HbA1cを下げるには食後の運動を毎日継続すると効果的である

食後の運動でHbA1cを下げる。毎日継続すると効果的

HbA1cは主に糖尿病の血液検査で用いられる数値であり、基準値より高くなると糖尿病の疑いが出てきます。

HbA1cの数値を下げる方法の1つとして、毎日の運動は一定の効果を得られます。

この記事では、HbA1cを下げる運動について、その方法や効果などをまとめました。

この記事でわかること
  • HbA1cと運動の関係性
  • 具体的な運動方法と効果
  • 運動と併せて意識したい食事の改善方法

糖尿病対策も含めて健康のために運動を取り入れようと思っている人は、参考にしてください。

目次

HbA1cは食生活の乱れや運動不足によって数値が高くなる

糖尿病の判断材料材料となる数値

HbA1cは赤血球に含まれるヘモグロビンに、ブトウ糖がどの程度結合しているか示す数値です。

高血糖や糖尿病の人は摂取した糖質を消費しきれない状態になっていて、体内に余ったブトウによりHbA1cは高くなります。

そのため、HbA1cの数値は、高血糖や糖尿病の検査で状態を把握する判断材料として使われています。

食生活や運動が数値に反映される

HbA1cが高くなる主な原因は、以下のとおりです。

  • 糖質の過剰摂取
  • 肥満やストレスなどが原因で血糖値を下げるインスリンの働きが弱まる
  • 運動不足によって摂取した糖質や脂質をエネルギーとして消費しきれない

上記のように食生活や運動に問題があると、血糖値やHbA1cが高い状態が慢性的に続いて、糖尿病に発展する可能性もあります。

反対に食生活や運動を適切に行った場合は、血糖値やHbA1cの低下につながり、高血糖や糖尿病を改善できます。

今回は運動に焦点を当てて、HbA1c数値及び高血糖などの改善につながる具体的な例を見ていきましょう。

定期的な食後の運動はHbA1cを下げる効果が十分期待できる

定期的な食後の運動。運動が有効な理由

HbA1cを下げるのに運動が有効な理由は、以下のとおりです。

食後に運動するとHbA1cに効果的
  • 運動で糖質や脂質をエネルギーとして消費して、血糖値の上昇や肥満を防ぐ
  • 運動によるホルモンの活性化から、インスリンの働きも高められる
  • 運動で筋肉がついた場合、基礎代謝の向上から運動時以外もエネルギーの消費効率が上がる

筋肉がつき始めるまでは時間がかかりますが、エネルギー消費量の増加やインスリンへの効果は一定期間の継続で発揮されます。

HbA1cに対しては、糖質などの栄養素を摂取した食後に運動を行うのが効果的であると言われています。

HbA1cを下げるための運動は有酸素運動や筋トレが適している

有酸素運動や筋トレが効果的

HbA1cを下げるための運動に適しているのは、有酸素運動です。

名前のとおり酸素を取り入れながら行う運動であり、以下のような運動が該当します。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳

糖尿病治療における運動療法でも有酸素運動は取り入れられていて、中でもウォーキングは運動の基本です。

サイクリングや水泳のように道具が必要なく、ジョギングよりも負荷が少ない点から運動習慣がない人でも無理なく始められます。

運動習慣がある人については、基礎代謝をより向上させるために、筋トレを取り入れるのもよいでしょう。

筋トレにはさまざまな種類がありますが、HbA1cを下げるための運動に適しているのは、レジスタンス運動です。

筋肉へ繰り返し負荷をかけていくトレーニングであり、以下のような運動が該当します。

  • スクワット
  • 腕立て伏せ
  • ダンベル体操(ダンベルを上げ下げする動き)

上記は10~15回程度の繰り返しを数セット単位で行う場合が多いですが、個人で体力は異なるため、無理のない範囲で行うのが推奨されます。

一方で、筋トレの中でもバーベルの上げ下げのように一瞬だけ力を入れるトレーニングは、無酸素運動に該当します。

トレーニングメニューに組み込むのは自由ですが、HbA1cを下げる点では効果が薄い運動です。

有酸素運動や筋トレには得意不得意もあるため、自分が快適に続けられる運動方法を選んでください。

HbA1cを下げる運動は短い時間でも習慣化するのが効果的である

短時間でも持続的な運動が効果的

HbA1cを下げる運動を行う時間や回数は、以下の内容に沿うとよいでしょう。

  • 基準として、毎日の食後に15分間のウォーキングを行うのが効果的とされる
  • アメリカの研究では活発な運動は午後に行うと、より血糖値が低下する結果が出ている
  • 食後の2~5分の軽い運動でも1日の中で頻繁に行うと、糖尿病リスクが減る

以前は食後15分間のウォーキングを毎日継続させなければ、高血糖や糖尿病の対策の効果が得られないとされてきました。

しかし、近年の研究結果では短時間の軽い運動でも、1日の中で細切れに繰り返し行うと、効果を得られると判明しています。

そのため、仕事や家事で忙しいときでも、数分間の運動時間の確保によってHbA1cを下げる効果が期待できます。

運動する時間と同じくらい重要なのは、毎日継続させる点です。

食事で毎日栄養素を摂取するため、糖質や脂質を消費する運動も基本的には毎日行う必要があります。

1日にまとめて長時間運動するよりも、毎日数分間の運動を継続できるように運動の種類と時間を決めてみてください。

運動と併せて食事の内容も改善してHbA1cの上昇を防ぐ

食事の内容も併せて改善。HbA1cの上昇を防ぐ

毎日の運動を継続しても、食事量の多さや栄養バランスの偏りがあると、HbA1cを下げられない可能性が高くなります。

食事で摂取する栄養素は、以下の点を意識するとよいでしょう。

摂取量や栄養素、順番に気を付ける
  • 血糖値の上昇につながる糖質や脂質の摂取量は必要最低限にして、過剰摂取を防ぐ
  • 血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維を多めに摂取する
  • 食物繊維、タンパク質、糖質の順に食べると食物繊維の効果を発揮させられる

血糖値は急上昇させると身体への負荷が大きくなるため、摂取量と同時に一気に食べ過ぎるのも警戒しなければいけません。

食物繊維を最初に摂取しておくと、食物繊維を消化するまでに時間がかかるため、後から摂取した糖質で血糖値が急上昇するのを防げます。

食事は間食を活用しながら時間帯や食間を調整するとよい

時間帯と食間を意識して食事を摂る

運動でHbA1cを下げるのに適した時間があるように、食事をする時間帯もHbA1cに影響があります。

  • 毎日決まった時間帯に食べて、食事ごとに4~5時間の食間を空けるとよい
  • 6時間以上の食間が空く場合は、適度に間食を入れると食べ過ぎを防げる
  • 就寝時はエネルギー消費が少ないため、就寝より3時間前に食事を済ませる

食間が長く空いた場合、次の食事で食べる量が極端に増えて、糖質などの過剰摂取になる可能性が高くなります。

特に日中に働いている人は仕事終わりの夕食が、疲れやストレスから食べ過ぎてしまう時間帯です。

そのため、食間が長く空き過ぎるときは、適度な間食を取った方が血糖値の上昇対策になります。

ただし、間食の取りすぎも血糖値を上昇させるため、なるべく糖質や脂質の少ない食品を選ばなければいけません。

上記はあくまで理想的な時間であるため、夜勤などの勤務形態によっては食間や就寝前の食事を調整するのが難しい人もいるでしょう。

時間帯を意識しすぎてストレスを感じるのもよくないため、食事についても自分が調整できる範囲で実践してください。

HbA1cを下げるために毎日の適度な運動と食生活の改善を心がける

HbA1cは食事や運動不足の影響から数値が高くなるため、運動や食生活の改善から対策する必要があります。

運動は有酸素運動や継続的に身体を動かす筋トレが適していて、毎日2分程度の運動を細切れで行うだけでも一定の効果が得られます。

食後15分程度のウォーキングを基準にして、運動習慣がなかった人は少しずつでも毎日の運動を始めてみましょう。

一方で、運動による糖質の消費やインスリンの働きを高めても、食事量や栄養素の偏りがあると運動の効果を十分発揮できません。

運動とともに栄養素の摂取量や食べる時間帯も意識して、HbA1cを下げられる生活を目指してみてください。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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