ糖は砂糖の主成分であり、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類です。

小腸で酵素の働きによって2つの単糖類に分解されるため、ブドウ糖よりも消化吸収に時間がかかります。

過剰な摂取によって血糖値上昇要因となるだけでなく、肥満の要因にもなるショ糖は、適切な量に抑える必要があります。

甘みと糖質の量は必ずしも比例しない

主な果物ごとの可食部100gあたりに含まれるブドウ糖と果糖、ショ糖の量は、以下のとおりです。

果物ブドウ糖果糖ショ糖
温州みかん1.7g1.9g5.3g
皮付きりんご1.6g6.3g4.7g
日本梨1.4g3.8g2.9g
皮なしぶどう7.3g7.1g0g
バナナ2.6g2.4g10.5g
緑肉種キウイ3.7g4.0g1.4g
いちご1.6g1.8g2.5g
4.8g4.5g3.8g
白肉種もも0.6g0.7g6.8g
緑肉種露地メロン1.2g1.3g6.7g
ブルーベリー4.2g4.3g0.1g
パイナップル1.6g1.9g8.8g
ラズベリー2.4g2.9g0.1g
紅肉種グレープフルーツ1.5g1.6g3.2g
マンゴー1.3g4.4g7.3g
米国産さくらんぼ7.0g5.7g0.2g
アボカド0.1g0.4g0.1g
参照:食品成分データベース|文部科学省

上記のとおり日本梨やいちごなどは、他の果物と比べていずれの糖質も少なく、血糖値への影響は少ない傾向にあります。

一方でバナナや白肉種メロンなどは、ブドウ糖は少ないもののショ糖を多く含んでいるため、血糖値が上昇する可能性は高いです。

このように果物ごとに糖質の量は異なりますが、多いほど強く甘みを感じるというわけではありません。

例えば、いちごよりも温州みかんのほうが糖質の量は多いですが、いちごのほうが甘く感じる人は多くいます。

これは、果物に含まれる他の成分の影響を受け、感じる甘みが変化するためです。

感じる甘みと糖質の量は比例するという認識で果物を摂取すると、血糖値が高くなる可能性があるため、果物ごとの糖質の量を事前に把握しておきましょう。

果物は糖質を含んでいるものの血糖値の上がり方は緩やかである

糖質を含んでいる果物。血糖値の上がり方は緩やか

異なる果物において、含まれるブドウ糖やショ糖が同じである場合、吸収速度が遅いほうが血糖値の上昇は緩やかになります。

一般的に糖質の吸収速度を示す指標として、以下のように3つに分類されたGI値が用いられます。

GI値分類代表的な食品
70以上高GI食品白米、スナック菓子、じゃがいも
56以上69以下中GI食品オートミール、ライ麦パン、アイスクリーム
55以下低GI食品全粒粉パン、そば、牛乳、バター

GI値とは、ブドウ糖を摂取した際の血糖値の上がり方を100とした場合、食品ごとの血糖値の上がり方を数値化したもののことです。

GI値が高いほど血糖値は急激に上昇する傾向にあるのに対し、低いほど血糖値の上昇は緩やかであるため、低GI食品の積極的な摂取が推奨されています。

低GI食品は、でんぷん質が少ない点や食物繊維が豊富な点が主な特徴です。

果物は食物繊維が豊富であり、スイカやパイナップルなど中GI値食品に該当している果物を除き、ほとんどの果物が低GI食品に当たります。

つまり果物は糖質を多く含んでいるものの、豊富な食物繊維により血糖値の上がり方は緩やかであるため、糖分補給の食品としては適しているということです。

果物には血糖値上昇を抑制する食物繊維やカリウムが豊富にある

ほとんどの果物に含まれている食物繊維やカリウムは、血糖値に対して以下の効果があります。

栄養素血糖値に与える効果
食物繊維・糖質の吸収を緩やかにする
・血糖値の急激な上昇抑制
カリウム・血糖値を下げる
・血糖値の上昇抑制
・インスリンの機能向上

果物には糖質が含まれていますが、上記の栄養素の働きにより血糖値の上昇が緩やかな低GI食品に該当します。

可食部100gあたりの果物ごとに含まれている食物繊維とカリウムの量は、以下のとおりです。

果物食物繊維カリウム
温州みかん0.4g0.15g
皮付きりんご1.9g0.12g
日本梨0.9g0.14g
皮なしぶどう0.5g0.13g
バナナ1.1g0.36g
緑肉種キウイ2.6g0.30g
いちご1.4g0.17g
1.6g0.17g
白肉種もも1.3g0.18g
緑肉種露地メロン0.5g0.35g
ブルーベリー3.3g0.07g
パイナップル1.2g0.15g
ラズベリー4.7g0.15g
紅肉種グレープフルーツ0.6g0.14g
マンゴー1.3g0.17g
米国産さくらんぼ1.4g0.26g
アボカド5.6g0.59g

上記のとおりバナナや緑肉種露地メロン、緑肉種キウイにはカリウムが多く含まれている一方で、ブルーベリーやラズベリーには食物繊維が多く含まれています。

食物繊維やカリウムの他にも、血糖値に影響を与える栄養素を含んでいる果物は多くあり、その効果は以下のとおりです。

栄養素血糖値に与える効果含まれる果物例
ケルセチン・糖質の吸収抑制
・インスリンの分泌促進
りんご
リコピン・血糖値の急激な上昇抑制
・抗酸化作用によるインスリンの分泌促進
スイカ
プロアントシアニジン・糖質の吸収抑制・ブルーベリー
・ぶどう

血糖値のコントロールが必要な人は、上記の栄養素が含まれている果物を優先的に摂取しましょう。

果物の摂取による血糖値上昇のリスクはある

血糖値上昇のリスク。過剰な摂取は糖尿病を発症する

果物には野菜ほどのビタミンは含まれていませんが、食物繊維やミネラルなど豊富な栄養素の摂取が可能です。

そのため果物の摂取は、動脈硬化抑制に効果があり、虚血性心疾患や2型糖尿病の発症リスクを下げる効果があるという研究結果も発表されています。

2型糖尿病とは、食生活が原因で血液中にブドウ糖が増えてしまう糖尿病のことです。

一方で、果物に糖質が含まれているため、過剰な摂取は現代医学では感知が難しい糖尿病を発症する可能性を高めます。

さらに、糖尿病が進行すると、以下のように体の各所で重篤な合併症を引き起こす恐れがあります。

  • 神経障害
  • 腎症
  • 網膜症
  • 動脈硬化
  • 糖尿病ケトアシドーシス
  • 高浸透圧高血糖症候群

このように、糖尿病は重症化すると命を落とす事態となる可能性があります。

つまり万が一糖尿病を発症した場合に重篤化しないように、正しい知識に基づいた果物の摂取が必要ということです。

糖尿病は血液中にブドウ糖が増える病気であるため血糖値は高くなる

糖尿病は、インスリン分泌量や抵抗性と呼ばれる機能の低下が原因でブドウ糖が正常に細胞へ取り込まれないため、血糖値が高くなります。

血糖値が高い状態が続き、糖尿病となった場合に現れる初期症状は、以下のとおりです。

  • のどが渇く
  • 尿の回数が増える
  • 体重が減る
  • 疲れを感じる

一方で、食後インスリンの働きが悪いため血液中のブドウ糖増加に追いつかず、血糖値が急上昇した後に急降下する血糖値スパイクという症状があります。

血糖値スパイクは隠れ糖尿病とも呼ばれており、放置すると糖尿病へ進行するだけでなく、脳梗塞や心筋梗塞を発症する可能性があります。

したがって、糖尿病や血糖値スパイクの判定に用いられる血糖値やHbA1cが、正常型の範囲内で収まるような果物の摂取が重要です。

血糖値は食後の時間経過とともに低下する

血糖値は1時間程度でピーク。食後の時間経過とともに低下

血糖値は食べ物の摂取後1時間程度でピークを迎え、時間の経過とともに低下するため、食後の経過時間ごとに正常とされる血糖値は異なります。

食後2時間経過した血糖値と食事から10時間以上経過して測定する空腹時血糖値、食後の経過時間を決めずに測定する随時血糖値の3つの指標は、以下のとおりです。

指標正常型境界型糖尿病型
食後2時間経過した血糖値140mg/dL未満140mg/dL以上200mg/dL未満200mg/dL以上
空腹時血糖値110mg/dL未満110mg/dL以上126mg/dL未満126mg/dL以上
随時血糖値– 200mg/dL以上

健康診断で主に用いられる空腹時血糖値が100mg/dL以上110mg/dL未満であった場合は、正常型と診断されるものの、特定保健指導の対象となります。

果物の摂取後においても、上記のいずれの指標でも正常型の範囲内である必要があります。

血糖値は、機器が数千円程度で市販されているだけでなく、専用アプリもあるため手軽に測定が可能です。

血糖値が気になる人は、常日頃から測定を行い、血糖値が正常値範囲内となるような食生活を心がけましょう。

糖尿病判定に用いられるHbA1cの正常値は5.6%未満とされる

隠れ糖尿病ともいわれる血糖値スパイクの判定は、空腹時血糖値ではわからない可能性が高いため、主にHbA1cが用いられます。

HbA1cとは、血液中のヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合した糖化ヘモグロビンの割合のことです。

検査時点の血液中の状態を表す血糖値が高くなるほどHbA1cも高い傾向にありますが、完全に連動していません。

一度ブドウ糖と結合したヘモグロビンは、元に戻らずに約120日間の赤血球の寿命を迎えるため、HbA1cは1~2ヶ月間の状態を示してます。

一般社団法人日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024で糖尿病と判定されるHbA1cの基準は、6.5%以上です。

さらに特定健診では以下のとおり詳細な基準を設けており、正常値であっても5.6%以上6.5%未満である場合は、特定保健指導の対象となっています。

HbA1c5.6%未満5.6%以上6.5%未満6.5%以上
判定正常特定保健指導対象医療機関受診を推奨

HbA1cを正常範囲内に収めるには、常日頃から血糖値を低く抑えるような食生活を送る必要があります。

そのためHbA1cが気になる人は、低GI食品である果物を適度に摂取するようにしましょう。

果物の食べ方を工夫すると血糖値の上昇は抑えられる

血糖値の上昇は抑えられる。正しい知識に基づいた摂取

果物には血糖値の上昇を抑える栄養素がある反面、糖質を多く含むため過剰な摂取により糖尿病を発症する可能性があります。

しかし以下のような正しい知識に基づいた摂取によって、血糖値の上昇は抑えられます。

  • 血糖値上昇が小さい果物を選ぶ
  • 皮がついたまま丸ごと食べる
  • 食べる量は適切な範囲を超えない
  • 3食の中では朝食がベスト
  • 食べるタイミングは食前または食間

さらに果物の有無に関わらず、食事の際は以下の実践により血糖値の上昇を抑えられます。

  • 3食を決まった時間に食べる
  • 腹八分目にとどめ、食べ過ぎない
  • よく噛んで食べる

食事の時間が不規則になったり、欠食があったりすると、直近の食事から次の食事まで体は長時間空腹の状態です。

人間の体は、食事の間隔が空くほど次の食事で多くの栄養を取り込もうとするため、血糖値スパイクが起きる可能性が高くなります。

これに対して3食を決まった時間に摂ると、食事によって身体にリズムができて、血糖値スパイクのリスクが下げられます。

そして糖質の過剰摂取とならないように、満腹になるまで食べるのではなく、腹八分目程度で抑えるのが重要です。

さらによく噛んで食べるのも、食事の量を減らせるため、血糖値の上昇を抑えられます。

脳の器官である満腹中枢が血糖値の上昇を感知し、満腹感を得られるまでにかかる時間は、食べ始めから約15分後です。

したがってゆっくりよく噛んで15分以上の時間をかけて食べると、血糖値の上昇を抑えられる可能性が高くなります。

このように、いずれも難しい食べ方ではないため、血糖値が気になる人はすぐに実践しましょう。

食物繊維やカリウムが豊富な果物は血糖値上昇を抑えられる

食物繊維やカリウムが豊富な果物。血糖値上昇抑制効果が高い

血糖値の上昇をうまく抑えながら楽しむには、以下に該当する果物を中心に食べると良いとされています。

  • ブドウ糖やショ糖が少ない
  • 食物繊維が多い
  • 血糖値上昇を抑える栄養素が豊富

上記に該当する代表的な果物の可食部100gに含まれている糖質や食物繊維の量は、以下のとおりです。

果物ブドウ糖果糖ショ糖食物繊維
皮付きりんご1.6g6.3g4.7g1.9g
いちご1.6g1.8g2.5g1.4g
緑肉種キウイ3.7g4.0g1.4g2.6g
ブルーベリー4.2g4.3g0.1g3.3g
アボカド0.1g0.4g0.1g5.6g

皮付きりんごやいちごは、他の果物と比べてブドウ糖が少ないうえに、食物繊維を豊富に含んでいます。

特に、他の果物と比べて圧倒的に糖質が少なく食物繊維が豊富であるアボカドは、血糖値上昇抑制効果が高い果物です。

緑肉種キウイやブルーベリーは、ブドウ糖は多いもののショ糖の含有量は少なく食物繊維が多く含まれているため、血糖値上昇は緩やかな傾向にあります。

さらに緑肉種キウイやブルーベリーには、以下の血糖値上昇を抑える栄養素も豊富です。

果物血糖値上昇を抑える栄養素
緑肉種キウイカリウム
ブルーベリープロアントシアニジン

バナナにもカリウムは多く含まれていますが、緑肉種キウイと比べて食物繊維は少ないうえに糖質の量は多いため、同じ量を摂取した場合にはバナナのほうが血糖値は上昇する傾向にあります。

果物ブドウ糖果糖ショ糖食物繊維
バナナ2.6g2.4g10.5g1.1g

したがって血糖値の上昇を抑えるためにはブドウ糖やショ糖が少なく、食物繊維が豊富な果物を選びましょう。

ジュースやジャムなどの加工品はかえって血糖値上昇の要因となる

血糖値上昇の要因。ジュースやジャムなどの加工品

同じ果物であっても摂取方法によって血糖値への影響は異なりますが、皮がついたままの丸かじりが血糖値上昇抑制には一番効果があります。

丸かじり以外の果物の摂取方法としてジュースや加工品等が挙げられますが、りんごの摂取方法における糖質や食物繊維の違いは、以下のとおりです。

果物ブドウ糖果糖ショ糖食物繊維
皮付きりんご1.6g6.3g4.7g1.9g
皮なしりんご1.4g6.0g4.8g1.4g
ストレートジュース2.8g6.4g1.4g
濃縮還元ジュース2.7g6.2g1.4g
ジャム1.1g3.6g46.4g

上記のとおり皮なしりんごは食物繊維が少なく、皮付きりんごと比べて血糖値が上昇する傾向にあります。

砂糖などの糖質を加えるジュースやジャムなどの加工品は、食物繊維もなくなるため血糖値がすみやかに上昇します。

なお皮ごと粉砕するスムージーは、食物繊維が損なわれず、皮ごと食べる方法と同等の糖質や食物繊維の摂取が可能です。

この傾向はりんごだけではなく、全ての果物に当てはまるため、血糖値上昇を抑えたい場合は皮ごと食べられる果物を優先的に食べるようにしましょう。

果物の適正な摂取量は必要なエネルギー量から算出する

果物にはミネラルなど重要な栄養素を多く含んでいますが、果物に偏った食事は糖質の過剰な摂取となり、糖尿病発症のリスクを高めます。

農林水産省の食事バランスガイドでは、想定エネルギー量2,200kcal±200kcalにおける1日あたりの望ましい食品の摂取量を、以下のとおり果物などのグループごとに定めています。

グループ具体的な食品望ましい摂取量
主食ご飯、パン、麺5~7SV
副菜野菜、きのこ、いも、海藻料理5~6SV
主菜肉、魚、卵、大豆3~5SV
牛乳・乳製品牛乳、乳製品2SV
果物果物2SV
参照:食事バランスガイドについて|農林水産省

上記のSVとは、望ましい摂取量をわかりやすくするために定められた独自の単位のことです。

1SVの基準は統一されておらず、以下のとおりグループごとに基準や食品の量が定められています。

グループ主食副菜主菜牛乳・乳製品果物
1SVの基準炭水化物の重量40g材料の重量70gタンパク質約6gカルシウム約100mg果物の重量100g
1SVとなる具体的な食品・ごはん小盛り1杯
・おにぎり1個
・食パン1枚
・ロールパン2個
・野菜サラダ
・きゅうりとわかめの酢の物
・具だくさんの味噌汁
・ほうれんそうのおひたし
・ひじきのソテー
・冷奴
・納豆
・目玉焼き
・牛乳コップ1杯
・チーズ1かけ
・スライスチーズ1枚
・ヨーグルト1パック
・みかん1個
・りんご半分
・柿1個
・梨半分
・ぶどう半房
・もも1個
2SVとなる具体的な食品・うどん1杯
・もりそば1杯
・スパゲッティ
・野菜の煮物
・野菜炒め
・いもの煮っ転がし
・焼き魚
・魚のフライ
・牛乳瓶1本
3SVとなる具体的な食品・ハンバーグステーキ
・豚肉の生姜焼き
・鶏肉の唐揚げ

上記のとおり果物の1SVは重量が約100gであるため、1日単位では200gの摂取が望ましいとされています。

したがって、それぞれの果物における1日あたりの適切な摂取量の目安は、以下のとおりです。

果物1日あたりの適切な摂取量の目安
みかん2個
りんご1個
2個
1個
ぶどう1房
もも2個

なお想定エネルギー量とは、人が1日あたり基本的な活動する際に必要なエネルギーのことであり、身長や日常の活動量を示すエネルギー係数によって異なります。

1日に必要なエネルギー量の計算式は、以下のとおりです。

1日に必要なエネルギー=標準体重×エネルギー係数

標準体重とはBMIが22となる標準体重のことであり、以下の算式で求めます。

標準体重=身長(m)×身長(m)×22

そして活動量によって変動するエネルギー係数は、以下のとおりです。

活動量対象となる人の例エネルギー係数
低いデスクワークが多い人25~30kcal/kg
適度立ち仕事が多い人30~35kcal/kg
高い土木建築業など力仕事が多い人35kcal/kg~

例えば、身長が183cmでエネルギー係数が30kcal/kgである場合、想定エネルギー量は2,210kcalになります。

1.83×1.83×22×30=2,210kcal

つまり、食事バランスガイドに掲載されている想定エネルギー量2,200kcalに該当する人の例として、身長183cmで立ち仕事が多い人が挙げられるということです。

このように想定エネルギー量は、身長や活動量によって異なるため、自分にとって必要なエネルギー量の算出から始めてください。

仮に必要なエネルギー量が2,000kcalであった場合、食事バランスガイドをもとにした果物の適正な摂取量は、以下のとおり181gです。

2SV×2,000/2,200≒1.81SV=181g

細かい重量を用いた果物摂取の管理は面倒だと感じる人は、おおまかな果物の個数などで把握しましょう。

朝食で果物を食べると昼食時の血糖値上昇が抑えられる

昼食時の血糖値上昇が抑えられる。朝食で果物を食べる

果物を食べる場合、午前中はインスリンの分泌が活発であるため、1日の食事の中では朝食が血糖値の上昇抑制効果を期待できます。

ほかにも朝食時における果物の摂取は、以下のような3つのメリットがあり、健康なからだづくりの一助となります。

  • 朝は消化吸収が活発であるため、栄養を効率よく吸収できる
  • 寝ている間に消耗した水分を補給できる
  • セカンドミール効果によって昼食以降の血糖値上昇を抑えられる

セカンドミール効果とは、最初の食事が次の食事における血糖値に与える影響のことです。

例えば朝食時に食物繊維が多い果物を摂取した場合は、昼食における血糖値の上昇が緩やかになります。

一方で夕食後などに果物を食べる人は多くいますが、夜間はインスリンの分泌が低下しているため、血糖値が急上昇する可能性が高いです。

特に夜遅い時間帯に果物を摂取した場合は、摂取した糖質が十分に消費されず、血糖値の上昇だけでなく肥満の要因にもなります。

夜間に果物を食べる際には、血糖値の上昇や肥満を抑えるために以下の2点を守りましょう。

  • 寝る2~3時間前までに食べる
  • 低GI食品、低糖質の果物を食べる

夜間に食べる果物としては、消化に良いりんごやキウイなどが適しています。

食前や食間に食べると血糖値上昇が抑えられる

果物に含まれる食物繊維は、食事における血糖値上昇を緩やかにする効果が十分に発揮できるように、以下のタイミングで食べるようにしましょう。

  • 食事の20分程度前
  • 食後2~3時間後

上記のいずれも消化器の中に食べ物がない状態であるため、すぐに食物繊維の消化が行われ、血糖値の上昇は緩やかです。

特に食事20分前に食べると満腹中枢への刺激により間もなく満腹感が得られ、量自体を減らす効果も期待できます。

このほか食前の果物の摂取は、以下のとおり効率よく栄養を吸収する助けになります。

  • 果物に含まれる酵素によって他の食品がスムーズに消化される
  • 果物に含まれる栄養素を効率よく吸収できる

食後のデザートとして果物を食べるケースがありますが、果物よりも先に食べたものを消化するため、血糖値の上昇を緩やかにする効果は期待できません。

正しい知識に基づいた適度な果物の摂取によって血糖値の抑制効果が期待できる

果物には主に血糖値を上昇させるブドウ糖やショ糖に加え、血糖値を上昇させる働きはないものの、過剰な摂取により肥満の要因となる果糖が含まれています。

しかし果物には、血糖値上昇の抑制効果がある食物繊維などの糖質以外の栄養素が多く含まれているため、適度な量に抑えた場合は血糖値の上昇は緩やかです。

果物の摂取による血糖値の上昇を抑えるには、糖質が低く、血糖値の上昇を緩やかにする栄養素が多く含まれているものを優先的に食べる必要があります。

文部科学省では1日あたり200gを最適な果物の摂取量としていますが、身長や毎日の活動量によって変動するため、算出した適量の摂取が健康なからだづくりには効果的です。

そして、朝食20分前に皮ごと丸かじりする食べ方などちょっとした食べ方や食べるタイミングの工夫によって、血糖値の上昇を緩やかにしつつ栄養を効率よく吸収できます。

血糖値が気になる人やコントロールが必要な人は、すぐにできる方法から始めてみましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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