血糖値が高いと、身体にさまざまな悪影響が及んでしまいます。
場合によっては、糖尿病に発展してしまい、さまざまな合併症を引き起こしてしまう可能性があります。
健診などで血糖値が高いとの診断結果が出た場合には、値を下げるように適切な対処をするのが大切です。
今回は、血糖値とはそもそもどのようなもので、どの程度の水準が高いと判断されるのか解説します。
血糖値が高くなる原因や現れる症状、値を下げるための対処方法などについても紹介します。
- 血糖値とは血液中の糖質濃度のこと
- 血糖値が高くなる原因はインスリンの働きの低下などさまざまある
- 血糖値が高くなると喉が無性に乾くなどあらゆる症状が起こる
- 血糖値を下げるためには食事療法や運動療法などが必要
今回の記事を参考にして、血糖値が高くなる原因について理解し、適切な対処方法を身に着けてください。
血糖値とは血液中に含有されているブドウ糖濃度の数値を指す
人間の身体の健康状態を測るうえで重要な指標と考えられており、各種検査で計測されます。
人間は、活動するためのエネルギーを得るために炭水化物を食物から摂取します。
炭水化物に含まれる糖分は、身体の中で消化されてブドウ糖になり、血液を通して身体の各部に送られてエネルギーとして消費される成分です。
従って、健康な人でも食事の後には血糖値が上昇します。
血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、身体の各細胞へのエネルギー吸収が促進されます。
何らかの原因でインスリンの分泌が少なかったり、インスリンの働きが不十分であったりする場合には、血糖値が下がりません。
血糖値の測定は、血糖の調整機能を持つインスリンの働きが正常であるかを確認する意味を持ちます。
空腹時血糖値と食後血糖値を区別して理解する必要がある
血糖値を診断する場合は、空腹時血糖値と食後血糖値を区別して判断する必要があります。
空腹時血糖値とは、直前の食事から10時間以上経過して測って得られる血糖値のことです。
朝起きてから食事をせずに検査に臨むのが一般的で、平常時の血糖値を確認できます。
一方、食後血糖値は食事をした後の血糖値の変動を確認する検査です。
食後血糖値の検査には、空腹の状態でブドウ糖液を飲み、血糖値の変動を調べる方法などがあります。
一般的に、糖尿病などのリスクを判断する際には空腹時血糖値を基準にします。
血糖値は空腹時血糖値を基準にして3つに分類される
血糖値の検査においては、空腹時血糖値の結果で、糖尿病リスクを以下の3つに分類します。
- 正常値:109mg/dl以下
- 境界型:110~125mg/dl
- 糖尿病型:126mg/dl以上
糖尿病型の水準であった場合は、糖尿病の可能性が疑われるため、早急な検査及び治療を開始する必要があります。
境界型は糖尿病予備群といわれる水準で、さらに詳しい検査を実施する場合が多いです。
空腹時血糖の測定は、糖尿病かどうかの判断をするための有効な検査の1つです。
血糖値が高くなるのはさまざまな原因がありそれぞれ影響しあっている
血糖値が高い状態になるのには、さまざまな原因があると考えられています。
高血糖であると診断された場合、何らかの対処が必要ですが、最初にその原因を正確に特定しなければいけません。
血糖値が高くなるのは、複数の要因が伴っている場合も多いです。
以下に、血糖値を高める主な要因を5例紹介します。
- インスリンの分泌不足や働きの低下
- 日々の生活におけるストレス
- 肥満
- 運動不足
- 食習慣の乱れ
生活習慣の見直しで改善できるものがほとんどですが、体質的な要因が影響している場合もあります。
インスリンの分泌不足や働きが低下する
インスリンの分泌不足や働きの低下は、高血糖を引き起こす原因の1つです。
前述のとおり、インスリンは血中糖度が増えると分泌され、細胞への糖質吸収を促進して血糖値を下げる働きがあります。
しかし、血糖値が上昇しても十分なインスリンが分泌されない場合や、分泌されたインスリンが十分な働きをしない場合は高い水準の血糖値が維持されてしまいます。
体質の問題でインスリン異常がみられる人は、注射によるインスリン投与など、医療的な措置が不可欠です。
一方、生活習慣の乱れなどにより後天的にインスリン異常がみられる場合もあります。
インスリン異常は、糖尿病のリスクが高いため、早期に対処して重症化を防ぐ必要があります。
日々の生活におけるストレスが起因となる
普段の生活で受けるストレスが原因となって、血糖値が高くなってしまう場合があります。
ストレスを受けると、交感神経が刺激されて以下の物質の分泌が促進されます。
- グルカゴン
- アドレナリン
- 甲状腺ホルモン
- コルチゾール
上述の物質は、いずれも血糖値を高める作用があると考えられており、高血糖の原因となり得る要素です。
現代の生活において、ストレスを完全に回避するのは難しいでしょう。
勤務先での不満や家庭生活での人間関係など、ストレスを感じる要素は現在の日常生活においては無数にあります。
肥満が原因になる場合も
肥満も、血糖値が高くなる原因の1つです。
肥満になるとインスリンの働きが低下してしまうため、膵臓は健康な状態よりも多くのインスリンを分泌しようとします。
多くのインスリンを分泌し続けると、膵臓に多大な負荷がかかってしまい、分泌機能が衰えて十分なホルモンが分泌されなくなってしまいます。
膵臓の働きが低下している状態を放置していると、高血糖が継続してしまい、ひいては糖尿病に発展してしまう可能性が高いです。
肥満体型の人は、糖尿病などの高血糖が原因で罹患するケースが多いため、適切な対処が必要になります。
運動不足は血糖を高める要因
運動不足も、血糖値を高める要因の1つです。
日常的に運動をしないと、インスリンの感受性が悪くなると考えられています。
さらに、運動不足により筋肉量が減少して、糖が効率よく代謝されなくなる点も血糖値を高める要因です。
先述の通り、肥満が血糖値を高める要因になるため、運動不足により肥満体型につながり高血糖になってしまう可能性もあります。
基礎代謝は、年齢とともに低下します。
若い頃よりも血液中の糖類の代謝効率が落ちるのは避けられないため、さらに運動不足によりエネルギー消費量が落ちると、血糖値が高くなる場合が多いでしょう。
食習慣の乱れも影響が大きい
食習慣の乱れも、血糖値を高くしてしまう要因になります。
栄養バランスの良い食事を継続していると、高血糖のリスクは軽減できます。
しかし、間食が多かったりアルコール摂取量が多かったりすると、血糖値を高めてしまう場合が多いです。
特に、空腹時血糖値が高いと診断された場合には、積極的に食習慣を改善する必要があります。
献立を考える際は、野菜やタンパク質を中心にしたメニューを心がける方がよいです。
食事は血糖値に大きな影響を及ぼすため、十分に配慮が必要になります。
血糖値が高くなると通常では現れないさまざまな症状を引き起こす
血糖値が高くなると、さまざまな症状が現れます。
少し気になる程度の異常で済む場合もあれば、通常の生活が送れないほど支障を来してしまう場合もあります。
症状が出てきた時には、糖尿病になっている可能性もあるため、高血糖であるとわかった段階で早めの対処をするのがよいでしょう。
血糖値が高くなると現れる症状のうち、主なものを以下に5例紹介します。
- 喉が渇く
- 体重が減る
- 疲れやすくなる
- 尿量が増える
- 糖尿病に発展する
複数の症状が並行して発生する場合も多いため、身体の異常を少しでも感じた場合は医療機関に相談するなど、早めの対処が大切です。
喉が渇く
血糖値が高い状態が続くと、普段以上に喉が渇いている感覚を覚える場合があります。
高血糖の状態になると、腎臓に影響が及び尿の量が増えます。
普段よりも排尿の量が増えて体内の水分が減少し、脱水症状につながるケースが多いです。
これまで通りの生活をしているにも関わらず、喉や口の渇きを感じるようになった場合は、糖尿病など血糖に関連する問題が体内で起こっている可能性があります。
放置せずに、早めに医療機関へ相談に行きましょう。
早めに対処すると、病気に罹患する前に改善できる可能性が高くなります。
体重が減る
高血糖が続くと、体重が減少する人がいます。
血糖値が高い状態は、肥満につながると連想する人も多いでしょう。
しかし、インスリンの働きや体質によっては体重が減少する人もいます。
本来、血中の糖質が増えると膵臓からインスリンが分泌されて、エネルギーとして体内に糖質が吸収されます。
多くの糖質を吸収すると、脂肪に変化して太るのが一般的です。
普段通りの生活をしているにも関わらず体重が減る要因は、高血糖以外にもさまざま考えられるため、早めに医療機関に相談に行くとよいでしょう。
疲れやすくなる
血糖値が高くなると、普段から疲れやすくなり、何もしなくても疲労感を覚える場合があります。
高血糖の状態が続くと、インスリンの分泌が十分に行われず、正常な働きが得られません。
インスリンの働きの不足により、血中の糖質をうまく吸収できず、活動するために必要なエネルギーが不足してしまいます。
食事で摂った栄養素をうまく利用できていない状態が続き、疲労感が抜けなくなってしまいます。
生活スタイルを変えていないにも関わらず常に疲れを感じる場合は、血糖値が高くなった可能性を疑い、医療機関に相談に行くとよいでしょう。
尿量が増える
血糖値が高い状態が続くと、排尿の量が増える場合が多いです。
高血糖状態になると、血中の糖分を排泄しようと身体が働き、尿の量が増えます。
前述のとおり、尿量の増加により脱水症状に陥ったり、喉の渇きを感じるケースが増えたりします。
尿量だけでなく頻度も増え、睡眠中も尿意で何度も起きてしまう場合が多いです。
夜間の頻尿は不眠につながる可能性が高く、さらに健康を阻害してしまう要因になります。
普段よりもトイレに行きたくなる回数が増えたと感じる人は、高血糖の可能性を疑って、医療機関等に相談に行くとよいでしょう。
糖尿病に発展する
血糖値が高い状態が継続すると、糖尿病に発展する可能性が高いです。
糖尿病になると、前述の症状に加え、さまざまな合併症を引き起こしてしまいます。
代表的な合併症には、以下のようなものが挙げられます。
- 糖尿病網膜症:網膜の血管に障害が起こり場合によっては失明する
- 糖尿病腎症:腎臓の血液浄化作用が損なわれる
- 糖尿病神経障害:しびれや下痢および便秘などさまざまな症状が全身で発生する
他にも、動脈硬化や感染症の発症なども多くみられる合併症です。
糖尿病になると人工透析やインスリン投与など長期間に及ぶ治療が必要になるため、生活上の大きな阻害要因になります。
糖尿病に罹患する前に高血糖の状態を早急に改善し、病気にならないように対処しましょう。
血糖値が高い時には各種検査を実施して身体の状態を正確に確認する
糖尿病の検査は、初めに血糖値を測定します。
さらに、より高い精度を確保するために他の検査も合わせて実施するケースが多いです。
血糖値のみで糖尿病かどうか判断するのは、正確性に欠けると考えられています。
血糖値に異常が見られた場合、追加で別の検査をして複合的な判断をする流れが一般的です。
血糖値の測定以外の検査方法として、主なものを以下に3例紹介します。
- 月単位の血糖の状態を評価するヘモグロビンA1c
- インスリンの確認を行うHOMAやCペプチド
- 腎臓の働きなどを検査する尿糖および尿蛋白
それぞれの検査の特徴を理解し、実施する検査結果を正確に判断できるようにしましょう。
月単位の血糖の状態を評価するヘモグロビンA1c
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、血中の糖化ヘモグロビンの濃度を表す数値です。
ヘモグロビンA1cは、1~2ヶ月単位の血液の状態が反映される数値であるため、当日の食事や運動など短期間の血糖値変動の影響を受けません。
ヘモグロビンA1cの値により、血糖の状態を以下のように判別できます。
- 正常値:5.9%以下
- 境界型:6.0~6.4%
- 糖尿病型:6.5%以上
ヘモグロビンA1cの測定により、血糖値の異常を裏付ける結果が得られた場合には、糖尿病の疑いがさらに確実であると判断されます。
インスリンの確認を行うHOMAやCペプチド
インスリンは、血糖値の調整機能を持つため、高血糖が検出された場合には十分な働きが得られていないと判断されます。
HOMAは、空腹時の血糖値とインスリン値をもとに、残っているインスリン分泌能を測定する方法です。
Cペプチドは、インスリンが膵臓で合成される際にできる副産物で、インスリン分泌と同量が生成されると考えられています。
血糖値と密接な関係にあるインスリンの状況を検査して、糖尿病の可能性を検証します。
腎臓の働きなどを検査する尿糖および尿蛋白
尿糖や尿蛋白の検査により、腎臓の働きを確認する場合も多いです。
尿糖と尿蛋白は、ともに尿を摂取して検査します。
尿検査は腎臓の機能を調べたい場合に有効な検査方法で、特に尿蛋白の結果は自覚症状の少ない腎臓の異常を発見できる有効な手段と考えられています。
尿蛋白が陽性で、かつ尿蛋白の量が多い場合は糖尿病だけでなく重大な疾患や症状を疑った方が良いです。
尿検査はさまざまな健診で実施されるため、併せて尿蛋白や尿糖などの検査結果を検証する機会も多くなります。
高い血糖値を下げるためにご自身に合った適切な対処をしよう
血糖値が高いと判断された場合には、何らかの対処をして数値を下げるのが大切です。
早めに対処する方が症状が重篤化しないため、高血糖が見つかった場合には早急な対応が求められます。
医療機関での治療を受ける前に、ご自身の生活習慣の見直しにより改善する可能性があるため、日々の生活において出来るところから対応しましょう。
高い血糖値を下げるために実施したい対処方法を、以下に3点紹介します。
- 食事療法
- 運動療法
- 医療機関での治療
今回紹介する対処方法のうち、食事療法と運動療法は、血糖値が高いと診断される前から予防として取り組むのがよいでしょう。
食事療法を採用する
血糖値を下げるためには、食事療法が欠かせません。
食事療法は高血糖や糖尿病対策において基本であり、最重要な方法の1つです。
食事療法の実施において、重視したい点を以下に2つ紹介します。
- 摂取する栄養素に配慮する
- 食べる順番を見直す
血糖値の高い状態を改善するためには、糖質の摂取を控えるのが不可欠です。
白米やパンの代わりに、肉や魚などタンパク質を含む食品を多めに食べてエネルギー源にするとよいでしょう。
血糖値を改善するためには、食べる食材の順番を変えるのも効果があります。
最初に食物繊維が多く含まれている野菜類を食べて、次に水分の多い汁物を食べます。
続いて肉や魚などのタンパク質を摂取し、最後にご飯やめん類などの主食を食べるのが効果的です。
食事療法は、紹介した内容以外にもさまざまな対処方法があるため、専門医と相談しながらご自身に最適な方法を採用しましょう。
運動療法を取り入れる
運動療法も、食事療法とともに実施したい対策です。
運動療法の実施により、エネルギーを消費して血中の糖質の吸収を促進したり、肥満を防止して血糖値の上昇を抑えたりする効果が期待できます。
運動療法といっても激しい運動をする必要はなく、無理のない範囲で継続するのが大切です。
血糖値を下げる運動としては、有酸素運動が適しています。
比較的簡単に始められるウォーキングも有酸素運動の1つであるため、最初に試してみるとよいでしょう。
筋力トレーニングも、血糖値の改善に効果があると考えられています。
筋肉を強化すると基礎代謝の上昇が期待でき、効率の良いエネルギー代謝につながります。
専門医と相談しながら、無理のない範囲で継続できる運動を取り入れて血糖値の改善を目指すのが大切です。
症状によっては医療機関で治療を受ける
症状の進行度合いによっては、医療機関で専門的な治療を受ける必要があります。
糖尿病になってしまっては、食事療法や運動療法を行っても根本的な解決は難しいです。
糖尿病になった場合は、注射などによるインスリン投与や人工透析が必要になります。
糖尿病を治療せずに放置すると、さまざまな合併症を引き起こしてしまい、重度の疾患を招いてしまうかもしれません。
血糖値が高いと診断された段階で、早めに対処し糖尿病にかからないようにするのが肝要です。
血糖値が高い原因を正確に理解し適切に対処して健康な身体を維持しよう
血糖値とは、血液中の糖質の濃度を数値で表したものです。
血糖値の検査は、空腹時血糖値と食後血糖値を組み合わせて判断します。
血糖値が高い状態になる原因は、さまざまなものがあると考えられています。
血糖を下げる効果を持つインスリンの働きの低下だけでなく、肥満や運動不足、乱れた食生活やストレスなどが代表的な要因です。
血糖値が高くなると、無性に喉が渇いたり、疲れやすくなったりとさまざまな症状がみられます。
血糖値が高いと判断された場合は、ヘモグロビンA1cや尿蛋白など他の検査を組み合わせて実施し、糖尿病の可能性を検証するのが一般的です。
高くなってしまった血糖値を下げるためには、食事療法や運動療法が有効とされています。
すでに糖尿病に罹患しているなど、症状の進行によっては、早急に医療機関で治療を受ける必要があります。