Hba1cを下げる朝食のとり方や血糖値との違いを徹底解説

HbA1cの数値を下げる朝食。理想的な取り方や血糖値との違い

Hba1c(ヘモグロビンa1c)は、健康診断などでは空腹時血糖値と併せて糖尿病の判定に用いられる指標です。

Hba1cは1~2ヶ月間の平均的な血糖値の状態を表しているため、Hba1cの数値を下げるためには、これまでの食習慣を改善する必要があります。

この記事では、食生活における朝食がHba1cに与える影響や、理想的な朝食のとり方について詳しく解説しています。

Hba1cの数値が高い人や血糖値が気になる人は、是非参考にしてください。

この記事でわかること
  • Hba1cは糖尿病の判定に用いられる指標
  • 血糖値上昇が抑えられるとHba1cも低下
  • 食事の中でも朝食は最も重要
  • 血糖値上昇が抑える朝食のポイントは4つ

それでは1つずつ、詳しくみていきます。

目次

Hba1cは1~2ヶ月間の平均的な血糖値の状態を表す

HbA1c。1~2ヵ月間の平均的な血糖値

Hba1cは、血糖値と同じく糖尿病の判定に用いられる指標であり、検査時点での血液中のブドウ糖の量を表す血糖値に対して、1~2ヶ月の平均的な血糖値の状態を表しているのがHba1cです。

Hba1cはヘモグロビンエーワンシーと読み、血液中の全てのヘモグロビン量に対するブドウ糖と結合したヘモグロビン量の割合を算出します。

Hba1c=ブドウ糖と結合したヘモグロビン量÷血液中の全てのヘモグロビン量×100

ヘモグロビンとは全身に酸素を送るタンパク質のことであり、血液中のブドウ糖と結合して糖化ヘモグロビンになります。

一旦糖化したヘモグロビンは、元のヘモグロビンに戻りません。

血液中にブドウ糖が多い状態が長いほどHba1cは高くなる傾向にあり、血液中にブドウ糖が少ない状態が長いほどHba1cは低くなる傾向にあります。

従ってHba1cは、血液中のブドウ糖が影響している点においては血糖値と同じですが、1~2ヶ月間のブドウ糖の平均的な状態を推し量れる点が異なります。

そのため検査直前の食事を抜いた場合、血糖値は低くなりますが、Hba1cはほとんど下がりません。

Hba1cは空腹時血糖値と同じく糖尿病の判定に用いられる指標

Hba1cと空腹時血糖値が以下の糖尿病型に該当する場合に糖尿病と判定され、食事療法や運動療法、薬物療法が行われます。

正常型正常型高値境界型糖尿病型
Hba1c〜5.5%~5.9%~6.4%6.5%〜
空腹時血糖値〜99mg/dL~109mg/dL~125mg/dL126mg/dL〜

空腹時血糖値とは、直近の食事から10時間以上経過した状態での血糖値のことであり、健康診断で主に用いられる指標です。

空腹時血糖値が境界型や正常型高値である場合、糖尿病と判定はされませんが、定期的な血糖値検査の推奨や特定保健指導の対象となる可能性があります。

一方でHba1cは、糖尿病であるものの空腹時血糖値は正常型であるため見落とされる可能性が高く、隠れ糖尿病の判定の目安にもなります。

隠れ糖尿病ではHba1cは高くなる傾向であるため、精密検査の必要性が判断できる可能性が高いです。

なお隠れ糖尿病を正確に診断する際には、75gのブドウ糖を摂取し、一定時間経過後の血糖値の推移を診るブドウ糖負荷試験を行います。

食事療法での血糖値コントロールによってHba1cも下がる傾向に

糖尿病と診断された場合は、食事療法や運動療法、薬物療法による治療が行われます。

その中でも食事療法は血糖値をコントロールする糖尿病治療の基本であり、運動療法や薬物療法にも影響を及ぼすため、着実な実践が必要です。

そして食事療法での血糖値のコントロールによって、1~2ヶ月間の平均的な血糖値の状態であるHba1cも下がる傾向にあります。

糖尿病における食事療法のポイントは、以下のとおりです。

  • 1日3食規則正しく食べる
  • バランスよく食べる
  • よくかんで食べる
  • 腹八分目にしておく
  • 寝る前、夜遅くは食べない

糖尿病の食事療法では、バランスよい食事のためのカロリー計算や栄養素の配分などで専門知識が必要ですが、ポイントのほとんどは食習慣の見直しです。

食習慣の見直しはちょっとした意識で実践できますが、すぐに効果は出ないため、根気よく続ける必要があります。

そして糖尿病の食事療法において朝食のとり方は、Hba1cや血糖値にも大きく影響するため非常に重要です。

血糖値の上昇を抑えられるため朝食は最も重要といえる食事

血糖値の上昇を抑えられる。朝食は最も重要といえる食事

血糖値の上昇を抑えられるため、1日の食事の中でも朝食は最も重要といえます。

朝は出勤準備などで慌ただしいため、朝食を抜いたり、簡単に済ませたりする人も少なくありません。

朝食を抜いた場合、前日の夕食からその日の昼食まで食事をしないため、食事の間隔が長くなってしまいます。

人間の体は、食事の間隔が空くほど次の食事で栄養を多く取り込もうとするため、この場合は昼食後に血糖値スパイクが起きる可能性があります。

血糖値スパイクとは食後2時間以内での血糖値が140mg/dLを超えて急上昇し、その後急降下する状態のことであり、具体的な症状は以下のとおりです。

  • 眠気
  • 倦怠感
  • 頭痛
  • 気絶

血糖値スパイクは隠れ糖尿病の人に多く見受けられ、長期間の繰り返されると動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などのリスクも上昇します。

なお食事の度に血糖値スパイクが起きた場合、Hba1cも高い数値になる可能性が高いです。

一方で朝食をパンやご飯だけなど簡単に済ませた場合は、血糖値スパイクは避けられる可能性はありますが、栄養が偏る傾向にあります。

人間が必要とする栄養の中には、血糖値の上昇を抑える効果があるものもあるため、朝食こそしっかりと栄養バランスの取れた食事が必要です。

さらにインスリンの分泌においても朝食は、3食の中でも最も重要な食事といえます。

インスリンの分泌は体内時計で管理されており、最も活発である朝食後の血糖値の推移は緩やかです。

なお夕食後のインスリンの分泌は朝食後と比べて弱くなっているため、朝食と同じカロリーを摂取した場合、血糖値は高くなる傾向にあります。

そして血糖値上昇を抑える理想的な朝食のポイントは、以下のとおりです。

  • できるだけ早い時間帯に朝食をとる
  • 糖質はとりすぎない
  • 血糖値の上昇が緩やかな食品を食べる
  • タンパク質や食物繊維も食べる

上記のいずれもちょっとした意識で始められますが、効果が出るまでには時間がかかるため、根気強く続ける必要があります。

できるだけ早い時間帯に朝食をとる

早い時間帯に朝食をとる

近年、食事する時間帯による効果や影響を研究する時間栄養学が注目されており、インスリンの分泌などは午前中が活発であるとされています。

そのため、早い時間帯の朝食は血糖値抑制に効果的です。

2021年3月に開催された米国内分泌学会で、午前8時半までに朝食をとった場合、糖尿病のリスクが午前8時半以降での朝食よりも糖尿病のリスクが下がると発表されました。

一方でフランス国立衛生医学研究所主導の研究結果によると、朝食を午前9時以降にとる人は、午前8時前にとる人に比べて糖尿病のリスクが59%増加します。

なお夜遅く夕食をとった場合は、インスリンの分泌が低下しているため、血糖値が高くなる可能性が高いです。

血糖値の上昇を抑えるために、朝食や夕食を早めの時間帯にとる朝型の食事サイクルにしましょう。

糖質はとりすぎない

インスリンの分泌は午前中が活発であるため、夕食よりも朝食で糖質を多くとるほうが良いですが、とりすぎは高血糖値となる可能性が高いです。

1日の適正な糖質の摂取量は、1日あたり適正なエネルギー量の40~60%が目安であり、これを3食に分けて摂取します。

1日に必要なエネルギー量は、一般的に以下の計算式で算出します。

1日の必要なエネルギー量=標準体重×エネルギー係数

標準体重はBMIを22として、BMI算出の計算式から算出できます。

標準体重=22×身長(m)×身長(m)

一方でエネルギー係数は、1日の主な活動内容に応じて25~35kcal/kgを設定します。

例えば、標準体重が65kgでエネルギー係数が30kcal/kgの場合の1日の必要なエネルギー量は、以下のとおりです。

65kg×30kcal/kg=1,950kcal

従って、このエネルギー量に基づく適正な糖質の摂取量は、以下の計算式により780~1,170kcalとなります。

1,950kcal×40%=780kcal

1,950kcal×60%=1,170kcal

そして糖質は一般的な4kcal=1gで換算できるため、単位をグラムで計算しなおした適正な糖質の摂取量は、以下のとおりです。

780kcal÷4kcal/g=195g

1,170kcal÷4kcal/g=292.5g

つまり1日の適正な糖質の摂取量は195~292.5gとなり、これを3食に分けて摂取する場合は1食あたり65~97.5gとなります。

例えば、朝食でよく食べられるご飯やパンに含まれる糖質の量は、以下のとおりです。

ご飯、パン容量糖質の量
ご飯100g=茶碗1杯35.6g
食パン60g=6枚切り1枚25.3g

他の食品にも糖質は含まれるため、上記がご飯またはパンの適正な朝食の目安となります。

なお標準体重算出のためのBMIや、エネルギー係数によって適正なエネルギー量は変動するため、実際に計算する際は医者や管理栄養士に相談しながら計算しましょう。

血糖値の上昇が緩やかな食品を食べる

血糖値の上昇が緩やかな食品を食べる

血糖値の上がり方は食品によって異なるため、朝食で血糖値の上昇が緩やかな食品を食べた場合、1日を通して血糖値の上昇が低く抑えられる可能性が高いです。

ブドウ糖の摂取による血糖値の上がり方を100とした場合の、食品ごとの血糖値の上がり方を数値で表したものをGI値といいます。

GI値は以下のように3つに分類されており、低いほど血糖値は緩やかに上昇します。

分類GI値代表的な食品
高GI食品70以上菓子パン、うどん、インスタントラーメン、キャラメル、チョコレートなど
中GI食品56~69アイスクリーム、カステラ、クロワッサン、かぼちゃなど
低GI食品55以下海藻類、野菜類全般、キノコ類、カマンベールチーズ、ココア、おからなど

高GI食品を摂取した場合はインスリンの分泌が追いつかないため血糖値が急上昇し、低GI食品を摂取した場合は、インスリンの分泌が間に合っているため血糖値の上昇が緩やかになります。

さらに、朝食で低GI食品を摂取した場合はセカンドミール効果により、その日の血糖値の上昇を抑えられる効果が見込めます。

セカンドミール効果とは、その日の最初の食事が次の食事後の血糖値に与える影響のことです。

つまり朝食で低GI食品を摂取すると、セカンドミール効果での血糖値の上昇抑制により、Hba1cの引き下げ効果も見込めます。

タンパク質や食物繊維も食べる

朝食をパンのみなど簡単に済ませる人も多いですが、糖質に加えてタンパク質や食物繊維など栄養バランスのよい朝食は、血糖値の上昇を抑える効果が見込めます。

朝食でタンパク質を食べた場合、インスリンの分泌を促すペプチドホルモンの分泌が増えるため、血糖値上昇抑制の効果があります。

アメリカのミズーリ大学の研究では、朝食でタンパク質を食べた場合、朝食と昼食による血糖値の上昇が抑えられました。

一方で炭水化物の中で食べてもエネルギーにならない食物繊維も、血糖値の上昇を抑える働きがあるため、朝食での摂取が効果的です。

つまり朝食は、パンのみなどで簡単に済ませず、タンパク質や食物繊維もしっかり食べるほうが血糖値の上昇を抑えられる可能性があります。

そして、血糖値の上昇を抑えられるのと連動して、Hba1cも低下する可能性が高いです。

さらにタンパク質や食物繊維を朝食で食べると、以下の効果が見込めます。

  • 集中力を高められる
  • 腸内環境を整える
  • 体内時計リセット効果

このように効果が見込めるため、朝食がご飯の場合には納豆や豊富な野菜が入った味噌汁を併せて食べるようにしましょう。

朝食がパンの場合は、目玉焼きや海藻スープなども併せて食べると効果が見込めます。

さらに、牛乳やヨーグルトでのタンパク質の摂取も効果的です。

朝食をしっかりと食べると血糖値上昇が抑えられるためHba1cも低下傾向になる

1~2ヶ月間の平均的な血糖値の状態を表すHba1cは、空腹時血糖値と同じく健康診断で糖尿病の判定に用いられる指標であり、血糖値の上昇が抑えられるほどHba1cも低下します。

血糖値上昇抑制の効果が見込めるため朝食は最も重要な食事であり、午前中はインスリンの分泌が活発であるため、できるだけ早い時間帯の摂取は効果が高いです。

血糖値上昇の要因となる糖質の摂取は、体格などから算出される適正な量に抑えなければならないうえに、血糖値の上がり方が緩やかな食品を選ぶ必要があります。 

朝食でタンパク質や食物繊維の摂取は、さらに血糖値上昇抑制効果が見込めるため、ご飯の場合には納豆や野菜が多く含まれる味噌汁を併せて食べると効果的です。

朝食で血糖値上昇抑制効果があると、最初の食事が次の食事に影響を与えるセカンドミール効果によって、1日を通して血糖値上昇が抑えられる傾向にあります。

従って朝食は、できるだけ早い時間帯に血糖値上昇が緩やかな食品を、タンパク質や食物繊維とともに食べるようにしましょう。

この記事の監修者

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。当院が少しでもあなた様のお役に立つことが出来れば幸いです。

■経歴
平成21年3月 金沢医科大学医学部医学科卒業
平成21年4月 杏林大学病院 初期臨床研修医
平成26年1月 金沢医科大学病院 糖尿病・内分泌内科学教室
平成30年4月 金沢医科大学病院 助教
平成30年9月 金沢医科大学大学院医学研究科 博士課程修了
令和3年1月 金沢医科大学病院学内講師
令和5年6月 Gran Clinic(石川県金沢市)院長

■所属学会
日本内科学会 認定医
日本糖尿病学会 専門医
日本抗加齢医学会 専門医
日本腎臓学会
日本内分泌学会

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