糖尿病で足の甲がかゆい原因!糖尿病患者の水虫リスクと水虫が多い理由と予防法を解説

糖尿病で足の甲がかゆい原因。水虫リスクと水虫が多い理由と予防法

糖尿病では足にかゆみや痛みなど様々な症状が出るリスクが高く、足に起こる症状全般を糖尿病性足病変といいます。

糖尿病性足病変で起こる症状の中でも、特に多いのが水虫です。

最初は少しのかゆみから始まる水虫も、処置が遅れると細菌感染によって皮膚細胞が破壊され、足の切断を余儀なくされる場合があります。

この記事では糖尿病患者の発症リスクが高い水虫について、原因や予防法について解説します。

この記事でわかること
  • 水虫の原因と症状
  • 糖尿病で水虫のリスクが高い理由
  • 水虫を予防する方法

糖尿病で重要なフットケアの方法についても詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

目次

水虫は白癬菌が皮膚に感染して起こる病気

水虫はカビの一種。白癬菌が皮膚感染して起こる病気

水虫は、白癬菌というカビの一種である細菌が皮膚に感染して起こる病気です。

手や体のあらゆる部位に発症しますが、主に足に感染します。

それは、白癬菌が温かく湿った環境を好んで増殖するためです。

水虫は白癬菌というカビの一種が原因

足は体の中でも特に汗をかく部位で、1日に200ml程度の発汗量があります。

働いている人は1日中靴を履いている場合が多いため、何もしていなくても水虫の増殖を高めてしまいます。

以下では水虫の原因と症状、予防法について解説します。

水虫の原因は白癬菌との接触

水虫の人の足で触れた場所から感染

水虫の原因は、白癬菌に皮膚が直接触れて起こる接触感染です。

白癬菌は高温多湿の状態を好み、皮膚の角質層を作る成分であるケラチンを栄養源としています。

足に付着した白癬菌は、皮膚の1番表面にある角質層に侵入し増殖します。

白癬菌が角質層へ侵入するまでにかかる時間は、24時間程度です。

新陳代謝によって白癬菌が付着した角質層が剥がれ落ちるため、水虫の人が素足で触れた場所から感染が広まります。

白癬菌が付着するリスクの高い場所は、スポーツジムや銭湯などのバスマットや、公共施設のスリッパなどです。

そのような感染リスクの高いものに触れた際は、早めに足を洗浄するなどの処置によって感染の予防ができます。

水虫の種類は主に4つあり症状が異なる

自覚症状がない水虫の種類も

水虫は、感染した部位や症状によって種類が分かれます。

かゆみを伴う水虫は全体の10%程度で、自覚症状がない場合も多くあります。

以下は、水虫の4つの種類です。

  • 趾間(しかん)型:皮が剥けたり、白くふやけてジュクジュクしたりする。
  • 小水泡型:土踏まずや足の側面に水ぶくれができて、強いかゆみが出る。
  • 角質増殖型:足の裏やかかとが乾燥してひび割れを起こす。
  • 爪白癬:爪が黄白色に変色したり、厚くなったりする。高齢者に多く、かゆみがないため水虫だと気づかない場合が多い。

白癬菌が足の甲にまで増殖すると、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を合併して発症し、赤く腫れ上がる場合があります。

蜂窩織炎は皮膚の深い部分に細菌が感染する病気で、高熱や痛みが起こります。

悪化すると急速に感染が広がる恐れがあるため、早急に医療機関で点滴などの治療が必要です。

水虫の予防には足を清潔に保ち乾燥させるのが重要

足をこまめに洗浄して清潔に維持

水虫の予防には毎日足を清潔に保ち、蒸れた状態を避けて乾燥させるのが重要です。

白癬菌は足に付着してから増殖するまでに24時間以上かかるため、毎晩足をきれいに洗うようにしましょう。

毎日の入浴で足の指までしっかりと洗い、入浴後は清潔なタオルで指と指の間の水分を拭き取ります。

革靴やブーツなどは足が蒸れるため、白癬菌が増殖するのに好条件な環境となってしまいます。

通気性のよい靴を履き、毎日同じ靴を履かないようにするなどの工夫で予防が可能です。

家族に水虫の人がいる場合は、家庭で使用するバスマットやスリッパのこまめな洗濯が感染予防になります。

糖尿病で水虫のリスクが高い理由は高血糖による乾燥や神経障害が原因

水虫のリスクが高い理由。高血糖による乾燥や神経障害

糖尿病の人は糖尿病ではない人と比べて水虫の発症リスクが高く、重症化する割合も高くなります。

その主な原因は、高血糖による乾燥や神経障害です。

他にも高血糖によって起こる様々な合併症は、白癬菌などの細菌感染に対する免疫力を低下させ感覚が鈍くなるため、発見が遅くなる場合も少なくありません。

水虫から細菌感染が悪化し、重症化すると細胞が壊死してしまう場合があります。

細胞の壊死が起こると、それ以上広がるのを防ぐために患部の切断を余儀なくされてしまいます。

糖尿病において、水虫は決して軽視してはならない病気です。

以下では、糖尿病が水虫のリスクを高める理由について解説します。

糖尿病の特性で水虫が悪化する傾向

脱水による皮膚の乾燥

糖尿病で水虫になる理由の一つが、皮膚の乾燥です。

腎臓には、高血糖状態が続くと血糖値を安定させるために、血液中の糖を尿として排出する機能があります。

過剰な糖を排出するには、多量の水分が必要です。

そのため全身の細胞から水分が失われ、皮膚の乾燥が起こります。

白癬菌は高温多湿を好むため、皮膚が乾燥した状態では水虫はほとんど発症しません。

しかし、皮膚の乾燥を放置したり強く掻きむしったりすると小さな傷ができるほか、その傷から白癬菌が侵入して水虫にかかる場合があります。

乾燥した皮膚では小さな傷が生じるリスクが高いため、糖尿病では皮膚の保湿が重要です。

免疫力の低下で細菌感染のリスクが上がる

糖尿病の人は免疫力が低下しているため、水虫にかかるリスクが高いだけではなく、重症化する可能性も高くなります。

免疫力とは細菌やウイルスが体の中に侵入した際に、免疫システムが作動し病原体を排除したり攻撃したりして体を守る力のことです。

糖尿病の人は水虫になると治りが遅く、気づくのが遅れると皮膚の潰瘍や壊死へと進行する場合があります。

自己判断や市販薬による治療はせずに、かかりつけ医に相談し早期治療を行いましょう。

糖尿病では、水虫の他にも帯状疱疹や蜂窩織炎などのウイルスや細菌による皮膚疾患の発症リスクが高くなります。

神経障害による影響で皮膚の乾燥や感覚の異常が起こる

糖尿病は血管だけではなく、自律神経や末梢神経といった全身の神経にも障害を起こします。

高血糖によって自律神経に障害が起こると、発汗作用が阻害されます。

発汗作用は周りの環境や体温に応じて、汗の量を調節する機能です。

汗は皮膚を保湿して乾燥や感染症を防ぐ効果があるため、発汗作用の低下によって水虫の発症リスクが高まります。

乾燥による皮膚のバリア機能の低下で起こる湿疹やひび割れも、細菌感染を発症させる原因です。

さらに高血糖によって末梢神経に障害が起こると、かゆみや痛みに対する感覚が鈍くなります。

末梢神経は、体の動きや手足の感覚に関わる神経です。

少しの傷やかゆみであっても、気づくのが遅れると感染症を悪化させてしまいます。

水虫の予防には毎日のフットケアが大切

水虫の予防。毎日のフットケアが大切

フットケアとは、毎日の足の状態観察や保湿などのケアによって足の管理を行うことです。

医療機関による糖尿病の治療では、フットケアの重要性が指導されます。

血糖コントロールと並んで重要

それは、糖尿病では小さな傷であっても細菌感染が急速に広がる可能性があり、生命に関わる重篤な状態へと進行する可能性があるためです。

水虫はかゆみを伴わない場合も多いため、よく観察して小さな変化も見逃さないようにしましょう。

糖尿病の治療において、フットケアは血糖コントロールと並んで重要です。

以下では、水虫の予防に重要なフットケアの方法について解説します。

感染を防ぐフットケアのポイント1

毎日の足のチェックを習慣にする

水虫を重症化させないためには、早期発見が重要です。

些細な変化も見逃さないよう、毎日足を観察します。

自分で足の隅々までチェックできない場合は家族に見てもらうか、鏡を使って確認します。

以下は、足をチェックする際のポイントです。

  • 乾燥していないか
  • 傷や水泡ができていないか
  • 皮が剥けている部分がないか
  • 皮膚や爪に変色などの異常がないか
  • 赤く腫れている部分がないか
  • 触って感覚のない部分がないか
  • しびれがないか
  • 巻き爪になっていないか
  • 足が変形していないか

運動をした日やたくさん歩いた日は、一つ一つの項目を念入りに確認しましょう。

足をきれいに洗って清潔に保つ

水虫は、毎日足をきれいに洗って清潔に保つと予防ができます。

汚れや垢を落とすためには、洗う前に足をお湯で温めて皮膚を柔らかくすると効果的です。

強く擦ったりやすりを使用したりせず、柔らかいスポンジや素手を使い、よく泡立てた石鹸で洗います。

ゴシゴシと強い力で洗うと、皮膚を傷つけ必要な皮脂を失う恐れがあるため、優しく洗うのがポイントです。

指や爪の周りは特に丁寧に洗い、洗い流す際は石鹸が残らないようにしっかりとすすぎます。

長風呂や熱い温度による入浴は、皮膚がふやけて脆くなり傷を作ってしまう原因です。

入浴は、ぬるめのお湯に20分程度を目安に入りましょう。

感染を防ぐフットケアのポイント2

しっかりと保湿する

入浴後は柔らかいタオルを使用し、強く擦らないようにして優しく水分を拭き取ります。

入浴後の皮膚は急速に乾燥するため、10分以内に保湿するのがポイントです。

洗った後の皮膚はバリア機能が失われており、皮膚へ水分の浸透率が高くなっています。

そのため、入浴後なるべく早く保湿をすると、しっかり保湿剤が浸透しバリア機能が高まります。

保湿剤は、セラミドなどの保湿成分が配合されているものが効果的です。

保湿剤が浸透するように丁寧に塗り込み、乾燥しやすいかかとは重ね塗りをしてケアします。

入浴の際には、保湿成分が入った入浴剤を使用するとさらに効果が得られます。

靴下を履く

靴下を履くと、水虫やケガの予防に効果的です。

足が蒸れるのを防ぐには、5本指靴下や、吸水性のよい綿や木綿素材のものを選ぶと効果があります。

足が蒸れた状態は、水虫が増殖するのに好条件であるため、雨の日や暑い日には替えの靴下を持ち歩き、外出先でこまめに靴下を取り替えるようにしましょう。

他にも、締め付けがきつい靴下は血行を悪くして傷の治りを遅くするため、ゴムが緩い靴下を選ぶのも大切です。

靴を履くときには素足を避け靴下を履くようにすると、靴擦れの防止にもなります。

糖尿病で足の甲がかゆくなるのは発症率の高い水虫が原因

水虫は、白癬菌というカビの一種である細菌が皮膚に感染して起こる病気です。

糖尿病の人は水虫にかかるリスクが高く、重症化する可能性もあります。

糖尿病で水虫の発症率が高い理由は、高血糖による脱水や神経障害によって乾燥が起こるためです。

白癬菌は高温多湿の環境を好みますが、糖尿病では乾燥による小さな傷から細菌感染を起こし水虫の感染リスクが高まります。

さらに高血糖による免疫力の低下によって水虫の増殖リスクが高く、治りも遅くなります。

神経障害による感覚の異常によって水虫の発見が遅れるのも、重症化のリスクを高める原因です。

水虫は悪化すると、潰瘍や壊死などの重篤な状態に陥る可能性も否定できません。

早期発見と治療のためには、毎日のフットケアが重要です。

フットケアでは小さな変化にもいち早く気がつくように、毎日足をよく観察します。

足を清潔に保ち、しっかりと保湿をして水虫を予防しましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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