糖質制限の目安は目的によって異なり無理のない継続が重要

糖質制限の目安。目的によって異なり継続するのが重要

糖質制限は、食事に含まれる糖質の摂取量を抑えるため、血糖値コントロールやダイエットに役立ちます。

しかし、間違った方法で糖質制限を行った場合、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

糖質の取りすぎは体に負担をかけますが、大切な栄養素でもあるため、正しい知識で糖質制限を行うのが大切です。

この記事でわかること
  • 糖尿病予防や体重管理につながる理由
  • 3種類の糖質制限
  • 糖質を多く含む食品や調味料
  • 継続する方法
  • 間違った糖質制限が体に与える影響

糖質制限を正しい知識を持って実践すると、血糖値コントロールやダイエットにつながるため、無理のない範囲で食生活に取り入れましょう。

目次

糖質制限は血糖値を安定させるため糖尿病予防や体重管理に役立つ

糖質制限は血糖値を安定させる。糖尿病予防や体重管理に役立つ

糖質制限は、1日の糖質摂取量を減らすため血糖値の急上昇や脂肪の蓄積を防ぎ、血糖値コントロールやダイエットに有効な食事法です。

糖質は体を動かしたり物事を考えたりする上で欠かせない栄養素であり、体内で消化吸収されてブドウ糖に形を変え、体や脳の組織に運ばれてエネルギーとして利用されます。

ご飯やパンなど炭水化物に多く含まれ、タンパク質と脂質とともに三大栄養素の一つです。

1日の糖質摂取量については明確な基準がありませんが、炭水化物としてはエネルギー摂取量のうち50〜65%の摂取が推奨されています。

例えば30〜49歳の女性では1日に必要なエネルギー量は2,050kcalであり、炭水化物は1gあたり4kcalのエネルギーであるため、摂取量の目安は256〜333gです。

炭水化物は糖質と食物繊維からなり、そのほとんどが糖質であるため、炭水化物の摂取量が糖質摂取量の目安とされています。

糖質を摂取するとその直後より体内で消化吸収されて血液中のブドウ糖の量を増やし、血糖値を上げますが、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって血糖値を下げます。

血糖値とは、どのくらいの量のブドウ糖が血液中にあるかを示した数値のことです。

過剰な糖質摂取や暴飲暴食をすると食後の血糖値が急上昇し、その後インスリンの分泌が促進されて、血糖値が急激に低下します。

血糖値の乱高下を起こすような食生活を続けた場合、血糖値コントロールが困難となり、糖尿病や動脈硬化などの疾患を招くでしょう。

糖質制限は、糖質の摂取量を適切に抑えて血糖値の乱高下を防ぐ食事法であるため、このような病気の発症を予防するのに役立ちます。

糖質の摂取量を減らすと脂肪燃焼の促進や食後空腹感の軽減につながる

糖質の摂取量を減らすと血糖値が安定してインスリンの過剰分泌が抑制されるため、体脂肪の燃焼が促進され、体重減少につながります。

インスリンは、糖質を摂取すると膵臓から分泌され、血糖値を下げるホルモンです。

さらに、エネルギーとして使用されなかったブドウ糖を肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯蔵したり、中性脂肪を合成したりする作用があります。

そのため、糖質摂取量が多い場合は血糖値が急上昇してインスリンが過剰分泌され、肥満やメタボリックシンドロームを招く危険性が高まるでしょう。

一方で、糖質の摂取量を減らすとインスリンの分泌量も減少するため、中性脂肪への合成が抑制され不足したブドウ糖の代わりに脂肪をエネルギー源として利用します。

これにより、脂肪の燃焼が進んで体重が減少し、体重管理につながります。

加えて糖質の過剰摂取による食後血糖値の乱高下は、脳がエネルギーが足りないと錯覚させるため、食後に空腹感を感じさせる一因です。

糖質制限は食後の血糖値乱高下を防いで効率よくエネルギーを使うため、エネルギー不足であるという錯覚が起こらず、空腹感は軽減します。

このように糖質制限は、脂肪燃焼の促進や食欲のコントロールに役立ち、生活習慣病の予防や体重管理に効果があります。

糖質制限には3種類あり目的によって糖質摂取量に違いがある

糖質制限は3種類。目的によって摂取量に違いがある

糖質制限は、糖質を全く取らないのではなく、目的によって摂取量を決めて実践する食事法です。

しかし、以下のような人は糖質制限には向いていません。

  • 低栄養や痩せている人
  • 高齢者
  • 成長期の子供
  • 運動をする人
  • 病気がある人
  • 妊婦

これに加えて、糖尿病の人も治療に影響を与える可能性があるため、医師の指示に従って食事療法を行う必要があります。

一方、血糖値管理が必要な人や肥満の人は目的に応じて以下のような糖質制限を実践すると、血糖値コントロールや体重管理に有効です。

種類1日の糖質摂取量目安
スーパー糖質制限20〜60g
スタンダード糖質制限70〜100g
プチ糖質制限110〜130g

スーパー糖質制限は、1日の糖質摂取量目安を20〜60gに制限した食事法で、短期間で痩せたい人や生活習慣病を予防したい人向けです。

この食事法は、脂肪を分解して産生されるケトン体をエネルギー源として利用するため、糖質を減らす代わりに脂質の摂取量を重視します。

そのため、良質な脂質の摂取を心がけ、空腹時の間食ではナッツやチーズなどを取り入れる工夫が大切です。

短期間に効果が現れるものの、急激に元の食生活に戻すとリバウンドを起こす場合があり、制限後は脂質を控えて摂取エネルギーに気をつける必要があります。

スタンダード糖質制限は、夕食と朝か昼の食事から糖質を2食分抜く食事法で、無理なダイエットをしたくない人や外食が多い人向けです。

プチ糖質制限では1食あたりの糖質摂取量を20〜40g、間食として10g摂取する食事法であり、過度な糖質制限が気になる人や初心者が行うのに適しています。

主食の量を減らしたり低糖質のものに置き換えたりと過度な糖質制限ではないため、負担を感じずに始められ、長期間かけて血糖値コントロールや体重の管理をします。

目的によって糖質摂取量は違いますが、最初からスーパー糖質制限からはじめるのではなく、徐々に糖質を減らして様子を見ながら制限していくのが望ましいでしょう。

糖質を多く含むものは食品だけでなく調味料にも存在する

糖質制限では炭水化物の摂取量を減らしますが、炭水化物には糖質だけでなく、食物繊維も含まれています。

炭水化物を極端に制限すると食物繊維の量も減少し、便秘を招く可能性もあるため、糖質制限を行う際は低糖質で食物繊維が豊富に含まれる低GI食品を摂取するのが望ましいです。

低GI食品とは、摂取しても血糖値を緩やかに上昇させる食品のことであり、血糖値の上昇度合いを数値で示したGI値が55以下のものをいいます。

低GI食品には、以下のようなものがあります。

  • 大豆
  • 玄米
  • 全粒粉パン
  • 野菜
  • 海藻
  • キノコ類
  • そば
  • バナナ
  • りんご
  • ヨーグルト

野菜は、食物繊維が豊富で低GI食品のものがほとんどですが、じゃがいもなどに含まれるでんぷんは分解されるとブドウ糖に形を変えるため血糖値を上昇させます。

一方、糖質を多く含みGI値が70以上の高GI食品には、以下のようなものがあります。

  • 白米
  • 白パン
  • うどん
  • じゃがいも
  • にんじん
  • カボチャ
  • せんべい
  • ドーナツ

糖質制限では、糖質の摂取量を減らしたり高GI食品の代わりに低GI食品に置き換えたりするのが大切です。

しかし、調理の際に使用する調味料にも糖質が多く含まれているものがあるため、使用量に気をつける必要があります。

糖質を豊富に含んでいる調味料は、以下のとおりです。

  • 砂糖
  • 蜂蜜
  • みりん
  • 料理酒
  • からし
  • 焼肉のたれ
  • ウスターソース
  • ケチャップ

これらの調味料を多く使用すると、糖質摂取量を減らしたり低GI食品に置き換えたりしても、思ったように効果が出ないと感じる場合があります。

そのため糖質オフの調味料や砂糖の代わりに人工甘味料を使うなど、調理の際に使用する調味料を工夫すると、糖質の摂取量を減らせます。

糖質制限は我慢するのではなく食べれるものから選ぶのが大切である

糖質制限は我慢をしない。食べれるものから選ぶのが大切

我慢が必要な時もありますが、糖質制限の生活を継続して続けると、その効果を発揮します。

糖質の摂取を我慢し続けるだけではストレスが溜まり、挫折する可能性もあるため、継続するには我慢をしない食事の工夫が大切です。

糖質を摂取する際は、低GI食品に置き換えたり、糖質オフと記載された食品を摂取したりするとストレス軽減に役立ちます。

さらに、よく噛んでゆっくり食事をすると満腹感も得られて食事に対する満足度を上げるだけでなく、血糖値の上昇も緩やかにします。

空腹時には、間食を我慢するのではなく、糖質の含有量が少ないチーズやヨーグルトなどを選んで摂取するのも重要です。

しかし、糖質制限のために毎日自炊をするのは大変な場合もあり、外食やコンビニを利用する時もあるでしょう。

外食時には、主食の量を半分にしたりお酒を飲む時はウイスキーや焼酎など糖質が少ないものを摂取したりするのが望ましいです。

加えて、どんぶりやラーメンのような糖質が多い食事ではなく、定食などの栄養バランスが取れた単品料理を選ぶのも効果があります。

定食を食べる際はメニューに砂糖を多く使用する煮魚や煮物などがあると、血糖値を上げる原因となるため、内容を確認して選ぶ必要があります。

コンビニでは、ご飯入りのお弁当ではなく、タンパク質が豊富で低糖質と記載された商品を購入する工夫も欠かせません。

糖質制限は我慢する食事ではなく、代用食品を使ったり食べれるものを工夫して選ぶのが大切で、こうした考え方がストレスを溜めずに継続するのにつながります。

間違った糖質制限は健康に悪影響を及ぼす可能性がある

糖質制限を正しく実践した場合は、健康を害さずに効果が得られますが、間違えると健康障害を招く危険性があります。

糖質は、体を動かしたり考えたりするために必要なエネルギー源であり、大切な栄養素です。

この糖質を極端に減らすと、以下のような症状が出る場合があります。

  • 疲労感
  • 集中力の低下
  • イライラする
  • 頭がぼーっとする
  • リバウンドの危険性
  • 筋肉量の減少
  • 栄養バランスの偏り

早く効果を出そうとして糖質を完全に排除するのではなく、目的に応じて糖質の摂取量を調整するのが大切です。

自己判断で過度な糖質制限を長期間続けるとこれらの症状だけでなく、ホルモンバランスの乱れや腎臓の機能が低下するなど、健康に悪影響を及ぼす危険性が高まります。

そのため、無理な糖質制限は行わず、体調に異変があった場合には病院を受診するのが望ましいでしょう。

正しい糖質制限の実践は糖尿病予防やダイエットに効果がある

糖質制限は、血糖値コントロールに役立ち、糖尿病予防や体重管理に効果があります。

糖質を摂取すると血糖値は上昇しますが、摂取量を制限した場合は食後血糖値の上昇を緩やかにし、インスリンの過剰分泌を抑えて脂肪の蓄積を防ぎます。

しかし、糖質は体や脳のエネルギー源であり、非常に大切な栄養素です。

そのため、過度な糖質制限は健康に悪影響を及ぼす可能性があり、正しい知識を持って糖質制限を行う必要があります。

3種類の糖質制限から自分にあった糖質の摂取量を目標にし、我慢せずに制限中でも低GI食品など食べれるものを選ぶと、ストレスが軽減されて継続するのに役立ちます。

このように適切な方法で糖質制限を実践すると、血糖値が安定し、糖尿病予防や体重の管理に効果を発揮するでしょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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