ストレスで糖尿病リスクが上がる!ストレスが血糖値を上げる原因を解説

ストレスで糖尿病リスクが上がる。ストレスが血糖値を上げる原因を解説

厚生労働省の令和4年の労働安全衛生調査によると、仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者の割合は82.2%とされています。

労働者の多くが感じているストレスは、糖尿病とも深く関係しています。

それは、ストレスによって心や体に起こる反応が血糖値を上昇させる原因になるからです。

ストレスを放置していると、自分でも気がつかないうちに糖尿病のリスクを高めてしまいます。

本記事では、ストレスが血糖値を上げる原因について解説します。

この記事でわかること
  • ストレス刺激とストレス反応
  • ストレスが血糖値を上げる理由
  • 効果的なストレス解消法

ストレスに対処する方法についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

ストレスには多くの種類があり心や体に起こる反応も人それぞれ

ストレスには多くの種類がある。心や体に起こる反応もひとそれぞれ

何によってストレスを感じるのか、どんな反応が出るのかはその人の性格や世代、労働や家庭環境などによって様々です。

ストレスは心理学で利用されている言葉であり、精神面や身体面にかかる外部からの刺激に対して使われています。

ストレスの原因となる外部からの刺激をストレス刺激、ストレスによって心や体に起こる反応をストレス反応といいます。

ストレス反応は心理面や身体面、行動面に影響を及ぼす状態です。

どの反応も放置すると、思いもよらない怪我や病気に繋がる可能性があります。

自分に起こっているストレス反応に早めに気がつき、対処していくのが重要です。

以下では、ストレス刺激の種類と3つのストレス反応について解説します。

心や体に起こるストレス刺激には様々な種類がある

ストレスには体に負荷がかかる物理的な刺激や心に負担がかかる心理的な刺激など、多くの種類があります。

以下は、主なストレス刺激の種類です。

物理的な刺激化学的な刺激心理的・社会的な刺激身体的な刺激
暑さや寒さ気圧の変化
騒音
照明などの明かり
人の多い混雑した場所
公害物質
酸素不足
薬物
タバコや強い香料などの匂い
花粉
人間関係のトラブル
仕事上の問題
自然災害への不安
経済面の不安
就職や転職
転居
病気やけが
不規則な生活
睡眠不足
疲労
過度な運動

結婚や出産、昇進などの嬉しいライフイベントも環境の変化が心理的な負担となってストレス刺激になる場合もあります。

心理面に起こるストレス反応

心理面で起こるストレス反応は、日常的なイライラなどの小さな変化からうつ症状など生活に支障をきたす程の大きな変化まで広範囲に及びます。

心に起こる小さな変化を放置して長い時間が経つと、精神的な疾患を発症するリスクを高めます。

以下は、心理面に起こる主なストレス反応です。

  • 気分の落ち込み
  • 活力の低下
  • 無気力
  • 疲労感
  • 怒り
  • 恐怖
  • 罪悪感
  • 孤独感
  • 否定的な考え
  • 決断力の低下

上記の症状が長期間続く場合はうつ状態が疑われるため、専門の医療機関への受診が必要です。

心理面に起こるストレス反応は、深刻な状態になる前に早めに対処しましょう。

身体面に起こるストレス反応

身体面に起こるストレス反応とは、体に疲れや痛み、しびれなどの不具合を生じる状態のことです。

なんとなく体の調子が悪い状態が続いている場合、ストレスが原因となっている可能性があります。

以下は、身体面に起こる主なストレス反応です。

  • 体の痛み
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 腹痛
  • 眼精疲労
  • 動悸や息切れ
  • 便秘や下痢
  • 異常な発汗
  • 血圧の上昇
  • めまい
  • しびれ

身体面に起こるストレス反応は、軽いものから重いものまで人によって異なります。

体の不調が長期にわたって続く場合は、ストレスの原因を突き止めて対処する必要があります。

行動面に起こるストレス反応

ストレスが慢性化すると自分自身の行動を制御できなくなり、安定した生活習慣が困難になります。

正常時では取らない衝動的な行動や、感情のコントロールが上手くできなくなるなどの状態が行動面に起こります。

以下は、行動面に起こる主なストレス反応です。

  • 拒食や過食
  • 飲酒や喫煙量の増加
  • ケンカなどの攻撃的な行動
  • 急に怒ったり泣いたりする
  • 引きこもり
  • ギャンブル
  • 仕事でミスや事故を起こす

行動面に起こるストレス反応には依存性の高いものも多く、一人では改善できない場合があります。

自分で解決できない場合は、早めに身近な人への相談や専門的な機関の利用をしましょう。

ストレス反応がインスリンの働きを弱め血糖値を上げる

糖尿病リスクが上がる原因。血糖値を下げる機能が低下

ストレスで糖尿病のリスクが上がる原因は、ストレスによって血糖値を下げる機能が低下するためです。

ストレスが長期にわたって続くと、心や体に起こるストレス反応によってインスリンの働きが弱まり血糖値が上がります。

血糖値は一日のなかでも上がったり下がったりを繰り返しており、インスリンによってコントロールされています。

インスリンは体内で血糖値を下げられる唯一のホルモンです。

安定した血糖値を維持するために、インスリンは重要な役割をもちます。

以下では、ストレスによって血糖値が上がる原因について解説します。

ホルモンの過剰分泌が血糖値を上げる

ストレスは、ホルモンの分泌に影響を与えます。

ストレスによって増加するホルモンはコルチゾールやグルカゴン、アドレナリンなどです。

血糖値を下げるホルモンがインスリンだけであるのに対し、これらのホルモンには血糖値を上げる作用があります。

なかでもコルチゾールは、肝臓で糖が作られるのを促す作用をもつホルモンです。

ストレスによって脳が刺激されると、コルチゾールが過剰に分泌されます。

過剰分泌されたコルチゾールによって、余分に糖がつくられてしまうため血糖値が高くなります。

ストレスによる肥満が血糖値を上げる

ストレスは、肥満のリスクを高めます。

肥満は血糖値が常に高い状態になるので、糖尿病の原因の一つとされています。

ストレスによって肥満になるのは、自律神経の乱れによって全身の血流が悪くなったりホルモンの分泌量が減少したりして、基礎代謝が低下するためです。

基礎代謝が低下すると、脂肪の燃焼が悪くなります。

ストレスによって起こる食生活の乱れや運動不足も、肥満を引き起こす原因です。

肥満になると、内臓脂肪の蓄積によってインスリンの機能が低下し、血糖値を十分に下げられなくなります。

うつ症状が血糖値を上げる

うつ症状は血糖値と深く関係しており、糖尿病の人に多い症状です。

気分の落ち込みや興味関心の低下などによって、生活の質の悪化を招きます。

うつ症状によって起こる生活習慣の悪化には、主に以下のようなものがあります。

  • 食事量が減ったり増えたりする
  • 運動不足
  • 不眠
  • 飲酒量や喫煙量の増加

過食や間食によって血糖値が高い状態が続くと、膵臓に負担がかかりインスリンの分泌量の低下を招きます。

運動には血糖値を下げる効果があるため、運動不足も血糖値を上げる原因です。

うつ症状による健康に対する意識の低下が、血糖値のコントロールを難しくします。

ストレスには事前の備えとストレスを感じた後の対処が大切

ストレスの備えと対処が大切

効果的にストレスを解消させるためには、ストレスへの事前の備えとストレスを感じた後の迅速な対処が重要です。

事前の備えとは、ストレスへの適応力や回復力を身につけておくことで、ストレスへの耐性を高めます。

普段から人や社会との繋がりを深めておき、助け合ったり助けを求めたりできる関係を築いておくのも大切です。

ストレスを感じた後の対処には、外部刺激にいち早く気づきストレスを軽減する策を講じる対応力や、ストレスに対する向き合い方を変えるなどの方法があります。

以下では、効果的なストレスの対処法を解説します。

健康的な生活習慣を身につける

ストレスへの備えとして有効な方法は、健康的で規則正しい生活習慣の継続です。

普段から健康的な生活習慣を身につけている人は、ストレスへの耐性が強くなります。

不健康な生活をしている人はストレスを感じたとき、対処できずにさらに生活習慣が悪化してしまいます。

生活習慣の悪化は、血糖値を上げる肥満やうつ症状の原因です。

健康的な生活習慣には、以下のようなものがあります。

  • バランスの良い食事を1日3食とる
  • 間食をしない
  • 適正体重を維持する
  • 毎日7時間以上の睡眠時間をとる
  • 適度な運動をする
  • 過度な飲酒をしない
  • タバコを吸わない

身近に相談できる人をもつ

ストレスの対策として身近な家族や友人、同僚などに相談できる人をもつのが重要です。

悩みや不安を一人で抱え込むとストレスが溜まり、感情が安定しなくなったりうつ症状を起こしたりする原因になります。

誰かに話すと悩んでいる内容について自分自身で整理がつき、ストレスの解決策を思い付くきっかけとなる場合もあります。

聞いてもらうだけでも気持ちが軽やかになり、ストレス解消に効果的です。

身近な人に相談できない場合は、会社内の相談窓口を利用しましょう。

最近では、心のケアを目的として専門家に相談ができる窓口を設けている企業が増えています。

身近な人に相談しても不安が消えずに抑うつ状態が続く場合は、医療機関の受診を検討する必要があります。

自分に合ったストレスへの対処法をもつ

どんな刺激がストレスになるかが人によって異なるように、ストレスの対処法も人それぞれ異なります。

働き盛りで忙しい人には、オンとオフの切り替えが重要です。

仕事や家事に集中する時間と、趣味や好きなものに没頭する時間の区別をつけましょう。

忙しい場合でも、1週間に1時間ほど趣味の時間をもつとストレス解消に効果があります。

好きなものに熱中すると、日常のストレスから解放され、気持ちが晴れやかになります。

旅行や散歩、ガーデニングなど屋外に出る趣味をもつのも効果的です。

仕事中は可能であれば少し歩いたり、コーヒーやお茶を飲むなど短時間の休憩をとったりすると、リラックスしてストレスが緩和できます。

ストレスの解消にはストレッチやヨガ、瞑想などで呼吸を整える方法も有効です。

呼吸が整うと体の緊張が解け、リラックスするためストレスが解消されます。

ストレスで糖尿病リスクが上がるのはストレスがインスリンの働きを弱めるため

ストレスが糖尿病リスクを高める。迅速な対処が大切

ストレスが糖尿病のリスクを高めるのは、ストレスに対応しようとして心や体に起こる反応がインスリンの機能を弱め、血糖値を上げるからです。

ストレスとなる外部刺激には多くの種類があり、何にストレスを感じるかは人によって異なります。

ストレスに対応しようとして、日常的なイライラやうつ症状などの心理面や、体の痛みなどの身体面にストレス反応が起こります。

過食や運動不足、喫煙などの生活習慣の悪化も行動面に起こるストレス反応です。

これらのストレスに対する反応は、膵臓を疲弊させインスリンの働きを弱めるきっかけとなります。

ストレスによって血糖値が上がる原因の一つは、ホルモンの過剰分泌です。

コルチゾールは肝臓で糖がつくられるのを促進する作用があるため、過剰に分泌されると血糖値が高くなります。

ストレスによる肥満やうつ症状も、内臓脂肪の蓄積や生活に対する意識の低下が原因となってインスリンの働きを弱めます。

効果的なストレスの解消には、ストレスへの事前の備えと、感じた後の迅速な対処が大切です。

悩みや不安を一人で抱え込むと感情が安定しなくなったり、うつ症状を起こしたりする場合があります。

そのため、身近に相談できる人をもっておくのが大切です。

オンとオフの切り替えを行い、没頭できる趣味などの時間を1週間に1時間程つくるだけでも、ストレス解消に効果があります。

健康的な生活習慣はストレスからの回復力を高めるだけではなく、糖尿病の予防にもなるため継続して行いましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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