糖尿病の発症には、両親から受け継いだ遺伝的因子が関与するといわれています。
遺伝するのはインスリン抵抗性やインスリンの分泌機能低下などの体質であり、病気そのものではありません。
2型糖尿病は遺伝的要因だけではなく、生活習慣などの環境的要因が組み合わさって発症します。
家族に2型糖尿病の人がいる場合、同じく2型糖尿病を発症するリスクは高くなりますが、生活習慣の改善などによって発症の予防が可能です。
今回は、2型糖尿病と遺伝の関係について詳しく解説します。
- 2型糖尿病と遺伝の関係
- 2型糖尿病発症要因となる環境因子
- 2型糖尿病の発症リスクを下げる生活習慣
2型糖尿病の発症予防について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
2型糖尿病は多因子遺伝子疾患であり複数の遺伝子に環境因子が加わり発症
病気には、単一因子遺伝子疾患と、多因子遺伝子疾患があります。
単一因子遺伝子疾患とは、1つの遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝的要因の病気のことです。
一方多因子遺伝子疾患は、複数の遺伝子と環境因子が相互に作用して引き起こされます。
2型糖尿病は多因子遺伝子疾患であり、複数の原因遺伝子に生活習慣などの環境因子が加わって発症します。
両親がともに2型糖尿病である場合、その子供が発症する確率は約40%〜50%です。
多くの場合、糖尿病自体が遺伝するのではなく、糖尿病になりやすい体質が遺伝します。
糖尿病になりやすい体質とは、インスリン抵抗性を引き起こしたり、インスリンの分泌機能が低下したりする体質のことです。
そのため筋肉や脂肪組織の糖取り込み能力が低下し、肝臓では糖新生が抑えられず、血糖値が下がらなくなります。
その結果、血糖値を正常値に戻すのにより多くのインスリンが必要となってしまうのです。
こうしたインスリンの過剰分泌が続くと、膵臓のインスリン分泌機能は低下し、2型糖尿病が引き起こされます。
インスリン抵抗性やインスリン分泌機能低下などの2型糖尿病になりやすい体質に加えて、糖尿病の発症に関わる環境因子は、以下の通りです。
- 食生活
- 運動不足
- 肥満
- ストレス
- 睡眠不足
- 喫煙
- 過剰飲酒
- 年齢
これらの環境因子がどのように糖尿病の発症に関与しているのか、ひとつずつ解説していきます。
食生活
糖尿病の発症リスクを高める主な食生活を、以下にまとめました。
高糖質、高カロリー食品の過剰摂取 | 加工食品や糖分が多く含まれている清涼飲料水や菓子などを過剰摂取すると、血糖値が急上昇するためにインスリン抵抗性を引き起こす |
---|---|
炭水化物の多い食事 | 白米や小麦粉を使った食品などの精製された炭水化物は、血糖値を急上昇させるため、インスリン抵抗性を引き起こす |
高脂質 | 主に加工食品や揚げ物に含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、肥満を引き起こし、インスリン抵抗性を高める |
食物繊維の不足 | 海藻、きのこ類などに多く含まれる食物繊維は、血糖値の上昇を抑える働きがあり、これらの食品の摂取が不足すると血糖値のコントロールが不良となる |
野菜、果物の摂取不足 | ビタミンやミネラルなどの抗酸化物質が豊富な野菜や果物の摂取不足は、血糖値のコントロールやインスリンの働きに悪影響を与える |
不規則な食事習慣 | 食事を抜いたり、深夜に食事したりなどの不規則な食事習慣は、体内の血糖調節に悪影響を与える |
遺伝による体質に加えてこのような食生活が長期間続くと、インスリン抵抗性はさらに高まり、糖尿病が引き起こされます。
運動不足
運動不足が糖尿病を引き起こす主な理由は、以下の通りです。
インスリン抵抗性の増加 | 運動不足は筋肉のブドウ糖の取り込み能力を低下させるため、インスリン抵抗性が高まる |
---|---|
体重増加、肥満のリスク | 運動不足はエネルギー消費量が減少するため、摂取したカロリーが脂肪として蓄積され肥満を引き起こす 肥満はインスリン抵抗性をさらに悪化させる |
脂質代謝の低下 | 運動不足は脂質代謝を低下させるため、血液中の脂肪酸濃度が高くなり、インスリンの働きを妨げる |
筋肉量の減少 | 運動不足により筋肉量が減少すると、基礎代謝が低下し、血糖の代謝効率が悪化する |
慢性炎症の増加 | 長期間にわたる運動不足や肥満は、体内で慢性的な炎症を引き起こし、インスリン抵抗性を悪化させる |
このように、糖尿病の発症は、食生活だけでなく運動不足も大きく関与しています。
肥満
肥満が糖尿病を引き起こす主な理由は、以下の通りです。
インスリン抵抗性の増加 | 脂肪組織が過剰に蓄積されると、インスリン抵抗性が生じる |
---|---|
慢性炎症の増加 | 脂肪細胞が肥大化すると、これらの細胞から炎症を引き起こす物質であるサイトカインが放出されるサイトカインによる慢性炎症がインスリン作用を阻害し、インスリン抵抗性を高める |
遊離脂肪酸の増加 | 体内で遊離脂肪酸が増加すると、肝臓や筋肉での糖代謝が悪化し、インスリン抵抗性が高まる |
内臓脂肪の影響 | 内臓脂肪から放出される遊離脂肪酸や炎症物質は肝臓での糖新生を過剰に活性化させ高血糖やインスリン抵抗性を引き起こす |
肥満は、体重と身長を基に計算されるBMIによって評価されます。
BMI計算方法
BMI=体重(kg)÷身長(cm)÷身長(cm)
BMI分類
BMIの分類は、以下の通りです。
- 18.5未満: 痩せ
- 18.5〜24.9: 標準体重
- 25.0〜29.9: 肥満(1度)
- 30.0以上: 肥満(2度)
日本では、BMI 25以上が肥満とされ、健康リスクが高まるとされています。
ストレス
ストレスが糖尿病の発症に影響を与える要因を、以下にまとめました。
コルチゾールの分泌増加 | ストレス反応により、副腎からストレスホルモンであるコルチゾールが分泌される コルチゾールは血糖値を上昇させるため、慢性的に持続するとインスリン感受性が低下し、インスリン抵抗性が亢進される |
---|---|
交感神経の活性化 | ストレスは交感神経を活性化させ、アドレナリンの分泌を促進する その結果血糖値が上昇し、インスリン抵抗性が増加する |
慢性炎症の増加 | 慢性的なストレスは体内の炎症反応を引き起こし、炎症性サイトカインの分泌を促進し、インスリン抵抗性を亢進させる |
日常生活行動の影響 | ストレスは食生活などの日常生活行動に悪影響を与える可能性が高い 暴飲暴食や運動不足などに繋がり、インスリン抵抗性が促進する |
このように、ストレスはインスリン抵抗性を増悪させるため、糖尿病の発症リスクが高くなります。
睡眠不足
睡眠不足が糖尿病の発症に関与している主な要因は、以下の通りです。
ホルモンバランスの乱れ | 睡眠不足は、食欲に関係するレプチンやグレリンなどのホルモンバランスが乱れるために食欲が増し、過食を引き起こす |
---|---|
ストレスホルモンの増加 | 睡眠不足は、血糖値を上昇させる作用のあるコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を増加させる |
糖代謝機能の低下 | 睡眠不足は体の糖代謝機能を低下させるため、起床時や食後の血糖値が上昇する |
慢性炎症の増加 | 睡眠不足は炎症性サイトカインの分泌を増加させるため、インスリン抵抗性を亢進する |
一般的に成人では6〜9時間の睡眠が推奨されており、十分な睡眠時間をとれていない場合、2型糖尿病の発症リスクは1.17倍から1.51倍に上昇するといわれています。
喫煙
喫煙による糖尿病発症リスクの上昇は、国内外の多くの研究によって明らかにされています。
喫煙が糖尿病の発症リスクを上昇させる主な理由は、以下の通りです。
インスリン抵抗性の増加 | ニコチンやその他の化学物質は交感神経を刺激しインスリンの吸収が遅延するなど、細胞がインスリンに正常に反応する機能を低下させる |
---|---|
慢性炎症の増加 | 喫煙は血液中の炎症性物質であるサイトカインを増加させ、慢性的な炎症反応を引き起こし、インスリン抵抗性をさらに悪化させる |
喫煙者は、非喫煙者よりも1.4倍糖尿病を発症するリスクがあるといわれており、喫煙本数が多いほどそのリスクは高くなります。
過剰飲酒
過剰飲酒が糖尿病の発症リスクを上昇させる主な原因を、以下にまとめました。
肝臓機能障害 | 肝臓はグリコーゲンの生成や貯蔵を担っている 過剰飲酒によってアルコール性脂肪肝やアルコール性肝硬変を引き起こすと、肝臓の機能が障害され、血糖コントロールが不良となる |
---|---|
膵臓機能障害 | 長期にわたる過剰飲酒はアルコール性膵炎や膵臓脂肪沈着などを引き起こし、インスリン分泌が低下する可能性がある |
過食の要因 | アルコールが中枢神経系に作用し、食欲を増進させるために過食となり、肥満を引き起こす要因となる |
年齢
年齢と糖尿病の発症リスクの関係は、以下の通りです。
インスリン抵抗性の増加 | 加齢によって、細胞のインスリンに対する反応が鈍くなる |
---|---|
インスリン分泌機能の低下 | とくに食後に上昇した血糖値をコントロールする追加分泌が低下するため、食後高血糖を引き起こす |
体重増加と肥満 | 加齢によって代謝が低下するため、体重が増加し肥満を引き起こす とくに、内臓脂肪の貯蓄はインスリン抵抗性が悪化する |
運動不足 | 社会活動性や体力の低下によって活動量が減少し、筋肉量が減量するためにブドウ糖を消費する能力が大きく低下する |
厚生労働省の「2019年(令和元年)年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は40代男性で8.1%、女性で3.1%と40代以降から増えはじめます。
このように、糖尿病は遺伝だけでなく、さまざまな環境因子が関係し発症します。
2型糖尿病は生活習慣などの環境因子の見直しによって発症を予防できる
2型糖尿病は多因子遺伝子疾患であり、発症には複数の遺伝子が関与していますが、さまざまな環境因子も深く関与しています。
乱れた生活習慣が長期間続いている場合は遺伝の有無に関わらず、環境因子だけでも2型糖尿病を発症する可能性があります。
オーストラリアのシドニー大学などは約6万人を対象に行った研究で、ウォーキングなどの運動習慣によって遺伝的リスクを打ち消し、糖尿病の発症リスクを減少できると明らかにしました。
このように、2型糖尿病の発症リスクを下げるには、食事や運動習慣などの生活習慣の見直しがとても重要です。
2型糖尿病の発症リスクを下げる生活習慣について、以下にまとめました。
栄養バランスのとれた食生活
高カロリーや高脂肪、糖分の多い食生活は、2型糖尿病の発症リスクを上昇させます。
長期間の乱れた食生活は、遺伝的リスクがない人でも2型糖尿病を発症する可能性があります。
食生活の見直しポイントは、以下の通りです。
摂取カロリー量を適正に管理する | 過剰なカロリー摂取を避け、消費カロリーと摂取カロリーのバランスを保つ |
---|---|
栄養バランスのとれた食事をする | 炭水化物やたんぱく質、脂質をバランスよく摂取する 野菜や果物、魚や鶏肉、大豆製品などから良質なたんぱく質を摂取する |
脂肪の質を意識する | バターやラードに含まれる飽和脂肪酸や加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸の摂取を控える オリーブオイル、ナッツ、アボカドに含まれる不飽和脂肪酸を適度に摂取する |
糖分の摂取量に注意する | 甘い飲み物やお菓子、加工食品に含まれる添加糖の摂取を控える |
1日に必要な推定エネルギー必要量は、以下の計算式で求められます。
1日に必要な推定エネルギー必要量 = 標準体重kg×活動量kcal
標準体重は、もっとも疾病の発症リスクが低いBMI22.0を基準とし、以下のように求められます。
標準体重kg=身長m×身長m×22
標準体重よりも体重が軽い場合は、今の体重を当てはめて計算してください。
決められたエネルギー量の範囲内で、炭水化物やタンパク質、脂質などの栄養素を過不足なく摂取するように心掛けます。
決められた1日のエネルギー量のうち、栄養素の割合は、以下になるよう意識しましょう。
- 炭水化物:50〜65%
- タンパク質:13〜20%
- 脂質:20〜30%
食品交換表を利用すると、それぞれの食品がどのような栄養素を含んでいるかが分かります。
表 | 食品分類 | 主な栄養素 | 体への働き | 特徴 |
---|---|---|---|---|
表1 | 穀類、いも類、豆類(大豆とその製品を除く) | 炭水化物:糖質 | 体温や働く力ののもとになる | 唯一、脳に使用されるエネルギー |
表2 | 果物 | ビタミン炭水化物:果糖 | 体温や働く力のもとになる | 食後すぐに血糖値に反映 |
表3 | 魚介類、肉類、卵、チーズ | タンパク質 | 血や肉、骨になる | 過剰は腎機能や尿酸値が上昇、不足は貧血になる |
表4 | 牛乳、乳製品 | カルシウム、タンパク質 | 骨になる | カルシウムが豊富 |
表5 | 油脂、多脂性食品 | 脂質 | 体温や働く力のもとになる | 少量で高エネルギー |
表6 | 野菜、キノコ、海藻 | ビタミン、ミネラル | 病気の予防、体の調子を良くする | 血糖値の上昇を抑制する |
食品が含むエネルギー量80kcalを1単位とし、表の同じ分類からだと、どの食品を摂取してもよいとなっています。
主な食品の1単位であるエネルギー量80kcalの重量は、以下の通りです。
表 | エネルギー80kcalを含む食品の重量:1単位 |
---|---|
表1 | ごはん55g、食パン½枚30g、ゆでうどん80g、ゆでそば60g、ゆで中華麺50g、コーンフレーク20g、じゃがいも110g、さつまいも60g |
表2 | いちご250g、りんご½個150g、みかん200g、バナナ100g、ぶどう150g、すいか200g |
表3 | 鶏卵50g、木綿豆腐100g、さば40g、鮭切身60g、納豆40g、鶏もも皮なし60g、鶏ささみ80g、豚肉もも60g、牛肉もも40g、ロースハム40g、車海老80g、 |
表4 | 無糖ヨーグルト120g、牛乳120g、スキムミルク20g |
表5 | バター10g、植物油10g、ドレッシング20g、ピーナッツ15g、アボカド40g、マヨネーズ10g、ベーコン20g |
表6 | 緑黄色野菜と淡色野菜の組み合わせ300g、海藻、キノコ類、こんにゃくなどは制限なし |
例)20単位の場合
- 表1炭水化物:10単位
- 表2ビタミン、炭水化物:1単位
- 表3タンパク質:4.5単位
- 表4牛乳、乳製品:1.5単位
- 表5油脂:1単位
- 表6ビタミン、ミネラル:1.2単位
- 調味料類:0.8単位
2型糖尿病の発症リスクを下げる食生活で重要なのは、栄養バランスのとれた適切量の食事です。
無理な食事制限はエネルギー不足になったり筋肉が減少してしまったりと、逆に身体に悪影響を与えるため、控えましょう。
運動習慣
2型糖尿病発症リスクの予防は、食生活の見直しと併用して運動習慣をつけると、より効果的です。
運動によって筋肉を使うと、糖や分解された脂肪酸の利用が促進され、インスリンの感受性や脂質代謝の改善などが得られます。
とくに有酸素運動を行うと、内臓の脂肪細胞が小さくなり、脂肪組織から産生されるインスリンの働きを妨害する物質の分泌も減少します。
スクワットや腕立て伏せなどの筋肉に抵抗をかけるレジスタンス運動は、筋量の増加が糖の処理能力をさらに改善させるため、血糖コントロールに有効です。
具体的な運動種目を、有酸素運動とレジスタンス運動に分けてまとめました。
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳などのできるだけ大きな筋を使用する運動
- レジスタンス運動:腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどのおもりや抵抗負荷に対して動作を行う運動
水中運動は有酸素運動およびレジスタンス運動の両方が行える運動種目であり、とくに2型糖尿病の発症予防に有効です。
さらに膝への負担が少ないため、肥満の人にも安全であり効果的といえます。
高齢者の場合は、バランス能力を向上させるバランス運動も有用といわれています。
具体的なバランス運動は、以下の通りです。
- 片足立位保持
- ステップ練習
- 体幹バランス運動
自身の身体機能や年齢に応じて、無理なく続けられる運動を取り入れましょう。
運動の強度は、有酸素運動では中等度の強度が推奨されています。
中等度の強度とは、運動時の心拍が以下の状態です。
- 50歳未満:100~120拍/分
- 50歳以降:100拍/分以内
心拍数を指標にできない場合は自覚的運動強度を目安とし、ややきつい状態、または楽である状態で運動します。
心臓疾患がある場合は自己判断せず、医師に運動実施の許可や、運動強度の指示をもらう必要があります。
運動をする時間は、糖質と脂肪酸を効率よく代謝するためには、20分以上の持続が望ましいです。
有酸素運動では、中等度の運動強度で週に150分かそれ以上、週3回以上の実施が推奨されています。
歩行運動の場合は1回につき15~30分間、1日2回、1日の運動量として約10,000歩が適当です。
レジスタンス運動では、連続しない日程で週に2〜3回の実施が勧められています。
食事と同じく、無理な運動は身体に負担がかかり継続できません。
運動を継続するためのポイントは、以下の通りです。
- 自分に合った活動を見つける
- 家族や友人と一緒に行う
- 適度な強度の運動で楽しみながら行う
さらに日常生活でエレベーターの代わりに階段を使ったり、車ではなく徒歩や自転車を利用したりするのも良いでしょう。
ストレス管理
過剰なストレス状態が長期間続くと身体のホルモンバランスが崩れ、食生活などの生活習慣に悪影響が及び2型糖尿病の発症リスクが高まります。
ストレスの管理方法のポイントを、以下にまとめました。
- ストレス原因の特定:何が自分のストレスの原因となっているかを認識すると対策が明確化する
- リラクゼーション法の活用:瞑想や深呼吸、ヨガなどのリラクゼーション法はストレスを軽減し、コルチゾールの分泌を低下させる
- 定期的な運動:運動はストレスホルモンの分泌を低下させ、幸福感をもたらすホルモンの分泌を促進させる
- バランスのとれた食事:栄養バランスのとれた食事は血糖値の乱降下を予防し、気分を安定させる
- 睡眠の質を向上:質の良い十分な睡眠を確保すると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が低下する
- 信頼できる家族や友人との時間をつくる:家族や友人とのコミュニケーションやサポートはストレスを軽減し、精神的な安定をもたらす助けになる
ストレスを完全に無くすのは難しいですが、適切な管理方法によって影響を最小限に抑えられます。
良質な睡眠
さまざまな研究によって、睡眠不足は2型糖尿病の発症リスクを高めると明らかにされています。
良質な睡眠の確保は、2型糖尿病発症予防に重要です。
良質な睡眠を確保するための主な方法を、以下にまとめました。
- 規則正しい生活リズム:毎日同じ時間に寝たり起きたりする習慣をつけ、体内時計を整える
- 適度な運動:運動は睡眠の質を向上させ、ストレスを軽減する
- 寝る前にリラックスできる時間を設ける:就寝前に読書やストレッチ、深呼吸などのリラックスできる活動を取り入れる
- 睡眠環境の改善:暗く静かな環境、適切な温度と快適な寝具を用意する
成人の場合、7〜9時間の睡眠が推奨されています。
規則正しい睡眠パターンを維持し、ホルモンバランスを整え、2型糖尿病の発症を予防しましょう。
禁煙と適切な飲酒
喫煙習慣は2型糖尿病を発症した後も、合併症の発症リスクを大幅に高めます。
2型糖尿病を発症するリスクが高まるのは喫煙者だけでなく、受動喫煙にさらされている人も同様です。
禁煙は自力で達成するのは難しい場合が多く、禁煙外来などの専門的サポートを受けると成功する可能性が高まります。
禁煙外来とは、医療機関による禁煙を目指すための専門外来のことです。
禁煙外来では、専門のスタッフが禁煙指導や禁煙補助薬による治療を行います。
2006年4月からは禁煙治療に、健康保険が使えるようになりました。
一定の条件を満たしていると、健康保険が適用となります。
禁煙をしたくてもどうしたらいいかわからない、一度挑戦したが失敗したという人は、ぜひ禁煙外来などの医療サービスを積極的に利用してください。
適正飲酒量とは、1日あたり純アルコール量20g程度の飲酒のことです。
純アルコール量20g程度を一般的なアルコール飲料に換算し、以下にまとめました。
- ビール(アルコール度数5%):約500ml(ロング缶1本、中瓶1本)
- ワイン(アルコール度数12%):約200ml(ワイングラス2杯弱)
- 日本酒(アルコール度数15%):約180ml(1合)
- 焼酎(アルコール度数25%):約100ml
- ウイスキー(アルコール度数40%):約60
2型糖尿病の発症を予防するためには、飲酒量に加えて、飲酒方法も重要となります。
適切な飲酒方法は、以下の通りです。
- 空腹時に飲まない:とくに血糖降下薬やインスリンで糖尿病の治療をしている場合、アルコールと相互作用し、低血糖を引き起こす可能性が高くなる
- ゆっくり食事と一緒に:飲み過ぎや低血糖予防となる
- 休肝日を設ける:休肝日を設けると、肝臓はアルコールの代謝から一時的に解放され、正常な機能の維持や回復する時間を得られる
- 強いお酒は薄めて飲む:強いお酒を水や炭酸水で薄めると、実際のアルコール摂取量が少なくなり、肝臓への負担や血糖値の乱高下を抑えられる
過剰飲酒は2型糖尿病だけでなく、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。
しかし適量で適切な飲み方を守ると、病気のリスクを抑えつつ友人や家族と楽しい時間を過ごす手段にもなります。
アルコールは適度に楽しむよう心がけましょう。
定期的に健康診断を受ける
2型糖尿病予防において、定期的な健康診断の受診は非常に重要です。
2型糖尿病は初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまいます。
定期的な健康診断によって、早期発見や適切な生活習慣の見直しが可能になり、2型糖尿病発症の予防につながります。
遺伝リスクが高くても生活習慣の見直しで2型糖尿病の発症は予防できる
2型糖尿病は多因子遺伝子疾患であり、多数の原因遺伝子と環境因子が相互作用して発症する病気です。
家族に2型糖尿病の人がいる場合、同じく糖尿病を発症するリスクは高くなります。
2型糖尿病を予防するためには、まずは食生活の見直しが重要です。
糖質や脂質を多りすぎないようにし、バランスのとれた食事をしてください。
さらに肥満にならないよう適度に運動を行い、良質な睡眠を心がけて、ストレスをためないようにします。
2型糖尿病は初期では自覚症状がほとんどないため、定期的に健康診断を受けるのも2型糖尿病の予防に重要です。
家族に2型糖尿病の人がいて遺伝リスクが高い場合はとくに、生活習慣を見直し、発症の予防に努めていきましょう。