
監修医:小倉慶雄
所属:金沢駅前内科・糖尿病クリニック
専門:内科・糖尿病内科・内分泌内科
資格:日本糖尿病学会 専門医、日本抗加齢医学会 専門医
日本内科学会 認定医

男性更年期障害とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こる心身の不調であり、医学的には「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」と呼ばれます。
40歳以降に多く見られ、疲労感、意欲低下、性欲低下などの症状が現れます。
女性の更年期障害は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する閉経前後のおよそ10年間に起こり、閉経後は徐々に慣れて症状は治まっていきます。
一方で男性の場合、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。(図1)

男性更年期障害は、テストステロン値の低下+症状の存在で診断されます。
※医療機関により基準は異なります
男性更年期では、ホルモンバランスの変化により、精神面・身体面・性機能のさまざまな領域に影響が現れます。症状の出方や強さには個人差があり、複数の症状が同時に現れることも少なくありません。
減少の速さや度合い、時期は個人差が大きいです。そのため、男性更年期障害は、40歳代以降どの年代でも起こる可能性があります。同じ更年期ですが、図2に示すように男性と女性の更年期症状には違いがあり、男性ホルモンの減少によるものを加齢性腺機能低下症、またはLOH症候群と呼んでいます。
これらの症状は、仕事や日常生活のパフォーマンス低下につながることがあります。特に「やる気が出ない」「以前は楽しめていたことに興味が持てない」といった変化は、本人だけでなく周囲にも影響を及ぼすことがあります。
※うつ病と似ているため注意が必要です。自己判断せず、必要に応じて医療機関での評価を受けることが重要です。
身体症状は「年齢のせい」と見過ごされやすいですが、日常生活の質(QOL)を大きく低下させる要因となります。特に睡眠の質が低下すると、日中の集中力や気分にも影響し、悪循環に陥ることがあります。
性機能の変化は、男性更年期の代表的なサインのひとつです。これらの症状は心理的な要因だけでなく、ホルモン低下や血流の問題とも関係しています。
※EDは血管障害の初期サインの可能性があり、動脈硬化などの生活習慣病が背景にある場合もあります。早めの相談が重要です。
| 項目 | 男性 | 女性 |
| 原因 | 男性ホルモンの低下 | 女性ホルモンの低下 |
| ホルモン変化 | 徐々に低下 | 急激に低下 |
| 発症時期 | 個人差が大きい (40代以降いつでも) | 閉経前後 (50代前後) |
| 終了時期 | 明確でない (終わりがない) | 比較的明確 (閉経後5年ほどで症状が落ち着く) |
| 主な症状 | 倦怠感・性機能低下 | ホットフラッシュ |
主な原因は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下です。テストステロンは筋肉量や骨密度、性機能だけでなく、意欲や集中力などの精神面にも深く関わっているため、その低下によってさまざまな不調が現れます。
さらに、以下のような生活習慣や環境要因もテストステロンの低下を加速させる要因となります。
これらの要因が複合的に関与することで、男性更年期の症状が現れやすくなります。生活習慣の見直しは、症状の予防や改善において重要なポイントとなります。
| 質問項目 | なし | 軽度 | 中程度 | 重い | 非常に重い |
|---|---|---|---|---|---|
| Q1.総合的に調子が思わしくない (健康状態、本人の感じ方) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q2.関節や筋肉の痛み(腰痛、関節痛、手足の痛み、 背中の痛み) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q3.ひどい発汗(思いがけず突然汗が出る、緊張や運動 とは関係なくほてる) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q4.睡眠の悩み(寝つきが悪い、ぐっすり眠れない、 寝起きが早く疲れが取れない、浅い睡眠、眠れない) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q5.よく眠くなる、しばしば疲れを感じる | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q6.いらいらする(当たり散らす、些細なことですぐ腹を 立てる、不機嫌になる) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q7.神経質になった | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q8.不安感(パニック状態になる) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q9.身体の疲労や行動力の減退(全体的な行動力の低下、 活動の減少、余暇活動に興味がない、達成感がない、 自分をせかさないと何もしない) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q10.筋力の低下 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q11.憂鬱な気分(落ち込み、悲しみ、涙もろい、 意欲わかない、気分のむら、無用感) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q12.「絶頂期は過ぎた」と感じる | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q13. 力尽きた、どん底にいると感じる | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q14.ひげの伸びが遅くなった | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q15.性的能力の衰え | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q16.早期勃起(朝立ち)の回数が減少 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| Q17.性欲の低下(セックスが楽しくない、性交の欲求が 起こらない) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
無し: 17~26 軽度:27~36 中等度: 37~49 重症: 50~ ※正式な診断は医療機関で行います
男性更年期の診断では、血液検査によるテストステロン値の測定が重要な役割を果たします。テストステロンは日内変動があり、特に朝に高くなる傾向があるため、正確な評価のためには午前中(一般的には8〜11時頃)の採血が推奨されます。
これらの結果と症状を総合的に判断し、診断が行われます。
男性更年期の治療において、まず基本となるのが生活習慣の見直しです。ホルモンバランスは日々の生活の影響を大きく受けるため、無理のない範囲で継続的に改善していくことが重要です。
軽症の場合は、これらの改善のみで症状が軽減することもあります。
症状の程度や内容に応じて、薬物療法が併用されることがあります。患者さんの状態に合わせて適切な薬剤が選択されます。
薬物療法は単独で行う場合もありますが、生活習慣の改善やホルモン療法と組み合わせることで、より効果が期待できます。
テストステロン値が低く、症状が明らかな場合にはホルモン補充療法(TRT)が検討されます。これは不足しているテストステロンを補うことで、症状の改善を目指す治療です。
TRTにより、倦怠感や意欲低下、性機能の改善が期待されますが、定期的な血液検査による安全管理が必要です。また、すべての方に適応となるわけではないため、医師の判断のもとで慎重に行われます。
※施設により異なります
👉 定期的な血液検査で管理可能です
男性ホルモン(テストステロン)の減少で起こる代表的な症状にED(勃起障害)があります。60歳代の日本人の60%以上にみられ、珍しいことではありません。女性は閉経によって生殖機能の終わりを迎えますが、男性はその終わりがなく、80、90歳になっても勃起します。EDはかつては気の持ちようや糖尿病などの生活習慣病が悪化して起こるとされてきましたが、近年”血管病”としてもとらえられています。それは勃起のメカニズムが、血管の機能と深く関係があり、血管の健康が失われる(動脈硬化が進み、血流が悪くなる)とEDが起こりやすくなるためです。陰茎の動脈は非常に細いため初期の動脈硬化でも影響が現れやすく、EDは”最初に自覚できる生活習慣病”だと考えられます。性欲のあるなしに関わらず、EDは男性の健康の”見張り役”になります。
男性で男性ホルモン(テストステロン)値が低い場合、抑うつ状態、性機能・認知機能の低下だけでなく、糖尿病や肥満、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、心血管疾患(動脈硬化・血管内皮機能の低下)などに関係するとの研究結果や男性ホルモン(テストステロン)値の高い人のほうが長寿という報告もあります。また、男性ホルモンの減少は認知症やサルコペニア(筋肉減少症)とも関連します。
男性ホルモンは多くの病気のリスクから身を守ってくれる、健康長寿のための大事な相棒と言えます。
男性ホルモンは男性の健康維持に働いています。もし男性更年期障害やEDを自覚されたら、生活を見直し、改善するのはもちろん、定期的に健康診断や、前立腺腫瘍マーカー検査(PSA検査)を受けるなど、ご自身の健康によりいっそう気遣うようにしましょう。
1.問診
現在の症状や生活習慣、既往歴、服用中の薬などについて詳しくお伺いします。疲労感や気分の落ち込み、性機能の変化など、気になる症状は遠慮なくご相談ください。
2.血液検査
男性ホルモン(テストステロン)の値を中心に、必要に応じて血糖値や脂質、肝機能なども確認します。テストステロンは日内変動があるため、午前中の採血が推奨されます。
3.診断
問診内容と血液検査の結果を総合的に評価し、男性更年期障害(LOH症候群)かどうかを判断します。他の疾患との鑑別も行い、適切な診断を行います。
4.治療開始
診断結果に基づき、生活習慣の改善指導や薬物療法、必要に応じてホルモン補充療法(TRT)を開始します。治療内容は患者様の状態やご希望に応じて個別に調整し、定期的に経過を確認しながら進めていきます。
👉 気になる症状があれば早めの受診をおすすめします
当院では、男性更年期に関するご相談を随時受け付けております。
お気軽にご予約・お問い合わせください。
お電話受付時間: 9:30〜18:30(※休診日を除く)
医学的根拠・参考文献
日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=39
Endocrine Society
https://www.endocrine.org/patient-engagement/endocrine-library/hypogonadism
免責事項
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としています。
診断・治療は医療機関で受けてください。
AA. 軽症の場合は、生活習慣の改善(十分な睡眠、適度な運動、バランスの良い食事、ストレス管理など)によって症状が軽減することがあります。ただし、ホルモン低下が進行している場合や症状が強い場合は、自然に改善することは難しく、医療的な介入が必要になることもあります。症状が長引く場合は、早めに医療機関へ相談することが重要です。
AA. 治療内容や個人差にもよりますが、ホルモン補充療法(TRT)を行った場合、早い方では1ヶ月程度で変化を感じ始め、一般的には1〜3ヶ月ほどで疲労感や意欲の改善を実感する方が多いです。ただし、十分な効果を得るためには継続的な治療が必要であり、医師と相談しながら経過を見ていくことが大切です。
AA. 男性更年期が疑われる場合は、泌尿器科や男性更年期外来の受診が適しています。また、症状によっては内科や内分泌内科で対応することもあります。どの診療科を受診すべきか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するのも一つの方法です。
AA. TRT(テストステロン補充療法)は、血液検査でテストステロン値の低下が確認され、かつ症状が認められる場合など、一定の条件を満たせば保険適用となることがあります。ただし、自由診療として行われるケースもあり、治療内容や医療機関によって費用が異なるため、事前に確認することをおすすめします。
AA. 一般的に40歳以降に発症しやすく、徐々に進行します。テストステロンの減少の速さや度合い、発症時期には個人差が大きいのが特徴です。同じ更年期でも女性とは異なり、男性はホルモンが緩やかに低下します。男性ホルモンの減少による症状は「加齢性腺機能低下症」または「LOH症候群」と呼ばれています。
電話でご予約
LINEでお問い合わせ
WEBでご予約(24時間受付可能)
■ 当院は事前の予約なしで診察を受けることができます。
■ 保険診療のご予約は午前もしくは午後のご予約になります。
お時間を指定することはできません。
(また、ご案内はご来院順となりますので、予めご了承ください。)